表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/144

御和真輝

 まだ成長期なのでダイエットをする気は無いが無駄に太るのも嫌である。

 今年の冬休みは蜜柑を何個食べきる事が出来るか!?

 の挑戦をしているかのような休み期間なのであった。


 そして食べている期間中に箱の隅の方にある蜜柑は毎年の如くに真っ先にカビまみれになって腐ってしまうのであった。

 そして冬休みが終了する頃には蜜柑を見るのも嫌になったのであった。


 ―春―


 今は春。

 私は6年生になった。

 長かった小学生活も今年で最後かぁ。

 去年は本当に色々あったな…。

 良くも悪くも感慨深いものがある。

 今年こそは平和に暮らしたいものだ。

 最後の1年頑張ろう!

 そう気合いを入れ直す。


 新学期が始まった。

 今年も去年と同じ顔ぶれ。

 だから特に何の変化もなく感じる。

 新しくなったのは配られる教科書だけ。

 それと新しい訳では無いが一応去年とは違う教室。


 それでも新学期というものは何ともウキウキするものなのか、いつもより少し高めのテンションで音葉達が挨拶をしてくれる。


「雅おはよう!

 休み中元気だった!?」


「うん、特に何事もなく元気だったよ!」


 そして梢も


「うちらももう6年生かぁ…。

 だから何っていうのも特に無いんだけど、何となく嬉しいねぇ」


 と(ほが)らかに笑ってる。


「うちは今日は3時間で帰れるの嬉しい♪」


 と未央。

 未央と森脇さんはあの事件の揉め事以来そのまま疎遠になった模様だ。

 後日森脇さんに


 "未央が揉めた事を後悔していたよ"


 という嘘をついてしまった事について事情を説明して謝った時に


 "えぇ〜。うちもうあの一件以来ちさちゃんとはあまり関わりたくないなぁと思ってたのに…。"


 とボヤいていたのだった。

 因みに未央にも森脇さんが自白していた事については話していない。

 話を聞き出そうとしたが森脇さんが口を割らなかった事にしてある。


 未央の雰囲気からは2人が仲直りする事はこの先もきっと無いのだろう。

 何だか首を突っ込んでしまって申し訳なかったなと今でも思う。

 だが個人的には私も森脇さんは苦手なタイプなので、今後仲良くなりたいとは思わないので未央の判断を否定はしない。


 因みに私は沙奈ちゃんとは約束があった手前こっそり後日談をしたものの、敢えて音葉達にも何も話していない。

 あの時松本君や松本君の母があのテープで何かしらのアクションをしてこなかった事からこの件に関してはこのままそっとしておいて欲しい感じなのだろうと感じたからだ。


 真実を明らかにして潔白を晴らしたいと言う訳でもなく、彼らは静かに居なくなったのだから。

 個人的には凄く悲しいと感じた。

 だがもうこれ以上彼らは波風を立てたく無いのだろう。


 私も彼らのその意思を尊重したいと思ったのだ。

 テープを彼らに委ねた以上、真相を口にすべきなのは彼らであって私では無いと思う。

 私の戦いは終わったのだ。

 凄く苦い形で…。


 ―ある日―


 体育の授業で今年もまた運動会の練習が始まった。

 まずは毎年やらされる50メートル走のタイムを計る所から。

 相変わらず私は足が遅い。

 毎年この時期になると足が速い人が羨ましくなってしまう。

 私も足が速くなれたらいいのに。


 ふと思ったけどよく中高生の部活動で陸上部の人達が筋トレをしているのを昔中学校や高校で見かけた。

 考えてみたら走る事って基礎体力をつける事以外にも必要な筋肉をつける事も必要なんだろうな。

 陸上部以外にも他のスポーツ系の部活の人もランニング以外に筋トレも併用してやっている所を見た事がある。


 私も必要な筋肉をつけたら足を速くする事が出来るだろうか?

 考えてみたら来年の今頃は私は中学生。

 体育の授業も5段階評価される訳だから、なるべく苦手な物は今から克服しておきたい所だ。


 よし!

 今年の目標は下半身に必要な筋肉をつける事を目標としよう!

 …とは言え具体的に何をすれば良いのだろうか?

 身体を柔らかくするストレッチを始めとしてよく見かけるのはスクワットだ。

 だがそれ以外はよく分からない。

 こんな時にスマホがあればプロのインストラクターの人が懇切丁寧に運動の仕方を教えてくれる動画などが存在するんだろうなぁ。


 野良えもんの世界の、のび吉にでもなった気分だ。

 のび吉のように


 "野良えもん、スマホ作って〜"


 と今すぐに懇願したい気分である。

 あぁ、そう考えたら私が元いた未来Aは何て便利な時代だったのだろうか?

