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勉強会

そう思い立った私は早々にシャワーを浴びて汗を流し、明日の持ち物の準備をした後目覚ましをかけて布団に入った。


 持ち物は塾の夏期講習で使ってるプリント類とテキストとルーズリーフ、筆記用具だ。

 そして自由研究を作る時に使うであろう色鉛筆も持って行こう。

 御和君が問題解いてる間何もしないのも暇なので自由研究のノートでも書かせてもらおう。


 そうして私は目を閉じた。

 眠りにつくのはあっという間でそのすぐ後の記憶が全く無い程に眠りにつくのは早かった。 


―翌日―


 目覚ましがジリジリと大きな音を立てる。

 突然の大きな音にビックリして飛び起き、慌てて目覚ましを止める。

 いつものように立ちくらみ防止にベッドに暫く座ったまま待機。

 その間に半分寝ぼけながら髪を結ぶ。


 5〜10分程が過ぎた頃、のそのそと行動開始。

 リビングに降りてやや寝ぼけながら適当にトーストを頬張り、牛乳を飲む。

 その後後片付けを終わらせて歯を磨き洗顔も終わらせる。

 髪を結んでいたゴムを外し髪を軽くブラシで整える。


 いつもの腕時計を身につけて足の重りをつけたまま靴下を履く。

 重りに靴下を被せて重りの固定の代わりにするのだ。

 外に出てもズボンの裾に隠れるのだから足首がもっこり膨らんでいても誰も気づかないと言う寸法だ。

 こうして私は日々足を鍛えている。


 約束の時間の20分程前に家を出る。

 図書館は10〜15分程歩いた先にあるので5分前には着くだろう。


 図書館に到着すると御和君は既に到着していた模様で入り口近くで待っていた。

 軽く手を振って歩いて行き話しかける。


「早いね。

 お待たせしてしまって申し訳ない」


 そう言うと


「いやいや。

 全然だよ。

 俺も今さっき着いたばかりだったし」


「そっか。

 あれ?手ぶら?」


 御和君が鞄を持って来てない事に気づいたので聞いた。


「うん、昨日母さんに聞いたら良いよって言ってたからうち行こう。

 飲み物くらいなら出せるってさ」


 なるほど。

 それならどの道家に戻るから荷物を持ってくる必要はないもんね。



「わざわざありがとう。

 じゃあ今日は勉強会がてらに二十日大根も見せてもらおうかな?」


「うん。

 大歓迎だよ。

 じゃあ行こうか!

 俺ん家こっちなんだ」


 そう言って指を差した方向は私の家とは真逆の方向だった。


「え!?

 家こっちだったの!?」

 

 私が吃驚しながら言うと


「うん…まぁ…、そうだね」


 何か少し気まずそうに言う。


「昨日言ってくれれば良かったのに〜」


 無駄に気を使わせてしまったようで少し罪悪感を感じながらそう言うと


「いや、昨日は俺が勝手に付いて行っただけだから気にしないで!

 相瀬さんのせいじゃないから!」


「でもなんかごめんね」


「昨日は色々と今日の事話してたから途中で話のコシを折るのが個人的に嫌だったからさ。

 俺が勝手にそうしただけだから本当に気にしないで」


「ありがとう」


 キミ…モテるでしょ?

 なんて言うか、小学生ながら凄く紳士だよね。

 さり気なくエスコートをし、相手に気を使わせなかった辺りが。

 オバちゃん小学生にさり気なくエスコートされちゃったわ!

 君のことを今度からジェントルマンとでも呼ぼうか?

 冗談だけど♪


 とは言えやっぱりねぇ、御和君が大人になったら良い男になるんだろうけど今は萌えないねぇ…。

 でも私の中身が本当の小学生だったら好きになってたかもしれないわ!

 でもその時は出会えなかったんだよね、御和君と。

 本当に人生とは数奇なものだわ。


 御和君と色々と話しながら歩いていて、意外と遠くから来てたんだなと言う事実を知る。


「結構遠くから来てたんだね」


「まぁ慣れれば大した距離でもないよ」


 流石。

 若いって良いよね。

 パワフルさが伝わってくるわ。


「時々気分によって自転車で行く事もあるけどね」


「そっかじゃあ昨日は歩きの気分だったんだ?」


「うん、まぁそんな感じ」


 その後話しながら歩き続けようやく着いた。


 御和君の自宅は立派な一軒家だった。

 きっと裕福なご家庭なんだろうな。


「遠慮しないで上がってよ」


 そう言ってドアを開けて私を招待してくれる。


「ありがとう。

 じゃあお邪魔します」


 そう言って軽くお辞儀をして上がらせてもらう。


「俺の部屋こっち」


 そう言って階段を上がる。

 リビングらしき部屋のドアが開いて御和君のお母さんが顔を出す。

 年齢は分からないけれど割と若い感じの印象で小綺麗なお母さんだった。


「あら(さな)君お友達?」


「うん、昨日話した子」


「あらあら。

 わざわざ遠くから来て頂いたんでしょう?

