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ジェントルマン御和

「嬉しい?

 …そう?」


「うん、こないだは勉強の事で自分も悩んだりしてるって言う話もしていたし。

 …何て言うのかな…本当思ってる事とか感じてる事とか、俺とあんまり変わんない感じなのかなって。

 そう思ったらさ、何か共感って言うのか…そう言う感じの気持ちになってさ」


「そりゃそうよ、私だって人間だもの。

 私って人と話をするのあまり得意じゃないから普段はあまり自分の事を他人に話したりしない性格だし。

 だから人からどう見られているかは分からないから何とも言えない所があるけれど、考えたり感じていたりする事って皆んなとあんまり変わらないと思うよ」


「そうだよね、ごめんごめん。

 別に変な意味で言ったんじゃないからあまり気にしないで!

 それよりも早速部屋で観察日記書かない?」


「そうだね、そうさせてもらおうかな?」


 そうだった。

 そもそも今日は観察日記の為に来たんだった。

 塾の夏期講習期間が終わったので宿題も次の火曜日まで無いという事もあり、御和君の家には二十日大根の観察日記の為に来たのだった。

 時間を有効に使わねば!


 御和君の家に入り、リビングの御和母に挨拶をした後階段を上って御和君の部屋へ入る。

 御和君が完成させた二十日大根の観察日記の内容を参考にさせてもらいながら私は自由研究の最後の仕上げに入る。

 その間御和君は塾のテキストの予習をしている。


 前回からの1週間分のノートを書き終えたところで私は深いため息をつき、思いっきり腕と背中を伸ばす。

 やっと終わった〜。

 その様子に気づいた御和君は


「もしかして終わった?」


 と聞く。


「うん、ようやく」


「おめでとう」


 そう言って親指を立ててグ〜のポーズをする。


「ありがとう」


 そう言って会釈をする。


「今日は塾の宿題も無いし、相瀬さんの宿題も終わったところで勉強の事とか何も考えずに時間まで何かして遊ぼう!」


 嬉しそうに言う御和君。

 さっきまで私に凄く気を使ってくれてたんだね。

 本当キミジェントルマンだわ!


「うん、良いよ。

 御和君はいつも何して遊んでるの?」


 私がそう聞くと


「相瀬さん、ウルファミって知ってる?」


 勿論知ってるさ。

 正式名称ウルトラファミリープレイヤー。

 通称ウルファミ。

 未来Aで散々中古ソフトを買い漁って色んなゲームを遊び倒したもの。


 今世ではまだ持ってないけどね。

 手に入るのは暫く後だろうな。

 恐らく私が成人して、何処かしらに就職をして暮らしが最低限安定したらになるだろうな。

 まぁ大抵のゲームは一度は遊んだ事があるだろうから別に今すぐ欲しいものも無いから良いんだけどね。


「うん、持ってないけど知ってるよ」


「スーパーマリナシスターズって知ってる?」


「うん、あのアクションゲームでしょ?」


 知ってるさ。

 ウルファミの制作会社である任々堂が開発したゲームソフトの一つで、アクションゲームである。

 マリナシスターズとはそのゲームに登場する主役キャラクターである。


 マリナが姉で赤い服を着ているキャラクターで妹のルイスは緑の服を着ている何ともセクシーな姉妹達でなのである。


 そして色々な障害物や亀などを飛び越えながら、時には亀の甲羅やキノコを投げて攻撃をしたりしながら進んで行きエリアのゴールを目指すのだ。


 シリーズも色々と出ていて色んなアイテムやアクションが追加されていて狸に変身できるアイテムがあったり、空を飛べる羽があったりする。

 マリナシスターズも色々と進化しているのだ。


「そうそう!

 それのシリーズでマリナカートってソフトあるんだけど、それやらない?

 各キャラクターが乗ってる車みたいなのをコントロールしてレースで走るやつなんだけど凄く面白くてつい夢中になっちゃうんだよ!」


 うん、知ってるとも。

 面白いよね!

 私はノソノソって言う亀のキャラクターかキノキノって言うキノコのキャラが使いやすくて好きだったりする。

 上手な人はケッパやゴリ蔵を使いこなしてどんなコースでも軽々と駆け抜けていくんだよな。

 私はアクションゲームがあまり得意じゃないので普通の難易度のゲームを普通にクリアするだけで満足してしまうタイプだ。


「うん、テレビで散々CMやってたから一応知ってるよ。

 知ってるだけでやった事無いけど」


 …と言っておこう。

 まさか未来Aでやった事ありますだなんて言えないしね。


「そっか。

 凄く面白いゲームだから良かったら一緒にやろうよ!」


「うん、良いよ」


「良し!

