学校祭
「はい!」
「よーし!
じゃあもうそろそろチャイムが鳴るから相瀬も、もう戻りなさい。
先生も5時間目の授業の準備しなきゃいけないし」
「はい!
お時間取らせてしまってすみませんでした」
「いえいえ。
じゃあ残りの授業頑張れよ!」
「はい!
では、失礼致しました」
そう言って軽く礼をして職員室を後にした。
―放課後―
料理部にて私たちは作ったクッキーを頬張りながら学祭について談笑する。
「ミッピたちのトコ、学祭で何やんの?」
紅茶をすすりながら実果が言う。
お互いの呼び名についてのエピソードを説明すると、部活初日の後に実果たちと一緒に帰りながら話している時に、"お互いの呼び名をもっと簡単なものにしよう"と言う事になったのだ。
それで実果の事は実果、二瓶さんの事は瓶ちゃん、のどちんもそのままのどちんで、私の事はのどちんが呼んでるようにミッピって呼んでもらうと言う事に。
あの日は一気に友人が増えたみたいで嬉しかった。
「私たちの所はハロウィンの森を作ることになったよ」
そう言うと
「ハロウィンの森?
…って何?」
やっぱりそうか。
そうだよね、この時代でハロウィンはまだ知名度が低いもんね。
「あのね、言葉だけじゃ説明し辛いんだけど、オレンジの南瓜に顔が描いてあるお化けの絵って見た事ある?」
「オレンジの南瓜に顔?
ん〜…いや…分かんない」
実果が首を傾げて斜め上を見ながら言った。
「多分ね、一度はどこかで見た事があると思うんだよね。
…んでその南瓜のお化けがシンボルになってる様なイベントなんだけど、簡単に言うならば西洋のお化け屋敷みたいな物だと思ってくれれば良いかな?」
「へぇ〜結局良く分からなかったけど、お化け屋敷なんだね?」
「うん、大体そんな感じ。
もし良かったら学祭当日にB組に見に来てよ!」
「うん、じゃあそうする」
「実果のクラスは何やるの?」
とのどちんが言う。
「実果のクラスは何か適当なゲームコーナーになったよ。
適当にペットボトルボーリングとか輪投げとか作る予定になってるよ」
なるほど定番物なんだね。
「なるほど、そうなんだ。
ビンちゃんの所は?」
ビンちゃんにも話題を振る。
「あぁ、うちんとこは給食ランキングコーナーをやるよ」
「給食ランキング?
それってどんなの?」
実果が首を傾げながら言う。
「うんとね、まず全学年のクラスに軽いアンケート用紙を配るんだよね。
それで今まで出た給食の中で何が1番好きだったかのトップ10を普通のメニュー編とデザート編に分けて、クラス毎にランキングをつけて貰うの。
そしてそれを集めてその中で票が多かった順にランキングにつけていって全学年の中でのトップ10を決めるの。
そのトップテンにランキング入りしたメニューを段ボールとか何か適当に使って模型を作るって言う感じかな」
「へぇ〜…凄いね。
全校って事は2年生とか3年生とかもって事でしょう?
何か大変そう…」
実果が目を丸くして言う。
「うん、アンケート用紙は担任がコピーをとって、各学年のクラスの先生に渡しといてくれるって事になったから、そんな大変って事もないかな?
あとは各クラスで帰りのHRの時とかに多数決で適当にトップ10決めて書いてもらって集めるだけだし」
まぁ生徒はそこまで負担じゃなかったとしても、それを全学年のクラスの担任にお願いする担任の先生が1番大変かもね。
まぁ瓶ちゃんのクラスがそれで良いと言う事に決まったのなら、担任の先生もそれを承知の上で引き受けてくれたのだろうから問題は無いのだろう。
「ほぇ〜…なるほどねぇ。
何か皆んな大変そう。
実果のクラスは楽そうな感じだから良かったぁ」
と他のクラスは他人事という露骨な反応を示す実果。
「まぁ私たちのクラスも作る物いっぱいあって大変そうではあるんだけどさ。
今年は運良く皆んながハロウィンに興味を示してくれる人達だったから、結果的に好きな事をやらせてもらえる事になったから色々楽しみでもあるんだよね」
「そうなんだ。
何かそう思える物があっていいなぁ〜って思うよ。
実果はどっちかと言うと展示系の物とかよりも、ステージ系の方が好きだからさぁ」
「へぇ〜…!