 そうは思うが、現実逃避をしても仕方がない。

 他に手段が無いので知ってる限りの事で良いから出来るだけやろう。


 だけど無理をすると続ける事が難しくなるので無理のない程度にしておく事にしよう。

 そうと決めた私は毎日学校から帰ったら柔軟体操などのストレッチをやった後、スクワットを1日100回やる事にした。


 帰宅した後ルーズリーフにそれを書いて机に貼っておく。

 そうすれば忘れていても翌日の学校の準備をする時には思い出す事ができるだろう。

 それと昔何かのスポーツアニメで足に重りを巻いて生活している人達がいた事を思い出した。


 休みの日にでも何か足に巻けるような袋みたいな物を裁縫して作ろう。

 中に重りの代わりに砂を入れようと考えているのでなるべく凄く丈夫な生地で作りたい。

 砂はどっかの公園に磁石を持って行って砂鉄を集めてこよう。

 人に砂鉄を集めてる所を見られると恥ずかしいので、出来るだけ塾帰りのついでや、夕方近い時間に公園に行く事にしよう。


 それから暫くの期間私は足の重り作りに没頭した。

 学校と塾と塾の宿題以外の時間は全部重りの制作の為に注いだ。

 布は捨てるつもりのクタクタになったフェイスタオルを何枚か祖母の家で貰った。

 足に巻くには充分な長さもあるし、生地を2枚重ねて縫い合わせれば強度もまずまずだろう。

 足に結び付ける部分を残し、細長い袋状に縫っていく。


 砂鉄集めは家の冷蔵庫に貼ってある磁石を拝借して袋を2枚用意して持ち歩き、公園の砂場で袋に入れた磁石を使って袋越しに砂鉄をくっつけて集め、それをもう一枚の袋に集めていく。

 思ったよりもあっという間に集まった。


 そしてその砂鉄をポリ袋を何重にも重ねて簡単に破れないようにしたものに入れて、袋の口を縛り布の袋の中に入れる。

 布の袋の方はマジックテープで簡単に中身を入れ替える事が出来るように作った。


 これで中の砂が飛び出て来たりした時に中の袋を交換したりする事も出来るのだ。

 素人の手作り品だから強度にはやや心配が残るものの、1学期が終わる頃には無事完成した。


 これからは学校や塾に行く時やお風呂に入る時以外はこれを巻いて生活する事にしよう。

 両足に巻くと割とずっしりとした重みを感じた。

 どのくらいの重さがあるのだろうか?

 気になったのでお風呂の脱衣所にある体重計に作った重りを2つ乗せてみた。

 想像したよりも重みがあったようで2つで5〜6㎏程あるようだ。

 という事は片足で大凡2〜3㎏くらいか。

 まぁ、手作りならこんなもんでしょう。

 ちょっとした訓練には丁度良い所であろう。


 ―夏休み―


 今は夏休み。

 そして今日は土曜日。

 今日と明日は塾の夏期講習は休みなんだけど…。

 暑い!!!

 今日のこの暑さは何なの!?

 窓を開けても風が全く入って来ないし、部屋の中は熱気がこもって悶々としている。


 まるで部屋の中はミストサウナだ。

 ミストは無いけど。

 あぁ…なんかもうダメ…。

 脳みそが溶け出して耳から流れていくんじゃ無いかと思ってしまうほどの気温の高さだ。


 コップの麦茶もあっという間に氷が溶けてすぐにぬるくなってしまうし、飲んでも飲んでもひたすら汗をかくだけになってしまう状況だ。

 まぁこれぞ夏なんだろうけど、気分的に宿題をやるのも嫌になっている。

 あぁ…でも月曜日にはまた塾があるから月曜日までには終わらせなくてはならない。 


 何処か涼しい場所に行きたいな。

 何処かただで涼めてゆっくり出来る所は無いだろうか?

 あぁ…クーラーの効いた涼しい部屋で早く宿題を終わらせたいものだ。

 何せ私の部屋には扇風機すら存在しない。

 そんな風にぼんやりしながら宿題のプリントを眺めていた時、図書館ならクーラーがついてるんじゃないかと思い出したのだ。


 図書館なら無料でゆっくり出来るし、静かだから宿題をするには充分な場所だし、幸いな事に家からそう遠くはない。

 そう思い立った私は手提げバッグに筆記用具とルーズリーフ、宿題などを入れて図書館へ向かった。


 図書館の自動ドアをくぐって中に進む。

 あぁ…、外より全然涼しい。

 思わずため息が漏れる。

 今日のような日は図書館に来て正解だったようだ。

 ここの図書館は化粧室の近くに足で踏んで水を出すタイプのウォータークーラーが付いているので途中で喉が乾いても水を飲む事が出来るのがありがたい。


 図書館によってはこれがない所もあるし、かといって図書館とは基本的には飲食が禁止なので今日のような猛暑の日などは途中で水分補給が出来ないのは不便に思うので、ウォータークーラーを付けてくれた人に感謝をしたい。


 さてと、どこかの席で落ち着こう。

 そう思った私は適当に座れる所を探すも、思ったより人が多い事に気付く。

 皆んな考える事は同じか。


 ですよねぇ〜!!

