高度成長期
時が過ぎるのは早いもので気付いたらもう冬休みに入っている。
冬休みと言えば読書感想文が無いと言うのが1番魅力的な部分である。
それは凄く嬉しい事なのだが…。
いつもの様に学校の宿題を初日に終わらせ、自由研究のテーマにまた頭を悩ませる。
夏にしろ冬にしろこの自由研究だけはどちらの休みでも関係無くあるのである。
夏休み中に巾着袋を作った延長で冬休みはエプロンでも作ろうかと考えてはいたのだが、
"えー、相瀬さんまた縫い物?それしか出来ないんじゃないの?"
などと言われ兼ねないので冬休みは少し違った物を作ろうと思う。
エプロンの案は来年か再来年あたりにまで取っておく事にしよう。
何か実用的な物を作れれば良いのだが何かないだろうか?
出来るだけ安価で済ませられる物が良い。
あぁ〜…。
何か色々考えてたらお腹空いて来たな。
今日の晩ご飯は何だろう?
……。
あ!!!
晩ご飯を絵日記風にレシピを書いていってレシピ集を作ろう!
これならふと
"今日何食べたい?"
と聞かれた時に何も思いつかなかった時、これを見てメニューを参考にしたり出来るかもしれないし、割と実用的かもしれない。
メニューを見れば材料とか作り方をわざわざ聞かなくても一人暮らし時代の経験から何となく分かるし、簡単に出来そう!
一つ気掛かりがあるとすれば私は絵が凄くド下手だ!
こればかりは大人になっても上手になる物ではない。
だが書こう!
他に思いつくものも無いし。
本当ならばお皿に盛り付けた物を写真に撮ったり出来ればそのままノートに貼るだけだから楽なのだが、生憎余分なフィルムは無さそうだし、子供にカメラはきっと貸してもらえまい。
大人しく色鉛筆で書くのが一番だ。
色鉛筆ならば学校の図工の授業で使う用に買って貰った物があるので一番お金が掛からなくて良い。
唯一買う物があるとしたら絵日記用のノートだけ。
これだけならば比較的安価で購入出来る。
良し!
そうと決まったら早速絵日記ノートのお金を貰って買ってこよう!
毒両親は夜まで帰って来ないので塾から帰って来た後にでも顔色を伺いながら話してみよう。
貰えるものはもらっておかねば損をする。
私は将来進学したいと考えているのでその為の費用を今から無駄遣いをせずに貯めておかなければならない。
全額集めるのは難しくても足しになる金額くらいは取っておきたいものだ。
金遣いの荒い毒両親や毒姉と同じ様に散財していてはいけない。
因みに私の只今の貯蓄額は3500円が全財産である。
毎月500円じゃなぁ…。
勿論貰えるだけ凄くありがたい事なのは重々に承知だ。
だけど3500円じゃ子供にとっては大金だけど、これじゃ大学どころか公立高校の月謝にすら届かない。
はぁ〜…悩みは尽きないなぁ。
またまた深く溜め息を漏らしてしまう。
何年も先の話になるが高校生になったらアルバイトをして少しでも大学の学費を稼げれば良いなぁ〜などと考えている。
やっぱり早く大人になりたい。
こんな時には本当にそう思わずにはいられない。
だけど大人になってしまうと今度は自分一人で生きなくてはならなくなるから今度はそちらに沢山お金がかかってしまうのだ。
人は生きているだけでお金がかかってしまうから。
本当に一長一短である。
やはり子供のうちにお金を少しでも集めるのが一番集まりやすいのかもしれない。
そう考えたら1円でも無駄にはしたくない。
そう固く決心したもののその気持ちを打ち砕くかのように毒親からの返事は
「そんなもの自分のお小遣いで買いなさい。
その為にお小遣い渡してるんだから」
と毒母。
いやいや…私は爺さんからはお小遣いを貰っているけれどあなたからは1円も貰って無いですよ?
流石毒親!
未来で私を強請るだけあるわ!
