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生徒指導

 のどちんがどうしよう?とでも言いたげにこちらに目線を送る。


「なんかまた巻き込んじゃってごめんね。

 私は話をしていかなきゃいけないけど、のどちんは巻き込まれただけだから、特に言いたい事が無いんだったら、私に気を使わないで先に帰ってても大丈夫よ?」


 と私も言った。


「う〜ん…、そうだなぁ。

 どうしよう…?」


 まだ気を使って私に合わせようとしてくれるのどちんに


「もしかしたら長くなるかもしれないし、まだのどちんを引っ張るのも申し訳ないからさ。


 話聞いててものどちんは退屈なだけだと思うけど…もし付いて来たいならそれを止めはしないから、のどちんがどうしたいのか決めてくれれば良いし」


「とりあえず2人で決めてて。

 俺鍵持って来る」


 先生は職員室の鍵置き場の方へと行った。

 私たちも話をしながら職員室を後にし、廊下で続きを話す。


「う〜ん…。

 じゃあ…私今日は先帰るかな?」


「うん、了解。

 ごめんね、長々と付き合わせちゃって」


「うん、全然良いよ。

 じゃあまた明日ね!

 帰るわ!」


 そう言ってのどちんは職員室の脇に置いてあった鞄を背負った。


「じゃ明日話を聞かせてね!

 じゃあね!」


「うん、また明日!」


 私たちはお互いに軽く手を振って別れた。

 そして私も鞄を背負って進路指導室へと向かった。


 進路指導室のドアの前で待機していると、先生がキーホルダーの輪に指を入れて鍵をクルクル回しながら歩いてきた。


「あ、草津帰った?」


「はい帰りましたが、何か用事ありましたか?」


「いやいや、全然良いんだ。

 じゃ、入って」


 進路指導室の鍵とドアを開けて先生は


「どうぞ」


 そう言って手招きした。

 用意されている椅子に腰掛けて先生と向かい合う。


 ヤバい…。

 そもそもあんまり良い話をしに来た訳じゃないのに、ここここ…個室でふふふ二人きり…!!!


 ブッ…か…考えただけで…今にも鼻血がほとばしりそうだ。

 ゔぅ…む…、これから話をしなくてはならないと言うのに、な…何だか緊張して来た。


 しかも真向かいに座っているし…ききき緊張し過ぎて直視出来ない!!!


「……」


 ついつい下を向いたまま俯いてしまう私。

 先生は


「怒ったりするつもりで呼んだんじゃないから、あんまり緊張しないでリラックスして話して良いからな!

 院多先生と何か言い合いしていたみたいだけど、それに関して俺は全然怒ってないし」


「ありがとうございます」


 ペコリとお辞儀をしながらチラリと先生を見ると、先生と目が合った。

 先生は私に笑いかけながら"うん"と相槌を打ってくれた。


「院多先生と何を話していたか、色々聞いて良いか?

 でも言いたくない事は無理に聞き出そうとも思わないから、言える範囲で話してくれればいいよ。


 色々言いたい事があるだろうから俺が聞くからさ!

 相瀬の不満やストレスは全部俺にぶつけて良いからな!


 お前は生徒なんだから俺の事は気にすんな!

 俺に頼って良いんだぞ!」


 昔から知っていたけれど、やっぱり優し過ぎる!!!

 また更に惚れてしまいました!!


 先生♡

 愛してます♡


「はい、何でも聞いて下さい。

 私は話し下手なので何処から話を切り出して良いか判断が付かず、先程は無言になってしまっただけなので…」


「…そうかぁ?

 お前話し下手かぁ?

 俺はそうは思ってなかったけどな」


「そうですか!?

 そう見えていたのなら何よりです」


「ふっ…、まぁ良いや。

 それは置いといて…院多先生と部活の話は上手くいかなかったのか?」


 軽く笑った後、先生は早速本題に入った。


「うぅ〜ん…、上手く行かなかったと言うか…。

 説明しようと思うと説明が下手なので、上手く説明出来るか分からないんですが、とりあえず話の経緯を聞いて下さい」


「ん!

 分かった。

 お前が話し終わるまで俺は黙って聞いてるから、お前が話し終えたと思う所で教えてくれ」


 優しい♡

 大好き♡

 彼氏になって下さい♡

 もっと言うなら将来旦那様になって下さい♡


「はい、分かりました」


「ん!

