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友人は財産?

 …だがこれしか無い!

 これしか思いつかない!

 そう言う訳で入学式の草津計画はとりあえず何でも良いから話しかけに行くと言う事で決定したのであった。


 ―入学式―


 いつもより20分早く起きた。

 今日は頑張って草津さんに声をかけなくては。

 やれやれ…。

 人1人に声をかけるだけなのに、まるで一大イベントのようである。

 草津さんが他の人と友人になる前に音速で声をかけなくては!


 人生は椅子取りゲーム。

 友達も取り合いなのかもしれない。

 森脇と友人になる前に声をかければ、今回は"私の友達盗った"と思われずに済むよね。


 そして今回は毒親は前もっていつもより早く家を出る事を伝えているので、朝の準備はスムーズである。

 昨日に


 "明日は登校初日だから学校で朝から色々と手間取るかもしれないから、いつもより少し早めに出るから"


 と伝えたのだ。

 人生で3回目の入学式だから今更何も手間取らないのだが、こう言っておくと手取り早くもっともらしい口実になるからだ。


 時間以外はいつも通りに家を出て登校する。

 そして教室に入る。

 草津さんはまだ来ていないようだ。

 とりあえず自分の席はもう分かってはいるが、黒板に貼られている席表を()()確認に行ってから席に着く。


 内心心臓がバクバク言っている。

 Bの世界で初めて先生と再会した時のようだ。

 ()()()()()と言う言い回しは何とも奇妙ではあるが、まぁいいだろう。


 そんなことを考えていると草津さんが到着したもようだ。

 草津さんも黒板の紙を見て自分の席を確認している。

 さり気なく草津さんの様子を伺う。


 どうやら今は1人のようだ。

 席に座った。

 まだ誰も話している人はいない。

 あちらも教室内を見回しながら様子を伺っている感じだ。


 話しかけに行くのなら今かもしれない。

 私は思い切って席を立った。

 そして私は白々しく草津さんに


「草津さんだよね?

 前同じクラスになったことあるの覚えてる?」


 と声をかけた。

 草津さんは吃驚した表情をした後


「うん!

 小学1〜2年生の時だよね。

 覚えているよ。

 相瀬さんでしょう?」


 と返事を返してくれた。


「うん、そう!

 良かった、覚えててくれて。

 ちょっと嬉しい」


 とか言いながら、だよね〜、流石に同じクラスになった事がある人くらい覚えてるよね…。

 と心中自分にツッコミを入れた。


「…」


「.…」


 …不味い!!

 無言になってしまった!!

 やっぱり相手からしたら"だからどうした"と言う感じなのだろうか。

 何か…何か次の台詞を考えなくては!!

 何か話題は無いのか!!


 "草津さんはどこの学校からきたの?"とは聞けないし。

 だって同じクラスだったってさっき自分で言ってたじゃんよ!

 私ってバカだよな…。


 "このクラスに誰か他に知り合いいた?"とでも聞いてみるか…?

 他に思いつく会話がないし、とりあえず何でもいいから話を繋ごう!


「このクラスに他に知ってる人いた?」


 無言になりがちだった空気を少しでも変えようと、勇気を出して言ってみる。


「う〜ん…。

 クラス表、自分のとこしか見てなかったからよく分かんない。

 相瀬さんは?

 誰かいた?」


 …だよね。

 私も他人の名前はあまり見ない人。

 Bの世界を経験したからクラスの面子を知っているだけで…。


 Bの世界の当初は教室にいる顔ぶれを見て、その時面子を知ったわけだし。

 とりあえず質問返しを受けたので、何か返さなくては。


 森脇の名前を出したくもないので、私も草津さんと同じく答えておこう。


「私も自分の所しか見てなくて…」


「あぁ…」


「…」


「…」


「あ…え〜と…。

 …草津さんて何か趣味とか好きな事ある?」


 再び無言になってしまった気まずさを紛らす為、何とか質問をひねり出す。


「う〜ん…そうだなぁ。

 私は絵を書いたり漫画を読んだりするのが好きかなぁ?」


「そっかぁ。

 漫画いいよね!

 私も漫画とかアニメ好きだよ」


「良いよね!

 漫画何読むの?」


 おぉ〜!

 今滅茶苦茶いい感じに話が膨らんでるんじゃない!?

 こう言うのをきっかけに友人になれたらいいな。

 好きな漫画かぁ〜…。


 こういう時にうっかりまだ世に出ていない作品を答えてしまわないように気をつけなくては!

 最近だとテレビで何が放送されていただろうか?