あたかも自分がお小遣いを与えてるかの様に言う所がまた流石カオス!
あぁそれにしてもたかだか2〜300円の物すらケチられるとは…渋すぎる。
しつこく頼むと後が恐ろしいのでこう言う時は手早く退くことにする。
仕方あるまい、ずっと使わずに取っておいたお小遣いの中から買う事にしよう。
そしてお店でなるべく安い物を探して来よう。
明日の予定が決まったので今日はもう寝よう。
目覚ましをセットして私は自室の布団に入った。
―翌日―
ジリジリと目覚まし時計が鳴る。
目覚まし時計を止めて欠伸をしながら渋々起きる。
今は朝の9時だ。
う〜ん…まだ眠い…。
寝ても寝ても眠い…。
いつか休み中に人はぶっ続けで何時間寝られるのかを研究してみたいくらいだ。
だが冬休みだからと言っても無制限に寝てしまうと時間にキリがないし、折角の休みをダラダラと寝て過ごしてしまうのは勿体ない。
かと言って休みだからこそ少しはゆっくり寝ていたい願望もあるのでいつも学校へ行く時よりは遅めの9時あたりに目覚ましをセットするくらいが時間的に丁度良かったりする。
それに午後からは塾の冬季講習があるので時間に余裕を持ってなくてはならない。
私はリビングに降りて適当に買い置きしてある食パンを焼いてお湯を沸かす。
同じく買い置きしてあるティーバッグの紅茶をカップに入れて沸いたお湯を注ぐ。
紅茶の良い香りがする。
好みとしてはダージリンよりアールグレイの方が香りが好きなのだが贅沢は言うまい。
テレビを付け、少し行儀が悪いがパンを頬張りながらテレビを観る。
何か面白そうなものはやってないかとチャンネルを回すも、やはりこの時間はあまり面白そうなものはやっていない。
けど無音状態と言うのも何となく寂しい感じがするのでチャンネルはこの際何でも良い。
パンを食べ終わりダージリンも飲み干した私はテレビを消してお皿とカップを洗って片付けた後、歯を磨く。
今日は塾に行く前に自由研究用の絵日記帳を買いに行って来なくてはならない。
時間が過ぎるのは早く、のんびりとしていたらもう10時を過ぎていた。
お店で色々選んでる時間を考えたらなるべく早く出かけた方が良いだろう。
時間は気付いたら過ぎているものだ。
いざ急げ!!
寝巻き用の部屋着から外着に着替えた私は机の引き出しから財布を取り出す。
何時ぞやか婆さんが誰かから貰ってきた子供用の小銭入れを貰ったのでそれをありがたく使わせて貰ってる。
最初婆さんは姉に優先的にあげようとしたらしいのだが、如何せんデザインが絶望的な財布だった為、姉が全力で拒否をしたらしい。
そう言う理由で
"じゃあ折角貰ったのにただ捨てるのは勿体ないから雅ちゃんにあげるわ"
と言う話の流れになり貰ったのである。
姉がドン引き顔で
「よ…良かったね…、アンタそれ本当に使うの?」
と言ってきたくらいだ。
別に使えればデザインなんてどうでも良い。
洋服とかならあまりにも個性的なデザインだと困り物だが財布くらいなら誰が見ると言う訳でもない訳だし。
もしも私の中身が当時のままだったら恐らく姉と同じ反応と対応をしたであろう。
だけど今は条件が違うのだ。
今世ではお金を無駄には使いたくないので自分で買わずに済むのならそうしたい。
お金が無いという事がどんなに絶望的なのかを私は十分に知っているからだ。
財布のデザインなど気にしている場合では無い。
他の物を誰かから貰ったりでもしない限り壊れるまで使うつもりだ。
さてと買い物に行くとしよう。
少し大きめのスーパーに行き、文房具コーナーへ行く。
絵日記帳は一種類だけしか無かった。
ページ数はざっと40ページ程もある。
40ページも書くとなると夕飯分だけでは毎日書いても全部埋めるのは難しい。
お昼ご飯の分まで書かねば埋まりそうも無い。
そうなると凄く面倒臭いな…。
毎日書く事自体も面倒なのに…。
さてどうしたものか?
