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どちらの意味?

 私が言い終わると


「廊下側の方から回していくので、順番に見て行って下さい」


 と実行委員の人が廊下側の席の人へ本と配置図を渡す。

 皆んな順番に見ていく。


 窓側の最後の席の人まで行き渡った所で実行委員の人が


「最後の席の方まで行き渡ったと思うので、そろそろ決を取りたいと思います。

 相瀬さんの意見のハロウィンがいい人」


 おぉ!

 推定半数近くの人が手を挙げてくれている。


「普通のお化け屋敷が良い人」


 パラパラと手が挙がる。

 やっぱり全員に伝えるって言うのは難しいよね。


 この時代にスマホがあればもっと楽に、もっと明確に伝えられたんだろうなと思うけど、こればかりは仕方がない。


 それでも半数以上の人には何か良さを伝えられたのだから上出来である。


「カラオケコーナーが良い人」


「……」


  などと昨日挙がっていた候補を順番に実行委員の人が聞いて行く。

 そして


「ハロウィンが16人で、普通のお化け屋敷が8人、腕相撲部屋が4人で、ゲームコーナーが2人でした。


 多数決で今年の演し物はハロウィンに決定しました。


 題名は相瀬さんが考えてきてくれた"ハロウィンのお菓子な森!?"で良いですか?

 他に何か意見がある人、質問がある人がいたら手を挙げてください」


「……」


「特に何もないようなので、ハロウィンの"お菓子な森!?"に決定しました。

 配置図に書かれている段ボールなど、用意できそうな材料は皆んなで少しずつ協力して持って来て下さい。

 …と言うことでHR終わります」


 実行委員が席に戻ったと同時に先生と交代。


「演し物の白紙とかセロファン紙等々については先生の方で何とかします。

 ただ暗幕については理科の先生に借りられるかどうかを聞いてみなきゃまだ分からないので、借りられなかった時どうするのかを考える必要があるな。

 だから明日までに1人ずつ何か案を考えておいて下さい。

 それと相瀬!」


「はい」


「先生もさっき配置図を見たけど、もう少し材料についての詳細が知りたいから、後で先生の所に来て下さい」


「はい」


「じゃあ先生の方からは以上です。

 皆んな気をつけて帰って下さい。

 日直、合礼お願い」


「起立!

 礼!」


 日直が合礼をかけ、皆んな解散となる。

 荷物をまとめて机と椅子を下げた後、私は先生の所へ向かった。


「材料についてなんだけど、ここに書いてある材料だけで本当に大丈夫?

 あと他に先生の方で用意しなきゃいけないものはない?」


「う〜ん…そうですねぇ…。

 多分大丈夫だとは思うんですけど、強いて言うならばちょっとした飾り付け用に、何色か色の入った画用紙とかがあってもいいと思います。


 B5〜A3サイズくらいの適当な大きさがあれば良いかと思うので。


 あとは…絵の具とかも私が持ってくる分だけじゃ足りない可能性があるので、皆んなに少しずつ持ち寄ってもらうか、不足する都度先生の方で絵の具を用意して頂く形になるかと言う所ですね。


 こればっかりは作ってみない事にはどの色が不足するかも分からない所でもありますし、暗幕の有無によっても作る物の内容が変わってくる場合もあると思うので、今の状態ではまだ何とも…」


「そっか…。

 じゃあ絵の具に関しては今はまだ保留にしておく事にして、俺が用意するのは白紙とセロファン紙と画用紙だけ?」


「あとはクリスマスライトを借りられる方がいないか先生の方からも誰かかれか、他の先生方に聞いて頂いても宜しいですか?

 私の方からもクラスの人たちに明日、借りられないかどうか聞いてみます」


「おぉ!

 色々ありがとな、相瀬。

 今回の案件、お前の発想が凄く面白くて先生感動したぞ!」


 和泉首相かよ!とツッコミたい所だけど、褒められると言うのは素直に嬉しい。


 とはいえ…実際には私が凄い訳では無く、未来を知っているからこそ出来たアイディアだからやや複雑な気持ちではあるんだけどね。


「ありがとうございます!」


「しかもこんなに配置図とか具体的なものを用意してきたやつ初めて見た。

 相瀬は本当に頑張り屋さんだな!


 勉強も頑張ってるし、球技大会の時も怪我したりする程頑張ってたもんな!


 何にでも全力でぶつかって完全燃焼しようって言う考え、先生は好きだぞ!

