暴露
"別に良いけど。
中神さんのシャープペンが無くなった日、クラス皆んなでポコペンやってたでしょ?
私と未央はその日掃除当番だったから少し遅れて体育館に行ったんだよね。
そのあと徳沢さんと未央が鬼交代する事になって私は隠れたんだけどさ、未央が私を見つけられなかったからって「どこにいたの」ってずっと聞いてくるんだよね。
終いには本当に体育館にいたかどうかをしつこく聞いてくるんだよ!?
どう思う!?
2人で体育館に行ったんだから体育館内にいるに決まってるでしょうが!って感じだったんだよね!
しかも友達疑うとかあり得なくない!?
折角あの時だって未央の後に鬼交代引き受けてあげたのに!"
"そっか…。
そうなんだね。
でも体育館ってそんなに隠れられるような場所ってあったっけ?
私はその話を何も聞いてないんだけど、森脇さん結局どこにいたの?"
"未央にも同じ事言ったんだけど、私ステージのカーテン裏に隠れてたんだよね。
あ、ステージの上は上がっちゃダメって言うのは言わないでね!
分かってるから!
未央にも同じ事言われたし"
"そっか…。
まぁ、それに関しては私は聞かなかった事にしておくわ。
先生にも言う気は無いから安心して"
"そうしてくれると助かる。
ついうっかりって事だってあるじゃん?
人間なんだし"
"その日体育帽を忘れたりとかはしなかった?
ほら沢辺君みたいな感じで"
"うん、特にそう言う事は無かったけど。
あ、もしかして相瀬さん疑ってる?
あの日は未央の後に鬼も引き受けてたし、私が体育館にいたのなんて皆んなが見てるはずだから犯人な訳ないんだよね"
"そっか。
そうだよね〜"
"それにしてもやっぱり私の思った通り松本君が犯人だったよね。
本人が自供してるんだからそれが何よりの証拠だよね。
犯人見つかって良かったよ"
"へぇ〜どうして松本君が犯人だと思ったの?"
"え?
だって体育休んで教室にいたんだから松本君しかあり得ないじゃん?
相瀬さんも色々と庇ってたようだけど無駄になっちゃって凄く気の毒だなと思ってたんだよね。
でも相瀬さんってなんでそんなに松本君に優しいの?
結局犯人は松本君だったのに今日だって怪我した時に保健室にわざわざ連れて行ったりさ。
もしかして松本君の事好きだったりする?
もし良かったらさ、そう言う話なら私も相談に乗るよ!
今回未央と私の心配もしてくれたお礼って事でさ"
"あー、私好きな人いないの。
期待外れで何だか申し訳ないんだけどさ。
それよりも隣のクラスの沙奈ちゃんって知ってる?"
"沙奈ちゃん?"
うん、そう。
隣のクラスの福嶋沙奈ちゃんの事"
"うん…知ってるけど?
福嶋さんがどうかしたの?"
"あの日さ、お昼休みに沙奈ちゃんに話しかけられたの覚えてる?"
"……そう…だったっけ…?"
"うん、実は昨日沙奈ちゃんからその話を聞いたの。
森脇さんに算数の教科書貸してもらったって"
"う…うん…。
あ…、じ…実はさぁ、さっき体育帽の事忘れてたんだけど、そういえば取りに行ったのを今思い出したよ。
さっきは取りに戻ってないって言っちゃったけど、なんか色々勘違いしてた!
ごめんね〜"
"沙奈ちゃんが窓際の席で森脇さんが何かゴソゴソとやっていたのを見たから、てっきりそこが森脇さんの席だと思ったんだって。
そしたら教科書借りる時に廊下側の席から教科書を出してきたから変だと思ってたんだってさ"
"え…?
あ…、あぁ!
あれは友達に教科書を貸していたから友達の机から私の教科書を返してもらったってだけで…。
福嶋さんにもそうやって説明したと思うんだけど…"
"友達って誰?
廊下側の席って言うとA班だよね。
森脇さんと同じの。
同じ班の友達?
女子?男子?どっち?"
"…じょ…女子だけど!?
そんな事今関係あるの!?"
"A班って森脇さん含めて女子3人だよね。
って事はもう2人のうち1人は未央だよね?
教科書貸したのって未央?"
"な…そんなのどっちでも良いでしょ!
何なの!?
そんな事あんたに教える義務無いですからぁ!"