じゃあ来年と再来年はステージをやるだろうから楽しみなんじゃない?」
とのどちん。
「うん!
来年はステージに実果が出たら良いと思うよ!
まだ何やるか分かんないけど…」
と瓶ちゃんも。
「ん〜…でもどうしよう?
仲良い人とかが一緒に出てくれたりしたら出ても良いんだけど…って感じかなぁ。
特に親しくもない人達の中に実果が一人ポツンと入るのはなんかやだ」
「まぁまぁ、まだ来年の事は分かんないからね…」
と瓶ちゃん。
実果がステージ派だったのは意外だった。
実果って見た目は麗しのお姫様みたいな感じのゆるふわキャラのように見えて、話してみたら実は結構アクティブな性格をしてるよね。
色々と談笑している間に綺麗にクッキーを食べ終えた私たちは、片付けをして帰った。
そうして翌日から文化祭の準備に勤しむ怒涛の日々を過ごしたのであった。
―文化祭前夜祭―
朝のHRを終えた後、椅子を持って体育館へ移動。
その後生徒会の文化祭進行役の方や校長先生より、初めの挨拶等々を終えて学祭は始まった。
今日は主に2年生の演劇と3年生の2クラス分のステージを観るのがメインの前夜祭だ。
2年A組から順番に演し物を観ていく。
ロミオとジュリエットや麗しのカルパチア号、竹取物語などなど様々な演劇を観た後、3年生のバンドやダンスといった演し物を観てこの日1日は終了した。
教室に戻った後、放課後の時間を使って私たちは明日へ向けての展示物の準備に取り掛かる。
配置図を参考にそれぞれのオブジェを設置する。
先生に用意して頂いたマルチタップにライトのコンセントを繋ぐ。
先生が暗幕の取り付けを手伝ってくれる。
準備も皆でやれば早い!
思っていたよりも早く物の設置は完了した。
暗幕の取り付けを終えた先生が踏み台にしていた机から降りて
「よし!
一旦教室の電気を消してライトを点けてみよう!」
と指示を出したので、各々のスイッチの近くにいた人が
「はい、じゃあ教室の電気消します」
「ライト点けます!」
とそれぞれ声を掛け合い実行した。
教室の暗闇の中、ジャック・オ・ランタン、お菓子の家、お墓にゾンビ、様々なオブジェがライトに照らされて美しく輝いた。
「おぉぉぉぉ!!!」
感嘆の声を上げる私たち。
そしてその直ぐ後に"パチパチパチパチ"とあまりの感動に思わず拍手をした。
皆も同じ状況だったようで誰に指示される事も無く、教室中で拍手が巻き起こった。
「よし!
じゃあライトを消して教室の電気を点けて!」
との先生の指示にて教室の電気が点けられた。
「素晴らしい!
皆んな、本当に良く頑張った!
本番は明日だから、今日はもう早めに帰ってゆっくり休んで下さい。
物を壊したり倒したりしたら大変だから、今日はもう教室には入らないで速やかに帰宅して下さい。
明日は朝8:40までに直接体育館に集合です。
あと明日は給食は出ないから、先日購入した食券をちゃんと忘れずに持って来るように!
そして食券買い忘れてしまった人に関しては、明日ちゃんと財布を持って来るように!
本当は先生の個人的な意見としては、落としたとか盗まれたとかトラブルの元になりやすいから持って来ない方が望ましいとは思うんだけど…。
学校の方針としては明日は持って来て良いって事にはなっているので持って来ても良いけど、ちゃんとトラブルにならないようにしっかり自己管理するように!
じゃあ先生の方からは以上です!
皆んなお疲れ様でした!
明日に向けてゆっくり身体を休めて下さい。
じゃあ、起立は皆んなもうしてるから…礼!
