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13の昼

 「さぁ?

 知らない。

 どっかからギッたんじゃない?」


「えぇぇ〜…。

 こっちは真面目にやってんのにさ。

 ああ言う事している人がいると本当ムカつくよね!」


「本当それ!!

 バレれば良いのに!」


 と言う会話が後ろの方から聞こえる。

 それには私も同感した。


 だがそれはそれ、これはこれ。

 私たちのゴールまでの距離が縮まるわけではないので、とりあえず私たちは今は何も考えずにゴールを目指さねば。


 私たちは一心不乱に歩いた。

 だいぶ近所のところまで来た。

 ゴールはだいぶ近い。

 そして少し離れたところに那由田先生が。


「のどちん走ろう!」


「うん」


 状況を察したのどちんが素早く対応してくれる。


「あともう少しだよ!

 もうここ近所だからね!

 最後の方まで来たんだからラストスパートをかけて頑張ってよー!」


 と私たちの通りすがりに那由田が言う。

 やれやれ…。

 応援するだけの方がどんなに楽なもんか。


 ここからは学校の近所だから、あちこちに他の先生方が無駄に配備されている事だろう。

 歩かない方が良さそうだ。


「この辺は先生たちが結構いるから歩くと何か文句言われると思うから、ここからは校庭まで頑張って走るか!」


 私がそう言うと


「うん、その方が良さ気だね」


 そう言ってのどちんも了承してくれた。

 とは言ってもやっぱり走るって凄くキツい。


 早歩きの時は結構な距離を歩いてきたはずなのにそこまで息が上がらなかったが、走るとちょっとの距離ですぐにバテる。


 走る事ほど非効率的な事ってないと思う。


 あぁ…もうすぐ…学校が見えてきた。

 グラウンドが見える。

 学校ぐるりと周って裏の方から校庭に入らなくてはならない。


 そのあとちょっとの距離が何とも言えないほど辛いのだ。

 あぁこのままグラウンドに直行したい。

 などと言う衝動に駆られながら学校をぐるりと周り、ようやく校庭へ。


 石灰で引かれたラインの脇に他のクラスの担当の先生が立っていた。

 ラインを越えて私たちもゴールイン。

 66と書かれた紙と67と書かれた紙を先生が差し出してどっちに66の方を渡すのか迷っている感じだった。 


 同時にゴールしたからだろう。


「のどちん66の方をどうぞ」


 私がそう言うと


「え!?

 本当に良いの!?ミッピ!

 私はジャンケンとかで決めても良いんだよ!?」


「良いよ良いよ。

 66も67も大して変わらないし、良いよ。

 のどちんが頂きなさい」


「…ありがとう。

 本当、ありがとうね!」


 凄く喜んでもらえたようだ。


 "一緒に走ろう"


 とか言いつつも最後は容赦なく抜かして行くかなと思っていたのに、最後までその約束を守った人を初めて見たから、その貴重な体験をさせてくれたお礼みたいなものだと思ってくれれば良いかな…。


 のどちんって思っていた以上に凄く純粋で良い子だったんだなぁ。

 私は今まで以上にのどちんの事が好きになった。

 のどちんと友人になれて本当に良かったよ。


「ミッピ、本当にありがとう!

 私いっつももっと後ろの方だから今回新記録だよ!」


「私もいつももっと後ろの方だよ。

 のどちんが居てくれたから心の支えになってくれたんだよ!

 それに一人で走るよりも凄く楽しかった。

 のどちん、ありがとう!」


「…何か照れるね、こう言うの」


 のどちんとほんわかモードになっている中


「ハイ!

 友情を確かめ合っている中ちょっと申し訳ないんだけど、早く名前言って教室に戻ってくれないとここ混雑するから早くしてくれる?」


 と国語担当の恒河。

 言い方が感じ悪っ!!

 と思いながらも


「B組の相瀬です」


「B組の草津です」


 と名前を言って名簿表の自分の名前の所にチェックマークが入ったのを確認し、私達は教室へ戻った。


 家で予め凍らせてきたペットボトルのお茶はそろそろ飲み頃であろう。

 散々無駄に走らされて喉もカラカラである。


 手提げカバンから飲み物を取り出す。

 まだ溶けきってない氷がボトルの中でガラガラと音を立てる。

 まさに丁度飲み頃である。


 のどちんも水筒を持ってきて私の席の前の席へ座る。


「はぁ〜…。

 喉乾いた。

 ミッピは何持って来たの?」


「これ?