よく見るとこのノート一冊買うだけで150円もする。
高いな。
絵日記にしか使い道が無いのに150円+税金3%…。
買う気がしなくなってくる。
何か良い方法は無いものか?
そう思った時ふとルーズリーフが視界に入った。
これだよ!
これこれ!!
ルーズリーフで好きなページだけ絵日記に使って余ったら勉強に使えば良いんだよ!
そうすれば無駄が出ない。
我ながら素晴らしいアイディアだと思う。
そうするとなると表紙が不恰好になるな。
ファイルも一緒に買う必要が出てくる。
安くファイルが売ってれば良いんだけど…。
プラスチック製のしっかりした造りのものは値段が高いので紙で作られた1番安い物を選ぶ。
はぁ〜…現代が恋しい病がまた発症しそうだ。
こんな紙製のファイル風情が一枚100円もする。
現代だったらきっと半額くらいで売ってるんだろうなぁ…。
ルーズリーフも100円ショップに当たり前に売っていると言うのに…。
この時代はまだ
"100円ショップってなぁに?"
と言う時代だ。
ルーズリーフが100枚しか入って無いくせに200円もする。
ボッタクリだ!!
現代風に言うと本当、激おこプンプン丸よ!!!
高度成長期万々歳だろうな、企業にとっては。
消費者にとってはとても悩ましい時代かも知れない。
いや、待てよ。
この時代の社会人は現代では考えられない程の金額の給料がガバガバ入ってくる訳だからこの時代の子供限定には悩ましい時代と言うのが正しいかもしれない。
お小遣いは少ないのに物価は高い!
あぁもう!
考え出したら文句と愚痴しか出て来なくなりそうだから考えるのをやめてさっさと諦めて買って帰ろう。
少なくとも絵日記帳を買ってページを余らせるよりはマシだと思う。
絵日記にしか用途も無いし、余った部分を後に何かに使ったりする事は難しいし。
そう考えたら余ったルーズリーフは別の用途にも使える訳だし、ファイルだってこの絵日記が必要無くなったら違う物をファイルしたり、再利用も出来る訳だし。
月額500円のお小遣いの中から309円飛んで行くのは痛いけど、考えたらもう直ぐ正月もくる訳だしお年玉を少しだけ当てにする事にしよう!
さて必要な物を買ったらさっさと退散しよう。
余計な物を見るとついつい色んな物が欲しくなってしまいそうだからだ。
帰宅して早速昨日の夜ご飯をルーズリーフの3分の1くらいの所に適当にラインを引いて焼き魚と味噌汁と納豆の絵を描いた。
そしてその横に小皿に乗った沢庵も書いた。
如何せん絵がド下手なので何を書いた物なのかが伝わるように絵の下に小さく
"焼き魚"
とか
"納豆"
という風に書いた。
メニュー的には作り方も何も無いようなメニューなので納豆などに関してはいつも買ってるメーカーの名前も書いたり、納豆の食べ方も少しアレンジを加えるだけで違った美味しさがあると言う内容を書いてみたり色々と文字稼ぎをした。
人によっては卵黄を入れる人や、マーガリンを入れる人、マヨラーな人、大根おろしを入れても美味しいなどなど。
因みに私はオーソドックスに長ネギと醤油を入れたシンプルな食べ方が1番好きである。
あとは味噌汁の作り方で少し文字稼ぎをして終了した。
今日は文字稼ぎをしなくてもいい様なメニューであれば良いなと少し願ってみる。
そうこうしているうちに塾へ行く時間になってしまう。
塾へ行く用の鞄に筆記用具を放り込んで塾へ向かう。
あぁ1日は本当に早い!
これが私の冬休みの1日のルーティンである。
これから約20数日間こんな毎日が続くのであった。




