どんな人も人間でしかないから…
だから自分に害を加えてくる人間に対しては容赦なく反撃に出るよ!!
私は戦うよ!
このまま私が気遣って何もしなければ未来Bルートに同じく進んで森脇にしてやられるのならば、私はその禍根の芽を今のうちに摘んでおく事にするよ。
やや暫くテープの会話に集中して聞いていたが、話の終わりが近づいてきたのが内容から伝わってくる。
今会話内容は森脇が自供を求められて逆ギレして走り去っていく所だ。
その後プツッと言う音が聞こえてその後に何やら演歌らしき曲が流れた。
テレビか何かからレコーダーで録音でもしたのだろうか?
周りでザザザ…と言うノイズも一緒に聞こえる。
まさに昭和の時代にあるあるの"今から歌を録音するんだから、誰も一言たりとも話さないでね!!!物音も立てないでね!"と周りにいる家族達に念を押す瞬間を思い出させる。
大方もう聞き飽きて要らなくなったと言う理由にて快くくれたのだろう。
私はレコーダーのスイッチを切って巻き戻しをしてカセットテープを取り出し、テープは鍵のついた引き出しの方に保管した。
レコーダーを返すのはもう少し後にでもしよう。
明日、未央に諸々の事情を話した上でついでにテープを聞かせる事にでもしよう。
そう言えば過去Bの沙奈ちゃんもテープを聞きたがっていたな。
明日は土曜日。
沙奈ちゃんも習い事は休みであろう。
誘ってみる事にしよう。
今日はこれから塾なので私は塾に行く準備をした。
ついこの間まで使っていたテキストとは違うので、今現在どれを使っている物かはあまり自信が無いが、おそらく塾用の手提げ鞄に入っている一式で大丈夫であろう。
机の上にワークやプリントが無いところを見ると、きっと昨日の夜辺りにでも宿題を終えて鞄にしまったのかもしれない。
宿題が終わっていて良かった。
もしも残っていたら今から全力でやらなければならないところだったかもしれない。
私はホッと胸を撫で下ろした。
それにしても…。
今何の勉強してたっけ!?
学校の勉強だったら基本問題が多いからまだしも塾のテキストの難易度は鬼だから覚えていないと言うこの状況はかなりまずい!
とりあえず塾では多くを語らず、さりげなくトボけて情報を集めつつやり過ごす事にしよう。
そう思いながら私は塾までの空き時間少し休む事にした。
―翌日―
朝、学校に登校するなり未央に
「あのさ実はね、予め謝って起きたいことがあるんだけど…」
「え!?
何?何?」
吃驚する未央。
「あのね、一昨日森脇さんに未央が森脇さんと仲直りしたいって言っていたよと言って未央をダシにシャープペンの事聞こうとしたんだよね」
「ぇ!?
待って待って!
話が全然掴めないんだけど、どう言う事!?」
「実はさ…」
と話し始めた時
「2人ともどうしたの?
なぁに〜?
何か秘密の話?」
そう言って茶化すように話しかけてきたのは梢と音葉だった。
これは良いタイミングだ。
ついでに2人にもさり気なく話を聞かせる事にしよう。
「未央、2人もいていい?」
「…?
え?
まだ話聞いてないから聞かれても分かんないんだけど、どうしよう???」
そうだよね。
話の内容が分からなかったら良いか悪いかなんて分からないよね。
「あ、じゃあとりあえず未央だけちょっと聞いて。
2人ともちょっとだけごめんね」
2人にそう言って未央にこっそり
「森脇さんの話なんだけど」
とだけ耳打ちする。
「え!?
何!?何!?
ちさちゃん!?」
と未央が興味深々なノリで聞いてくる。
「2人にも聞かせて大丈夫?」
と話の続きをする前に予め確認する。
「あぁ、良いよ良いよ。
こないだの体育館で言ってた話でしょ?
何か進展あった!?」
横髪を耳にかけながら話を聞く気満々な様子を見せる未央。
本人のお許しが出たので梢と音葉も手招きで呼んで4人で廊下の隅っこへ移動した。
「実はさ私も森脇さんが怪しいと思ってシャープペン事件の事を学校帰りに一緒に帰ろうって誘って聞いてみたんだよね」
「え!?
マジで!?
マジで!?」
「あれ!?
でもあれ松本だったんでしょ!?」
「ね!
一昨日の朝の会の時に謝ってたよね」
「私はあれ濡れ衣だと思ってたんだよね。
大方先生に何か言われて罪被っただけだと思うよ」
「え!?
それは無いんじゃない?
