イジメ?
2学期に入り、いつもの様に学校帰りに歩いていると突然後ろから
「やーい、チービ、チービ」
と私を貶しながら走って来た男子が約2名。
あぁ、そういえば過去にもこの2人に同じ事されたな。
あの時は虐められるだけ虐められて泣いて帰っただけだったけど、今世ではどうしてやろうか?
私は自分の幸せを勝ち取る為にもう戦いから逃げない。
ただでは済まさないよ?
過去での恨みもあるしね?
この男子2名は隣のクラスの大竹と大井だ。
2人とも小学1年生にしては体格が大きく、背の順だと恐らく後ろの方だろうと想像がつく。
だからと言って
"大きい方が偉い"
みたいなキミ達の論理は何か可笑しく私は思う。
いくら過去をやり直したとしても私の遺伝子事情は変わらない。
チビは遺伝だ!!!
だが負けてたまるか、こんちくしょうめ!!
痛った!!
太ももと尻を蹴られたんだけど!
でもあの時みたいに私は泣かないよ?
こう言う虐めに屈して泣くのは相手の思うツボだからだ。
大抵虐めをする様な人種は相手が辛い表情をしていたり悲しむ顔をするのが1番の美味しい餌なのである。
だが仮に虐めようとした相手が自分にとって脅威な存在だったり、自分にとって不利益をもたらす様な存在だったとしたら?
恐らくつまらなくなっていじめっ子の方から自ずと離れていくだろう。
だから相手にとってそう言う人間になるのが一番の対策だ。
とは言え、どうしようか?
今私が同じ様に暴力でやり返して逆に泣かせてやっても構わないのだが…。
寧ろそっちの方が簡単で手っ取り早い。
だが力による支配は後に大きな力の支配で帰ってくるケースもあり得ると言うリスクも背負う事になる。
だから相手と同じ事をしてしまうと何かと後々こちらに不利な状況にもなり易い。
何故なら
"お前だって暴力振ってきたんだからお互い様だろう"
と同罪にされ兼ねないからだ。
残念ながらこんな奴らと一緒のレベルにはされたくは無いのでここは堪えて頭を使おう。
月並みだがここは大人にチクる戦法が1番手堅い。
自分が大人になったらこの戦法はもう使えないが、今は子供なのだから使える手段は大いに利用した方が良い。
まずは学校の先生にチクるのが手っ取り早いだろう。
ただチクるだけでは面倒臭がって相手にして貰えない可能性もあるので、一人にだけ話をするのではなく複数人に話を大きく広げるのが1番早いだろう。
例えば担任の教師にだけ話をしただけでは
「当人同士の問題なんだから自分で解決しなさい」
だとか
「今度本人達に話を聞いてみるから今度また何かされたら教えて」
だのと面倒臭いからと言う理由で話を後回しにされる可能性が高い。
確かに当人同士で解決できるのが1番誰もが楽で理想的だ。
だが、そもそも虐めをする様な人間にモラルなど最初から無いので一般的な理屈や道徳は通じない場合が殆どだ。
モラルがある人間は最初から虐めなどしない。
モラルが無いから人様を平気で傷つけるのだ。
モラルの無い人間に
「やめて」
とか
「虐めは良くない」
と言っても通じる訳が無い。
何故なら良く無い事だと分かっていてやっているのだから。
"虐めは凄く素晴らしい事なので是非皆んなも進んで虐めをしましょう"
などと教える大人が一人でもいたら見てみたい。
そんな非常識な事を教える大人が居ないのにも関わらず、それでも全国各地で時代関係なく何処にでも虐めは存在する。
人は何故人を虐げるのか?
それは人を虐げる事を快楽に思う人間がいるからだ。
だから虐めは起こる。
何度も言うように虐めをする人間はモラルが無いので当人同士での解決法は残念ながら同じく力で返す方法か、法的手段でも取らない限り不可能なのでは無いだろうか?
人は自分よりも大きな力やお金にしか従わない生き物だからだ。
だが法的手段に関してはお金も時間も労力も沢山要するので考えものだ。
法的手段は虐めの程度が余りにも重度である場合に、学校側に何度も相談しても余りにも何の対策も取らない場合には有効な方法かも知れない。
だが決してお手軽な方法では無いのでやはり初めは周りの大人達を有効活用するのがベストだと思う。
そうと決まればとりあえずここはさっさと走って逃げて帰ろう。
私は全力で走った。
だが追いつかれる。
足の長さが違う分歩幅も違うので走っても簡単に追いつかれてしまうのだ。
くぅ〜…身長差が恨めしい。
「オイ、逃げんなよ!
