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導入8 新世界へ

 気付くと自分は、ドラクロのキャラメイクをした自分以外が、全て真っ白な世界に一人漂っていた。


 「思い出しましたか、モト」


 また何処からともなく、鈴を転がしたような綺麗で落ち着きのある不思議な響きの声が聞こえてくる。


 「ああ、俺は穴に落ちて———」


 「ええ、ここは零世界、世界の狭間に落ちた貴方を救うために私が作り出した、まだ何処でもない場所です」


 確かに記憶を思い出した事を喜ぶように、姿の見えぬ声の主は、モトがここに居る理由を補足で説明してくれた。

 

 「そして、モト、貴方はこれから別の世界に旅立たねばなりません――」


 「……自分の世界には帰れないんですか?」


 なるほど、話が見えてきた。ここからドラクロの世界に飛ばされるのだなと納得しながらも一応、尋ねてみる。


 「そうです」


 「……なるほど」


 それが本当なのか、嘘なのかは分からないが、そう言われてしまったらゲームの中の話だし、そういうものかと納得してしまう。


 ――むしろ、ようやくドラクロの世界での冒険が始まるのかとワクワクが抑えきれないので、さっさと送ってくれというのが本心だった。


 「ですが、せめてものはなむけに加護をお渡ししましょう」


 「加護?」


 「はい――〝より良い未来を掴む力〟を貴方に……」


 すると目の前に、光のオーブのようなものが現れて、ゆっくりと自分の中に吸い込まれていく。


 【モトは、アルカナ『死神』を手に入れた】

 

 【モトは、???の加護、ユニークスキル『???』『???』『???』を手にいれた】


 「おっ、おおぉ?」


 何か、凄そうな力が手に入ったらしいのだが、感覚的には何の変化もなかった。


 「これで、完全な異邦人である貴方でも、新しい世界で生きていくことができる筈です」


 「あっ、ああ、ありがとう」


 逆説的に言えば、加護とやらを貰わなかったら生きていくことも難しい環境だったらしい事に、どんな世紀末な世界なのかと内心で引きながらお礼を言う。


 ドラクロのPVでは、中世ヨーロッパ的な典型的なファンタジー世界だった筈なのだが、風土病に掛からないとか、そういう話だろうかと納得する。


 だが、何にしても最初はゲームの始まりのガイド的な存在だと思っていたが、加護なんてものを渡してくる以上、この声の主はストーリー的に何らかの重要な立ち位置なのではないだろうか?


 「なぁ、アンタは一体誰なんだ? それに最後に俺を助けてくれた女の子は、どうなったんだ?」


 「――すべては、これから貴方が向かう世界の中に全てあります。モト、貴方の未来に幸多からんことを――そして叶うならば、世界に光を……」


 真っ白な世界が歪んでゆき、目の前に黄金の光が集まり扉のようなものを形作っていく。


 その黄金の扉が開かれると、その先には真っ黒な闇が広がっており、宇宙空間でドアが開かれた時のように周囲の大気ごと吸い込まれるようにモトの身体は、その扉の先の闇の中に吸い込まれていった。

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