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シャープペン盗難事件①

明けましておめでとうございます。

活動報告の方にも記載させて頂きましたが、

2020年1月1日〜2020年1月3日の三が日はお正月スペシャルと言う事で、3日間連続投稿でお送り致します事をお知らせ致します。

3日間お楽しみ下さいませ。

今年も宜しくお願い致します。

 2学期も後半に差しかかろうと言うある日の朝、


「ねぇねぇ、見て見て!

 このシャープペン可愛いでしょ!?

 昨日お母さんに買ってもらったの!」


 そう言いながら昨日買ってもらったらしきシャープペンをクラス中に見せびらかして歩いている女子がいた。

 その子は中神(なかがみ)さんという子だ。


「これさぁ、昨日お母さんと街に行った時に買ったんだ。

 ほら、この飾りに私の誕生石がついてるの〜可愛いでしょ♪」


 と嬉しそうに男女問わず色んな子に自慢している。

 私はあんなの何処にでも売ってそうだなと遠目から見ていた。

 そしてお決まりのように事件は起こった。


「無い!

 私のシャープペンが無い!!」


 中神さんがそう騒ぎ出したのは5時間目の体育の授業が終わって教室に戻った時の事だった。

 大きな声で騒いでいたので彼女のシャープペンが無くなったという事件が起こったという事がクラス中に広まったのはあっという間の事だった。


 担任の里中も教室に戻って来てクラス中が何やら騒いでいる状況に気付き事件の事を知る事となった。


「オイ、皆んな今から学級会開くから席に着け!」


 里中が皆にそう指示を出し皆んな各々の席に戻る。

 学級代表の石垣さんが


「これから学級会を始めます。

 今日の議題は中神さんのシャープペンについてです。

 まずは中神さん、状況の説明をお願いします」


 と進行する。

 中神さんが


「はい。

 昨日お母さんに買ってもらったウィズミーのキャラクターのシャープペンがさっきまであったのに無くなりました。

 シャープペンの特徴は芯を出す時に押す所の横辺りにチェーンが付いていてその先にハート型のアクセサリーがぶら下がっているものです。

 そしてそのハートの飾りの中心に私の誕生石のエメラルドが付いています。

 エメラルドの特徴は緑色の石です」


 流石にエメラルドの特徴くらいは知ってるわ!

 オモチャだろうからプラスチック製のエメラルドだろうけどね。

 つまりノック部分の横にジャラジャラとしたハート型の飾りが付いているって事か。

 個人的な感想としては使い(づら)そうだな、と言う所である。

 本当、実用性より見た目重視の文房具って言う感じだな。

 と心中ツッコミを入れた。


 私は書いている最中にチャラチャラ何か動いてるのが視界に入って来ると気になって仕方がないタイプなので、個人的な好みとしては何の飾りも付いていないようなシンプルな物が好きである。

 それはともかく、犯人がどこの誰かは知らないが余計な事をしてくれたものだ。


 普通の授業が潰れるのならまだしもこんな放課後近くなってから事件を起こすのは本当にやめてほしいものである。

 家でゆっくり休む時間が無くなるじゃないか!

 今日は塾があるからそれまでの時間少しゆっくりしたかったのに。


 中神さんの説明が終わると里中が


「オイ、まずは皆んな自分の席の近くに中神のシャープペンが落ちてたりしないかチェックしてくれ!」


 という指示で皆んな自分の席の足元や机の下、椅子の下などを見回す。

 少なくとも私の所には落ちていないようだった。

 里中の方も教卓の下辺りを見回している。


 まぁこれで出て来たらラッキーだろうけど、出てこなかったらきっと事故ではなく事件だろうから犯人が自分から名乗り出ない限りほぼほぼ見つかる事は無いだろう。


 そう思いながら様子を見て過ごす。

 中神さんのシャープペンは今の所発見されていない。

 里中は


「オイ、中神のシャープペンあったよ!って奴いるか?」


 挙手を求めるも誰もがシーンとしている。

 更に里中は


「オイ、まず学級会を進める前に一言先生の方から言わせてくれ!

 皆んな学校にシャープペン持ってくるの禁止されてるの知ってるよな!?

 何で禁止してるかって言うと、こう言う事が起こるからなんだ。

 皆んなも理解してくれ!

 今後も授業に関係の無い物や無くなって困るような物は一切持って来ないでくれ!?

 どうしても使いたい人は家で使いなさい。

 特に中神、いいな!?

 ダメな物はダメなんだわ!