クソチビ」
黙れ人間のクズ!
アンタは単にデカイだけだろう、ビッグジョン。
別に凄くも偉くも無い。
そんな奴にチビを馬鹿にされてたまるか!!!
あっ!!
しまったランドセルを掴まれてしまった。
身動きがとれない!
「チビのくせに逃げれると思ってんのか?」
と大竹がムカつく顔で私を挑発する。
ウゼェな。
今すぐコイツをぶっコロ…。
オホン…いけないいけない。
昔家で覚えた正しくない日本語が今にも口から飛び出して来そうだった。
ここは抑えなくては。
今すぐ大竹の息の根を止めてやりたいと言う衝動を抑える私。
あ!
全くの赤の他人だが大人がいるぞ!!
ただの通行人だが。
100メートル先辺りからこちらの方向に向かって歩いて来てるのが見えた。
いちかばちかに賭けて助けを求めてみよう!
現代では使えない方法かも知れないがこの時代の大人ならいちかばちか助けてくれるかも知れない。
この時代ならではのお節介にて。
「すいません、助けて下さい!
見知らぬ人に突然捕まえられて暴力を振るわれて家に帰して貰えないんです!
お願いします、助けて下さい!」
通行人のオバちゃんが
「何してるの!!
イジメ!?
何処の学校の子!?
学校に電話するよ!?
何年生!?
やめなさい!!
男2人で女の子に寄って集って!!」
やったーーー!!!
助かった!!
正義感のあるオバちゃんで助かった!
オバちゃんに怒られた2人は気まずそうに無言で掴んでたランドセルから手を離し走って逃げて行く。
「大丈夫?」
オバちゃんがランドセルに付いた泥を手でポンポンと払ってくれてる。
大竹にランドセルを蹴られた時に靴についていた泥でも付いたのだろう。
何はともあれ助かった。
「助けて頂いてありがとうございました」
オバちゃんに頭を下げた。
「良いのよ、良いのよ。
イジメなんて絶対やっちゃいけない事なんだから今後も何かあったら周りの大人にこうやって助け求めてもいいんだからね!
それにしても本当、腹立つよね!
私学校に電話してやるわ!
何処の学校?
何年生?」
「この近くにある緑の森小学校です。
私もあの人達も一年生で、あの人達はC組の人達です」
「本当!なんて言う子?
名前教えて!」
「1年C組の大竹君と大井君です」
オバちゃんがこの情報を忘れてしまわないように私はランドセルを開けて適当なノートに鉛筆で
"緑の森小学校 1年C組 大竹 大井"
と書いてノートを破って渡した。
「すみません、学校の電話番号は分からないのでタウンページで調べたら載ってると思います。
オバ様の方からも学校にお知らせして頂けませんか?
子供からの話では先生も本気にしないかも知れないし、あの2人が嘘を付いて誤魔化したら多数決の関係で私は話を信じて貰えないかもしれないんです。
なので是非オバ様の方からもこう言う虐めを外で目撃しましたと言う旨を学校側に話して頂けませんか?」
見てなさい、クソガキ共。
大人をなめるんじゃない!!
「良いわよ、良いわよ。
あなた1年生なのにしっかりしてるわね」
「いえいえ、そんなに大した事はないですよ」
「そしたらオバちゃんもう帰るからお嬢ちゃんも気をつけて帰ってね」
「はい、ありがとうございます」
もう一度軽く頭を下げて私は帰り道を再び歩き出した。
さて明日学校行った時の策を練らねば!
まず、山岡の面子の為に一応山岡に先に話をしておいてやろう。
先に違う先生の方に相談に行ってしまうと自分の面子を潰された山岡が機嫌を損ねて面倒な事になりそうだからだ。
無駄にプライドだけは高いからな、あの売れ残りババ。
毒両親にはこの話は言わないでおこう。
こちらの方は余計な事を言うともっと面倒だからだ。
過去に私は学校や教師にこの虐めの話はせずに毒親に話した。
その時にされた事と言えば
"お前がやり返さねぇからナメられるんだろうが!!
俺が喧嘩のやり方を教えてやるよ!!"
と毒父に無理矢理外に襟首掴まれて引っ張っり出された挙句に毒父からも痣だらけになるまで殴られただけだった。
あの時私は余計な事を毒親に話してしまった事に凄く心の底から後悔したのだった。
今世では同じ過ちはおかさない。
翌日の朝いつもより少し早めに学校へ行き職員室へ行く。
ノックをしドアを開け
「失礼致します」
そう言って一礼をしてから室内に入る。
職員室を見渡して山岡と隣のクラスの斉藤先生を探す。
いた!
