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シャープペン盗難事件⑧

 大人じゃないと買える代物ではないよね。

 今の時代にはインターネットが無いからね。

 売り切れたら次の入荷を待つしかないんだよね。

 ここへ来て再びネット売りの有能性を痛切に感じさせられる。

 やっぱりネットって最強…。


 最近ではそれを買うお金が無い為にカツアゲや窃盗、殺人などの犯罪に手を染めてしまう未成年者が続出中の逸品なのである。


 だがソフト一つで人生を棒に振るうのは勿体ないなと思う。

 あと10年もすれば数百円で中古ソフトを買える時代が来る。

 今犯罪を犯してしまった人たちはきっと10年後に後悔するんだろうな。


 そんな物のために…そんな物って言ったら作った人に対して失礼な言い方かもしれないが、だけどやはり人生と天秤にかけたらそんな物だと思う。

 人生ってそれだけ重い物だと私は思うから。

 だからそんな物のために一生を棒に振るわないで欲しいと個人的な意見として思う。


 袋田が騒ぎたい気持ちが分からなくも無いが、袋田は嫌いなので共感したく無いのでとりあえず否定をしておこう。

 とにかくガラスは危ないので止めなくては。


「破片散らばってて危ないからやめなさい?」


 冷ややかに私が袋田にそう言うと


「また相瀬かよ!

 お前最近いっつも松本庇って怪しいのな!

 松本の事好きなんじゃねぇの!?」


 はぁ!?

 何言ってんだコイツ!?

 頭悪いんじゃねぇのか?

 何か言い返してやろうとしている時松本君の肘から服に血が滲んでるのが見えた。

 えぇ!?

 これ冗談抜きでヤバいやつじゃん!

 袋田なんかに構ってる場合じゃない!

 早く血止めて保健室連れて行かないと!


 とりあえず色々グダグダ考えるのは後でいい!

 私は松本君の傷を洗い流す為"ヒューヒュー"だのなんだのと横で騒いでいる袋田達を無視して松本君を水飲み場に連れて行った。


 松本君は相変わらずずっと泣き続けているが傷に破片が残っていると危険なので傷をよく洗い流した。

 そして自前のハンカチを取り出して松本君の腕をそれで縛った。


 こういった出血量が多くて血がなかなか止まらない場合には、心臓に近い腕の部分をキツく縛って血の流れを少しでも止める方が幹部にハンカチを当てたりするよりも有効だったりする筈…。


 滅多にこんな状況がないからあんまり覚えてないんだけど、昔中学校の保健体育の授業の教科書でそんなような事が書いてあったような記憶が(おぼろ)げにある。


「腕を心臓よりも高い位置に上げていれば血が止まりやすくなるから腕を上げていて。

 そして今すぐ保健室行こう!

 応急処置でも何でも良いからとりあえず手当てしてもらおう?」


 私がそう言うと松本君はベソをかきながら(うなず)いた。

 松本君に付き添って保健室へ行った。


「どうしたの?」


 と保健の先生。


「教室のドアのガラスが割れた時、転んだ拍子に落ちてたガラスで腕を切ったようで出血しています」


「傷は水で流した?」


「はい、破片が残らないようによく流しましたがなかなか血が止まらないので手当てが必要かと思いまして保健の先生に応相談かと…」


「了解。

 このハンカチは誰の?」


「私のです。

 出血量が多かったので腕をきつく縛って腕を高く上げててもらいました」


「あぁ最高、それでOK!

 過去に誰かに手当した事あるの?」


「いえ、たまたま本で読んだ事があるだけです」


 昔中学生だった時に保健体育の教科書をほんの少しだけ。


「素晴らしい。

 よく勉強してますね、偉いわ」


 いえ、たまたまですよ。


「ありがとうございます」


 保健の先生は患部に滅菌ガーゼを当てて包帯を巻いている。


「傷が深いようでしたら一度病院に行って診てもらった方がいいかもしれませんね」


 私がそう言うと


「うん、私の方から担任の先生に言っておくから。

 担任の先生誰?」


「里中先生です」


「分かりました。

 じゃあこれ巻き終わったら2人は教室に戻ってて」


「はい」


 包帯を巻き終えた先生は


「よし!これでOK!

 じゃ戻っていいよ」


 私達にそう言った。


「はい。

 では失礼しました」


 私達は軽く一礼をして保健室を出て教室に向かった。

 それにしても今回のこの仕打ちは酷い!

 冤罪で自供を強要した挙句にわざわざこんなデリケートな問題をあんな(おおやけ)の場で騒ぎ立てて。


 クラス内での虐めを焚きつけたのは里中だと思う。

 こんな教員が何故許されるんだろうか?

