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お前らには俺がいる!

 いつかは先生から卒業しないといけないのだ。


「お褒め頂いて光栄な所ですが、今回の件で先生が院多先生からお叱りを受ける事になってしまったのは事実なので、申し訳ありませんでした。


 私が好き放題言ってしまった事が原因で、こうして先生にご迷惑をおかけする事になってしまった訳ですから…」


「ううん、良い良い。

 俺なんか大した迷惑かかってないから気にすんな!

 それに子供なんてなぁ、大人に迷惑かけてナンボだぞ?


 さっきも言ったけど、俺はお前を怒るつもりで仲裁に入ったわけじゃないから…」


「いえ…そうだったとしても…」


 私が言いかけた言葉を(さえぎ)って先生は


「相瀬、聞きなさい」


 とジッとこちらを見て言った。

 そんなにジッと見られると少し気まずいですよ…。

 先生が私を見てくれるのは凄い嬉しいんだけど…。


「はい」


「どうして俺がお前と院多先生の言い合いを止めたか分かる?」


 …え"!?

 予想外の質問に私は戸惑った。


 先生の性格上、自分の保身の為とは考えにくい。

 私は先生の性格を多少は知っているつもりだ。


 何せAの世界で自分の身を(てい)して虐めに遭っていた私を守ろうとしてくれた人なのだから。


 そんな人が保身を考えるとは思えない。

 ならば何故なのだろうか?

 何故止めたのか。


 醜い争いが嫌いだからか…?

 それとも…私と院多のどちらかに同情したからか?


 …分からない。

 いずれにしても先生は優しい人だから、争いは好まないはずだ。

 だから自分の身の回りで争いが起きて欲しくなかったのだろう。


 誰かが争うくらいなら自分が犠牲になってでも、争うことをやめて欲しいってことだったのだろうか…?


「…争って欲しくなかったから…でしょうか…?」


「う〜ん…まぁそれはそうなんだけど…50点だな、その答えは」


「…そうですか…」


「じゃあ、何で争って欲しくないと思う?」


 ゔ…ゔ〜む…。

 ここへ来てまたよく分からない質問が来てしまった。

 何故争って欲しくないか…か…。

 ゔ〜ん…やっぱり争いは醜いからなのか…?


 でもそんな単純な答えなのだろうか?

 やっぱり先生の考えている事は私にはまだ読めない。


「争いは目に余るから…でしょうか?」


「残念、不正解です。

 答えは、あのまま言い争っていても誰も幸せにならないから…だ。


 あのまま"侮辱した""侮辱してない"って言い続けてても水掛け論でしかないし、どれだけ言い合いを続けても話は前に進まなかったと思う。


 討論を続けて話が良い方向に進むんだったら、先生はあのまま黙って見守るつもりだった。

 でもそういう雰囲気じゃなかっただろう?


 あのまま続ければ続ける程、お互いがもっと気分悪くなっていくだけだっただろう?


 周りでお前たちの事を見ていた先生たちだって、良い気分だった人は誰もいなかったと思うよ。

 だから俺は止めました」


「すみませんでした…」


「ん?いやいや…。

 何度も言うけど俺は怒ってないからな、全然。

 それにこれも何度も言うけど、お前のした行為が悪いとも思ってないよ。


 お前の意見はごもっともだと思うし、お前の考え方や意思はこれからも貫いて欲しい。

 自分の思いや意見をハッキリと相手に伝えられると言う所はお前の長所だと思うし。


 院多先生に俺はああいう言い方をしたけど、ああやって言わないとあの場では誰も納得しなかったでしょ?


 とりあえずって言ったら言い方が悪いけどさ、院多先生の方は形上(かたちじょう)かもしれないけど、あれで納得はしてくれたからさ。


 でもあのまま終わるだけだったら、今度はお前が納得出来ないだろうなって思ったから、お前が納得いくまで俺で良ければここで話を聞くよって事でお前をここに呼んだ訳でさ」


「ありがとうございます」


 凄く気を使わせてしまったな。


「ん!

 どういたしまして。

 …でお前は言いたい事は全部言えた?」


「はい」


「そっか。

 なら良かった。

 お前らには俺がいるんだから、どんどん頼れ!

 その為に俺がいるんだから、な?」


 ますます惚れてしまうわ♡

 そりゃモテますわな!

 モテる理由が分かるわ!

 そりゃあ女が放っとかないよ。


「先生は本当に優しいんですね。

 ありがとうございます!」


「ん!

 良いよ、良いよ!


 それよりお前、結局部活どうすんの?