のんびりモーニングコーヒーを飲んでいた所を申し訳ないがちょっと面倒に付き合ってもらいましょう!
暇そうだったし丁度良いよね!
山岡の近くに歩いていき
「山岡先生、聞いて頂きたいお話があります」
「はい、なんですか?」
コーヒータイムを邪魔されて気分を害されたらしき山岡は少し眉間に皺を寄せながら答える。
うわぁー、顔の表情に面倒臭い話しないでね感が滲み出てるんだけど!!!
これはやはりなるべく話を大きくしないとスルー案件にされそう。
私の方も小学校生活始まったばかりで長年に渡る学校生活のこれからがかかってるんだから負ける訳にはいかない!
「先生、昨日私は隣のクラスの男子2名からチビだチビだと言われてランドセルを掴まれて身動き取れなくされた挙句に散々殴られたり蹴られたりする虐めに遭いました」
「それ本当?
本当に虐め?
単にからかってただけじゃなくて?」
うわぁー、この人もしかして過去に人を虐めていたのでは!?
虐めをする人の典型的な言い訳を出してきた事に私は驚愕した。
「いいえ、完全に虐めです。
チビだと言う理由だけでランドセルやお尻を蹴られました。
そして私が走って逃げようとしたら"チビのくせに逃げられると思ってんのか!?"と言われ、1人にはランドセルを掴まれて身動きを取れなくされ、もう1人にはお腹を蹴られたり腕を蹴られたり肩を殴られたりしました。
もしもこれがからかっただけの遊びだったのなら相手が逃げようとした所を抑え付けてまでやるでしょうか?」
なるべく多くの教員達に聞こえるように大きな声で言った。
「あぁ、待って待って!
そんなに興奮しないで!
ちょっと違う部屋に行って話そうか?」
うわ、誤魔化す気満々だな。
絶対そうはさせない!
私は絶対に戦ってみせる!!
私のこれからの為に!
戦わない者に幸せは巡って来ないのよ!!
let's fight!!
「いいえ、お話はこれだけなのでもう大丈夫です。
お騒がせしました」
山岡に一礼をし、早々に隣の席の斉藤先生に話をしに行く。
勿論誰にでも聞こえるように大きな声で!
「斉藤先生、ちょっとよろしいでしょうか?」
「え…」
隣の山岡がはぁ!?
とでも言いたげに顔を引きつらせながらこちらを見てる。
勿論山岡の事情などどうでも良いので全面無視で私は続ける。
「え…あ、はい…どうぞ」
先程の話が聞こえていたであろう、目を泳がせながらも状況的に無視も出来ずに返事する斉藤先生。
「昨日先生のクラスの大竹君と大井君に放課後の帰り道に暴力を振るわれて虐めに遭いました。
通行人のオバさんに助けを求めて何とか助けて貰いましたがまた周りに大人が居なければ同じ事が起こるので先生の方から本人達に虐めをやめるように言って頂けませんか?
最悪この状況が続くようであれば親にこの事を話し、親の方から教育委員会に電話をし相談をしたり、最悪な状況の時には弁護士の方に相談をする事も考えております。
どうか穏便に済ませられるように斉藤先生と山岡先生のお力添えで解決して頂けませんか?」
職員室全面に行き渡ったかな?
なるべく多くの人に私の話が聞こえていますようにと願う。
「え…!?
教育委員会!?
弁護士!?
えっ…えっ…、待って!
待って!
そんなに話を大きくする必要ないでしょう?
ね?
大丈夫!!
