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ツッコミ所満載な日常

 ある日1枚の画用紙を学校で渡され宿題を渡された。

 宿題の内容はどこかでたんぽぽを一輪摘んできて花びらが何枚あるのか数える為に花びら1枚1枚をテープで画用紙に貼り、数えようと言うものだった。


 何とも地道で面倒臭い作業を要する宿題だなぁと心中ため息を吐きながら学校帰りに摘んできたたんぽぽの花びらを貼る私。


 塾で出された宿題がたんまりあるし、内容も決して楽ではない難易度なのであまり宿題に時間を使わされたくないと言うのが個人的な意見であるが、学校に通っている以上集団生活に合わせなくてはならないので仕方がない。

 社会に出ても会社と言う組織に合わせなくてはならないのだからどこへ行ってもこれは付いて回る事なのだ。

 我慢我慢…。


 翌日宿題をやって来なかった生徒が半数以上いた事に腹を立てた山岡が愚痴でもこぼすかのように教室で喚き散らす。


「宿題は先生との約束のようなものなのに皆んなで私の事を馬鹿にして…」


 とか


「私はクラスの皆んなの事を信じていたのにすっかり皆んなに裏切られて傷つきました」


 だの


「私はもう授業をやる気無くしました」


 だとか…。


 一通り言いたい事を言い終えた山岡は拗ねて仕事を放り出し職員室に身を引っ込める。

 だったらいっそ退職されたらいかがですか?

 こんな事くらいで拗ねて仕事を放り出してる人にこの仕事は向かないのでは?


 あなたの代わりは他にいくらでもいる訳ですからあなたじゃなくてもいいと誰もが思いますよ、きっと。

 まぁあの歳だと仕事を辞めても他に宛がないだろうけどね。


 そもそも全員が宿題をやって来なかった訳じゃ無いし、やって来た人達だっている訳だから感情論で物を言われてもね…。


 皆んな裏切ったつもりも無かったと思うよ。

 ちょっと被害妄想激し過ぎだな。

 まぁああ言うのを見ると売れ残った理由がわかるよね。

 こんなに四六時中にちょっとした事でネチネチ被害妄想されたら男だって疲れて逃げたくもなるだろう。


 大体、いくら腹が立ったからと言ってどこの企業に仕事を途中で放り投げて拗ねてる人がいます?

 20歳そこそこの子でさえそんな人あまりいないと思う。

 それに比べてあの人50近くて…。

 もう話にならないな。

 社会人としての自覚が足りな過ぎ。

 まぁあの歳であれならもう色々手遅れなんだろうけど。


 冷ややかな目線で現状を見つめてる私をよそにクラスの真面目な子達は真剣な表情をし、困惑している。

 一方で授業に全く興味のない子達は何が起こったのかよく分かっていない様子で授業が潰れた事を単純に喜んでいる。


 クラスの真面目な子達は健気にも学級会を開いて


「皆んなで先生に謝りに行こうよ」


 と話し合いを始めた。

 真面目だな!

 と言うか誰に言われたのでもなく自ら考えて学級会を開いているあなた達、めちゃくちゃ偉い!!

 素直に私は感心した。


 それに比べて小学1年生に気を使わせるいい歳の大人って…。

 ダメな大人の見本を見たような気がした。

 これぞ正に反面教師である。

 学級会の議題は


 "誰が代表で謝りに行くか"


 と言う事。

 大勢で職員室に押しかけるのはあんまり良くなさそうと意見をした子がいたからだ。

 キミ達、7歳でしょ!?