 何故野放しにされているのだろうか?

 スマホもネットも存在しないこの時代が恨めしい。

 私は教室に戻る道中に松本君に聞いた。


「ねぇ、さっきの事だけど本当に松本君がやったのかい?

 私は違うんじゃないかとずっと思ってたけど、あれは本当なのかい?」


「……」


 保健室で手当を受けた事で松本君は少し落ち着きを取り戻してはいたものの口を(つぐ)んで(うつむ)いたままだ。


「こんな事を言うと余計なお世話かもしれないんだけど、今回の事を君は親に相談した方がいいと思う。

 言いにくい話かもしれないけど、本当に子供を大切に思っている親ならばきっと君を(まも)ってくれると思う。

 だから勇気を出して…」


 私がそこまで言いかけた所で


「無理だよ。

 無理なんだよ…。

 だって誰も信じてくれないし、親だってきっと信じてくれないよ。

 だって僕じゃないって言う証拠が無いから…」


 そうやって里中に脅されたのだろうか?

 これは一種の洗脳だな。

 恐ろしい事だ。


 そう言いながらまた松本君は泣きだす。

 キミ本当、よく泣くねぇ…。

 流石にその泣き癖はちょっと直した方が良いと思うわ。

 もう少し強くならないと今後も色んな人間につけこまれるよ?

 人間も所詮は動物の一種に過ぎないから本能的に自分より弱いと思ったら食ってかかってくる人なんてザラに居るからね。

 皆んなが皆んな理性を持ち合わせてる訳じゃ無いんだよ?

 動物の世界も人間の世界もナメられたら終わりだと思う。

 だから隙を見せちゃいけないのよ。


 とは言え今は怪我もしたばかりで精神的に参っている状況だろうから追い討ちをかけるように言ってしまっては逆効果だ。

 言ってやりたい事は山ほどあるが今は置いておこう。


「どんなに苦しい状況でも子供を信じてくれるのが親って言う存在だと思うよ」


 本来なら護ってくれる存在だから人は親を保護者と呼ぶのだと思うよ。

 勿論我が家のような例外もあるが。


「……」


「ご両親は優しい?」


「うん…」


「君は親に愛されてる?」


「…分からない…」


 親の心子知らずとはよく言ったもんだな。


「でもご両親は君に優しくしてくれてるんでしょう?」


「うん」


「じゃあ君はやっぱり愛されてるよ。

 大切にされている」


「うん」


「だから尚の事この怪我の話も含めて親に相談してごらん。

 君の親ならきっと君を信じて君を助けてくれる。

 今回の件、本当は君じゃないのでしょう?

 だったら親に話すべきだし、話す勇気を君も持つべきだと思う」


「…うん」


 教室に到着した私は松本君に先に席に戻ってもらった後、ガラスを片付けようと用具箱からちりとりと(ほうき)を取り出してガラスを片付けた。

 こんな所にいつまでもガラスの破片が散らばっていたら怖くて廊下を安心して歩けないじゃない!

 本当、何で私が後始末なんか…。

 全部袋田のせい。

 正にあいつこそが私にとって害悪にしかならない人の典型的な例だ!


 チャイムが鳴って私はちりとりと箒を片付けて席へ戻った。

 しばらくして里中が戻って来た。


「おい、今職員室で保健の先生から話聞いたんだけど松本が怪我したって!?」


 里中の言葉にクラス中が重い空気でシーンと静まり返る。


「おい松本、どこ怪我したのよ?」


 里中が松本君の席近くに移動して松本君の腕の手当の跡を見る。


「おい、誰か中休みの事知ってるやついたら教えてくれ。

 まず相瀬、お前が松本を保健室に連れてったんだって?」


「はい。

 私がトイレから戻って来た時にガラスが割れる凄い物音がしたので振り返って様子を見に行った時には既にガラスの破片の上に松本君が倒れていて大怪我をしていました。

 あまり細かい状況は見ていないんですが、松本君の近くに袋田君達がいて松本君を犯罪者だとか言って罵っていたので袋田君達が松本君を突き飛ばしたのだと思います。

 松本君の腕の傷を水飲み場で流しに行く時もずっと"ヒューヒュー"だとか"お似合いだ"だとか私にまでずっと野次を飛ばし続けて来たくらいです。

 傷口の方が事態が深刻だったので私は無視しましたが。

 そして松本君の怪我に関しては、まずガラスの破片を傷口から少しでも取り除く為に水飲み場で傷口をよく洗いました。

 出血量が多かったのでハンカチで腕をキツく縛るなどの対応をした後そのまま直ぐに保健室に行きました。

 そして保健の先生に事情と状況を説明し、応急処置をしてもらい今に至ります」


「分かった。

 まぁお前に関しては保健の先生も凄く褒めてたし適切な行動だったと思う。

 他に何か知ってるやつ居ないか?」


 里中が言うも教室中は依然としてシーンと静まり返っている。


「おい三国、お前松本の友達なんだろう?

