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地雷などがある方は申し訳ございませんがお戻りいただければと思います。

行き当たりばったりで急に地雷になり得るものを入れる可能性も無い、とは言いきれません。

基本はほのぼのの予定。


正に物語はクライマックス。


剣の打ち合いを追え立っているの自分一人だけ。


数多の人間を切り捨て、時には味方さえもこの手にかけた。

失ったものは多い。

たった一つのそれを手にするために。


後悔はない。懺悔ならばいくらでもしよう。


曇天は今にも泣き出しそうで、決して幸せな結末にはなり得ない。


それでも、目の前には愛しい君がいる。

何を捨て去ってでも、全てを敵に回してでも。


君の隣に立つことを選んだのだ。


カランと音を立てて剣を手放して、目の前に立つ彼女の手を取ろうと伸ばしかけた手を止める。


目に映る自分の手は余りに汚れすぎていた。

この手で触ってしまう訳には、彼女を汚してしまう訳にはいかない。


躊躇したその手を彼女が力強く握りしめる。

華奢なその腕のどこにそんな力が宿っているのだろう。


困ったように笑うしかなくて、握られた手を引き寄せ口付ける。


泣きそうな顔で笑う彼女に膝まづいて一生の愛の誓いを口にした。


後悔などしない。

2人の愛を貫くことを、2人で決めたのだから。


いつまでも愛し合い笑っていよう。


多くの犠牲の上に結びついた愛だ。


死が2人を分かつまで。


終わりが来たらその時は、喜んで地獄に身を差し出すから。





わあっとあがる歓声。流れ出す音楽。


静かに重厚感のある幕が降りてきて完全に姿を隠されてから立ち上がった。


クレア様、と呼ぶいくつもの女性の声がここまで聞こえる。


「相変わらず、大人気ねクレア」


今しがた愛を誓ったヒロインが先程とは違う大人びた笑顔でからからと笑う。

がさつではないけれど感情がわかりやすい、親しみやすい笑顔だ。


「ありがとうミーシャ。でもミーシャだって相変わらず熱狂的なファンが熱い眼差しを向けているじゃない」


「本気で求婚までされるのは困りものなんだけどねぇ。あたし演じるの可憐なお姫様が多いから現実とはギャップあるし」


「あら、そんなこと言ったら私なんて性別違うわよ?」


「女だってわかってるからこそ安心してキャーキャーできることもあるのよ」


そんな軽口を言い合いながら私たちは舞台脇に下がる。

最後に軽く身なり整えて挨拶をしたら今日の公演は終わり。


今回やっていた演目の最終公演。

見事に大盛況だったわ。いつものことだけど。


自分じゃない誰かを演じて、知らない世界を体験してお客さんが喜んでくれて。


軽く着替えてメイクや髪も整えて再び上がった幕の中で頭を下げる。


鳴り止まない拍手に歓声。

大成功以外ありえない。


ああ、幸せ。



再び降ろされた幕はなんだか少しもの哀しげ。

もちろん幸福感のが大きいけど。



「お疲れ様〜、お先に〜」


「あ、クレアちゃんおつかれ〜」

「お疲れ様です!」

「嬢ちゃん気をつけて帰ってくれよぉ」



かけられる声にはーいと返事をして裏口から出た私は止まっていた馬車に乗りこんだ。


「おかえりなさいませお嬢様」


中には私付きの侍女、幼い頃から面倒を見てくれているチェルが乗っていてすぐに私の荷物を預かってくれる。


公園の最終日はいつにも増してファンがくれるプレゼントが多い。

ここまで1人で運ぶのも大変だったの。


「ありがとう、チェル」


「お花がいっぱいですね。あら、これはレイヴィス伯爵領名産の花たちではありませんか。王都ではあまり見かけませんのに珍しいですね」


「前に私の出身地を言ったことがあるから、覚えてくれているファンがいたのね」


お忍び用だから外観はシンプルなどこにでもありそうな馬車だけど、中の座席やドアにはレイヴィス伯爵家の家紋が象られている。


王都で有名な今1番人気と言っても過言ではない劇団で、有難くも花形役者なんて呼ばれている私はレイヴィス伯爵家のご令嬢であったりする。


クレア・レイヴィス。


劇団ではただのクレア。


男でも女でもいる珍しくもないこの名前では役者と伯爵令嬢を結びつける人はほとんどいない。


貴族の令嬢が仕事を、しかも庶民に混ざって演劇をやっているなんてあまり褒められた行為ではないの。


私自身は偏見もなければ役者に対しても尊敬の念を持っているけれど。


貴族社会の中だけでいえば恥でしかない。


だから一応お忍びで、ね。



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