 しっかりしてるよね。

 感心するわぁ。


 私が本当の7歳だった時って…。

 授業潰れた事を喜ぶ組だったと思うわ。

 皆んな偉いな。

 ああ言う頭の回転が速い子は社会人になってもきっと世の中を上手く渡って生きて行くんだろうなぁ。


 学級代表ってまだ決まってなかったけど、生まれつき統率力みたいなのが有り気な子がここで本領を発揮するように挙手する。


「謝りに行っても良いよ」


 と。

 男女各1名ずつが皆を代表して謝りに行く事になったのである。

 良かったね、山岡オババ。

 気分で仕事をぶん投げて機嫌をとって貰えるだなんて、どこかの企業の社長にでもなったつもりでもいるのかしらあのBBAは。


 クラスの代表2名が職員室に謝りに行った事で山岡が機嫌を取り戻した事により次の授業からは普通に授業が行われる事になった。


 泣きたい時に泣き、怒りたい時に怒れる山岡が少し羨ましかった。

 一般社会ではそれは良しとは思われない行為だからだ。

 私は社会人になってから随分性格も擦れたし、周りの事に対してもだいぶドライになったと思う。


 どんなに気分が悪くとも泣かない、怒らない、体調がどんなに悪くともひたすら微笑を浮かべてYESと言うYESマシーン。

 まるでもう人間である事を棄て去りロボット化する社会。

 だけどそれがこの日本での社会人としての一般論のようなもので、

 この国で生きて行くのならそれに合わせるしか無いし、どの世界を探してもこの国ほど恵まれた国は無いと思うから仕方がない事なのだ。


 微笑を浮かべているうちに一体自分は何者でどんな性格の人物なのか…?

 嫌いな物なら沢山あるのに何が好きなのかは一つも分からなくなる。


 自分の事なのに自分の事が分からない。

 そうやって気付いたら自分を見失っていた。

 ただひたすら生きる為だけに金を稼ぎ、したい事もなくただ何となく人生を回す、まるでする事の行程が決められている工場のマシーンの様に、ただ生きるだけのマシーンと化す。


 勿論そんな風に考えているのは私だけでは無い。

 大勢の人間が私と同じような毎日を過ごしている事であろう。

 それが世間では人並みの苦労と呼ばれるものだからだ。

 だから特別に自分が不幸だなんて思ってない。

 だけど山岡のように自分の気持ちに正直に生きている人を見るとつい羨ましくなってしまうのも事実だ。


 ついつい皮肉っぽくなってしまったな…と思いながら今日も真っ直ぐ学校から帰宅し、塾へ行く準備を始める。

 そしてそれと同時に明日の学校の準備や宿題も終わらせる。

 連絡プリント等は先に私が目を通し、内容を簡単にピックアップして重要な部分だけメモ紙に書いてプリントの左端にテープで貼っておく。


 例えば給食費の納入日やその金額、参観日の日時などだ。

 ギリギリになってからトラブルになったりすると凄く厄介な事になってしまうので、回避できるトラブルはなるべく避けて通れる様にしたい。


 我ながら完璧なんじゃないだろうか、と思ってしまう。

 こういう日々の小さな努力があるお陰か毒父からのDVは主に毒姉が担当してくれている。

 毒親が文句を言う隙をなるべく与えない様にする事で私は理不尽なDVを回避し、逃げ遅れた毒姉がそれを請け負う。

 何かにつけてもう一方の人と比べられ、劣っている方が被害に遭う。


 やはり人生は椅子取りゲームだ。

 過去では私が今の毒姉のポジションにいた。

 過去でいつも逃げ遅れるのは私だったのだ。

 今度は私が椅子に座る側。

 私はそれを悪いとは思わない。


 過去で毒姉が私に対してそうしてきた様に、今世の私も自分の幸せを勝ち取るために色々なものと戦い、その勝利者の利権を得ているだけなのだから。

 戦わない者に幸せは巡って来ないのだ。


 そもそも人の幸せとは誰かの不幸の上に成り立っているものなのだから。

 恨むのならそもそもDVをする毒父を恨むことだ。


 自分の心がだいぶ病んでいる事を自覚しながらいつものように塾へ出かける。

 私の通っている塾は個別指導で、大きな部屋にそれぞれ仕切りのついた机が並べられていて、人によって勉強している教科も内容も違う、と言うスタイルだ。


 個別指導で来ている講師は基本的には口を出さずに様子を見ながら本人のペースに合わせて指導して行く感じだ。

 カリキュラムは本人の希望を聞きながら講師と決めて行く感じになる。


 私は過去、あまり勉強が得意じゃなかったので個人的には中学生の勉強から自信が無かったので講師にそのように説明し、基本も応用も両方順番にやって行こうと言う流れになっている。