 料理部には入らないのか?」


「う〜ん…。

 まぁ丘図先生とは特に揉めた訳では無いんですけど、院多先生と争っていた所は見ていたし、聞いていたと思うので…やめておこうかなぁと…」


「何でよ?

 別に良いだろ、丘図先生とは揉めて無かったんだよな?」


「まぁ…そうですけど…。

 私の様な跳ねっ返りみたいな人を入部させると、もしかしたら今後何かご迷惑をおかけするかもしれませんし…」


「そんな事ないだろ」


「先生は先程大人に迷惑をかけてナンボだって優しい言葉をかけて下さいましたけど、皆んな誰もが同じく考えてる訳では無いと思うので」


「言われてみればそれもそうだったな…。

 …じゃあさっきはああやって言ったけどさ、俺には迷惑かけても良いけど、他の先生には迷惑かけたらダメだぞ?


 って言い直しておくわ!

 まぁ、お前ならわざわざそんな事言わなくても分かってるだろうけどさ…」


「いつもご信頼を寄せて頂き、ありがとうございます。

 …と言う事でまぁそう言う事なんですよ。

 なので入部の話は見送りさせて頂こうと思います。


 わざわざ時間を使って部活の説明をして下さったのに、申し訳ございませんでしたと丘図先生にお伝え下さい」


「…うん…。

 まぁお前がそう思うんだったら、しょうがないもんな。

 分かりました」


「はい」


「そっか…うん、分かった!

 じゃあそろそろ今日はこの辺でお開きにしようと思うんだけど、他に何か言いたい事はあるか?」


「いえ、先程全部聞いて頂きましたので特にありません」


「ん!了解!

 じゃあ今日はこれで終わります!

 気を付けて帰れよ」


「はい」


 私は机に置いていた鞄を背負った。

 先生はドアを開けて


「はい、お先にどうぞ」


 そう言ってドアを押さえて待ってくれる。


「ありがとうございます」


「はい!」


 先生も部屋を出てドアに鍵をかける。


「いつも話を聞いて頂いたり、何かとフォローをして下さったり、気にかけて下さってありがとうございます」


 普段からの感謝を述べる私。

 こんな機会でも無いと、ついついいつもお礼を言いそびれてしまうから。


「いえいえ。

 これからも何かあったらいつでも話しに来いよ」


 そう言って先生は私の頭をポンッと撫でた。

 わわっ…!!!

 ままま…マジ!?


 ここ…こりゃあ赤面モノですよ!!!

 う…嬉し過ぎる!!!

 照れくさ過ぎてつい俯いてしまう私。


 今日の事が無ければ、こんな機会は来なかったかもしれない!

 私を盛大に不快にさせてくれた院多に感謝をしよう。


 さっきの事はもうどうでも良いのだ!

 そう…良かったのだとも!!


「じゃ気を付けてな!」


 先生はそう言って軽く手を振って職員室へと歩いて行った。

 まだやや夢心地の気分を切り替えられない私は先生の背中をぼんやりと見つめていた。


 ―翌日―


「おはよう、ミッピ!」


「おはよう、のどちん!」


 いつものようにのどちんと朝のHR前の談笑を始める。


「昨日どうだった?」


「うん、まぁ言いたい事は一応言ったよ!」


「え〜、何て何て?」


 先生と何を話していたのかが相当気になっているようで、目をキラキラと輝かせながらのどちんが聞いてくる。


 特に秘密にする必要も無いので何となく覚えてる範囲で答える。


「うん、まずそもそも院多先生と何故言い合いに発展したのかって言う経緯を話して…。

 あとは…のどちんも昨日院多先生に私が何を言っていたのかを聞いていたから分かると思うけど、人それぞれ考え方の違いがあるからって言う話をね…」


「考え方の違いって?

 昨日何喋ってたっけ…?

 ごめん、何かあんまり覚えてなくって…」


「ホラ何かバスケ部の男子らしい人と私を比べた事が不満だって言う話よ、簡単に言えば。

 あの人はスポーツ好きかもしれないけど、私はスポーツが嫌だし…って感じで…」


「あぁ…!

 あったね、そんな話!

 あの"ホラ!"って言うの凄いムカつかなかった!?

 あの時のババァの顔よ!

 どう思う!?

 あの目つきがムカつかなかった!?」


「ブッ…!!!

 アハハハハ!!!

 やっぱりのどちんもそう思った?

 私も!!

 私、そもそもそこに腹が立ったんだもん!」


 失笑後に爆笑して私が言うと


「ね!

 本当、後ろから思いっきりカンチョーしてやりたかったもん!」


「ハッハッハ!!!

 やってごらんなさい。

 私後ろで見届けてあげるから」


「ブッ…!!!