 いつでも応援してるから頑張れよ!」


 いや…まぁ怪我をしたのは別に一生懸命だった訳ではなく、単に自分がトロ臭かっただけと言うか…。


 単にボールに当たるのが怖くて必死に逃げていただけと言うか…とにかくあの時は単なるアクシデントだったに過ぎなくて…。


 今思い出すと、いやはや…何とも恥ずかしいところを見られてしまったものだ。


 だけどあの怪我のお陰であのパラダイスタイムを味わう事が出来たのだから後悔はしていない。

 むしろラッキーに感じているくらいだ。


 それはそうとしても、褒められると言うのは素直に嬉しいですね。

 嬉しすぎて今にも目眩がしてきそうだ。


 しかもその"好きだぞ"は果たしてどっちの方の意味なのでしょうか!?

 likeですか!?

 それともlov…ブフッ…!!


 考えただけで鼻血がほとばしりそうである。

 お…オホン…!

 できれば後者の意味だった方が私としては至極嬉しい所なのだが、まぁ…現実的に考えたらそんな訳ないですよね…。


 だがしかし!

 先生が笑ってくれるのならば、私はいくらでも頑張りますとも!!!


 ですから今後とも是非是非、応援よろしくお願い致します!!!


「そう言って頂けると凄く励みになるので、今後ともご声援お願い致します!」


 私が軽くガッツポーズをしながら言うと


「そうか!

 よし!

 じゃあこれからも先生、全力で応援するからな!

 頑張れよ!」


 先生もガッツポーズで返してくれる。


「はい!!」


「じゃ、今日のところは話はこれで終わりです。

 気をつけて帰れよ」


「はい。

 では、さようなら」


「ん!

 さようなら!」


 お辞儀をして私は職員室を後にし帰宅した。


 ―翌日―


「おはようミッピ…って、その段ボールどうしたの?」


 昨日、塾の帰りにオールインワンで貰って来た段ボールの束を見て驚愕の声を上げるのどちん。


「うん、昨日HRの時皆んなで少しずつ段ボールを持ち寄る事になってたじゃん?

 だから昨日の塾の帰りにオールインワンで貰って来たの」


「へぇ〜偉いねぇ。

 私すっかり忘れてたわ!」


「まぁまぁ。

 のどちんも思い出した時で良いから、段ボールをどこかで貰って来てくれると助かるよ。

 1人1つ持って来てくれるだけでも凄く大助かりだから」


「本当!?

 そんなもんでいいの!?」


「うん、だってクラス全員で30人いるじゃん?

 1人1枚持って来てくれたら合計で30枚も集まるわけじゃない?


 勿論、それだけじゃあ総数としてはまだ足りないかもしれないけど、例えば1枚も持って来なかった人が半数いたとしたら?


 誰か一部の人間がその不足分の15枚を持って来なきゃいけなくなる訳じゃない?


 それを考えたら一人たったの1枚持って来てくれるだけでその負担を誰もしなくて済むようになるのだから、1人の1枚が凄く大切なのよ」


「確かに!

 1人で15枚とか重たいし、持ってくるだけでも一苦労だよね」


「でしょ?

 だから1人1枚でいいから確実に持ってきて欲しいなぁって切実に願ってるよ」


「分かったわ!

 私明日は頑張って持って来るわ!」


「ありがとう!

 …とそういえばのどちんにちょっと聞こうかと思ってたんだけど、のどちんの家ってクリスマスライトある?」


「ん?

 クリスマスライト?

 …ってあのツリーにぐるぐる巻きついてて点滅するやつ?」


「うん、それ!

 点滅しないタイプの物でも全然良いんだけど、ある?」


「うん、あるけど」


「それ、学祭の間だけ貸してもらうって事はできる?

 …というか貸して下さいって感じなんだけど」


「どうだろう?

 ちょっとお母さんに聞いてみないと分かんないな」


「聞いてもらっていいかい?

 貸してもらえるんだったら貸して欲しい。

 学祭終わったらすぐ返すから!」


「うん、分かった聞いてみるね。

 ミッピの家はクリスマスライトないの?」


「うん、うちはツリーすらないよ。

 親が"そんなもん1日ですぐしまうんだから、無駄なものを買わなくたっていいんだわ"ってさ」


「え"…マジ!?

 あ…でもクリスマスはやるんでしょ?」


「うん、まぁ一応親がスーパーで鶏の足とかケーキは買ってきてくれるから気持ち食卓が豪華にはなるよ」


「そっか。

 まぁ確かにツリーなんてすぐしまうから、無くても良いといえば無くても良いよね。

 うちも毎年お母さんが"出してもいいけど、片付けるのが大変なのよね"って言ってるもん」


 良いじゃない!