 鉛筆があるんだから学校では鉛筆を使いなさい」


 腰に手を当てながら皆んなに言う。

 私の通っているこの小学校ではシャープペンは勿論、ロケット鉛筆の果てまで禁止されており、筆記用具と言えば鉛筆と赤いボールペン、青いボールペンのみOKと言う規則がある。

 規則になっている理由は先程里中が言った事や、授業中にそれらを使って遊び出す者が出て来るからと言う所であろう。


 だから過去Aでは私はシャープペンが堂々と使える中学生活に憧れていたのだった。

 今思えば凄く馬鹿馬鹿しいが。


 里中と石垣さんがバトンタッチをして学級会を進行させる。

 中神さんがまた挙手し、石垣さんが


「どうぞ」


 と言う。


「あのシャープペンは凄く気に入って大切にしていたものなのでどこかで見つけたらすぐ教えて下さい。

 それと、もし盗った人がいたら返して下さい」


 中神さんがそこまで言った時里中が挙手をし石垣さんが


「先生どうぞ」


 と指名する。


「中神、今お前は誰かが盗ったって言ったけど、そう考えるのはまだ早いんじゃないか?

 もしかしたら中神の勘違いでどこかに置き忘れてたり、どこか教室以外の場所で落としてる可能性だってあるだろう?」


 すかさず中神さんが


「でも先生、さっきまではあったんですよ!?

 ちゃんとペンケースの中に入れておいたんです!

 落としたとは考えられません」


 そう反論した矢先、クラスの男子が挙手している。

 石垣さんが


沢辺(さわべ)君どうぞ」


 と言うと沢辺が


「はい、僕は体育の授業を休んだ下田(しもだ)君と松本君が怪しいと思います。

 中神さんの話によるとさっきまであったって言う事だったので体育の授業を休んでた2人にしか出来ないと思います」


 沢辺君の爆弾発言に一気に教室中が騒めき出した。

 クラス中の人達が各々の席の隣の人と


「そうだよなぁ、俺ら全員体育館に居たんだから関係ないよなぁ」


「下田と松本なのかなぁ?

 でもそうとしか考えられないよね、私達は全員教室に居なかったんだし」


 と口々に話しているのが聞こえる。

 これもこう言う事件の時のお決まりのパターンの流れである。

 けどこう言う場合必ずしも教室に居た2人が犯人とも限らないのも私はお決まりだと思う。

 いくら小学生だからと言っても2人ともちゃんと頭が付いてるんだからこんな露骨に分かりやすいタイミングにわざわざ自分達が疑われる様な行為をするだろうか?

 こんな2人しか居ないタイミングでそんな事をしたらわざわざ


 "自分を疑って下さい"


 と言っているようなものだ。

 そんな馬鹿馬鹿しい犯人見た事が無い。

 そもそも中神さんの証言も少し怪しいし。

 本当にさっきまであったのだろうか?

 しかもさっきと言うのはそもそも具体的にいつまでの事なのかも情報が曖昧だし。


 そんな風に色々と一人考察していると里中が


「はい!はい!はい!

 皆んな静かに!!

 まずは2人の話を聞こう!

 下田と松本どうなんだ?」


 そう2人に話を振る。

 下田が慌てて挙手をして弁明を図ろうとしている。


「はい!はい!」


 慌てて挙手をした下田に石垣さんが


「下田君どうぞ」


 そう言うと


「僕は体育の授業を休んでる間教室で1人になったタイミングはありませんでしたので、僕じゃありません。

 僕を疑うんだったら僕がトイレに行っている間、教室で一人になったタイミングがある松本君の方が怪しいんじゃないかと思います」


 おっと、雲行きが怪しいね。

 下田君は松本君に(なす)る様に上手く逃げたね。

 このままだと松本君が犯人って事になりそうだけど、松本君は何か弁明は無いのかな?

 その時、自分が犯人にされそうになって慌てた松本君も挙手。


「松本君どうぞ」


「僕は頭が痛かったので体育の授業は休んだんですけど、僕じゃありません!

 頭が痛かったので下田君がトイレに行っている間もずっと自分の席で突っ伏して寝てただけです、信じて下さい!」


 弁明の内容が弱いな…。

 これで信じてくれる人が何人いるだろうか?

 僕じゃありません信じて下さい、くらいでは信じてくれる人は殆ど居ないのが現実である。


「ハイ!松本に決定!

 犯人松本で決まりだな!

 そういう事で学級会終わろうぜ!

 俺今日用事あって急いでんだから早くしてくれよな!」


 そう騒ぎ始めたのは袋田だった。

 お前の都合なんかどうでも良いんだよ、クズ。

 だが、袋田の一言でまた教室中が騒めき始める。


「僕じゃありませんってそりゃ皆んな言うよな。

 犯人は僕ですって奴なんかいねーよ」


「そうだよなぁ。

 そんなの誰も信じねぇよ」


「1人で教室に居たのが松本だったんなら犯人は松本だな」


 教室中が騒めき出したので里中が挙手をしそれを静める。


「はい!はい!はい!

 静かに!!

 皆んな松本は違うって言ってんだからもっとちゃんと松本の話を聞かなきゃダメじゃないか」


 はぁ!?

 これ以上何を聞くの!?

 あの時みたいに自白するまで帰さないぞって!?