 じゃちょっと待ってて!

 今母さんに言ってゲーム出してもらってくる」


 なるほど!

 勉強に集中する為に親にゲームを隠されるタイプの家庭か。

 何か色んな家庭あるよね。

 そもそもゲームを買い与えない家と、買うけど普段からゲームばかりしないように隠す家庭や、きちんと自己管理が出来るが故に隠されずに済む子の家庭、そもそも自由度が高くゲーム時間に制限が無い家庭…などなど。 


 そしてうちはその中のそもそもゲームを買ってもらえない家に該当する。

 そう考えたらここん家は裕福なお宅だなと思うわ。


 数分後両手一杯にゲームのコードや本体を抱えて御和君が戻ってきた。


「母さんが夕方までなら良いって!

 ちょっと今テレビと繋ぐから待ってて」


 凄く嬉しそうな顔をしながらテレビに線を繋いでいる。

 私も少し手伝って電源のコードをコンセントに繋いだ。


「あぁ、ありがとう。

 コンセント分かった?」


「うん、丁度見える所にあったから」


「じゃ早速やろう!」


 そう言ってゲームの電源を入れた。

 聞き覚えのある懐かしいBGMが軽快に流れる。


「どのキャラクターがいい?

 俺いつもゴリ蔵かケッパ使うんだけど、たまに気分でネッシーを使う時もあるんだけど…初心者だったらノソノソとかアップル姫なんかが使いやすくてオススメかな?

 キノキノでも良いと思うけど」


 なるほど熟練さんなのね。

 私あんまり上手じゃないからゴリ蔵とか凄く使いづらく感じるんだけど、上手な人は何故かそっち路線行く人多いよね。

 純粋に理由が気になるから聞いてみようかな?


「へぇ〜…。

 各キャラクターの特性って言うか、どういう違いがあるのか教えてくれると凄く助かるんだけど!」


「俺も凄く詳しい訳じゃ無いんだけど、キノキノとかノソノソは最初はスピードが出やすいし、コーナーとかも曲がりやすくてドリフト慣れしてない初心者の人でも凄く使いやすいキャラなんだけど、最終的に出るスピードはあんまり早く無いから対戦向きじゃないんだよね。

 それと、車体が軽いからケッパみたいなデカイやつに押されたら吹っ飛ばされやすかったりね…。

 それに比べてケッパやゴリ蔵は最初スピード出づらいけどスピードに乗ったら一番早いし、体当たりされても強いんだよね。

 アップル姫やネッシー、マリナ姉妹はその中間ってトコかな?

 でもまぁ色々説明しちゃったけど、遊びだから好きなの使ったらいいと思うよ。

 普通に対戦せずに各コースをクリアするだけならどのキャラクターを使っても可能だし!」


 なるほど。

 流石熟知してるよね。

 上級者がゴリ蔵を使う理由がやっと理解出来た。

 どうやら私には使いこなせそうにない。

 大人しくいつもの亀かキノコを使う事にしよう。


「うん、じゃあ使いやすそうなノソノソにしようかな?」


「オッケー!

 じゃ俺はゴリ蔵にする」


 お互いのキャラが決まったところでレースがスタートした。

 わぁ!

 久しぶり!

 何か滅茶苦茶今楽しい!


 レース途中でアイテムボックスを通過してアイテムをゲットする。

 チッ…バナナかよ、使えねー。

 そう思いながら適当にバナナを放る。


 そして次の周またアイテムボックスでアイテムゲット。

 う〜ん…緑の甲羅…。

 なんか微妙に厄介なやつ…。

 凄く要らないんだけど、変な所で放ると自分に跳ね返ってくる危険性があるからバナナの時のようには…。


 そう思いながら出来るだけ広い場所に出るのを待っていたら…!!!

 ギャー!!!

 バナナを踏んでスピンしてしまった。

 そしてその後ろから悠々とアップル姫とルイスが駆け抜けていく。


 誰!?

 こんな所にバナナ放った人!!

 …よくよく考えてみると私だったかもしれない。

 あぁ!!もう!!

 こういう事があるからバナナとかさぁ!

 本当要らないんだよ!!


「…あの…大丈夫…?」


 御和君が気を遣っているのか心配して声を掛けてくれる。

 もしかして私凄く微妙な表情をしていたのだろうか。

 だとしたら凄く恥ずかしいのだが。


「う"…、ま、まぁ負けるのもゲームだと思ってるから気にしないで」


 う"〜悔しい〜。

 御和君とはそもそも勝負する気はないけど、せめてCPUくらいには勝ちたいな。


「赤い甲羅出たら遠慮なく俺にぶつけて良いからね」


 優し過ぎる!!!