はい、解散!」
私たちの学校では学校祭の当日だけは財布を持って来て良い事にはなっている。
理由は先程先生が説明したように食券を買い忘れた人用と言うのが一つ目で、もう一つは予め購入した食券だけでは足りなかったと言う人用にだ。
買った食券の分だけでは足りないと言うのは、育ち盛りの男子にはよくある事なのだろう。
一応私も明日は小銭入れに1000円くらいは入れて来る事にしよう。
勿論私も食券は予め購入してある。
そして仮に買った食券の分だけでは足りなかったとしても、お小遣いを使うのは勿体ないので追加で何かを食べようとも思わないが、一応念の為だ。
それに食券を購入する時に、予めドーナツやシュークリーム、ケーキセットなどのお菓子系の物を多めに頼んで親の懐から出してもらっているので、足りないと言う事は恐らく無いだろう。
仮に食べ切れなかったとしてもシュークリームやドーナツならば、恐らく袋詰めで売られてるはずなので持ち帰りが可能だろう。
だが一応何かあった時の保険の為に1000円くらいは手元にあった方が良いだろう。
私は解散した後、のどちんと一緒に帰った。
―文化祭当日―
昨日の先生からの指示通りに朝から体育館に集合し、昨日体育館に置いていった椅子に腰掛け、昨日観きれなかった残りのクラスの演し物を観る。
約3時間後、全てのステージは終了した。
そしてこの後の自由行動についての説明と、ステージを担当した2、3年生への労いの言葉があり、その数分後全員一時解散となった。
席を立ってのどちんの所へ行く。
のどちんも椅子から立ち上がって
「ん〜…」
と言う声を出しながら軽く伸びをした。
「うふふ…ずっと同じ姿勢だったもんね」
軽く笑いながら言うと
「うん。
もうお尻と背中が痛いよ」
とのどちんが言った。
私たちは歩き出して、体育館を出ながらこの後どういう順番で周って行くかを話し合う。
時計を見ると今はちょうどお昼時だ。
「どうする?
今ちょうどお昼だけど、早速何か食べに行く?」
私がそう聞くと
「うん、それでも良いよ。
食券何持って来た?」
のどちんがそう言いながらポケットから財布を出し、中から食券を取り出した。
私ものどちんに倣って小銭入れを出し、その中から食券を取り出す。
「私は柏うどんとその他ケーキセットとかのスイーツ」
そう言ってのどちんに食券を見せた。
「あ!
私もうどん!
一緒だねー!」
「あ!
本当!
じゃあ早速うどん食べに行くかい?」
「うん!
行こう行こう!」
恐らく私たちがいつも部活で使っている家庭科室が食堂になっているだろう。
ガスコンロがある場所はあそこしか無い。
私たちは家庭科室へ向かった。
食堂の方は既に準備万端のようで、もう父兄の方々が出入りし、利用しているのが見えた。
今ちょうどお昼時の為か室内は混雑している。
適当に空いた隅っこの席でもあったらパッパと場所取りをしないと、私たちがうどんにありつくのは難しそうだ。
「混んでるねぇ。
どうする?」
室内の隅の方に立ち尽くしながらのどちんが言う。
「他回って来てから食べても良いけど、どっちにしてもうどんとか蕎麦食べる人は皆んなこっちに来るから今日はずっと空かないよね、多分…」
「まぁまぁ…そうだよね」
「どこか2人分の席が空いたら1人は席取りして、1人ずつうどん取りに行かない?」
「うん、それが良いね」
私たちが話している間に食べ終えて席を立った人がいたので、私は急いで席を取った。
「のどちん!
こっちこっち!」
呼びかけながら手招きをしてのどちんを呼ぶ私。
「あぁ!
ありがとうミッピ」
「私ここで席取ってるからのどちん先に行っといで!」
「あ、先良い?
本っ当ありがとう!!」
そう言いながらのどちんは手の平を合わせる。
「いえいえ」
のどちんはうどんを取りに行った。
そして暫し後にトレーにドンブリを乗せて戻って来た。
「ミッピ留守番ありがとう。
私ここで待ってるからミッピも行って来な」
そう言ってのどちんはトレーをテーブルに置いた。
「じゃお言葉に甘えて私も行って来ようかな?」
「うん、行ってらっしゃーい」
留守番をのどちんに任せて私もうどんを取りに行った。
受け取り口が混雑している中、暫し並んでようやく手元に柏うどんが届いた。
うどんのおつゆ特有の何とも言えない食欲を刺激する醤油ダレの匂いに反応して、私の胃袋もグゥグゥと音を立てた。
早く戻って食べよう。
私は急ぎつつもつゆが溢れないように、そっと席まで運んだ。
テーブルにうどんを置いて椅子に腰掛ける。
のどちんはもう食べ始めていたようで"ズズズッ ズズッ"とうどんをすする音が聞こえた。
私が戻って来た事に気付いてこちらのドンブリを見るのどちん。
「柏うどんって鶏肉だったんだ!?
柏って何だろってさっきずっと思っていたんだよね」