 その時松本君が


「僕じゃないです、僕じゃない…」


 そう言いながら顔を真っ赤にして泣き始め、服の袖で涙を拭っている。

 もしかすると何を言い返して良いか分からないのかもしれない。

 かつての私もどう弁明して良いのか分からず、大した事も言い返せず、誰からも信じてもらえなかった過去があるから痛いほどその気持ちは分かる。 

 だから今はまだ誰が犯人かは分からないが何となくこの様子を見て松本君の言葉を信じてみたいなと感じている。


 今のこの


 "誰も自分の味方がいない"


 という状況はかつての自分に重ね合わせてしまう。

 誰からも信じてもらえず、責め立てられる時の苦しさは誰よりも私自身が知っている。

 だから出来る事なら力になってあげたい。


「なぁ松本、もしお前じゃないなら他に犯人がいるか、何処かからシャープペンが出てくる筈なんだ。

 もっとなんか自分じゃないって言う証拠は無いのか?」


 私は里中のこの言葉に開いた口が塞がらなかった。

 この人よくこんなので教員試験通ったなと思ってしまう。

 この人、教師という前に既に人としての人格に問題があると思う。

 まぁ、これがきっと現実なんだろうな。

 こう言う人に限って外面が良いと言う事なのだろう。

 本当、世の中理不尽だと思う。


 犯人探しをして何になると言うのだろうか?

 更に言えば


 "こう言う事があるからこの人が犯人だ"


 と言うこじつけを作る方が


 "この人は犯人ではない"


 と言う証拠を出す方よりも遥かに簡単なのだ。

 犯人でない証拠を出す方が遥かに難しい。

 それが現実なのだ。

 それは普通の裁判でも同じだ。


 "何故なら犯人では無いから何も出てこないのだ!"


 と言う議論をすれば


 "犯人では無いと言う証拠が無いからやはり犯人なんだ!

 だから何の証拠も出せないんだ!"


 と言う反論が出てくる。

 正に終わりが無い水掛け論だ。

 だからこそ世の中から冤罪は無くならない。


「ひっく…ひっ…僕が盗ってないって言うのは下田君だって見てる筈なので僕じゃないです…ひっく…ひっく」


 嗚咽を漏らしながら松本君が言う。


「確かに一緒にいた時は松本君に怪しい感じは無かったんですけど、僕がトイレに行ってる間は僕は松本君の事は見てないので松本君が何やってたかって言うのはトイレに行ってる間の事は知らないです。

 別に松本君が盗ったって思ってる訳じゃ無いんですけど、僕も自分が疑われるのは嫌なので…」


 と下田君。

 自分の先程の発言に少しは罪悪感が生まれたのか、若干のフォローを加える。

 まぁ、そうだよね。

 下田からしたらそうか…。


「松本、どうなんだ?

 泣いたってどうしようもないんだわ!

 ちゃんと正当な言い分があるんだったら言わないと」


 と里中。

 この様子だと松本君が犯人にされて終わりそうだな。

 普段なら他人事なんてどうでも良いと思ってスルーするんだけど、私もかつては里中に冤罪された事があるから他人事とは思えないものがある。

 もしも本当に松本君が犯人で無いのなら余りにも理不尽過ぎる状況だ。

 何とかしてあげられないものだろうか?


 私は挙手をした。


「相瀬さんどうぞ」


 と石垣さん。

 私は


「はい、とりあえずこのまま誰が怪しいとか僕じゃないですって言い合っていても話が進まないのでちょっと話の観点を変えてみようと思います。

 まず中神さんに質問なんですけど、細かい話になるんですがシャープペンが無くなったと言うことに気づいたのは厳密にはいつですか?」


 そう聞くと中神さんは


「ついさっき体育から教室に帰って来た時です」


 う〜ん、これじゃさっきと同じだな。


「少し質問を変えます。

 最後に中神さんがシャープペンを見たのはいつですか?」


「…多分給食を食べる前辺りだと思います。

 でも給食食べてる間は皆んな教室に居たし…」


「多分じゃダメですよ。

 もしも松本君が犯人で無いのならあなた達は無実の人間に罪を擦りつけていると言う事になります。

 凄く大事な事です。

 実際にシャープペンを手に持っていて自分の目の前にあったのを見たのはいつですか?

 給食を食べる直前までは確実にあったし、確実にあったという事もちゃんと確認もしている、という事で本当に間違いないですか?」


 私がそこまで言うと学級会の進行役の石垣さんが挙手をして、


「給食を食べる直前までは分からないんですけど、少なくとも給食の時間まではあったと思います。

 何故なら給食当番が給食を配っている間の時間の時に中神さんにシャープを見せてもらった時があったからです」


 なるほど、中神さんは石垣さんの所にまで自慢しに行ってたんだな。

 嬉しくて自慢したい気持ちが分からなくは無いけれど、自慢したい程大切な物ならば尚更こう言う色んな人が集まるような場所に持って来ちゃいけないと思うわ。

 大切な物ほど隠しておかないと。

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