 ゆっくりして行ってね」


 と凄く丁寧な言葉をかけて頂いた。


「いえいえ、こちらこそお邪魔してしまってすみません」


 そう言って会釈をして軽くお辞儀をした。


「あら全然良いのよ」


 と御和君のお母さんも会釈で返してくれる。


「母さんもういい?」


 階段を上がった先で下を覗き込んでいた御和君が少しため息混じりにそう言うと


「あ、あらごめんなさいね。

 どうぞどうぞ上に上がって下さい」


 そう言ってどうぞどうぞと言うように両手で階段を示した。


「すみません、では失礼します」


 軽く会釈をして私は階段を上がった。

 御和君の部屋は男の子だなと思うような小ざっぱりした部屋であまり余計なものが無い感じのシンプルな部屋だった。

 考えてみたら私男の人の部屋って初めて入ったかも。

 男の人の部屋ってみんなこんな感じなのだろうか?

 部屋も小綺麗に整頓されている。


「どうしたの?ぼーっとして。

 何か気になるようなものあった?」


 どうやら私はぼんやりしていたらしい。

 御和君が不思議そうな顔でこちらを見つめている。


「いや、男子の部屋って初めて見たからさ。

 シンプルだけど凄く良い部屋だね!

 綺麗に整頓されているし」


「そうかな?

 そう言われるとちょっと嬉しい。

 さ、それよりも早速宿題に取り掛かっていい?」


「あ、ごめんね。

 そうだよね、了解!」


「丁度良いローテーブルが無かったから俺の机に椅子を二つ置いてやろう。

 ちょっと狭くなったらごめん」


 そう言って御和君は隣の部屋から椅子を持って来て置いてくれた。

 …何か微妙に近いな。

 別に嫌ではないんだけどさ。

 だからと言って特に良くもないんだよ。

 やっぱり人生とは数奇なものだな。


 こんなシチュエーションを逆の立場であの人と過ごしてみたかったな…。

 あの人と私には大きな壁があるからどんなに願ってもこの願いは一生叶わないんだろうな。


「…瀬さん!

 …相瀬さん!」


 どうやら呼ばれていたらしく御和君の呼びかけにやっと今気付いた。


「あ、ごめん。

 どうしたの?」


「さっきからぼんやりしているけど大丈夫?」


「ごめんね。

 何かぼんやりしちゃっただけ。

 気にしないで!」


「うん。

 じゃあ早速だけどさ、ここ教えてもらいたいんだけど相瀬さんはどうやって解いた?」


「どれどれ?」


 そう言いながら御和君が指差している問題を見る。

 あぁ…私もこの問題凄く嫌だったかも。

 いまいちクリアーに理解出来ない消化不良のような気分になった問題なんだよね。

 嫌なものは皆んな一緒か…。


「あぁ、これね。

 これさ、難しかったからあんまり私も自信が無いんだけど間違えてたらごめんねって言う事を予め言っておくけどそれでも良い?」


「へぇ相瀬さんでもそう言うのあるんだ。

 なんかちょっと安心した」


 人をスーパーマンか何かのようにでも思っていたのだろうか?


 言っておくが私は決して天才肌でも無ければ地頭が良い訳でも無いからね!

 滅茶苦茶努力をしてやっとの思いで結果を出しているだけに過ぎないから。

 全然凄くも優秀でも何でも無いただの凡人だからね。


「あるさ!

 分かんない事なんていつもいっぱいあるよ。

 だから必死こいて勉強してる」


「へぇ〜…。

 なんか意外だった。

 塾ではそんな素振りは見えなかったから元々頭良いのかなって思ってたんだけど」


「そっか…。

 私は頭あんまり良くないよ。

 がっかりした?」


「ううん、そんな事ないよ。

 逆にちょっと嬉しい。

 良い成績を取ってるやつも実はスゲェ努力してんだなって思うとさ、苦しいのは俺だけじゃないんだって思えてきて…」


「まぁ、中には本当に1日2〜3時間しか勉強しなくても全国でトップ3に入ってる学校に受かっちゃうような天才も世の中にはいるんだろうけど、少なくとも私はそう言う部類の人間とは全然違うよ、残念ながらね。

 まぁ白金塾で日々勉強してて思うけど仮に私があと5回人生をやり直したとしてもそのレベルに到達する事は出来ないんだろうなって思うよ。

 私はただの凡人だから。

 時々自分の能力に限界を感じる時がある」


 弱音を吐いてはいけないと分かってはいるのだけど、何となく話の流れ上の勢いで言ってしまった。

 私は小学生相手に何を弱音を吐いているのやら。


「そうなんだ…。

 皆んなそれぞれ悩みがあるんだな…」


 御和君はシャープペンを指で回し、それを見つめながら静かにそう言った。

 さて私はそんな話をしにしたのではない。

 時間は有限なのだから今日すべき事をやらねば!


