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同情するなら金をくれ!!!

「その質問が文句そのものだろうが!!!」


 駄目だ…。

 人間レベルが低すぎて全くお話にならない。

 質問と文句は違うと思うのだが、この人には日本語が通じない。


「いやいや…。

 質問は質問でしょ。

 文句じゃないから」


 苦笑いを隠せない私。


「じゃあ何!?

 CDの値段聞いてどうすんの!?

 それとも何!?

 私からCD買ってくれんの!?」


 …カオスだ。

 頭のおかしな人に関わってしまうと本当に面倒臭い。

 この人に聞かなきゃ良かったと言うよりも、この人と関わらなきゃ良かったと言う後悔の方を私はした。

 まぁ今更後悔先立たずなのだが。


「じゃあハッキリ言わしてもらうけどさぁそのCD、アルバムだから3000円するよねぇ。

 月500円のお小遣いでどうやってそのお金捻出したの?

 本当に500円しか貰って無かったら節約して他の月に何も買わずに貯めておいたとしても、それ1枚買うのに半年はかかる筈だよねぇ?

 それなのに何であなただけそんなにポンポンと何枚も高額な物を買い揃えられるの?

 本当は500円以上貰ってるんでしょう?」


「だったら何よ!?

 文句あんのか!?

 そんなに文句あんだったら自分でパパとママに交渉に行けよ!!!」


 私と毒姉が言い合いをしていると、どうやら私達の声が大きかったようで階段の下まで聞こえていたらしく、たまたま今お帰りだった模様の毒父が階段を上がって来た。


「何よ?」


 珍しく毒父が私達の間に入って仲裁役を始める。

 今日はギャンブルで勝ったのだろうか?

 きっと機嫌が良いのだろう。

 いつもなら


 "オイ!!!

 何騒いでやがんだ!!!

 うるせぇぞ!!!

 お前ら今静かにしなかったらどうなるか分かってやがんだろうな?

 あ"ぁ"!!?"


 などと下から怒鳴るだけで終わる所だ。

 勿論そうなってしまったら頭の悪い速でも危険信号が分かる為、一瞬で静まって私達の口論は大抵それで終わる。


 私はなるべく言葉を選びながら角が立たない様に私達のお小遣い問題について説明をする。


「私はずっと小学1年生の時から500円しかお小遣い貰ってないのに、いつの間にか速だけ多く貰ってるみたいなんだよね。

 私の部屋には物が何も無いのに速の部屋には何でもあるからいくら貰ってたらそんなに沢山物を買えるのかを聞いてみただけなんだけど、聞いた途端速が突然ブチ切れをしだして、物を投げつけて来たんだよね。

 何で速だけそんなに特別扱いされているのかと言う理由から言い合いになってしまいました」


「ふーん…。

 ちょっとお前の部屋見せてみろ」


 毒父にそう言われ、私は自室のドアを開ける。

 毒父がドカドカと部屋に上がり込んで私の部屋を見回す。


「…本当だ…。

 本当に何もねぇな、この部屋」


 毒父が部屋を見回している所を私は黙って見守る。


「おい、雅」


「はい」


「お前は毎月500円は貰ってんだろう?

 500円貰っていっつも何買ってんのよ?」


「学校で使ってる物とかで不足した物を買い足したりする事に使ってます。

 例えばシャープの芯、消しゴム、ノート、学校の図工で使いきって不足した絵の具などの類いの物は500円の中から買うようにママから言われてますので」


 まぁ絵の具に関しては殆どの色はそんなに使われる事が無いし、なるべく小出しにして水で薄めて伸ばして上手に使うようにしていたから、白が不足した時に一回買い足した事がある程度なんだけどさ。


 だがこういう事の一つ一つがお金を貰える口実になるのなら是非ともアピールに使わせて貰うともさ!


 そういえば絵の具の白って何かやたら使ってたな。

 赤に白、青に白、黄色に白、茶色に白などなど何かにつけて使う色を作る為に白が必要になる事が多い。

 だからいくら絵の具を大事に使っていたとしても白って割と不足しやすい色だったりするのだ。


「…そしたらお前自分の物何も買えねぇだろ?」


「はい、買ってません」


「……お前偉いな。

 俺何か可哀想になって来たわ…」


 うん、可哀想だと思うんだったら私にもお金を下さい。

 同情するなら金をくれ!!!


 そこへ私達3人が騒いでいるので下の階にいた毒母も私達の様子を見に階段を上がって来た。


「おい、アンタ。

 お前速に毎月いくら小遣いやってんのよ?」


「…3000円」


 はぁ!?

