give me money!!!
間違いなくこれ以上続けたら世にも恐ろしいドラマが巻き起こるので、私はすぐさま口を閉じた。
それは速も同様だった。
「まずお前は今下降りてからママに貰え。
今回はお前もそれで良いべや」
「はい」
とりあえずこちらとしても貰える金額が3000倍に跳ね上がったので、良しとする事にしよう。
それとこの件に関しては非常に胸糞が悪いので、後で祖母を問い詰めてみる事にしましょう。
何度も言うように私は貰えなかった事が不満なのでは無い。
差がある事に不満があるだけなのだ。
誰も1円も貰っていないのなら私だって諦めがつくし、文句だって言わなかったとも!
差を付けるから不満が出るし文句も言われるんだよ!
そんな事を思いながらも私は早速言われるままに毒母にお金を貰いに行く。
ウホホッ♡
ウホホッ♡
金だ金だ♡
これでまた進学に一歩近づけるだろうか?
どうか数年後には私が無事大学生になれますように…。
心の中で私はそう呟いた。
そして忘れてはいけないのは今日はこの後忘れずに祖母の家に行って速のお小遣いの金額の件についてよく話し合いをした後、お小遣いの値上げの交渉をしてくる事にしましょう。
毒母から早速3000円を回収した後に私は早速近所の祖母の家を訪ね、お小遣い問題について話を始めた。
「さっき家でね、速の貰ってるお小遣いについて話を聞いたんだけど、なんでも速だけ随分と多く貰ってるって言う話じゃない?
それはどう言う事なのかなぁと思ってちょっと話を聞きに来たんだけど?」
家を訪問するなり祖母を問い詰める私。
「……」
向こうからしたら話の内容が唐突だったせいか、何も言えずに唇をピクピクと動かしながら黙ってこちらを見ている祖母。
祖母が速にだけ特別に多く渡していた事を何故今まで黙っていたのかを考えると、恐らく毒母の時の理由と同じなのではないだろうかと考えるのが一番妥当なところなのではないだろうか?
つまり祖母にとっても孫が平等かそうでないかはどうでも良い事であって、重要なのは自分の懐具合がどうなのか、という所であろう。
さてここで、普通にお小遣い値上げの交渉をしたところで、はたして祖母は素直に応じてくれるであろうか?
ここは何か一捻りする必要があるかもしれない。
さてどのようにするのが一番最善か?
先程の毒両親に話した時のような正論で攻める正攻法が良いのか、若干お涙頂戴作戦のように"私は正当な待遇を受けられなくて凄く可哀想なんだ"という流れにしていくのか迷う所である。
今の祖母の様子を見る感じでは、突然お金の話をされた事で、私に対して凄く警戒心を持っているのが伺える。
目を大きく見開いたまま、こちらが次に何を言うのかを伺いながら黙ってこちらを見つめているからだ。
このまま正論を述べて交渉にかかっても、何だかんだ上手く誤魔化されて話を先延ばしにされたり、有耶無耶にされたりする可能性が高そうだ。
ならばまずは警戒心を解く為にお涙頂戴作戦に出ようじゃないか!
「さっきね、久しぶりに速の部屋を覗いたら速の部屋だけ凄く豪華なの。
テレビでしょ、ビデオデッキ、ステレオ、扇風機、アイドルのCDにアイドルのグッズ、豊富にある雑貨や文房具、沢山の縫いぐるみ…。
それに比べて私の部屋なんか…テレビも無い、勿論ビデオデッキなんてある訳がない、ステレオも無い、扇風機も無い、CDなんて1枚も持ってない、縫いぐるみも無い、雑貨も無い…ほーんとなんっっっにも無い!!!
無い無いばかりで悲しくなってくるぐらい!!!
その上色々話を聞いたらね、お小遣いの値段も随分と違うと…。
いつの間にか速だけが凄く高額な値段を貰っていると言う話まで聞いちゃってさ…。
どうして同じ環境に同じ人達から生まれて…。
どうして私だけが…私だけがそうやって差別されてるのかなぁ…?
私は生まれてこない方が良かったのかなぁ…?
ねぇ婆ちゃんはどう思う?」
と少し嘘泣きを含めながら私はお涙頂戴作戦に出た。
私が生まれてこない方が良い人間だと言う事は別の世界で実の親に直接言われていて、既に知ってる事だから今更何を言われても驚きやしないんだけどさ。
それよりも…お金!!!