 これはウーロン茶だよ。

 家で凍らせてきたの」


 そう言って結露対策にボトルに巻いて来たタオルをとってウーロン茶のラベルを見せた。


「へぇ〜…。

 いいなぁ。

 私も水筒じゃなくてペットボトルで持ってくれば良かった」


「水筒には氷は入れてきてないのかい?」


「うん、そこまで頭が回らなかった」


 凄くがっかりした表情で自分の水筒を見つめるのどちん。

 ある程度自分の喉が潤う程に飲んだところで


「良かったら少し飲むかい?

 もうあんまり量入ってないけど」


「え!?

 本当にいいの!?」


「うん。

 口付けちゃってるけど、良かったらどうぞ」


 そう言ってボトルをのどちんに渡した。


「じゃ、ちょっとだけ…」


 少し申し訳なさそうにボトルのお茶を飲むのどちん。


「めっちゃ冷えてるぅ〜!

 美味しいねぇ!」


「そうかい?

 それは良かったよ」


「私も来年はペットボトルで持って来よう」


「うん。

 水筒を洗う必要も無くなるし、凄くオススメだよ!」


「あぁ、なるほど!」


「水筒ってさ、洗うの凄い大変じゃん?

 ヒネリの所とかの細かい所なんて、指が入って行かないから上手く洗えないしさ。

 筒の方も狭過ぎて手が入らないしょ?

 だから衛生的に考えても使い捨て出来るペットボトルの方が値段も手頃だし、色々とメリットが多いんだよね」


「じゃお母さん喜ぶかな?」


「うん。

 大抵の親は洗う手間が減って大喜びすると思うから言ってごらん!

 スポーツ部の人みたいに毎週土日の練習がある度に必要になるんだったら、経済事情的な理由から水筒の方が良いって言われる可能性もあるだろうけどさ、私達なんて水筒使うのなんて年に数回くらいでしょ?

 労力の事を考えたら買った方が安いよね!」


「確かに!

 家帰ったらお母さんに言ってみよう!」


「うん。

 凍らせて持って来れるし、凄くオススメだよ!」


 のどちんとペットボトルが如何に使い勝手が良くて楽であるかという会話を夢中になってしていると、教室のドアが開いて先生が現れた。


「はい!

 皆んな席に着け!」


 先生の声に皆んな従い各々の席へと戻った。


「帰りのHRを始める前に皆んなにちょっと話があります。

 残念な事に今日のマラソン大会で不正をした者が出てきました。

 先生今朝言ったよなぁ?

 不正するなよって。

 話を聞くところによると、自転車で2人乗りをした後に途中で自転車隠して来て、ゴール近くの群れに紛れた奴がいると言う報告を受けています。

 …で誰が乗ってたかって言う報告もちゃんとこっちに届いてます。

 でも先生は"不正しました"って奴がいたら、先生に言われる前に自分から名乗り出て来て欲しいと思ってるんだ。

 だからこの中で"自分は不正しました"って奴がいたら正直に手を挙げてくれ!

 もし今、手を挙げなかったとしても誰が不正したのか、こっちは分かってんだからな?

 でも今正直に手を挙げたら少し説教は短くなるかもしれないぞ?

 黙ってたって後で俺に言われんだから、今正直に手を挙げておいた方が得だぞ。

 じゃあ今から聞くからな?

 "自分は不正をしました"って奴正直に手を挙げなさい」


 教室中がシーンと静まり返っている中、1人の男子が手を挙げた。


「はい。

 他にはいないか?

 正直に言うんだったら今のうちだぞ?」


 先生の2度目の声が上がるも手を挙げているのは1人だけだ。


「はい。

 手を下ろして」


 先生の指示にて男子は手を下ろす。


蒼馬(そうま)ともう1人いたよなぁ?

 誰が乗ってたんだ?」


「…D組の片桐(かたぎり)君です…」


 気不味く小さく答える蒼馬君。


「その乗ってた自転車は誰のよ?」


「……」


「答えられないって事はまさかお前ら、勝手にどっかから人の物を持って来たんじゃないだろうなぁ?」


「……」


 うわぁ〜…。

 まさか図星!?


「チャリどっから持って来たのよ!?」


 状況を察して来た先生が段々と声を荒げ始めた。


「……片桐君がどっかから持って来た…から…分かりません…」


「そしてそのチャリどこに置いて来たのよ!?」


「…近くの公園…です…」


 盗んだチャリンコ乗り回し〜♪

 不正だと 指さされ〜♪

 遠いゴールをめがけ 走るぅ〜♪


「バレたらヤバイ」と乗り捨てて〜♪

 何食わぬ 顔をして〜♪

 途中の群れに混じった 13の昼ぅ〜♪


 と一瞬昔の古い歌が私の頭の中で流れた。


「お前らには言いたい事が山ほどあるから後で先生の所に来るように!!!