 土日祝日にただで利用出来て静かで涼しい所って図書館くらいですもんねぇ。

 と心の中で強く同感した。

 席が無いほどビッチリと言う訳ではないのだが、他人の隣に一言断ってから座らなければならない程度には埋まっている。


 嫌だなぁ〜…。

 私コミュ病だからあんまり知らない人に話しかけたくないんだよなぁ。

 かと言って座らない訳にも行かないので、なるべく声をかけやすそうな感じの人の隣にでも行こう。

 そう思って近辺の席を見回していたら席を立って椅子を戻し、鞄を肩にかけて帰り仕度をしている人を発見した。


 私はすかさずその席へ移動。

 助かった。

 これで人に話しかけずに済んだ。

 ホッと胸を撫で下ろしながら私は椅子に腰掛けて鞄に詰めて来た宿題を広げる。


 宿題に取り掛かりながらやや暫く時間が過ぎた頃、


「あの…すみませんがここ空いてますか?」


 と声を掛けて来た人が。

 振り向くと私と同じくらいの年齢の少年だった。


「あぁ、空いてますよ」


 そう答えた。


「ありがとうございます」


 少年はそう言って椅子を引き座った。

 引き続き私は宿題の続きに取り掛かる。

 …が、何となく視線を感じて隣をチラ見した時隣の少年とバッチリ目が合った。


 何!?

 この人ずっとこっち見てたの!?

 怖いな。

 私に何か用なのだろうか?

 そう思って目を逸らした時少年が


「あの…相…瀬さんだよね?」


 と突然話しかけてきたのだ。

 この人知り合いだったっけ?

 少なくとも学校関連ではない筈。

 他のクラスでも見かけた事ないもの。

 だとしたらどこで会ったんだ?


「…そうですけど、どこかでお会いした事ありましたっけ?」


 私がそう答えると


「そうだよね…。

 話した事無いから覚えてる訳ないとは思ってたんだけど…。

 その…、白金(ぷらちな)進学塾で同じ夏期講習受けてる御和(おやわ)真輝(さなき)です」


 へぇ〜変わった名前。

 しかも名字だけでなく下の名前まで律儀に名乗る人もちょっと珍しいかも。

 夏期講習受けてるの何人もいるのによく私なんかを覚えていたなこの人。


「あぁ…、私は相瀬雅です」


 向こうも律儀に名乗って来たので私もフルネームで答えた。


「うん、知ってる。

 1番最初のテストでも名前を呼ばれていたし、こないだのテストでは相瀬さんがトップだったよね」


 なるほど。

 それで私の事知っていたのか。

 因みに1回目は真奈ちゃんがトップだったんだっけ。


 思えば何だか信じられない。

 過去Aでは雲の上の存在のように感じていた彼女と今は肩を並べるくらいになったんだなぁ。

 そう考えたら彼女もまた私と同じだけの月日、同じくらいの努力をしてきたのだろうな、きっと。


 今年の夏期講習は去年までの普通の講習とは少し違って特別強化講習と白金進学塾では呼ばれている。

 特別強化講習の何が特別かと言うと私達は今年6年生なので来年は中学受験が控えている人もいる訳で、主にその受験対策の勉強を徹底すると言う感じなのだ。


 基本的に私の通っている塾は勉学の自由を理念としているので普段授業は行わないし、いつどの教科を勉強しても個人の自由なのだ。

 なので、普段は大部屋に仕切り付きの机が並んでいる部屋で各々の勉強を自由にしていくスタイルなのだ。


 そして夏休みの夏期講習も夏期講習用のテキストやプリントを沢山配布し、それをあくまでも自分のペースでもって進めると言うスタイルだったのだ。

 勿論休みが終わるまでには出されたテキストの類は全部終わらせるというのが前提だが。

 だから家で宿題を沢山こなし、且つ勉強を家でして来る所までが前提とされていて、その中で自力で理解が及ばなかった所を個人指導の講師に教えてもらうなりして塾で会得して帰る、と言うのがこの塾のスタイルなのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