女は女優。
お金の為ならば泣いてもみせますとも!!
「差別なんか誰もしてない!
皆んなお姉ちゃんだって雅ちゃんだって平等にしてるしょ!!」
泣き始めた私に慌てふためくようにそう言う祖母。
全く平等じゃないよね!
さっきの話聞いてた!?
あの話のどの辺を聞いて平等だと思った!?
「全然平等なんかじゃないよね!
速は3000円も婆ちゃんから貰ってるって言ってたのに私はずっと500円…。
ねぇ2500円も差があって本当に平等だと婆ちゃんは思うの!?
速は色んな物を買ってるのに私は500円だから何も買えてない!
だってそうでしょう?
その500円の中から学校で必要になる物を買い揃えたりしているんだから。
自分の物を買える余裕のある生活なんてできる訳が無いよね?
はぁ〜…爺さんが生きていた時は速も500円、私も500円っていう風に私達を平等に扱ってくれたのに…。
爺さんが死んでから何もかもが平等で無くなったんだ!!!
どうして私達はそうなってしまったんだろうね!?」
勢いで何となく適当な事を言っているがどうしてもこうしてもさっき自分で"爺さんが他界してから平等で無くなった"って言ってるじゃんよ、と自分で自分にツッコミたくなってしまう程我ながら凄く適当だなと思った。
でも…何か適当にサラッと出て来た言葉だけど、これって実は意外と正解に近い気がするな。
速が急に500円から2000円に値段上がったのは爺さんの他界がきっかけなのでは!?
まず爺さんが他界したのは私が2年生の時だ。
その頃速は中学生。
速のお小遣いが値上がった時期もピッタリである。
そして昔々私が爺さんからお小遣いを貰えるようになった時のエピソードを思い出すと、爺さんは不公平の無いように私と速に同じく500円を与える事にしたのだ。
つまり平等にする事が前提にあったと考えられる。
そんな人が2人の間に1500円もの差を付けるだろうか?
しかもさしたる理由もなく値上げの交渉をされて100円や200円アップ程度ならまだしも、1500円も急上昇している訳だ。
同一人物がそれを行ったとは考えにくい。
しかも少なくとも爺さんが生きていた頃はお金の一切合切は爺さんが全部行っていたはず。
婆さんが勝手に値上げ交渉に応じる事など出来る訳がない。
つまりそう考えたら爺さんが他界した後に速がちゃっかり値上げ交渉に来た可能性が十分に高い。
そしてきっとその頃は婆さんにとっては悲しみに暮れている頃合いだと考えられる。
自分に残っているのは"馬鹿息子と孫だけだ…"という具合に心が弱っていた可能性が考えられる。
速はたまたまか計算の上でかは不明だが、超がつく程のグッドタイミングでお小遣いの値上げ交渉をしたのだろう。
とてもヤラシイ話だが上手く心の隙間に入り込まれた婆さんは、ホイホイと後先考えずに応じてしまったのだろうな。
段々と背景が見えて来たな。
今更だが人間って汚い…。
「そうやって皆んなして私の事責めて…!!!
私が全部悪いって言うのかい!?
爺さん亡くしてから婆ちゃんだってどんな思いだったか!!!
何にも知らない癖に皆んなして!!!」
祖母が被害妄想にて泣き始めた。
"私が全部悪いって言うのかい!?"と言う質問に対しては"はい、そうです"としか言いようが無いのだが。
だって元を正せば2人の間に差を付けた事が悪いからね。
最初から最後まで2人とも平等に500円だったのならこんな風にはならなかったよ。
それとも何!?
差を付けられた事に対して不満を言った人が全部悪いの!?
いやいや…差を付けた人が悪いでしょ!
祖母もなかなかだな。
自分が被害者面する事によって相手を動揺させる戦法か…。
上手く同情を誘って相手が退けば、払わずに済む戦法か。
でも私は動じないよ。
どれだけあんた達のせいで人生で修羅場を潜らされたと思ってるのさ!!