 何か知ってんじゃねぇのか?」


 里中がそう聞くと気まずそうに目を泳がせながら三国君は話し始める。

 恐らく余計な事を言ったら後から袋田達に恨まれたりして仕返しをされるのではないだろうか、などと言う身の上の心配をしているのかもしれない。


「…ええと…中休みの時に袋田君達が松本君に蹴りを入れて松本君がその時にドアにぶつかってドアのガラスがその時に割れて、松本君がそのままよろけて倒れました。

 松本君が転んだ所にガラスの破片が落ちてて多分それで怪我したんだと思います。

 凄く血が出てました」


 本当に恐っそろしい…。

 ガラスの上に転ぶとか考えただけでゾッとするわ。

 松本君あんなに沢山血が出て怖かっただろうに…。

 本当、許されるのなら松本君の時と同じように袋田をガラスの上に突き落としてやりたいくらいだわ!

 そう思うくらいの個人的な恨みが私にもある。


「袋田君達って誰よ?」


「袋田君と溝山(みぞやま)君と多喜(たき)君です」


 その2人は去年までの鴨居と新道の代わりみたいな存在である。

 まぁどこへ行っても舎弟作りたがる人は舎弟作るんだろうな。


「おい、その3人!

 どう言う事なのか説明しろや。

 まず溝山から聞くわ。

 溝山どうなんだ?」


「…俺…いや、僕は見ていただけなので僕は蹴ってないです。

 殴ったりしてたのは多喜君と袋田君です」


「お前は何してたのよ!?」


「…松本君の事を泥棒とは言ったけど僕は殴ってないんで…。

 僕は言っただけだから…」


 ズルいタイプだな。

 自分だって面白がって袋田達と一緒になって松本君を虐めて笑ってた癖に自分だけ逃げたなコイツ。

 本人が言うように直接手は下してないんだろうけど、なんかこう言う人って微妙…。

 殴ってなかったら良いのかよ。

 こういう人、個人的に嫌い。


「お前は袋田達を止めなかったのか!?

 なんぼ殴ってなくても袋田達と一緒になって悪口言ってたらお前も同じなんだわ」


「……」


「次、多喜お前はどうなのよ?」


「…僕はちょっと肩とかは殴ったかもしれないんですけど、ドアに突き飛ばしたのは袋田君なので直接怪我をさせたのは僕じゃないです」


 えぇぇぇぇぇぇぇ!?

 この子も自分がした事に対して罪悪感が無いタイプなの?

 こう言う罪悪感が無いタイプの人間って1番危険だと思うわ。

 怖い怖い…。

 こう言う人が


 "ついうっかり"


 と言うノリ感覚で簡単に人を死なせるタイプだと思う。

 恐ろしいね。

 被害者からしたら


 "ついうっかり"


 で命を奪われたらたまったもんじゃないわ。


「袋田もお前も同じなんだわ。

 本当…お前らこれ以上問題起こさないでくれ!?

 俺の立場を少しは考えてくれや!」


 えぇぇぇぇぇぇ!?

 途中までの言葉には共感できても最後の一言に関しては内容がおかしくないか?

 人が大怪我してるんだよ!?

 立場とか気にしてる場合ですか!?

 こんな人聖職者にしないで欲しい。

 切に願うわ、本当に。


 そもそも元はと言えばこの人が今回の虐めの元凶だと思うのだが。

 この人が松本君に冤罪して無理矢理皆んなが見ている公の場で謝罪させるなどの目立つ行為をさせた事がきっかけで起きた事件なのに、この人も自分のした事に対して罪悪感が何も無いんだね。

 お前、誰よりもノーモラルなんだから今後一切お前が道徳語るなよ?


「そして袋田!

 なんで松本突き飛ばしたのよ!?」


「…だって松本のせいで最近ずっと迷惑していたし、コイツのせいで学級会が長引いて帰りが遅くなったせいであの日父さんにドラドラクエスト6を買ってもらう約束をしてたのに、帰りが遅くなったせいで寄り道してると思われて父さんが違う場所に出かけちゃって結局買ってもらえなかった。

 クリスマスプレゼント要らないから代わりに今ドラドラクエストを買って欲しいって何ヶ月も前からずっと必死に頼み込んでいて、やっと父さんが良いよって言ってくれたのに…。

 ずっとドラドラクエストやりたくて楽しみにしてたのに…」

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