先生がそんな事するの?
先生なんだからそんな事しないと思うよ?」
と音葉と梢。
あぁ…2人とも純粋だね。
2人にとって先生と言う存在はまだ正しい大人の象徴の様なものなのだろう。
ある一定の年齢になるまで"自分の親は絶対的に正しくて嘘を言う筈など絶対に無いんだ"と無条件で妄信的に信じる子供と同じようなものなのかもしれない。
「まぁ…2人が話をどう捉えるかは自由だけれど、どんな立場の人間だったとしても、あくまでもその人もただの人間でしかないと言う事だけは言っておくよ」
「???
ごめん、意味分かんなかった。
どう言う意味???」
3人が首を傾げながら言う。
「まぁざっくり言うなら先生は神様じゃないから間違う事もあるんじゃないかなって事かな」
「ん???
うん、それは知ってるけど…?
こないだ授業で先生漢字間違ってたし」
う〜ん…そういう事ではないんだよな。
多分まだ表面的な部分しか理解できていないと言った感じの反応だった。
無理もない。
彼女らはまだ小学生なのだから。
きっともう5〜10年くらいしたら自ずと理解出来る様になって来ると思うよ。
もしかしたら人によってはもっと早いかもしれないけど。
物事の深い部分が見えるようになって来るのはまだまだ先だね。
「あぁ!
それよりもうちはちさちゃんの話の続きが凄く気になってるんだけど!」
「あ、そうだった。
なんかごめんね」
「私もごめんね」
そう言って謝る2人。
「あぁ良いよ、良いよ。
それよりも早く雅の話の続き聞こう!
雅早く続き言って」
「うん。
でね…ごめん…どこまで話たっけ?」
自分で話してて何を話していたかど忘れしてしまった。
「えっと、ちさちゃんに話聞き出そうとして帰り誘ってその後から」
「あ、そうそう!
ありがとう。
…で、その時に私森脇さんと親しくないから話かける口実に"未央が森脇さんと喧嘩した事を後悔していたよ。事件は解決したけど未央と仲直りする気は無いの?"と言う様な事を言っちゃったんだよね。
まずはダシにしてごめん!」
未央にそう言って私は掌を合わせた。
「え"…ちさちゃんに?
そう言ったの?」
未央が微妙な表情で言う。
「うん。
ごめん」
「まぁ…良いや。
うちあれ以来ちさちゃんとはあんまり関わりたくないなぁって思ってたから、別に仲直り出来なくても良かったんだよね…。
正直なところ」
うん、知ってる。
ごめん。
Bの世界でも今と同じ事言ってたもんね。
とは言えBの世界での初めての森脇との対決の時はまだ本当にそれを知らなかったんだけどね。
「うん。
ごめん!」
「まぁ…良いや。
向こうから何も言ってきて無いし。
うちからも話しかける気は無いからこのまま放っておけば大丈夫でしょ!」
「本当ごめんね!
これしか口実が思い浮かばなかったの」
謝る私に未央は
「まぁ、良いよ良いよ。
それで?
何か聞き出せた?」
「実はね沙奈ちゃんが決定的瞬間を見ていたらしくて…」
と今から話が盛り上がろうと言う時に無情にも学校のチャイムは
"キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン"
といつもと同じ音を奏でる。
あぁ!
もぅ!
今日は土曜日だから中休みが無いと言うのに!!!
「ごめん、今日さ3人ともお昼寝食べた後遊ぶ時間ある?」
「うん、うちは良いよ」
「うちも」
「うん、私も」
「じゃあさ、放課後沙奈ちゃんも誘って一緒に帰るがてら待ち合わせ場所もその時に決めよう。
とりあえず席着こう!
また放課後ね!」
「うん、分かった!」
「うん」
「OK!」
そう言って私達はそれぞれの席に着く為一旦別れた。
沙奈ちゃんも今日は習い事が休みのはずだからテープの事を話そう。
1番有益な情報をくれたのは彼女だからね。
未央達にも話すのなら沙奈ちゃんにも話を聞かせるべきであろう。
さて、ならばどこで集まろうか?
