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アザレアを君に贈ろう 続

作者: 柊 仁

この作品は前作 「アザレアを君に贈ろう」の続編です。

連載にしてもよかったのですが、それぞれのストーリーをしっかり分けたかったため短編にしました。

分かりづらくてすみません。

評価、レビューをしていただけたら幸いです。

変化


彼女と再会してから一ヶ月が経った。

あれから屋上に行っても渚の姿は見えることもなく、いつも通り颯太郎は一人、お弁当をこの誰もいない屋上で食べていた。

「そろそろここで食べるのも辞めようかな。

屋上に逃げていたらいつまでたってもこのままだ。」

颯太郎はあの日の渚の言葉を思い出していた。

(私は負けない)

「僕も''自分"に負けたくない!」

翌日の昼はクラスで食べる事にした。

皆それぞれグループを作って食べている。

カースト上位のグループがいつも昼に教室にいなかった僕を珍しそうに見ながら何かコソコソと喋っている。

距離がちょうど聞こえる程度の範囲だったので

その気になれば何を言ってるのか聞くことが出来るがどうせ良くない事だろうと思ったので、

颯太郎はイヤフォンを耳に付け、自分の世界を作った。

周りをチラッと見てみると沢山のグループがある中でちらほらと一人で食べている人が何人かいた。

仲間がいた...

颯太郎はほっとした。

いつも屋上で食べていたから気づかなかったが、僕のように自己表現が苦手な人もいるんだなぁ。

その日の弁当はいつもより少しだけ味がした。



友達



午後の授業が終わり帰り支度を済ませていると、教室の前の廊下を見覚えのある人物が通ったのが見えた。

「渚だ..」

その姿は一ヶ月経っても変わらず美しかった。

颯太郎は荷物を持ち一目散に渚の背中を追った。

彼女の近くまで寄ると颯太郎は走るのをやめ

速歩きで渚を追い越した。

話しかけろよ!僕!

「あら、颯太郎君。」

彼女は僕に気づいて背中に語りかけてくれた。

「ひ、久しぶりだね...」

振り向いたはいいものの、やはり恥ずかしくて彼女の顔を直視出来なかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


学校からの帰り道、颯太郎は渚と二人並んで歩いていた。

「いつも一人で帰ってるんだね」

「そうよ。こっちの方向に帰る人が周りにいないからね。でも颯太郎君がいて良かった。

誰かと一緒に帰ったのは初めてよ」

「僕も...」

「颯太郎君はどこ中出身なの?」

「東中だよ」

「東中?結構近いのね。私は隣の隣の埼央中よ」

埼央?あの付属中学の?渚って頭良かったんだ...

颯太郎は少し渚との距離感を感じた。

「でも、同じ市内って偶然ね。今まで何で気づかなかったのかしら。」

「本当だね。もっと早く出会ってれば良かったのに」

あ...

ついつい本音が漏れてしまった。

「いや、今のは違くて、いや違くも無いんだけど..あの...その...」

「そうね」

え?

「もっと早く出会ってれば颯太郎君と沢山お話し出来たわね」

渚は顔を赤らめながらも満面の笑みで颯太郎に微笑みかけた。

僕も彼女の言葉に顔が赤くなってしまった。

今だ。今しかない。

「あ、あのもし良かったら僕と、と、友達になってくれない...かな?」

渚に会えなくなった一ヶ月の間、颯太郎はこの言葉を言うためにずっとタイミングを見計らっていた。ようやく言うことができた。

「ええ。もちろんよ!」

渚は間を空けずに即答してきた。

「むしろ私は最初に出会った頃から友達と思ってたわ。一回話せば皆友達よ」

「本当に?僕なんかでいいの?」

「当たり前じゃない。それに自分の事を"なんか"

なんて言っちゃだめよ。皆この言葉を使うけど

それは過去の自分でしょ?もっとこれからの自分を見なきゃ。自信を持ちなさい颯太郎君。

あなたは"なんか"じゃないわ」

初めて自分にこんな事を言ってくれる人がいた。

今まで色んな嫌な奴に出会ってきたけど渚は違う。渚だけは僕の事をしっかり見てくれてる。

上辺だけじゃない。本当の友達。

「渚...ありがとう。もっと自分に自信を持ってみるよ」

「頑張ってね。応援してるわ」


〜〜〜〜〜〜


辺りはもうすっかり日が暮れている。

琥珀色の空にグラデーションが掛かったような薄い雲が僕達を導くようにゆっくりと流れている。

そろそろ僕の自転車が止めてある駐輪場だ。

「僕、ここから自転車だから..」

渚に別れを告げようとすると彼女は

「そう。じゃあ乗せてって」と当たり前のように言った。

「どうせ同じ市内なんだし家は近いでしょ。」

「まぁそうだけど...周りの人に怒られないかな?」

「真面目か!」

「いいから早く!」

「わ、分かったよ..」

渚を後ろに乗せ、僕は大きな坂を降りて行った。

パン屋のいい匂いがする。

「とてもいい匂いがするわね」

渚が後ろから話しかけてきた。

「うん。ここは僕の行きつけの店なんだ」

「へぇ〜。今度行ってみようかしら!よかったら一緒に行く?」

「行こう...行きたい」

「よし決まり!いつにする?…………」

そんな会話をしながら僕達は夕暮れの帰り道を走った。

彼女の家に送り届け、颯太郎は一人になって自転車を漕いでいた。

「今日は…楽しかったな…」

いつもより速いペースで颯太郎はペダルを踏んだ。

この夕暮れの空とパン屋の匂いを僕は一生忘れないだろう。




この作品を読んでいただき誠にありがとうございます。

僕は、小説家を目指してこのサイトに作品を投稿しています。

まだ高校生で未熟な点もありますが、応援していただけると嬉しいです。

最後にもう一度、読んでいただきありがとうございます。

次回作も楽しみにして下さい。

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