"どちらにしてももう言い逃れする事自体が難しいよ。
そもそも同じクラスの人同士で教科書の貸し借りする事自体が不自然だもの。
同じクラスでさ、同じ授業を同じ時間に受けるのに自分の物を他人に貸して自分は先生に忘れましたって言うの?
それおかしくない?
自分で考えてみてどう思う?
自分の証言がおかしいと思わないかい?
それに明日2人に聞けば教科書の貸し借りがあったのか無かったのかは直ぐにバレる事だし、私が2人に聞いて嘘が発覚したらもう森脇さんに言い逃れする余地がなくなるよ?"
"何なの!?
人を散々嘘つき呼ばわりしてさ!
人に対して失礼だと思わないの!?
そもそも福嶋さんが窓際の席で私を見たとか言ってるけどそれ福嶋さんの勘違いじゃない?
私は自分の席以外の場所になんか行ってないから!
それとも何!?
何か証拠でもあるの!?
もしかして松本君と相瀬さんってグルだったんじゃない!?
グルだから仲間を庇おうとして他人に濡れ衣被せようと必死なんじゃないの!?"
"ううん、そもそも本当に森脇さんが自分の席以外の場所に移動していないのなら、目撃される事自体が起こり得ない現象なんだよね"
"…え?
何?
どう言う事?"
"森脇さんの席ってA班の後ろの方の席だから廊下から通りすがりに教室の中を覗いたくらいでは見えるはずがないんだよ、壁のせいで死角になってるから"
"な…そんなのただの言いがかりでしょ!
そんなのやってみないと分かんないじゃん!"
"じゃあ明日実際に教室でやってみようか?
今なら私だけしか話を聞いている人がいないけれど、明日クラスの人達がいる証人が多い状況で実際にやってみて検証してもらおうか?
それで自分の証言がおかしいって事が証明されちゃったらあなたが困るんじゃない?
ついでに森脇さんの教科書を借りたの誰なのかも聞いてみようか?
皆んながいる公の場で"
"……"
"もう正直に言いなよ。
もう苦しいよ?どんな言い訳をしても。
言い逃れをする度に嘘を重ねてさ。
その度に自分の証言がどんどん辻褄の合わないおかしな証言になっていってるのを自分で気づかない?
あの日中神さんの席で何やってたの?"
"……"
"森脇さんの話ってどんどんボロが出て来て既にもう最初の話と辻褄がだいぶ合わなくなってるよね。
初めはステージの上のカーテン裏にいたから誰からも見つからなかったけど、体育館にはずっといたっていう話だったのに蓋を開けたら実はこっそり体育館から教室に戻って来ていて、それも自分の席じゃない席で何かやっていた所を目撃されている。
しかも体育帽を忘れずに持って行ったって言う話だったのに途中からやっぱり忘れてましたって次々に証言変えてさ。
仮に本当に体育帽を取りに来ただけならば自分の席以外の場所に移動する理由が無いし、自分の席に本当にいて、他の席へは行かなかったのならば沙奈ちゃんから目撃される事も起こり得なかっただろうし、沙奈ちゃんに話しかけられる事も無かったと思う。
実際に沙奈ちゃんと会話をして教科書を貸し借りしている時点でもう森脇さんに言い逃れをする道は残されていなかったんだよ。
もう正直に認めなよ。
中神さんのシャープペンを盗んで松本君の机に入れたの森脇さんでしょ?"
"お願い!!!
誰にも言わないで!
私に出来ることなら何でもするから!
ね!?
私達友達でしょう?"
"何でもするんだったら明日里中先生にこの事を正直に話して松本君の冤罪を晴らしてあげて?
関係ないのに可哀想だわ"
"それだけは無理!
お願い!!
そうだ!
私の持ってる物で何か欲しい物あったら何でもあげるよ?
良かったら今日これから家来ない?"
"どうして無理なの?"
"…そんなの言わなくたって分かんない!?
今日の松本君見たでしょ!?
もし私が名乗り出たりなんかしたら皆んなに私が虐められるじゃん!
絶対嫌!!!"
"ねぇ2つ聞きたいんだけど、いい?"
"も…もちろん!
何でも聞いて!?"
"まず1つ目は、一度は誰が犯人か分からないって言う話でうやむやなままとは言え解決したのに何故うやむやなままにしなかったの?
うやむやなままにしておけばこんなに話が大きくならずに済んだかもしれないし、犯人が誰か分からないって言う事で話が済んだかもしれないのに。
まして森脇さん自身もこうやって私に気付かれたりもしなかったかもしれない。
あのシャープペン欲しかったんじゃないの?