 じゃあ続けて!」


「えぇと…まず私はパソコン部について話を聞きに行ったんですが、塾と曜日がバッティングしていたので今回の案件を一度家に持ち帰ろうと考えておりました。


 そこへ家庭科の丘図先生が私たちが部活の曜日を聞いて行った所を聞いていたようで、私たちに料理部を勧めてくれました。


 料理部が存在した事自体が初耳だった私たちは、今度は料理部について丘図先生に話をそのまま聞きました。


 私の習い事ともバッティングもしないし、都合も合うし良いなと思ったので、その話の流れで草津さんと一緒に入部届けを頂く事になりまして…。


 そうしたら丘図先生の席と院多先生の席は凄く近いので、院多先生が私と丘図先生の会話を聞いていた模様で…。


 "皆んな習い事があっても、部活も上手く両立してやっているのに我儘だ"と私を鼻で笑いました。


 そこへたまたま院多先生の担当しているらしい男子生徒が現れて"僕は毎日部活もやっていて、塾も通って両立してますよ"と言った事を引き合いに出し"ホラ!!"と私とその生徒を比較し始めました。


 私は部活って義務でやるものではなく、あくまでも自主性を重んじ、任意でやるものだと思っております。


 その男子生徒は大変な思いをしてもバスケがやりたいからそうしているのであって、義務でやっている訳ではないですよね。


 あのバスケ部の男性は本人から話を聞く所によると、バスケが好きで、バスケがやりたいから、バスケをやる為に、親に言われて渋々塾に通っているそうですよ。


 ですからそもそも私と彼とでは、この時点で方針が大きく違うんですよ。

 よってその彼と同じ物を私に求めるのは、間違っていると思う訳ですね。


 私は別にスポーツをやりたいとは思いませんし、更に言うと私はそうまでして入りたいと情熱的に思える程の部活はありませんので。


 寧ろこんなことを言うと、とても嫌味に聞こえるかもしれませんが、部活よりもどちらかと言うと塾の方が好きですし、もっと言うと私は勉強って実は嫌いじゃないんですよ。


 寧ろ割と好きな方でして…普段の成績を見て頂いたらお分かり頂けると思うんですが、好きこそものの上手なれでここまで頑張って来れたんだと思います。


 勿論最初は勉強なんか大嫌いで、小学生の始めの頃なんかは毎日嫌々勉強していました。

 自分の目指す目標の為だけに。

 だけど続けているうちに考え方が変わったんです。


 続けているうちに不思議と勉強が嫌じゃなくなりました。

 今となっては寧ろ勉強しない日が1日でもあると、ムズムズして落ち着かないくらいで…。


 …と言う事で話が少々逸れてしまいましたが、そう言う訳でそもそも彼と私は優先したいものが互いに違うんですね。


 違う人間なんだから趣味趣向が違ってて当然です。

 だから私はそれを否定しようとも思いません。


 ただあくまでも私は、塾を優先したいだけなのです。

 塾を優先した上で、普段の生活に支障が出ない程度の()()()()()()()()()()()()()()と言う考え方なんですね。


 だからそもそも人それぞれ好きなものや、優先したいもの、目指している方向性が違うのに人と比べる事自体が、理不尽だと私は思いました。


 部活に専念する事が入部資格だと仰るのならば、私は部活動への参加自体を辞退させて頂きます。


 私はあくまでも塾の方を優先したいので。

 無理して部活動をする事で、無駄に疲弊して普段の生活に支障が出るのであれば、それは本末転倒だと思うし、私のやりたい事とは違うので。


 と言う事で人それぞれ方針が違うと言う事を述べた所、院多先生にはその考え方についてご理解頂けなかったようで…。


 先生の方が突然興奮をされてしまいましたので、まぁ話にならなくなってしまったと言いますか…そんな感じですね…。


 いずれにせよ南先生を余分なトラブルに巻き込んでしまって申し訳ございませんでした。


 今となって考えると、社会に出れば理不尽など掃いて捨てるほどあるのだから、私ももう少し我慢すれば良かったのかもしれません。


 ですので以後、このような事が無いように気を付けます。

 申し訳ございませんでした。


 以上です。

 話を長々と聞いて頂いてありがとうございました」


「…お前…何か色々凄ぇな…。

 勿論悪い意味じゃなくて褒め言葉だよ?

