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シャープペン盗難事件⑥

「それがさ、さっきも言ったようによく分かんないんだよね!

 実はこの話内緒にして欲しいんだけど、うちステージのカーテンの裏の所見に行った話はしたじゃん?

 実はそこだけじゃなくてステージの横についてる演劇用に使ってるドアあるじゃん?

 そこのドア、鍵が開いてたからこっそり入ったんだよね。

 本当は勝手に入っちゃ駄目なの分かってるんだけどさ、もしかしたらちさちゃん自分が鬼やるの嫌だからってああいう所に隠れてるんじゃないかと思って…。

 ほら、ちさちゃんっていっつもちょっと我儘って言うか…何かかんか文句つけて鬼やらない事多いじゃん?

 でさ、話が戻るんだけど、そこにちさちゃん居なかったしあそこ筋トレっぽい重りみたいな奴とバスケとバレー用のボールくらいしか無い方の倉庫だから隠れられる様な場所も無いだろうし…。

 他にもステージの前に置くでっかい階段みたいなやつ、あれ中空洞になってるじゃん?

 だからあれの中とかもなんか色々探してたんだよね。」


 結構色々探してたんだなぁ…。

 10分以上鬼やってた理由が分かったような気がした。

 未央がこんなにマシンガントークする人だとは思わなかっただけに若干圧倒されてはいるものの、欲しい情報が私が聞く前に次々と飛び出して来るのは凄く嬉しい限りである。

 そして未央の話はまだ続く。


「でね、結局見つからなかったから諦めてポコペンの鬼のタッチ場所に戻ったのさ。

 そしたら何か既にそこにちさちゃんが居たんだよね。

 …で


 "私、捕まらないでタッチしたから本来は鬼やらなくていいんだけど、いつも未央は鬼やってくれてて悪いから今日くらいは交代するよ"


 とか言って珍しく交代してくれたんだけどさ。

 そん時はあぁ、珍しいなぁ〜くらいにしか思ってなかったんだけど、あの後に中神さんの事があったから何か怪しいなぁ…と思ってさ。

 昨日トイレで直接本人に何処に居たのか聞いたんだけど、ステージの上に居たって言い張るし、何か怒り出しちゃったからそれ以上は何も聞けなかったし…。

 昨日の一件があってから朝からずっとちさちゃんの機嫌が悪くて話しかけてもムスッとしてるしさ。

 なんか気まずいからこれ以上話しかけるのやめたの。

 んでさっき徳ちゃんを待ってたってわけ!

 幸いうち徳ちゃんとも友達だったからさ」


 なるほど!

 大変重要な話を沢山聞くことが出来ました。

 限りなく森脇さんは怪しいという事だけは分かりました。


 まず未央が鬼をやっていた時間が長過ぎる。

 そして未央がそれだけ探していたのにも関わらず見つからなかったと言う事。


 しかも体育館と言う場所は隠れられる場所が限られる環境であるのにも関わらず見つからなかった。

 大抵は隠れる場所が無さすぎてクラスの誰かかれかと隠れる場所が被ったり、そもそも隠れる事を諦めて足の速さだけで勝負にかける人だっているくらいである。


 そして普段鬼をやらない人が何故急に鬼を引き受けたのか…?

 本当に未央を気遣っての事だったのだろうか?

 本当はアリバイを作る為では…?

 そして未央が鬼をやっていた13分間彼女はどこで何をしていたのだろうか?


 凄く怪しい!

 だけどやはりこれだけでは核心には迫れない。

 日本の警察が何故実際の事件でなかなか犯人逮捕に踏み切れないかが分かるような気がした。

 私のスケールの小さな話と警察が取り扱うような大きな事件と比べるのは申し訳無いかもしれないが、


 "限りなく怪しいというだけでは言及する事が出来ない"


 という所は似通ってる部分があると思う。

 正に疑わしきは罰せずである。

 一歩間違えればつい先ほどの松本君状態になるのだから。

 冤罪を生まずに事件を解決すると言う事は本当に難しいですね。


 チャイムが鳴った。

 戻らなくては。

 私達は話をやめて教室に戻った。

 今のところは未央から聞き出せる話はこんなところだろう。

 これ以上は聞ける話も無さそうだ。

 う〜ん…どうしたものか?


 結局は事件があった現場を目撃してる人でもいない限り本人に話を聞きに行く事も難しいな…。

 話が進んでいるようで全然進んでいないな。

 そんな事を考えながら授業の時間を過ごし帰りのホームルームも終了して帰ろうと私は音葉達と玄関に向かった。


 そこへ玄関で最近では全く登場しない思い出の人になりつつある存在となっている沙奈ちゃんにバッタリ会った。


「あ!

 雅ちゃん今帰り?」


 沙奈ちゃんが軽く手を振りながら話しかけてくれる。


「うん、そうだけど」


「私も一緒に帰って良い?