うやむやなままのほうが返さずに済んであなたにとっては良かったのでは?"
"それは…未央がこないだから私を疑い始めて…。
変な詮索をし始めたから…。
だから松本君の机に…。
未央があの日の事を皆んなにバラして皆んなから私が疑われたりしたら…。
だからそうなる前に…。
何とかしなきゃって。
それもこれも…!
未央が全部悪いのよ!
トイレで私を脅したりしなければ!
体育館にいたって言ってるのにそれをわざわざしつこく疑ってさ!
未央が変な詮索さえしなければうやむやなままで済んだのに!!!
松本君があんな目にあったのだって全部未央のせいなんだから!!"
"じゃあ2つ目、他の人の机に入れる事も出来たはずなのになんで松本君の机に入れる事にしたの?
何故わざわざ松本君に罪を着せたの?
恨みか何かあったの?
別に松本君以外にいくらでも擦れる人なんてクラスにいたんじゃない?
なのになんでわざわざ松本君を選んだの?"
"…松本だったら元々疑われていたんだから机に入っていてもおかしくないと思った。
ペンが机から出てきて松本が疑われて決定的になれば犯人は松本で決定されて今後私が疑われる事は無くなると思ったから"
"ねぇ、あなたも今日の松本君の姿を見たんだったらあなたは名乗り出るべきだと思うよ。
松本君見てどう思った?
可哀想だと思わなかった?
何も罪悪感が湧かなかった?
虐められたくないと思うのは松本君だって同じだよ?
分からない?
しかも自分がやった事じゃない事で罪を無理矢理着せられて…"
"そんなの…カモにされる方が悪いんじゃん!?
もう今回の事は松本が謝ったんだし、中神さんのシャープペンも本人の手元に戻ったんだから問題ないでしょ!?
解決した事を掘り返して何になるの!?"
"ねぇ、根本的な事を言っていい?
盗みを働いてさ、物を返せば解決するの?
じゃあ強盗や横領をして捕まった全ての犯罪者たちは盗った物を本人に返せば皆んな罪を許されて刑務所から出てこれるって言う結論でいいのかな?
例えば会社でお金横領してさ、そのお金返せば罪って帳消しになるの?
捕まらずに済むの?
あなたの親はそうやってあなたに教えた?
だとしたらそれって凄くおかしいと思う。
そんな簡単な事だったらこの世に法律なんか最初から要らないんじゃないかな?
どう思う?"
"はぁ!?
たかがシャープペン如ごときでそんなオーバーな話をされても困りますぅ〜!
偉そうに!
馬っ鹿じゃないの!?"
"たかがじゃないよ、されどだよ。
盗った物がお金だろうが物だろうが他人様の物に手を付けた時点でそれはもう犯罪なんだよ。
ましてたかがと思うのならどうして盗ったの?
あなたにとってはたかがシャープペンじゃなかったんじゃないの?
だから盗ったんでしょ?"
"うるさい!!!
さっきから黙って聞いてりゃ犯罪者だの何だの!
偉そうに!!
テメーは先公か何かのつもりかよ!?
いい子ぶりやがって!
綺麗事ばっか言ってんじゃねぇぞ!?
松本が自供してんだからそれで終わりだろうが!
人の事件に面白おかしく首突っ込んで来てんじゃねぇよ!!!
死ね!!!"
会話が終わった様子でザザザと言うノイズが暫し流れた後プツッと言う音がした。
そしてその後演歌が途中から流れた事により、真剣な表情をしてじっとテープを聞いていた4人の表情が緩んだ。
「何か演歌が流れてるんだけど」
「ぷっ…」
「うん…。
く…アハハハハッ!」
「ハッハッハ…!」
「ハハハハハ!」
皆んなで一斉に笑い出して私もつられて笑った。
「さっきまで凄い真剣な話が流れてたのにね。
雅演歌歌うの?」
と梢。
「いや…婆ちゃんが…。
このテープ婆ちゃんにもらったテープだったんだよね。
このテープだったら消して良いって言うからさ」
「そうなんだ〜。
私はてっきり雅が演歌が好きなものだと思ってたよ」
「うちも!
なんか趣味が渋いなぁって思ったよ」
音葉や沙奈ちゃんまでもが演歌について私をいじる。
「まぁ…嫌いでは無いけど滅多に聴かないねぇ…。
どっちかと言うとJ-POPとかの方が好きかなぁ?」