 なにぶん自分の部屋にはテレビなど無いので、テレビなんてほとんど見ていない。

 見ているのは朝リビングで朝食を食べる時に、放送されているニュースくらいだ。


 私の普段と言えば大抵塾の宿題に追われることが多いし。

 夕飯を食べた後も、毒達と顔を合わせているのが嫌だから自室に篭っているし…。


 何年まともにテレビなんて見ていないことか。

 とにかく世の作品達の時系列に自信がないので、中学生の頃好きだったものではなく、小学生の頃好きだった物を答えるのが無難であろう。


「私は幽霊白書とか、龍の玉伝説とか…。

 あとはアリウープとかが好きかな?」


「全部少年ステップだね」


 …考えてみたらそうだな。

 う〜ん…何か恋愛物とかを答えたら良かっただろうか?

 ちょっと色気が無さ過ぎたかもしれない。

 だが今更言い訳も出来ないので開き直ることにしよう。


「うん、少年ステップ結構好きだよ。

 草津さんは何読むの?」


「私は華の男子とか不思議の遊びかなぁ?」


「コスモスコミックとブロッサム談社だね。

 知ってる!

 いいよね!

 私も読んだことあるよ!

 両方とも面白いよね!」


「華男読んだ事あるんだ!?

 あれ凄く良いよね!

 あの4人の中で誰が1番好き?」


 良いね、良いねぇ!

 草津さんが話に乗ってくれた。


「私は主人公の司道(しどう)かな?

 最初は何だかんだ意地悪言ってても、途中から優しさを見せるようになる所が凄く良いよね!」


 私がそう言うと


「そっかぁ…。

 相瀬さんは司道派かぁ。

 まぁ…司道も悪くないんだけど、どちらかと言うと私は流雨(るう)が良いかな」


 華咲(はなさき)流雨(るう)か。

 草津さんの言っているキャラクターは、熱い性格の主人公の隣にあるあるなクールキャラである華咲流雨である。


 クールで格好良いキャラなので、好きなキャラクターランキングなどでは主人公と対張るか、もしくは主人公を抑えて堂々の1位を誇ることもある程の人気キャラクターである。


「流雨ね。

 人気あるよね。

 私流雨も好きよ。

 クールで格好良いよね!」


「そうそう!

 そうなの!

 やっぱりそう思うよね!

 あぁそうそう、そう言えばねこの間華男の新刊が出たんだけど買った?」


 などとこうして草津さんとは漫画の話をきっかけに会話が盛り上がった所でチャイムが鳴った。

 あの日と同じに先生が教室にやって来た。


「はい!

 起立!」


 先生の掛け声。

 あの日がデジャヴする。


「礼!

 着席!」


 あの日と全く同じだ。

 違うのは私と草津さんが会話をしたと言う事だけ。

 それ以外は何も変わっていない。


「え〜…、皆さんおはようございます!」


 いつも通り先生は元気だ。

 微笑ましい。


「……」


「何だ何だ、皆んな若いのに元気が無いぞ!

 じゃあもう一回挨拶しよう!

 いいか?

 いくぞ?

 おはようございます!!!」


 決して大きな声では無いが、私も声を出して挨拶してみた。


「おはようございます」


 そしてそれがどんどん隣から隣へと伝染していく。


「おっ!

 さっきよりは元気が出たな!

 良いぞ!」


 そう言う先生の笑顔をガン見する。

 愛しい♡


 そしてその後入学式の説明を受け、無事入学式を終えた。


 教室に戻った後は早くも仲良くなった人たちが、それぞれにグループを作って集まり始めていた。

 私も草津さんに声をかけに行った。


「何か皆んな自由にしてるから私たちも何か話して遊ぼう」


 そう言うと、草津さんは笑って


「うん、いいよ。

 何話す?」


 と言う。

 それをよりによってコミュ症の私に聞いちゃう!?

 何を話すものか私の方が提案して頂きたいくらいだと言うのに。


「そうだなぁ…じゃあ、テレビいつも何見るの?」


 私部屋にテレビ無いから質問返ししてこないでねと密かに願いつつ会話をひねり出す私。


「私は音楽系の番組とか好きだよ。

 唄ステとか夜もツッパレとか」


「そうなんだ。

 この間は誰が出てたの?」


「この間はね…」


 と会話をしていると後ろの方から先生の声が。


「えぇ…と…。

 あぁここ居ないのか、じゃあ安…藤とその後ろの裏…部…で合ってるよな…?

 あぁ、裏部で良いんだな」


 そう言いながら先生は裏部君とやらの名札を目を細めて見ている。


「はい。

 裏部で合ってます」


 裏部君はそう言う。


「OK!

 ちょっと2人に頼みたい事あるから今から職員室に来てくれ」


 先生はそう言って教室を出た。


 え!?