 ねぇ何この身分制度!!!

 6倍だよ!?

 6倍!!!

 2倍とかのレベルじゃないよね!!


 しかももっと言うならば私この人から500円貰ってる訳じゃないからね?

 500円払っているのは祖母。

 この人からは私0円だよ!?

 そう考えたら仮に1円貰っていたと過程して計算したら3000倍違いますね。

 私本当にこの家の子供じゃないのではなかろうか?


「私婆さんから500円貰ってるけど、ママからは1円も貰ってないよ?

 何でこんなに贔屓の差があるの?

 私は普段から嫌な勉強も頑張ってこの間のテストだってちゃんと結果も出してやる事やってるのに、普段から寝てばかりいてやりたい事しかやらない人の方が何でそんなに優遇されてるの?」


「そんなの中学の最初のテストなんて内容が簡単なんだから誰でも出来る内容じゃん!

 そんな誰でも出来るようなテストでたまたま良い結果が出たからって全然凄くも何でもねぇから!!!」


「ほぉ〜。

 じゃあその誰でも出来るテストとやらであなたは何点だったのさ?」


「そんなのいちいち覚えてる訳ねぇだろ!!!」


「ねぇママ、この人の成績表まだ捨てずに取っておいてあるんでしょう?

 この人の中学の時の学力テストのやつ見せてよ」


「はぁ!?

 見せなくて良いから!

 人の事はどうでも良いだろうが!!」


「いやいや、誰でも出来るって自分で言ったんじゃん。

 自分も出来てたんだったら別に見せても良いよね?

 それとも何か人に見せられない理由でもあるの?」


「うるせぇ!!!

 そうやって人の上げ足ばっかり取りやがって!!

 そもそもテメーが小遣い貰いに行かなかったのが悪いんだろうが!!!

 何でも人のせいにしてんじゃねぇよ!!!」


「別に()()にはしてなくない?

 そもそもの発端を言えばいくら貰ってるのかを質問しただけじゃん。

 それに貰いに行かなかったって言うけどさぁ、()()()って分かってたら私だって貰いに行ったよね、そんなの当たり前じゃん!

 だからあなただけ貰ってるのは狡いって言ってるの」


「うるせぇ!!!

 うるせぇ!!!」


 ヒステリーが最高潮に達した様子の毒姉は、消しゴムやらペン立てやら鋏などなど、机の上にあるあらゆる物をこちらに次々と投げつけてくる。


 前々から思ってたけど、この人やっぱり頭おかしい。

 まぁ…ご両親にソックリですけどね!

 こんな瞬間を目の当たりにする度に私は生まれてきた時に病院でよその家の子と取り違えられたのではないだろうか?とよく思う事がある。


「オイ速!!!

 やめれや!!

 こっちに飛んでくるべや!!!

 お前それが俺に当たったらどうなるか分かってんだろうなぁ!?」


 毒姉の癇癪のせいで毒父が機嫌を損ね始め、雲行きが怪しくなって来ている。

 毒父の強圧的な声に速も怯え、少し正気を取り戻した模様で、物を投げつけていた手を止めて押し黙った。


「確かに雅は普段からちゃんとやってるな。

 学校のプリントとかも速と違ってちゃんと前もって持ってくるし、言われなくても何でもちゃんと自分で準備していくしな。

 可哀想だわ」


 毒父が珍しくこちらの味方をしている。

 普段は速の方ばかりを"年上なんだから仕方ねぇべや"なんて言いながら優遇するのに。

 流石にこの身分制度の酷さには今回ばかりは同情をしてくれたようだ。

 さぁさぁ、同情するなら是非とも私にもお小遣いを下さーい!!!


「……」


 何も言えなくなった速は苦い顔をしながら黙ったままだ。


「そしてあんたもよぉ、何で雅だけ何も貰ってねぇのよ?

 可哀想だからそういう差別すんなや。

 こいつなんて休みの日だってちゃんと朝キッチリ起きて頑張ってるべや。

 何でそういう差別すんのよ?

 こいつの部屋なんて見てみれや!

 なんもねぇべや。

 片や速の部屋にはこうやって物とか散らかる程何だか君のポスターだのCDだの何だかのキャラクターの縫いぐるみだの沢山あんのによ」


「そんなの…今知ったんだからしょうがないしょ!!

 貰ってないなんてこっちは知らなかったんだから!」


 絶対嘘だよ!

 だって考えても見てくださいよ。

 片や3000円もお小遣い貰っているのに、片や何年も0円生活だっただなんて!

 無人島生活してるんじゃないんだよ!?