私に差別をして来た人間に同情の余地はない。
「ごめんね、私は婆ちゃんを責める気は全く無かったの。
ただ…速も私も同じだけ愛してると言うのならば私にも平等に接して欲しかっただけなの…。
だから婆ちゃんがこれからは私と速を平等に愛してくれると言うのなら待遇も平等にしてくれるよね?」
私も負けじと泣き真似を続ける。
「平等にしてるしょ!!」
「じゃあ私にもこれからは平等にお小遣いをくれるよね?」
そろそろいいタイミングかなと思ったので、そもそもの原点に話を戻す私。
今〜私のふと〜ころ〜が♪
すご〜くさ〜みしい〜♪
おか〜ねく〜ださ〜い♪
何故〜私と〜速〜の間に♪
贔屓の差が〜♪
ある〜ので〜しょう〜〜か〜♪
"はい、ここから盛大に盛り上がって〜lets go!"
片やなんでも片やなんにも♪
差が無いとは言わせない〜♪
速も私も共に愛すと♪
誓う〜ならお〜か〜ね〜♪
下さい♡♪
教科書に載ってる有名な"ツバメを下さい"と言う歌を脳内で替え歌してしまった。
「本当!!
皆んなして金金金金言ってきて!!!
もういい!!
あげれば良いんでしょう!!?
そうやって皆んなして寄ってたかって私からお金を毟り取って!!!」
同情を誘う計画が私に通用しないと気付いた祖母は逆ギレをして今度は喚き始める。
知らないよそんなの。
だったら最初から誰にも1円もあげなければ良かったんだよ。
片方にだけそう言う待遇をするからこう言う問題が勃発するんだよ。
そしてもう1つオマケに私もお金さえ貰えれば嫌味を言われようが、何であろうがこちらとしてもどうでも良いですから。
あなたにとって速と私が平等かそうでないかがどうでも良いのと同じ事ですよ。
だからどうでも良いので、とにかくお金を下さい。
私をこんな風に育てたのはまごう事なくこの家庭環境ですので、恨むのなら自分の馬鹿息子とその馬鹿嫁と毒姉をせいぜい恨むこった。
何はともあれ後味は悪かったが、これで私も次回からは平等にお小遣いを貰う事が出来そうである。
ウホホッ♡
今までの10倍以上♡
何とも心が躍る話だ♡
祖母からもキッチリお金を貰った後、私は自宅の自室に戻りそもそもの本題の部屋の見え方についてまた考え始めた。
まずザックリ考えて見られたくない場所、あるいは見られて恥ずかしい場所はあるだろうか?
う〜ん…そもそも物が少ないからなぁ…。
でも強いて言うならばこのダサい古臭い箪笥くらいだろうか?
よくよく考えたら特に見られて困る程物も無いしなぁ。
あぁ、あとはせめてこのカーペットにコロコロローラーをかけて掃除機で吸えなかった汚れを取るくらいかなぁ?
それと何かよく分からない汚い染みが付いているこの掛け布団のカバーとか…。
とにかくこの得体の知れない大きい染みは見栄えが汚い。
…とそんなところだろうか?
じゃあまずはコロコロローラーを買って来れば良いか。
何で掃除用品の果てまで自分で買わなくてはならないのかと思う所でもあるが、ボヤいても仕方あるまい。
そしてタンスに関しては今更どうにもならないので諦めよう。
何か布を買ってきて生活感を隠すと言う手段も一瞬思いついたが、布って意外と高かったりするのだ。
ほんの少し1〜2m程欲しいとなると、安い材質のものでも軽く1000円を超えてしまう事は珍しくない。
私は無駄遣いをするためにお小遣いの値上げをして欲しかったわけじゃない。
そう言う訳でタンスは諦めた。
でもせめて掛け布団のカバーくらいはお値段次第で考えておくことにしよう。
いくら何でもこの黄ばんだ大きいシミは気になるわぁ!
シーツの方だったのなら掛け布団をかければ見えないからまだしも、掛け布団の方は一番上にかけるものだから凄く目立って仕方がない。
まるで私が漏らしたみたいに見えるじゃない!!
このシミは私がこの掛け布団をもらった時には、もう既にあったシミだった。
貰った時にすぐさま洗濯をしたのだが、この汚れは取れなかったので諦めていたのだ。
まぁ別に誰が見ると言うわけでもなかったわけだし、一応洗濯をしたのでそれ以上は今までは気にも留なかったのだ。
大方この布団の上で何か取れないような物をこぼしたか何かしたのだろう。
そして洗ってはみたが取れなかったので、要らなくなった…と言うのがこちらにこれが回されてきた主な理由なのだろう。
こんなのカバーだけ捨てて取り替えればいいものだが、昔の人にあるあるなカバーすら"捨てるだなんて勿体ない"などとでも考えたのであろうか…?