 ハッハッハ!!!

 流石にそんな勇気無いわ!」


「あらそう?

 それは残念!

 院多が悲鳴を上げるところを見てみたかったのに…」


「アハハハハ!!!

 ミッピがおやり」


「ヤダヤダ…。

 何か感染(うつ)されたらやだ!」


「うわぁ!

 酷い!!」


「ハッハッハ!!!」


「ハッハッハ!!!」


 人目を気にせず2人で爆笑してしまう私たち。

 チャイムが鳴るまで私たちはひたすら笑い続けた。


 チャイムが鳴った暫し後に、先生が到着して朝のHRが始まる。

 いつものように連絡事項を話して終了。

 そして


「相瀬と草津ちょっといいか?」


 先生からの呼び出しにて私たちは教卓の前にて先生と話す。


「昨日相瀬から料理部の話は見送りするって聞いてたんだけど、あの後職員室で丘図先生と話す機会があって先生ちょっと話をしたんだ。


 それで、院多先生はああいう考えかもしれないけど私は相瀬の意見に反対はしていないから、もし料理部に入りたいなら気にせずおいでって丘図先生が言ってくれてます。


 昨日の件はたまたまその場に居合わせたけど、私は全然気にしてないからってさ。

 どうする?」


 のどちんと目を見合わせる。


「う〜ん…」


 私たちはまだ何も考えていなかった為、言葉を詰まらせた。


「決めるのは今すぐじゃなくても良いから、丘図先生はそう言ってくれてるから、もし良かったらもう一回検討し直したらどうだ?」


「はい。

 一度検討してみます」


「私もそうします」


 とのどちんも。


「そっか。

 分かった。

 じゃあまた何かあったら俺に言ってな!」


「はい!

 ありがとうございます」


「じゃ話はそれだけです。

 次の授業頑張れよ!」


 そう言って先生は教室を後にした。

 私たちも適当に窓際に移動し部活の検討を始める。


「どうする?」


 のどちんの言葉に


「どうしようかな…?

 昨日は見送りするって言っちゃったけど、丘図先生もああ言ってくれたんだったら料理部入ってみようかな?」


「うん」


「何かしら部活には入ろうとは思ってたし、料理部ほど都合のいいクラブ中々無いんだよね。

 だって週に1回で良いんだよ?

 正に"無理なく続けよう"の王道みたいなもんじゃん?」


「まぁ…確かに。

 パソコン部は入りたくないけど、料理部だったら良いかな…?」


「じゃあ今日の夜とかに親に印貰って明日入部届出しに行く?」


「うん、それで良いよ!」


 のどちんとの話はまとまったので、今日の夜毒親に印を貰う事にしよう。


 ―翌日―


「おはようミッピ!」


「おはようのどちん!」


「入部届持って来た?」


 私が聞くと


「うん、持って来たよ!

 ミッピは?」


「うん、私もバッチリ!」


 そう言って鞄から印が押されている入部届と封筒に入れた部費の1000円を出す。


「じゃ後で出しに行く?」


「だね!」


 私たちは朝のHRが終わるまで待機した。

 そして先生の去り際に


「先生!」


 そう呼び止め


「ん?

 どうした?」


「昨日の部活のお話の件、検討し直して来まして前向きに考えようという結論になりまして…」


「…って事は?

 入るって事で良いのか?」


「はい。

 入部届に担任の先生の印が必要なので、先生お願いします!」


 そう言って入部届を差し出す。


「ん!OK!」


「先生、部費は丘図先生に直接渡した方が良いんですか?」


 のどちんが1000円が入ってると思われる封筒を見せる。


「あぁ、そっか…。

 部費もあるんだもんな!

 部費は丘図先生に直接渡した方が良いと思うから…じゃあ今ちょっと職員室に来れるか?

 2人とも」


「はい」


「じゃあ俺今印押しちゃうわ。

 だから今丘図先生に届とお金渡して!」


「分かりました。

 ありがとうございます!」


 私たちは先生の指示にて職員室へ同行し、先生に印を貰う。


「よし、じゃあ丘図先生はあそこにいるから渡して来な。

 部活頑張れよ!」


 そう言って先生は丘図先生の席の方向を指差した。


「はい、ありがとうございます!」


 私たちは先生に再三お礼を言った後、丘図先生の席へ移動した。


「丘図先生、入部届と部費を持って来ました」


 私たちは部費と届を渡す。

 先生は封筒の中身を確認して


「はい、1000円確かに頂きました。

 届の方もOKです。

 来週の水曜日の放課後に家庭科室に行って下さい。

 2年の先輩達に1年生が入るって言う話を伝えておくから」

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