 え!?

 待って!!

 待って!!

 私は!?

 私を誘ってはくれないんですか!?


 あぁ…そっかぁ…。

 よく考えたらこの時点でもう現実はあの時と変わってるんだ。

 あの時はぼっちだったから誰とも話す事なく大人しく自分の席に着いていたもんな…。


 Bの世界の時は草津さんとこんなふうに会話をしている事すら想像もつかなかったくらいだったもん。

 ほんのちょっとした事で現実って少しずつ変わって行ってしまうものなんだね。


 ゔぅ…。

 貴重な先生イベントを逃してしまったのはかなり悲しい。

 あの時は素でよろめいたけど、今世()()よろめいた()()をして大胆に寄っかかる気満々だったと言うのに!!


 だってあんなに密着するチャンスなんか滅多に無いんだから!

 人という字は長い方が短い方に寄りかかって成る字なのだが、私はその長い方では無く短い方なのだけれど、上手いこと先生に寄りかかって2人で人と言う字を作りたかったんだ!!!


 あわわ…ショックのあまり自分でも何を言っているのか段々分からなくなって来た。

 とりあえず冷静にならなければ!!


「…でね、相瀬さんの事を何て呼ぼうかなって考えてて。

 名前が雅だからミッピーとかミッピ、もしくはミッチって思いついたんだけど、どれが良いと思う?」


 と草津さん。

 もしかして森脇や箱根さんたちのあだ名を考えたのキミかい?


 どれでも好きに呼んでくれてOKだけど、ミッチは道後さんのミッチーに似てるから何か嫌だな。

 それならミッピとかの方がまだマシかもしれない。


「う〜ん…。

 その中ではミッピがまだ良いかな…」


「草津さんは何て呼んで欲しい?」


「私?

 う〜ん…。

 そうだなぁ〜。

 ミッピが考えて!」


 馴染むの早っ!

 ゔ〜む…そうだな…。

 森脇たちはさっつぅと呼んでいたけど、森脇と同じ呼び方はしたくないので何か新しく考えなくては!


 草津さんの名前は(のどか)である。

 名前の通り温かそうな子である。

 のどかだから…のっちゃん、のっこ、のどちん…あたりかなぁ?


 ヤバい。

 私命名センス無かったわ!

 今初めてそれを自覚した。

 まぁとりあえず他に思いつく物も無いので、思いついた物をそのまま言ってみよう。


「名前が温だからのっちゃん、のっこ、のどちんって思いついたんだけど何か良いのある?」


「アハハッ!

 のどちんって何か凄い!

 何か変だけど面白い!

 ねぇ、面白いねぇミッピ?」


「そうかい?

 それは良かった」


「面白いからのどちんで良いよー!

 のどちんって呼んでー!」


 …それで良いんだ!?

 1番否定されそうだと思っていたのに世の中色んな人がいるものである。


「うん、じゃあのどちんって呼ぶね!」


 また一歩のどちんと仲良くなったかもしれない。

 先生イベントは逃してしまったけれど、のどちんと仲良くなれたから良しとしよう!


 国は国民が財産と言うが人生は友人が財産かもしれない。

 最初は度々無言になる事が多くてどうなる事やらと思っていたけど、話に乗ったら草津さんはどんどん自分から話してくれる性格だったので、コミュ症の私にとっては一安心である。


 ―翌日―


 1時限目のチャイムが鳴った後、先生が教室に顔を出して


「え〜…と相…瀬と安藤、ちょっと先生の手伝いをしてくれ」


 そう言って職員室へと戻っていく。

 私たちも先生を追って職員室へと移動する。


「悪いんだけどこれ教室に持って行くのを手伝って欲しいんだ。

 安藤は男だから力あると思うから、こっちのワーク持ってってくれ。

 で相瀬はこっちのワーク持って行ってくれ。

 多分こっちの方が軽いと思うから。

 教科書は重たいんで先生が持っていきます!

 じゃあよろしく!」


 そう言ってワークの束を手渡す先生。

 敢えて今回もよろけてぶつかってみる私。

 人と言う事は短い方が長いほうに寄りかかっても人と言う字になれる。


 まぁ…単に密着したいだけなんだけどさ…。


「おっと、大丈夫か?」


 先生が手で私を支えてくれる。

 あぁ…もぅ幸せ…♡

 この瞬間のまま時を止めたい。


「はい!

 バッチグーですよ!」


 ワークを片手で支えてながら右手でグーポーズをとる私。


「バッチグーって…古いなお前…。

 って…それよりもふざけてたら危ないからちゃんと両手でしっかり持ちなさい」


「はーい」

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