先生達が何とかするから!」
目を泳がせながら斉藤先生は必死に言う。
そうですとも。
何とかしなくてはならないんですよ、あなた達は。
そうせざるを得ないようにわざわざこんな事してるんですから。
「相瀬さん、だから他の部屋で話そうって言ったのに…!」
と山岡が若干切れ気味に言う。
「すみません、斉藤先生のクラスの生徒の話だったので斉藤先生のお耳にも入れた方がいいと思いまして」
「次回から他の先生達には私の方から話しますのであなたは余計な事をしなくてよろしい。
ここで解決できる程度の問題なのに話が大きくなるだけじゃない!」
うん、知っててやってるから。
だってあなたにだけ話しても埒が明かなそうだったんだもん。
だから私は予めあなたの逃げ道を塞いだだけ。
私は自分に害さえ加えられなければあとはどうでも良いから。
虐めさえやめさせてくれるのなら後はもうどうでも良いんですよ。
勉強はあなたに教わらなくても自分で出来ますし。
「すみません、そこまで気が回りませんでした。
次回から気をつけます」
適当に平謝りしておいて山岡に何も言わせないように仕向ける。
「……じゃあ次回からそうして下さいね?」
「はい」
「じゃあもういいです。
行って下さい」
「失礼しました」
軽く一礼をし私は出口へ向かって歩きだした。
「本っ当分かっててわざとやってんじゃないの!?」
と斉藤先生に当たり散らしている山岡の声が聞こえる。
勿論、分かっててわざとやってるよ。
だからよろしくどうぞ。
そう思いながら私は職員室を出る。
「失礼しました」
一礼をしドアを閉める。
さてとこれでもう大丈夫だろう。
運が良ければあの時のオバちゃんからも学校に電話が入るだろうし。
突然一般市民から学校に電話が入ると学校側も慌てるだろう。
後は様子見だ。
見てなさいガキ共。
大人はこうやって戦うんですよ。
私をナメるんじゃない。
朝のホームルームの間山岡はいつも以上にムスッとした表情でいた。
先程の件が余程面白くなかったのだろう。
敢えて目も合わせないよう、刺激をしないよう適当にやり過ごす。
そして授業が始まるも不運にもこんな時に教科書の忘れ物をしてきた人が約1名。
あーあ。
「何で忘れてくるんですか!
連絡帳は見てないんですか!?」
いつも以上にキツく叱りつけてる山岡。
いつもと空気が違う事に驚き気まずく俯く男子。
「すいません…」
「本っ当!
どいつもこいつも、いっつもいっつも!!
教室の後ろに立ってろ!!!」
わぁわぁ、とんだとばっちりだ。
お気の毒に。
人生は椅子取りゲームだから。
こんな日に限って山岡に文句を言う隙を与えてしまった自分の運が悪かったと諦めて耐えるしかないね。
頑張って。
今日の授業は一日中空気がピリピリしていて給食を食べる時も教室はお葬式のように静まりかえっていた。
そして放課後山岡に呼び出され、隣のクラスの男子に謝らせるから居残るようにとの事で居残った。
斉藤先生が大竹と大井を連れてこちらの教室へ来た。
山岡に当たり散らされて斉藤先生の方も今日は機嫌が悪かったのかもしれない。
みっちり叱られたであろう様子でベソをかいた2人は
「ゔぅ…ひっく…蹴ったり叩いたりしてごめんなさい。
もうしません。
ひっく…ひっく…」
と泣きながら私に謝る。
ザマァ!!!
大人はこうやって戦うんですよ、クソガキ共。
BBAをナメるんじゃない!
こう見えても私は結構、修羅場潜ってるからね。
年期が違うね、年期がさ。
思い知ったらもう二度と絡んでくるなよ?
クソガキ共。
ナメたらアッカン♪
ナメたらアッカン♪
ババァをナメたら…
怖いんやで♪
と言うあるCMの歌のフレーズが頭の中でリピートされる。
腹の中で笑いが止まらないのを堪えて
「もう今後二度と虐めをしないと約束してくれるのなら許してあげますよ」
と若干上から目線でものを言ってみる。
気持ち良い。
斉藤先生が2人に
「もうしないってさっき先生と約束したもんね?
大丈夫だよね?」
と2人に声をかけてる。
「もうしません…ひっく…ひっく…」
と涙を腕で拭いながら頷く2人組。
子供のうちは先生に怒られただけで更生の余地があるからまだいいよね。
これが中高生になってくると先生の影響力が大分無くなってくるから怖い。
まぁ、とりあえずはこれでもう大丈夫だろう。
「じゃあもういいですよ。
許してあげます」
そう言った。
「じゃあ山岡先生の方ももう大丈夫ですか?」
と斉藤先生。
「はい、もういいですよ」
山岡もため息混じりに返事をする。
「じゃあもう教室戻って帰ろう」
そう言って男子2名を連れて行く斉藤先生。
「じゃあ相瀬さんももう帰りなさい」
と山岡。
「はい」
「今後は先生にだけこっそり教えてくれればいいですからね?
いいですね?」
念を押すように言う山岡。
「はい」
一応この場はこう言っておこう。
多分暫くは何か被害に遭ったりはしないだろうし。
無駄に逆らうよりこの場は適当に丸めておこう。
「分かったらよろしい。
今後こう言う事の無いよう気をつけましょう」
「はい」
っと言うか…これ私が悪いの???
何かおかしくない?
ま、山岡が少し変な人だと言うのは分かってる事だからスルーしておけば良いんだけどさ。
「では先生、さようなら」
一礼をして私は帰路についた。