 今日もし予定無かったら遊ばない?」


 珍しいな。

 なんだろう?


「うん、私の方は今日は塾無いから大丈夫だけど沙奈ちゃんも塾と公文はお休み?」


「うん、うち水と土は空いてるんだ♪」


「そっか。

 あ、3人とも、前に同じクラスだった福嶋沙奈ちゃんです」


 音葉達に沙奈ちゃんを紹介する。


「うん、去年同じクラスだったよね!

 知ってると思うけど未央でーす!」


「あ、私音葉です!」


「梢です!」


「あ、沙奈です。

 そして未央の事は知ってまーす」


 とケラケラ笑いながら互いに挨拶を交わしてる。


「沙奈ちゃんも一緒に帰って良いかい?」


 3人に聞くと


「良いよ良いよ!

 勿論!よろしく!」


 そう言いながら皆んな了承してくれる。


「皆んなありがとう」


 沙奈ちゃんは笑顔で返事をする。

 私達は途中まで一緒に帰り、沙奈ちゃんとは帰宅したら学校の近く辺りで待ち合わせることになって、私達は一度別れた。


 家に帰ると誰も居なかった。

 今は冬。

 外で遊ぶのも寒いし、温かい物でも飲みながら家でぬくぬくしたい気分だったので沙奈ちゃんを部屋に招待する事にした。

 まぁ、誰も居ないけど自分の部屋から出さなければ咎められる事は無いだろう。


 それなら茶菓子も何も無いと言うのも何か寂しいな。

 私はリビングに降りて何か無いか探したがせいぜいあるのはティーパックの紅茶くらいだ。

 う〜ん…近くのスーパーでも急いで行って来て何か安めで2人で食べられる物を買ってこよう。


 私は小銭入れを自室の机の引き出しから取り出して急いでスーパーへ向かった。

 スーパーに到着してパンコーナーを通りかかった時手頃なロールケーキを見つけた。

 丁度良い大きさにカットしてあるし、値段も120円程。

 これにしよう!

 丁度紅茶と合うし!

 私は急いでレジに向かい会計を済ませた後家に走った。


 急いで組み立て式のローテーブルを物置から引っ張り出して自室へ運ぶ。

 そして手頃なクッションを2人分向かい合わせに置いて紅茶とロールケーキを用意してテーブルに置く。

 紅茶は好きなようにお代わりが出来るようにリビングのポットも自室に運んで、替えのティーパックも適当にテーブルに置いておく。


 OK!

 これでいつ沙奈ちゃんが来ても用意周到だ!

 私は急いで待ち合わせ場所に向かった。

 沙奈ちゃんは既に到着していた。


「ごめん!

 待った!?」


 両手の(てのひら)を合わせながら沙奈ちゃんに聞く。


「ううん、さっき来たばっかりだからそんなに待ってないよ」


 そう言う。


「良かったら外寒いから家で話でもしない?」


 私がそう言うと


「え?

 本当?

 雅ちゃん家行って良いの?」


「うん、良かったら温かい紅茶くらいなら出せるからおいでよ」


「ありがとう。

 じゃあ行こうかな?」


 沙奈ちゃんが了承してくれたので私達は家に向かった。

 自室に案内し、カップにティーパックを入れてお湯を注いだ。

 ひんやりした部屋の空気の中、紅茶の香りの良い温かい蒸気がゆらゆら立ち上った。


「どうぞ。

 良かったらロールケーキもどうぞ」


「わざわざ用意してくれたんだね!

 何か色々ありがとう」


「いえいえ」


 そう言いながら私達は紅茶を啜った。


「はぁ〜…。

 外寒かったから凄く嬉しい。

 温かいね…」


 沙奈ちゃんがリラックスしてくれているようだ。


「思えば私達学校以外で一緒に遊ぶの初めてじゃない?」


 私がそう聞くと


「だね〜。

 そうそう実はさ雅ちゃんと色々話したいと思って誘っちゃった」


「うん、嬉しいよ。

 お誘いありがとうございます」


 改めるように私がそう言うと


「いやいや、そんな…」


 沙奈ちゃんが胸の高さで手を振りながら照れ笑いする。

 そして


「そういえば最近雅ちゃんのクラスやたら騒がしくない?

 なんだかこんな事聞くと野次馬みたいで悪いんだけどさ、今日の朝とか何か凄く騒ぎになってなかった?

 うちのクラスの人達まで何人かそっちのクラスまで見に行ってたのを見たよ。

 うちが学校に着いた時にはもう既に騒ぎになっていたからうちも気になってちょっと覗こうと思ったんだけどさ、結局教室前に人集りができていて何やってたか全然分かんなかったんだよね。

 しかも一昨日の放課後も何か学級会ずっとやってたんでしょ?