 それもお小遣いを渡しているのが他人なのならば、誰が貰ってて誰が貰ってないかなんて自分の知ったこっちゃあないだろうけど、自分が渡しているお小遣いの事を知らないだなんて…。

 そんな事有り得るの!?

 

 大抵は自分が人に渡したお金の事なんて、よっぽどの金持ちでもない限り誰にいくら渡したものか、ずっと忘れずに覚えてるものだと思いますよ。

 ドラスト7に出てくるブルジアさんじゃあるまいし。


 あそこまで金持ちだったら人に金を貸しても忘れるのかもしれないけどさ、うちは普通の庶民でしかないんだからそんな事有り得ないでしょ!!


 きっとさ、想像するに速にお小遣いをねだられて軽はずみに先の事を考えずに渡しちゃったんだろうね。


 だけど人間って言うのは一度でも相手の要求に応じてしまうと、この先もずっとその要求を満たさなければならない様になってしまう所が怖い所で…。


 そして案の定そうなって渋々毎月速には小遣いを渡しているものの、私の分も…となると急に金額が大きくなるからお金が惜しくなったのだろう。


 言わなきゃ分からない、言わなきゃ気付かない、そうやってずっとやり過ごせたらラッキー♡とでも思っていたんだろうな。


 こんな風に想像はつくのだけれど、ここで私がこう言う身も蓋も無い事を言って問い詰めてしまうと、今度は毒母の方の機嫌が悪くなってお小遣いの交渉が難しくなってしまっては本末転倒である。


 言ってやりたい不満は山程あるが、ここは黙って様子を見る事にしよう。


「したらこいつにも同じ額やれ!」


「…後から渡すわ」


「えぇ〜!

 私だって中学生の時は2000円だったのに雅だけ特別だなんて狡い!」


「はぁ!?

 私なんて小学生の時なんて0円だったんですけど!

 あんたなんてそれに比べたら私より何年余分に貰ってるのさ!?

 この際洗いざらいいつからいくら貰ってたのか暴露して貰おうか!

 いくら!?

 いつからいくら貰ってたの!?

 言って!?」


「……」


 毒父も気になるのか私が速に問い詰める様を黙って見つめている。


「いつから!?

 小学何年生の時から!?」


 尚も私は問い詰める。


「2年生…」


「はぁ!?

 じゃあ何!?

 私が爺さんから500円貰えるようになる前からこの人だけ特別にお小遣い貰ってたって事!?

 …でその上私は今までの数年間ずっと0円だったって事!?」


「……」


「……」


 誰もが何も言えずに口を閉じている。


「…で?

 金額はいくら貰ってたの?」


「…2〜3年の時は500円で4〜6年の時で1000円、中学入ってからは2000円で今は3000円…」


 って事は何!?

 じゃあ婆さんからのも含めたらそれ以上貰ってたって事だよね!?

 何この身分制度!!!


「婆さんからはいくら貰ってたの!?」


「…小学6の時は500円で中学生になってから2000円に値上げして貰って今は3000円…」


 たった1年で随分値上がったな。

 500円から2000円って凄くない!?

 何故急にそんなに値上がった?


「はぁ!??

 あんたさぁ中学生の時2000円だったって言うけどさぁ、ハッキリ言って私が今まで貰えなかった分の金額考えたら差額の1000円なんて大した金額じゃないからね!!

 それとも何!?

 小学生の時からの貰ってなかった分の差額分全額を今くれるの!?

 私が今まで貰えなかった分の差額分を纏めて全額くれるって言うんだったら私も2000円で良いよ!?

 こっちは何年貰えなかったと思ってるのさ!!」


「そんなのこれからの3年間トータルしたら差額の1000円がいくらになると思うのさ!!!

 凄い金額になるんだよ!?

 そっちの方が得かもしれないじゃん!!」


「いや…計算したらどれだけ私の方が損をさせられているのか分かるだろ!

 計算しろクズ!」


「あ"ぁ"!?」


「掛け算くらい自分でやって下さーい!

 成績オール2の速さーん!」


「オール2じゃないもん!!

 何個か3あったもん!!!」


「プーッ!!!」


 そう言いながら私は先程の速の殴りたかったあの笑顔をソックリそのまま再現する。

 正に言葉のブーメランならぬ仕草のブーメラン!!


「おい!

 もう良いべや。

 お前にも今度から小遣いやるって言ってんだからよぉ。

 これ以上五月蝿くしたら俺の機嫌も段々悪くなって来んの分かるよなぁ?

 俺が機嫌損ねたらお前らどうなるか分かってやがるよなぁ?」

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