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音楽

作者: ガイア

私が初めてイヤホンをしたのは、中学二年生の頃だった。百均のイヤホンを、安売りしていたCDプレーヤーに繋ぎ、「踊る大捜査線」のサントラを聴いた。その時の興奮は今も忘れない。頭の中で音楽が流れているような不思議な感覚を、初めて味わった。モジュレーションで右左に動く音が特に面白かった。その頃から、今まで興味を持たなかった音楽に目覚めた。


音楽の目覚めが、純粋に音の面白さによるものだったためか、今でも、どの曲を購入するかの選択は、歌詞が気に入るかどうかよりも、音が面白いかどうかを重視する傾向がある。当時、特に機械的な打ち込みの音や、ノイジーなギターの音が入ったインダストリアルメタルやテクノ、パンク、グランジなどの洋楽のロックを好んで聞いていた。歌詞の意味は、和訳を見ながらでなければ良くわからなかったが、自分にとって歌詞は、さほど重要ではなかったので、ほとんど、音の面白さだけを楽しんでいた覚えがある。

 

高校生になり、自作の曲を作るようになった。その当時はパソコンで曲をつくる環境がなかったため、2万円で買った、8トラックレコーダーで音を順番に一発撮りで重ねていった。その成果は、選択授業の音楽の時間や、文化祭の出し物の時間に披露した。当時は、アジアンカンフージェネレーションやバンプオブチキン、エルレガーデンなどの邦楽バンドがはやっており、文化祭での出し物といえば、バンドのコピーが主であった。そんな中で自作曲を披露するというのは珍しいことであり、どちらかというとおとなしめの生徒であった私にはかなり勇気がいった。しかし、結果、反応は上々で、ライブは盛り上がったし、「なかなか良かったよ」と言われたりもした。当時、音楽は私にとって、自己表現のツールでもあった。

 

大学生の頃も自作の曲を作ったりしていたが、正直、高校の頃のような熱量ではなかった。それでも細々と曲を作り続けた。それが何になるのかわからなかったが、とにかくそれが趣味だから仕方がなかった。この頃は、発表の場も特になかった。軽音楽部に入ろうと思ったが、オリジナル曲はほとんどしないということを聞いたので、入部しなかった。みんなでバンドを組んでするより、自分一人で完結する宅録のほうが、当時の私にとっては魅力的だったのである。

 

今でも曲は作っている。今はパソコンで作っていて、曲ができるとユーチューブやニコニコ動画で公開している。昔の私が見たら歓喜するような環境で作っている。しかし、今の私には昔の私のような熱量はもうない。昔の僕には機材がなく、熱量だけがあり、今の私には機材だけがあり、熱量がないのだ。機材と熱量の、両方があればこんなに良いことはないのであるが。熱量、というより、伝えたいことがないのだ。私にとって、音楽は「聴く」ときには歌詞は適当で良いのであるが、「作る」ときにはきちんと感情移入できるようなメッセージ、つまりは良い歌詞が必要なようである。同じ音楽でも聴くと作るのとでは大違いである。


私はそろそろ、曲を自作するのは控えていこうかな、と思っている。高校生のときには、確かに、いい曲ができた。それは青春の真っ只中にあった激しい胸の内が、自分を自然と音楽へと向かわせたからだと思う。おそらく、その時にはそういう自己表現のやり方が、合っていたのだと思う。しかし、人間の自己表現のやり方というのはたくさんある。音楽以外であれば、文章を書くとか、絵を描くとか、ただのおしゃべりだって自己表現の一つの方法になりえる。今から選択するやり方がどんなものになるのか、今からどのように、どこに向けて、自己表現をしていくのか。まだはっきりとは見えてないが、なんらかの自己表現をし、メッセージを伝えていくことは続けていきたい。


自分の思想や考えを表現するというのは、勇気のいることだが、人にそれを見てもらい、少しでも共感してもらえたときほど、嬉しいと感じられることはないのではないかと思う。人と人とは良くも悪くも影響を与え合うものだ。私は、これからは、どうせなら人と良い影響を与え合いたいと思っている。


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