 出してくれるだけ優しいと思うよ。

 私だったら出すのも片付けるのも両方面倒臭いと思うもん。


 大切に育てられてる証拠だよ、のどちん。

 たった1日で片付けてしまうような物を()()()()()()、お母さんは労力を払って用意してくれてるんだよ。


 愛されてるじゃないか。

 お母さんに感謝しなさい。


「そうでしょう?

 お母さんにありがとうって言わないとね」


「あははは!

 ミッピってばなんか真面目〜。

 でもそうだよね、考えてみたらそうだわ!

 お母さんにありがとうって言っておくわ!」


 屈託なく笑いながらのどちんは言った。


「うん、きっとお母さんも喜んでくれると思うよ」


 一通り話を終えたところでチャイムが鳴った。

 そしてその後クラスの人たちにクリスマスライトについて聞いて周り、7人の人が貸してくれることになった。


 休み時間中に先生にその事を報告しに行った。


「おぉ!

 そんなに集まったんだ!?

 流石!

 んで一応な、先生の方でも聞いてみたところ、3人の先生からOK頂けたんだけど、どうする?


 7本クラスで集められてて、それで足りるって言うんだったらそれでも良いと思うし、どうする?」


「そうですねぇ…全部をランタンに使うって事はないと思いますが、ランタン以外の装飾…例えばお菓子の家もそうですし、出口近くに作成予定のお墓やミイラにライトを仕掛けてもいいかなと考えてます。


 折角作ったものが暗闇で見えないのは少し勿体ない気がするので、理想言うならば全部にライトを仕掛けて、全部見えるようにしたいなとさえ思っているくらいなので、可能な限りライトは欲しいところです」


「そうか。

 よし!

 分かった!

 貸してくれるって言ってくれた先生方には先生の方から話しておく!

 あとは何か必要なものはないか?」


「ライトを繋げるマルチタップが何本かあるといいですね。

 少なくともライト10本分の電源が必要になるので」


「ん!

 わかった!

 あとはないか?」


「今のところ思いつくのはそのくらいですね」


「ん!

 分かった!

 マルチタップは先生がなんとかしよう!

 先生、ライトは持ってなくて協力してやれなかったからな。

 マルチタップくらいは先生に任せてくれ!」


「ありがとうございます。

 先生はクリスマスに彼女さんとツリーを眺めたりして過ごしたりしないんですか?」


「え?

 俺、彼女いるって言ったっけ?」


「まぁ言ってはいませんでしたけど、入学式の日の自己紹介の時に"いない"とは言いつつも、にやけ顔をしていたからてっきりいるのかと…。

 でも違ったのならすみません」


「お前…本っ当鋭いな。

 まぁ…確かにあの時はいた…」


 恥ずかしそうに目線をずらしながら先生は言った。


「…と言う事は今は…」


「…っとに、うるせーな…。

 いないよ」


 そう言って先生は開き直るように笑った。


「先生が振ったんですか?」


 なかなかこんな会話をできるチャンスは滅多に無いので、ズケズケといやらしいなと自覚をしながらも私は聞いた。


「うるさいなぁもう!

 振られたんだよ!」


「いつ?」


「…こないだの夏休み中に…」


 へぇ〜…。


「何故?」


「知らない!

 …ってお前はそんな事知らなくていーの!

 恥ずかしいからクラスの奴らに喋んなよ?」


 どうして世の中って上手くいかないのだろうか?

 もしも願いが叶うのならば、私がその彼女になりたい。


 私だったら絶対に振ったりなんかしない。

 だけどどんなに願ってもこの願いだけは、きっと絶対に叶ってなどくれない。

 人生って本当に不条理だ。


「ふふ…分かりました」


 私は笑顔で返した。

 私の気持ちが実るわけじゃないのを理解はしていても、どこかで先生がフリーになったことを喜んでしまう自分がいた。


 それを自覚してしまう度に、自分の心の醜さに背徳感を感じずにはいられなかった。


 先生には幸せでいて欲しいし、幸せになって欲しいとずっと昔からそう願っていたはずなのに、人間の心とは何と複雑なのだろうか?


「うん!

 じゃそういう事で、来週から学校祭の準備期間に入るから頑張ろうな!

 先生も出来るだけお前たちを手伝ったり、サポートしていくつもりだから、皆んなで一緒に頑張ろう!」


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