 やっぱりキミ、ジェントルマンだわぁ!

 でもさ、君とは1周以上差付いてるから今私が甲羅を持っていてぶつけたとしても、もう追い越せない距離間なんだよな…。

 だけどその心遣いが嬉しい!


「ありがとう。

 御和君も私に遠慮しなくて良いから普通にゲーム楽しんでね。

 私も下手くそなりにゲームを楽しんでるからさ」


「そう?

 それなら良いんだけど。

 相瀬さんも遠慮しないでアイテムバンバン使ってね」


「うん、ありがとう。

 そうしてる。

 そうしたが故にね、さっき自分で落としたバナナ踏んづけたの。

 笑えるでしょ…」


「あ、あぁ…そうだったんだ。

 まぁ…そう言う事もあるよ…。

 ドンマイ…」


 失笑しそうなのを堪えるように口元を歪ませながら目を合わせずに言う御和君。

 気を遣って笑いを堪えてくれる所あたりが本当優しさを感じるよね。

 別にゲームだし笑っても良いのに。

 そう考えると本当に過去Aで御和君と巡り会いたかったものだわ。

 皮肉な事に私が人生をやり直して白金塾に通ってなかったら無かった縁だったんだよね。


 そう考えると人生って本当に数ある選択肢の中からどの選択肢を選んで生きていくかによってこんな風にどんどん人生変わっていくんだなぁ。

 選択肢が変われば環境が変わって、環境が変われば人生も変わっていくんだね。

 分かりきっていた事の筈なのに今は何だか凄く新鮮に感じてしまう。

 本当に人生ってどこでどう変わるか分からないものだね。


 時間が過ぎるのはあっという間で御和君とあれこれ会話をしながらマリナカートで遊んでいたら気付けば時計の針はもう夕方の5時を過ぎていた。

 あ、そろそろ帰らないとな…。


 御和君の家は学校から離れた場所にあるせいか愛の鐘が聞こえなかったから5時を過ぎていた事に気付かなかったのだ。


 急いで帰らねば。

 うちは門限も塾以外の理由では凄く厳しいので夏でまだ空が明るくても6時前には家に入ってなければならないのだ。


「御和君、そろそろ帰らなきゃいけない時間になってしまったよ。

 今日もありがとう、凄く楽しかった」


 凄く懐かしかったよ、ウルファミ。

 マリナカートも。

 もう何年振りだろうか…?

 転生してからの年数で考えても最後にマリナカートをやったのは10年以上前って事になるか…。

 …としたら転生する前の分もカウントすると20年振りくらいになるかもしれない。

 本当に楽しかった。


「あ…、帰る?

 送ってくよ」


「ううん、いいよ。

 いつも送ってもらって申し訳ないから。

 今日はそのままゲームやってな。

 外もまだ明るいから送ってもらわなくても大丈夫よ」


「いやいいよ!

 すぐそこまでだから!」


 紳士過ぎる。

 だけど、流石に毎回送らせるのは申し訳無さ過ぎだわ。


「いやいや、でもこないだもそう言いつつ結局送らせちゃったでしょ。

 だから申し訳ないから今日くらいは本当に気を遣わなくていいから」


「これから暫く中々会う機会なくなるしょ?

 夏期講習も終わったし、塾も通常通りになるし、学校も違うし。

 だから最後にって訳ではないけど…暫くこう言う機会無くなるからって事で遠慮しないで。

 今日は送っていくよ」


 申し訳なくてお断りしていたんだけど、こう言われてしまってはこれ以上はお断りしにくいな。

 何だか結局申し訳ないねぇ…。

 キミ、優し過ぎ!

 将来変な女に付け込まれない様にね。

 あんまり優し過ぎるとその優しさにどんどんつけ込んでくる悪い人もいるから。

 …って御和君なら頭良さそうだし大丈夫か。

 要らぬ心配かもしれない。


 結果的に今日も御和君に送らせてしまう結果となり、リビングの御和母に軽く挨拶をした後、私は御和宅を後にした。

 こうして小学校最後の夏休みは終わったのだった。


 ―2学期 始業式―


「おはよう!

 元気だった?」


 音葉と梢が元気よく挨拶をくれる。


「おはよう!

 もちろん元気だったよ!

 音葉達も元気だった?」


「うん、もちろん滅茶滅茶元気だったよ!」


 それは良かった。

 やっぱり健康が一番ですよ。

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