 自転車だってお前のじゃないんだから後で一緒に元の場所に戻しに行くからな!!

 今この場でこれ以上話したら長くなるし、他の皆んなにも迷惑が掛かるから蒼馬とは後でゆっくり話をします!

 そして不正については評価する事は出来ないので、お前らよりも後の順位の人は皆んなそれぞれ順位繰り上がります。

 順位が変わるので他にも不正が無い事を確認した上で後日に上位者には表彰する事になりました。

 …と言う事で、マラソン大会については以上です!

 そして明日からの日程についてはいつも通りの授業に戻りますので、各自で時間割を確認しておいて下さい。

 じゃ、以上でHRを終わります!

 お疲れ様でした!

 皆んな忘れ物の無いように気をつけて帰って下さい。

 じゃ、起立!

 礼!

 はい、解散!

 そして蒼馬は残れよ?」


 蒼馬君は渋々先生の所に移動。

 やっぱり悪い事って出来ないよね。

 まぁ私には何ら関係の無い事なので、さっさと帰る事にしよう。


「のどちん帰ろう!」


 のどちんを誘っていつものように途中まで一緒に帰った。

 色々と辛かったが何とか嫌なイベントを乗り切る事が出来たので、一難は去ったものと思っていた。

 だがしかしその翌日にまた一難がやって来る羽目になるのであった。


 翌日、朝学校に登校するといつものようにのどちんが


「おはよう、ミッピ!」


 と声をかけてくれる。


「おはよう、のどちん!」


 私もそう返す。


「はぁ〜…。

 ふくらはぎとか太腿とか腹筋とか、あちこちが痛いんだけど」


 とのどちんが太腿をさすりながら言う。


「私もよ」


 昨日筋肉痛がなるべく酷くならないようにと、軽い半身浴と軽いストレッチをして筋肉をほぐして寝たのだが、筋肉痛からはやはり逃れられなかった。


 まぁ運動後のケアはあくまでも翌日の状態を軽減する事くらいしかできないのだから仕方あるまい。

 それでもやはりケアはやっておいて良かったと思う。


 筋肉痛はあるけれど思ったよりは酷くないし、このくらいならば明日にはもう治っているのではないだろうかと思う程度で済んでいるからだ。


 ケアの効果はバッチリだ。

 今後も筋肉痛になりそうな時はこの手段を使っていくことにしよう。


 のどちんといつものようにとりとめのない話をしながらHRまでの時間を潰す。

 チャイムが鳴ってHRが始まる。


「おはようございます!

 昨日のマラソン大会は皆んなお疲れ様でした。

 今日からまた通常の日程に戻ります。

 今日は特に特別な連絡はありません。

 蒼馬は後で先生の方から渡す物があるので、先生の所に来なさい。

 はい、以上です!」


 暫し後にチャイムが鳴り蒼馬君は先生について行った。

 恐らく職員室へ向かったと思われる。


 昨日の件だろうか?

 まだ解決していないのだろうか?

 それとも別件で何かあったのだろうか?

 どちらにせよ他人の事なので私の関知するところではないな。


 さて次の授業は音楽だね。

 教科書とプリント挟んでおくファイルを持って音楽室で移動しなくては。

 机の中から持参するもの一式を持ってのどちんの所へ。


「あ、ミッピ。

 もう準備したんだ、早いね」


 そう言いながらのどちんは慌てて机の中から教科書等を出す。


「全然慌てなくていいよ。

 まだ時間に余裕があるし、ゆっくり行っても全然間に合うから」


「ありがとう。

 私も準備OKだから行こう」


 私たちは教室を出て階段を降りようと階段近くに来た時、背後の方から突然大きな声が聞こえた。


「オイ!!

 ちょっと待てやお前!!!」


 誰かが何処からで騒いでいる。

 何の騒ぎだろう?

 うるさいな。

 そう思いながら階段を下りようとした時、


「オイ!!

 お前だコラ!!!

 無視すんなや!!!」


 何だ何だ?

 凄いうるさいな。

 誰が騒いでるんだ?

 何をしているんだろうか?

 そう思って何気なく振り返って周囲を見回した。


「アイツ自分じゃないと思ってんのか?

 オメェだオメェ!!

 クソ相瀬!!!」


 は!??

 私!??

 何!??

 誰!??


 更に私は辺りを見回した。

 すると男子2名が何やら叫びながらこちらに近寄って来るのが見えた。

 あれは蒼馬と…もう1人は何処のクラスの誰かは知らないがとりあえず男子だ。


「オイ!!

 お前こんな事してタダで済むと思ってんのか!?」


 と突然意味も分からず絡まれる。

 蒼馬の右手には作文用の原稿用紙と思われる紙が握られていた。

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