 俺自分が中学生だった時、そこまで物事を考えられなかったわ。

 お前本当に中学生か…?」


 いいえ中身は違いますけど…。

 ですがお褒めのお言葉をありがとうございます♡


「お褒め頂き大変光栄でございます」


 そう言ってお辞儀をする。


「うん…。

 まぁ…院多先生が何を思ってお前にそう言ったか俺は本人じゃないから分かんないけどさ、お前の考え方は間違ってないと思うよ。


 部活は別に義務じゃないし、無理する必要も無いと思う。

 良いんじゃないか?

 塾と上手く折り合いがつけられる部活に入ったら。


 …それにしても…お前勉強好きなのか?

 偉いな!

 凄く良い事だと思う。


 だからお前のその思想は、ずっと変えずに貫き通して欲しいと俺は思います。


 そっか…勉強を好きでやってるんだったら相瀬に関しては俺は安心しました。

 俺が一番心配だと思ってるタイプは嫌々勉強してる子の方だからさ。


 そう言う子って辛い時に辛いって言えなかったり、溜め込んだ不満を吐き出したくても、どこに吐き出して良いのか分からなくて吐き出せなかったりして、悪い物をどんどん心の中に溜め込んでいく一方だと思うんだよ。


 人間ってさ、どんなに精神力が強いって言われている人でも、我慢ばかりを続けているといつかはどこかでそのツケが回ってくると思う。

 人間ってずっと我慢ばかりを続けられる程、強くないんだよ。


 言いたいことを言えないで、ある日突然何かのタガが外れて大爆発して、法に触れる様な踏み込んじゃいけない領域に踏み込んでしまったり、何かとんでもない落とし穴に転げ落ちて行って、そのまま戻って来れなくなるような子も世の中にはいるからさ。


 人生ってさ、理想通りになんか行かないし、何でも思う様になんて行かないと思う。

 だけどさ、理想通りに行かなかったら人生全部終わる訳じゃないんだよ。

 別にいいんだよ、理想通りになんか行かなくたって。


 だってそれが人生なんだからさ。

 お前だって人生が思うようになんてならないって事くらい、分かってるだろ?」


「えぇ…まぁ…」


「だろ?

 だから良いんだよ、理想通りになんかならなくても。


 時には回り道をすることになったとしても、時には立ち止まって、肩の力を抜いて、悩んで、溜め息吐いて、考えて、それでも何か色々分かんなかったら、そういう時は難しい事を考えるのは止めてみて、何も考えずに何か楽しいことをしてみたり…そういうことも大事なんじゃないかなって先生は思う。


 俺は今、我慢のし過ぎは良くないって言う話をしているけど、もちろん我慢をしなくて良いとは言わない。


 我慢する事を学ぶことも大切だ。

 その為に学校がある!


 お前がさっき言っていたように、社会人になったら嫌な事も、我慢しなきゃいけない事も、実際に掃いて捨てる程あるさ。


 でもだからと言って、何でもかんでも我慢すれば良いとは俺は思わない。

 我慢のしすぎは良くない、それは大人も子供も同じだと先生は思う。


 それにお前らはまだ子供じゃん!

 こんな事を言ったら"子供扱いしないで!"ってお前らは思うかもしれないけどさ、俺から見たらお前らなんてまだヒヨッ子だよ。


 まだ子供なんだから我儘言ったっていいだろう?

 だって子供の特権だろう、そんなの。


 もっと泣きたいときに泣いて、辛い時は苦しいって言って、我儘言って、大人に寄っかかれ!

 今しか出来ないんだぞ!?

 遠慮すんな!


 …って他の子たちにも言ってやりたいんだけど、なかなかそんな機会もなかったからな…。

 いつか授業で時間に余裕が出来たら、こういう話を皆んなにもしたいなと思う。


 本当はな…皆んなが相瀬のように、もっと積極的に自分の意見や思いを言える子ばかりならいいんだけどな。

 色んな子がいるからさ…」


 先生は私が転生している事なんか知らないから、最初からこんな風に何でも自分で言えるようになったかの様に言うけど…かつては私も言いたい事を言えない子だったんだよね…。


 先生はきっと私を褒めてくれてるんだろうけど、心配されなくなるって何だか寂しいな…。


 だけど先生の仕事を無駄に増やす訳にも行かないものね。

 出来るだけ迷惑をかけないように、そう思って今まで頑張って来たんだから。


 ちゃんと何でも自分で解決できるように。

 そもそも私も本当はいい歳なのだから、いつまでも先生、先生って言ってられないもんね。

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