残念ながらうちは今日はダメだろう。
今日は毒姉だって昼で帰って来るはず。
勝手に友人を家に連れ込んでいるところを見られでもしたら、考えるまでも無く先が読める。
そういう理由にてうちはダメだ。
4人のうち誰かのお宅が了承してくれたら凄くラッキーなんだけど、当てにしてはいけない。
当てが外れた時に立ち往生するのを防ぐ為にもどこかタダで集まれる様な公共の場を考えておく必要がある。
パッと考えられるのは3ヶ所。
ここから少し離れた大きめのスーパーの休憩スペースか、もしくは図書館、もしくは児童会館辺りか…。
もしも今が冬じゃなければその辺の公園のベンチとかでも良かったところなのだが、冬とは何とも不便な季節である。
それよりもこの3つの中でどこが1番良いか。
スーパーの休憩スペースはご家庭によっては子供だけでお店に出入りする事を反対しているご家庭もある事を考えたら適切ではないかもしれない。
少なくとも友人達とこの先も良好な付き合いをして行きたいのなら選ばない方が良さそうだ。
ならば図書館はどうだ…?
…いや、考えるまでも無い。
図書館は私語厳禁である。
私達は今日会話をする為に集まるのだから1番望ましくない場所である。
ならば残るは児童会館辺りか…?
学年の小さい子など色んな子が集まる場所だから私物の持ち込みは禁じられてそうではあるが、まぁ言い出したらキリが無いので仕方あるまい。
最悪どこかの公園の隅っこで寒いのを我慢して立ち話をしながらになるかな。
私が出せる発想はここまでである。
あとは放課後4人にもこの事を相談してみよう。
結論が微妙だが考えがまとまったので私は残りの授業に集中を戻し、過ごした。
―放課後―
「雅帰ろう〜」
といつもの3人。
「うん。
ちょっとさ、隣のクラス寄ってっていい?」
「うん、良いけどどうしたの?」
音葉の言葉に残りの2人もうなづきながらこちらを見る。
「今日さ、沙奈ちゃんも誘って良い?
沙奈ちゃん知ってるよね?」
「うん、うちは知ってるよ」
「うん、こないだ一緒に帰った人でしょ?
知ってるよ」
「誘って良いかい?」
「うん、全然良いよ!
ね?」
と3人が顔を見合わせながらうなづいて言う。
「ありがとう。
じゃあちょっと沙奈ちゃん探して声かけて来よう」
そう言って4人で隣のクラスの前へ。
沙奈ちゃんが友人と教室から出てくる。
「沙奈ちゃん!」
そう言って手を振ると沙奈ちゃんも
「あ!
雅ちゃん、どうしたの?」
と手を振り返しながらこちらへ歩いてくる沙奈ちゃんとその友人。
「今日お昼食べた後時間ある?
例の話の続きを皆んなでしようと思ってさ。
ちょっと話の進展もあってさ」
「え?
そうなの?
うん、今日習い事ないから大丈夫よ!
どこで待ち合わせる?」
噂好きの沙奈ちゃんもノリノリである。
「待ち合わせ場所をまだ決めていないんだけど、とりあえず分かりやすく学校の近くとかで皆んなで待ち合わせるかい?」
「今日は雅ちゃんちはダメなの?」
と沙奈ちゃんが言う。
そっかぁ〜。
そういえば唯一部屋に招待した事あるのって沙奈ちゃんだけなんだよなぁ。
恐らくきっと数日前辺りに部屋呼んだのだろう。
基本うちは友人を部屋に連れて来るのは禁止されているので誰もいないところを狙わなくてはならない。
が今日は土曜日で毒姉も昼には帰って来てしまうだろうし。
土曜でなくても毒両親がどこかへ出かけていればこの間の様に小1時間程の短い時間なら呼ぶ事も可能だが今回は無理だ。
「ごめんね、今日はうち無理なんだ。
だから誰かの家に集まれるのなら集まりたいところなんだけど…」
掌を合わせて私が言うと
「…うちもなぁ…多分ダメだと思うけど一応お母さんに聞いてみるわ」
と未央。
「うち…はどうだろう…?
ちょっとお母さんに聞いてみる」
と梢。
「私も帰ったらお母さんに聞いてみるよ」
音葉も。
「うちはごめん、外で遊びなさいって言われるからダメなんだ…」
と沙奈ちゃん。
まぁ…そうだよね。
良いよって言う家の方が少ないと思う。
「おぃ!
何やってんだ!?
早く帰れ」
A組のクラスの先生が怖い顔しながらこちらに歩いて来る。
「とりあえず歩こう!
歩きながら話そう」
私達は待ち合わせ場所について話しながら歩く。
「…じゃとりあえずさ、皆んなそれぞれ家に行って良いか親に聞いてみるって事で!
んで、待ち合わせ場所はとりあえず学校の校門の近く辺りでどう?」
私がそう言うと
「うん、良いよ」
「OK!」
とそれぞれから返事が返ってくる。
自宅付近に着いた所で
「じゃあまた後でね!」