「さて、とりあえずその話は置いておいて宿題の続きをやろう!」


「あ、そうだった。

 ごめんごめん。

 ええと…どこからだったっけ?」


「その面積のやつでしょ?」


 私はプリントの問題を指差した。


「あぁ、そうそう。

 これからだったね。

 ごめん、話のコシ折って。

 説明も分かる範囲で全然いいからよろしく!」


「うん、じゃあ早速。

 これはまず補助線をここに引いてこの二つの三角形が…」以下省略


「あぁ!

 なるほど!

 言われるまでこれが相似だって言うの思いつかなかった」


「そうそう!

 私もかなり考えたもん。

 2つの三角形が合同って所までは分かってたんだけどもう一つの小っこい方をどうすれば良いやら…ってね」


「これ難しかったな…」


「私もそう思うよ。

 答え合わせ明日じゃん?

 だから合ってるものか間違ってるものかも分からないからあんまり自信も無いし…。

 間違ってたらごめんね」


「いやいや全然だよ!

 寧ろありがとう。

 俺も分かんないけど多分合ってると思うよ。

 なんとなくそんな気がする」


「じゃあ次の問題にかかろうか!」


「だね!

 早く終わらせちゃおう!」


 こうして御和君の宿題を順調にこなして行きお昼を少し過ぎた頃御和君のお母さんが勉強の様子を見に来た。


「真君、勉強の方はどう?

 順調?」


「うん、相瀬さんのお陰でかなり順調!」


 御和君からお褒めの言葉を頂く。


「そう!

 良かった!

 相瀬さんわざわざありがとうね」


 御和君の返事に満足した御和母が嬉しそうに返事をした後私に御礼を言った。


「いえいえ…」


 私も軽く会釈で返した。


「それでね、もう今お昼なんだけど相瀬さんも良かったら下に降りて真君とお昼一緒にどう?

 大したものは無いんだけど、良かったらどうぞ」


 お昼か…。

 そう言えば今日家出てくるの早かったもんな。

 お昼の事すっかり忘れていた。

 ここから一回家に戻るって言うのも大変だし、ここはお言葉に甘えておこうかな?


「ではお言葉に甘えさせて頂いても宜しいですか?

 用意してくるのをすっかり忘れてしまいましたので」


 私がそう言うと


「いいわよ、いいわよ!

 じゃあキリの良い所で真君と一緒にいらっしゃい」


 そう言って御和母は部屋を出て階段を降りて行った。


「じゃあ下行こうか」


 御和君の宿題も丁度問題を解き終えた所でキリが良かったので私達は下のリビングへ向かった。

 御和君がドアを開けて


「どうぞ」


 と案内してくれる。

 小学生なのになんかここら辺も紳士だよね。

 このくらいの年頃って相手の事をあまり気にしない年頃だと思うのに御和君って年齢の割に凄くしっかりしてると思うわ!

 きっとご両親の教育が良いのだろう。

 家から見ても育ちが良さそうだし。

 お母さんもお上品な雰囲気だし。

 お坊ちゃんなんだろうな。


 シンプルでデザインの良いテーブルに並べられているのは冷やし中華だった。

 連日暑い日が続いているから凄く嬉しい心遣いだと感じた。

 丁度酸っぱいのが食べたかった所だったのもあって凄く嬉しいメニューだった。

 御和母が


「冷やしラーメンなんだけど相瀬さん食べれる?」


「はい!

 冷やしラーメン大好きです!

 ありがとうございます!」


「あら本当、良かったわぁ。

 じゃあどうぞどうぞ、ゆっくり食べてね」


「はい、ありがとうございます」


 私達は椅子に腰かけてお互いの様子を見て


「じゃあ頂きます」


 そう言って軽く頭を下げ箸を手に取り用意されていたタレをかけて食べ始めた。

 あぁ、美味しい♪

 暑くて食欲が湧かない季節にはやっぱりコレだよ!

 お酢の効いたこの醤油ダレが何とも食欲そそるよね。

 さっきまであまりお腹空いてない感じがしてたのに意外とお腹空いてた事に気付かされるくらいだ。


「美味しい〜」


 つい言葉に出てしまった。

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