茶番劇ソロパート3
「どうやら殿下が戻って来たようです、皆様お出迎え下さいな」
館から出てきた殿下はドレスやアクセサリーを持ってきたようだ
「西の大部屋にあったぞ!それに私が送ったドレスや宝石まであるじゃないか!どうして着けてこなかった!!!」
殿下は激怒していた
が、殿下を見る皆の表情で、何かを察したようだ
「やっぱりドリスの所にあったんですね」
私はため息をつく
「殿下、あのお部屋はドリスのお部屋です。私のお部屋は向こうの離れで、何もないのですよ」
殿下に再び『オールドレイン&グラビティア』をかける
そして『エアラダー』で屋根の上から降りていく
「何も、私には届いておりませんでした。プレゼントもお手紙も、お誘いの言伝も」
懐かしむように彼の頬を撫でる
「なので、私は貴方に何も返せませんでした」
「貴方に助けて欲しかった。何かを語り求めては叔母に穿たれ、素肌を晒してみようとしては穿たれ、貴方を見ることさえ怖くなっていった」
離れたくはなかった
身体を走る痛みが恒常化していき何も持たざる私は、蹲るしか出来なくなった
「でも…何故、私の衣裳が肌を晒さぬ造りのレンタル既製品であったのかに気付いて欲しかった、とは思います」
口には出せない、だが叔母は私にドレスを造る費用をかけたくない、手元に残したくない事を知っていたし、レンタル品しか着せて貰えない事も知っていた
唯一のSOSだった
が、エスコートした殿下には不評でしかなかった
自分が送ったドレスを着てくれないのに既製品を着てくるのはさぞかし機嫌を損ねたであろう
そしてそれをドリスが吹聴する
プレゼントが気に入らないからこそ、お礼も言わないし着けてもこないのだと
ドリスはさも私がドリスにいったかのように話を捏造する
そうして、この場にまできてしまった
「殿下は私がお嫌いなのだと思いました」
ドリスや夜会での令嬢達の影口でも、そう言われ、愛のない政略結婚を無理強いされて殿下がおかわいそうだと言われていた
「だから憎まれてるとも思いましたし、何も送ってくださらないのだと、その境遇を受け入れてしまったんです」
額をコツンと彼の額につける
ポロポロと涙が溢れる
「不出来な婚約者でごめんなさいっっ!!!」
彼も答えを返そうとするも口元だけが言葉を発そうともがいている
「もう……元、婚約者、でしたね……」