03.迷宮で
え?
なんで?
ここまでの流れは完璧だったはず。
《冷静を装いながら裁判の空気を飲み込む。そして裁判であからさまな有罪を起こさせにくくし、国民の前であからさまな嘘だと誰もがわかる状況を作り出す。》
この作戦、失敗するときは最初から判決が決まっていて、どんなにその後に国民からの反感を買ったりすることを割りっきっているときだけ。
そして今、作戦は完璧だったのに有罪となった。
ということは、相当な圧力がかけられていて、本当に100%ここから覆すことは無理だったってわけだ。
要は最初からこの裁判は無理ゲーだろ。
………もうやだな。高校が嫌になって家でひこもってゲームばっかしてた挙げ句、火事にあって転生して、異世界にきてハメられてダンジョン送りって。
でもどんな逆境になっても諦めないって前世で決めたんだから頑張らないとな。
うん。私の人生は私のものなんだから私が頑張らないと。
そうやって今まで頑張って生きてきたんだから。
じゃないと、生きている意味がなくなる。
努力することしか私はできないんだから。
「それでは被告人はライルセルダンジョンへ行け。二度と戻って来るな。」
やけに、あのおっさんの笑っている顔が目に付いた。
こうして私はライルセルダンジョンへ行くことになったのだった。
−−−−−馬車の中−−−−−
「いまからお前が行くのはライルセルダンジョンだ。
凶暴な魔物や、少ない食料の中一人で頑張って生きるんだな。」
ダンジョンへ行くための馬車の中で、見張りの三下っぽい兵士にそんなことを言われた。
いやもう喋らないでくれ。もう典型的な三下喋りがもう笑わせに来てるとしか思えない。
でも三下のおっさんのおかげで少し気が緩んだ。
ありがとうおっさん。君のことはきっと多分忘れないよ。うん。
そんなことを考えていたら、ダンジョンについた。
「ということでお前。しばらく眠っていてもらう」
………え?
「バンッ」
−−−−−ダンジョン最下層−−−−−
気がつくと私はダンジョンの最下層にいた。
なぜ最下層にいるということがわかるのかというとご丁寧に私が気絶していた横に
『ここは最下層だ。せいぜい生き足掻くんだな』
っていう紙が置いてあったんだよね。
あのおっさんは最後まで三下感を忠実に守っていったな。
もう敬意を払いたいわ。
あと、なんか日本刀っぽいのも置いてあったし。
これで戦えってことなんだろうな。
まあそんなことは良いんですよ。
今考えるべきはこれからどうするかですよ。
今いる場所は大きな広間みたいなところだけど、うーーん。
とりあえず、飲水を確保しますか。
最悪蒸留してきれいな水作り出せば良いし。
それにダンジョンの中は真っ暗だけど、私が真っ暗な中でずっとゲームしていた賜物(?)で目はすぐなれたし、これなら不意に魔物が襲ってきてもどうにかなるだろう。
よし。てことで探しに出かけますかーー。
《二時間後》
はーお腹すいた。
そういえば、最後にご飯食べてから、気絶してた時間を半日ぐらいだとするともう一日近く何も食べてないのか。
そろそろなにか食べないと本格的にまずい。
この洞窟普通に寒いから体温が奪われて必要以上に体力使ってるんだよ。
だからこのままじゃほんとに命に関わる。
しかも、ここで食べられるものって、魔物の肉くらいしかないし。
まあ前世から食生活は偏ってたから多分そこらへんはなんとかなるけど、いかんせん注意すべきことが多すぎる。
てかまず食べるには、魔物殺さないといけないし、しかもその肉を焼かないといけない。
しかも焼く為にするためにも火が必要なんだよ。
どうやって火を起こすかも考えなきゃいけないし。
はーーーーもう疲れたし一回寝るか。
幸い大きいホールみたいなところにいるし、この角で寝てれば気づかれないでしょう。
おやすみなさい。
………ん?なんか焦げ臭くね?
すげーデジャヴな気がするけどまあとりあえず周り見てみるか。
……うん。やっぱり燃えてるね。
でも幸いそんな火は激しくない。
でもなんで?
原因はすぐに見つかった。
なんかドラゴンがいた。
いや、なんでいるんだよ。
普通にボスクラスの魔物がそこらへんにポップすんなよ。
で、しかもちゃんとロックオンしてらっしゃるじゃないですか。
これは戦うしかないな。
まあ、余裕で勝ってやりますか。
こんなこといってるけど、実際は滅茶苦茶やばい。
こちとら万全でもなんでもない状況。
しかも、家ではほとんど運動なんてしてなかったし、結局私の体力は一般女子高校生の半分くらい。
だからって、勝ち筋が一切ないわけでもない。
私がゲームで鍛えた動体視力や状況判断能力はそこらの人とは比べ物にならないくらい高い。
だから、勝てるかどうかはこのドラゴンの強さ次第だけどさて、どんな感じかな?
そう思った瞬間だった。別に気を抜いていたわけでもなかったし、ドラゴンの攻撃を侮っていたわけでもなかった。
たった一瞬で、ドラゴンがブレスを吐いた瞬間
「ドーーン」
私の左腕が爆ぜた。
!?何が起きた?
とりあえず止血しないと。
私は着ていた服の一部をちぎって腕に巻き付け、止血した。
危なかった。ドラゴンがブレスを吐いたと思って横に思いっきり飛んだ瞬間に私がいたところが爆発した。
それで、その爆発に私の片腕が巻き込まれたってことか。
でも、今わかった。
あいつのブレスは、とんでもなく発射と着弾の速度が異常に早い。
じゃないと私が避けられなかったはずがない。
これは自分への過大評価ではなく事実だ。
反射神経なら、銃が飛んできても見てから動けるくらいにはいい。
でも、これが避けられなかったということは。
少なくとも地球の弾丸の数十倍は早い。
なんで私の異世界転生こんなにベリーハードなんだよ。
でも幸いあのブレスは連続して吐けないようで、次はこっちに突進してきている。
流石にこれは迎え撃たないと。
私は剣を構えた。
そして、相手の攻撃を避けつつ相手に攻撃を与えた。
………でも鱗が硬い。
このままじゃほんとに死ぬ。
もう一気に距離を詰めるか。
私は一か八かドラゴンの方へ走り出した。