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あれの仕方

キーンコーンカーンコーン


新しく私立南瓜学園に転校してきたホヅミ=ミキは眩しい太陽を頭上にうきうき気分で登校した。

教室に入ると、相も変わらず騒がしいクラスで口の角が少々上がる。だが


「リリィ……おはよう」

「おはよ、ホヅミん」


リリィの様子が変だ。リリィの周りの空気がどんよりしている。しかしそれもそのはずといってはそうなのかもしれない。何せホヅミとリリィの二人は、入れ替わってしまったのだから。


「どうしたの? 顔、窶れてるよ」


自身の窶れた顔を見ているようで不思議な感覚に陥るホヅミ。


「いやね……まあ色々と」


ホヅミは入れ替わった後、問題なく一日を過ごした。元が性同一性障害だったからだろう。何ら違和感のない、むしろ以前が違和感だらけだったのだ。けれどリリィは普通の女の子。口調こそボクっ娘だが、内面はホヅミと同じ女の子だ。


「大丈夫? 保健室行く?」

「ううん。大丈夫。大丈夫なんだけど」


鬱蒼とした重々しい態度で机に突っ伏すリリィ。


「ねぇホヅミん………おしっこって………難しいね」

「え? な、なな、何急に」


突飛な発言にホヅミは戸惑う。


「実は昨日、トイレでおしっこしようとしたんだ。でもホヅミんの体に何かついてて……座ってしようとしたんだけど、急に暴れだしちゃって」


リリィの切実な悩みをホヅミはシュールな何とも言えない感情で耳を傾けた。


「壁に変な便器がついててさ。他の人はそこでしてるんだけど、お手本にしようと思ってもなかなか見せてくれる人いなくてさ」

「そ、それは………難儀だね」


思っていたのとは違う悩みをリリィは抱えていた。



キーンコーンカーンコーン


「ではほ〜むる〜むを始める。じゃがその前に、ええ、知っての通り、昨日ホヅミ=ミキちゃんとリリィ=パンプキンちゃんは、中身が入れ替わってしまった。生活には多少の問題が生じるかもしれんが、助け合いという言葉に準じて、皆気を遣ってあげて欲しい」


老エルフの先生から説明が為されると、ちらちらといくつかの視線が自身達に向けられるのを感じたホヅミである。



ホームルームが終わり、一限目、二限目、三限目、四限目と授業が過ぎていき、お昼時となった。


「ホヅミん、一緒に食べよ」

「うん」


リリィとホヅミは向かい合うように机をくっつける。話を嗜みながら、美味しい美味しい弁当を二人は平らげていく。


「「ごちそうさまでした」」


両手を合わせて食材達への感謝を示す。


「それじゃボク……行ってくる」

「うん、頑張って」


二人はガッツポーズを出し合って、その場で分かれる事となる。リリィにはトイレの仕方を少し口頭で教えてあげたホヅミ。別に無理して他の男子の真似をする必要はないのだと、いつも通りに少し手解きを加えるのだと、そう伝えた。まさかリリィから下の話を切り出されるとは思ってもみなかったホヅミ。説明をしていて恥ずかしかったが、リリィのためだと我慢していた。下の話で言えば、ホヅミは何ら問題なかった。元々女として生まれる予定だったのだ。不思議だが、体におしっこの仕方が染み付いているらしい。


「リリィ王女、ご機嫌麗しゅう」

「うわっ! びっくりした」


突如として現れたのは、肌色が青い少年だった。


「王女、昨日は見事なジャンピングでした。このカラナ=リオーネ、心が震えましたよ」


変な奴が現れたと顔の引き攣りホヅミ。


「お、王女って?」

「王女は王女です。あなたは我が祖国パンプキン王国の姫君であらせられますからね」


恐らくこのカラナという人? は、まだ入れ替わりの事を知らないのだろう。ホヅミは気を利かせてそれを伝えようとしたが、カラナが急に顔を接近させてきたので、怯んで声が出なくなってしまう。


「私との結婚の件は考えていただけましたか?」

「へ、へ?」

「おやおや、惚けるなんて酷い、子爵の息子であるこの私にそんな手は通用しませんよ? 前から申している通り、あなたは人間でも、魔物でもない。そんなあなたを唯一受け入れられるのは、この私だけですからね」


カラナの顔はホヅミの顔にだんだんと接近していく。


(へ、へ……これって)

「はいストーップ!」


すると戻ってきたリリィはカラナの襟を掴んで引っ張る。危うくキスされてしまいそうな所でホヅミは助かった。


「カラナ、あんたこの教室じゃないでしょ。自分の教室戻ったら?」

「おや? おやおやおや? あなたは………誰ですか?」


リリィはきょとんとした顔を見せるがすぐにその状況を把握し、カラナへと説明が為される。



「な、何と。そういう事でしたか。では私は危うく、王女でない者の心を奪うところだったのですね」


ツッコミ所はあれど、何とか理解してくれた様子だ。


「まあ……別に構いませんか………私の求めているのは王女の心でなく……体ですから」

「ひっ」


ぞっと体を震わせるリリィ。


「黙れ変態! 下位火炎魔法ジェラ!」

「な、何をするつもりで」


詠唱と共にリリィの返した掌に現れたのは炎。


「こうすんのよ。天に召されろ!」

「ぐぎゃああああ!! あちちちちち! 水! 水ぅ〜!!!」


カラナは大急ぎで教室の外へと走っていった。


「これで一件落着ね」

「リリィ、やり過ぎ」


ちゃんちゃん。









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