 何か帰りがけチラッと見たけどC組だけ皆んな帰ってない感じだったからさ」


 結構見てるよね。

 うちのクラスで起こってる事ほぼ見てるようなもんじゃん。

 事件の概要くらいなら沙奈ちゃんにも説明しても大丈夫だろう。

 C組の人なら誰もが知ってる事だし、私が話さなくてもどの道誰かかれかから、いずれ噂で広まる事になるだろうし、特に秘密にする必要もあるまい。


 ただ今日のお昼の遠藤さんとの会話内容については不確かな事が多い分、無駄に誤解を招く事を防ぐ為にもこれについては伏せておこう。

 私は沙奈ちゃんに今回騒動になっている事の大筋を話した。


「へぇ〜そうだったんだ。

 …で結局の所どうなんだろうね?

 松本君って人が犯人じゃないって雅ちゃんは思ってるんでしょ?

 他に誰かこの人が怪しいって人いる?」


 まぁ本音としては居なくも無いんだけど、流石にね…。

 証拠がある訳じゃないし軽はずみには言えないよね。

 限りなく森脇さんが怪しいとは思ってるけど、もしかしたら本当に森脇さんじゃない可能性だってある訳だし。

 体育館と教室の往き来は誰でも可能だった訳だし。


「う〜ん…。

 分かんない。

 昼休みに体育館から教室に戻って来た可能性なら体育館にいた人達全員にある訳だし、完全にお手上げ。

 だけど少なくとも下田君と松本君は1番怪しくないと思う」


「へぇ〜どうして?」


「だってさあの2人は昼休み開始からほぼずっと一緒にいたんだよ?

 お互いにずっと目撃者が側にいる状態な訳じゃん?

 下田君がトイレの間沢辺君が松本君と話をしているし、必ず誰かと一緒にいる訳じゃん?

 その時点で中神さんのシャープ盗むとか無理だと思わない?」


「確かに!

 うちもそれ聞いたらそう思った。

 じゃあさ…2人の共犯って言うのはないのかな?」


「下田と松本?

 多分無いと思う。

 これも推測だけど、共犯って凄くリスクが高いと思わない?

 だって片方の仲間がいつか裏切ってバラすかもしれないんだよ?

 しかも盗んだ物を2人で分けられるような物なら良いけど、シャープペンってどう考えても2人で分けるって無理じゃん?

 って言う事はどちらかが報酬を得るのにどちらかは共犯のリスクを背負いながら無報酬って事になる訳でしょ?

 そう考えたらさ無報酬の人からしたら納得いかないと思わない?

 だから仮に共犯したとしたら無報酬の人が報酬を得られなかった事を逆恨みしてバラす確率が高いんだよね。

 でも下田も松本もそんな様子は無いし、そもそも2人で分けられ無いものを2人で盗むメリットが無いよね」


「雅ちゃんなんか凄いよね…その考察っていうか…。

 言われてみたら確かにそうかもしれないわ!」


「まぁ、そういう事で寧ろ1番怪しくないのがその2人だと思うんだよね。

 でもさ、犯人が何を考えているか分からないけど松本君の机からシャープペンが出て来ちゃったからクラス中が大騒ぎだよね…」


「そっか…。

 きっと誰かが入れたんだろうね…」


 話に一区切りしたところで沙奈ちゃんは紅茶を啜った。


「ねぇ雅ちゃん、森脇さんって知ってる?」


 突然沙奈ちゃんの口から森脇さんの名前が出てきた事に驚愕しつつも


「うん、同じクラスだから勿論知ってるけど?」


 そう返事した。

 沙奈ちゃんは


「実は今ふと思い出したんだけど、うち一昨日の昼休みにトイレ行ったときC組の教室の前を通りかかった時に森脇さんを見かけたよ」


 突然の重要発言に更に私は驚愕(きょうがく)した。

 ぇ…!?

 森脇さんって体育館にずっと居たって言ってたよね!?

 いや…まてよ。

 掃除当番だったからもしかしたらもうすぐ体育館に行く時だったのかもしれないじゃない?

 もし仮にそうだったとしたら森脇さん以外に未央の姿も見てるはず!

 早速聞いてみよう!


「本当!?

 森脇さん誰かと一緒に居た?

 それとも一人だった?」


「一人だったよ。

 しかも見たっていうか話かけたっていうか…」


 マジ!?

 未央の姿を見てないって事は森脇さんは一人で体育館から戻って来ていたと言う事になる。

 だいぶ核心に迫って来たかもしれない。


「森脇さんと何話してたの?」


「最初チラッと廊下から森脇さんの姿が見えてそのまま通り過ぎる予定だったんだけど、うちその日算数の教科書家に忘れて来ちゃってさ…。

 森脇さんとは去年同じクラスだったからお互いに顔見知りだったし森脇さんが教科書持ってたら借りるのに丁度良いなと思って算数の教科書持って来てないか聞いてみたの」


「そうなんだ。

 それでどうなったの?」


 私は平静を装いつつも早く話の続きが気になって仕方がなかった。

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