 よって英語に関しては一生使わないであろう


 "this is a pen"


 から始めた。

 久しぶりにその文を見た時笑いが止まらなかった。

 よくよく考えてみるとワークの問題の内容はおかしな会話をしている。

 例えばこの様にだ。


 “Is this a pen?”


 “No,it’s a door.”


 いや、それ普通に間違わないから!

 聞く前に見たら分かるし、ペンとドアを間違う人いる…?

 こんな会話一生誰ともする機会ないだろうな。


 “this is a pen.”


 とか言おうものなら


 “I know,are you bad brain?”


 って返事が来そう。


 “Is he your brother?”


 “No no! she’s woman.”


 “oh,really!?oh my god!”


 “she’s my sister”


 “ok,ok!”


 いや、その会話凄く失礼だから!!

 ok,okじゃないよ!とツッコミたい。

 絶対おかしいって、その会話。

 この問題作った人、ウケ狙って作った!?

 って思ってしまうくらい変な文章だった。


 同じフロア内の生徒が何人もいる手前爆笑する訳にもいかず、絶えず笑いを堪えながら問題をひたすら解く。

 そしていつもの如く宿題をたんまり出され、家に帰る。


 帰ったら夕食の時間で向かえに座っている毒父が


「今日塾行ってきたのか?」


「うん」


「調子はどうだ?」


「まぁまぁ順調」


「そうか。

 俺は馬鹿だったから勉強しなかったけどお前は頑張れよ」


「うん」


 何たる他力本願な台詞だろうか。

 呆れるを通り越すともう笑いが止まらないのだが…。

 だがまぁ、この人のお父さんのお陰で私は塾の高い月謝を払って頂けているのだから一応この人にも感謝をしなくては。


 まぁ、こんなのでもあの一件があってからは一応少しは私を応援してるらしいし。

 まぁ良しとしておこう。


 夕飯を食べたら塾の宿題を少し進める。

 きっと今頃は沙奈ちゃんも真奈ちゃんも同じように勉強している事だろう。

 彼女らは本当の7歳なのだから本来ならば遊びたい年頃だろうに2人とも偉いよなぁ、と改めて感心してしまう。


 私は一度は成人し、貧乏暮しをしていたとは言え一人暮しだった分、金銭事情が許す限りの範囲で割と好きな事はしてきたと思う。


 漫画も飽きるほど読んだし、ゲームも沢山遊んだ。

 だからこそ遊びに未練なく勉強する事ができる。

 だからこそ彼女らはまだ遊んでもいないうちから我慢を続けて偉いなぁと何度でも感心してしまうのだ。


 ふと時計を見ると時計の針はもう10時を過ぎていた。

 お風呂に入らなくては!

 そう思った私は着替えの下着一式を持って風呂場へ行く。

 脱衣所で服を脱いでシャワーを浴びる。


 自分で言うのも何だけど若い肌って本当にいいよなぁ〜。

 何の手入れもしなくてもスベスベ。

 手間もお金もかける必要が無いって言うのは本当に素晴らしい!


 それに比べてBBAになったら何の潤いも無くなるし、悪あがきするのも色々大変だったんだよねぇ。

 髪も艶を失い始めてたしさ。

 切実な悩みだったよ、ホント。


 風呂から上がり身体を拭いて着替えた後、髪を乾かし歯を磨いて部屋に戻ったらもう11時を過ぎていた。

 1日って本当、あっという間。


 そろそろ寝なくては明日の朝起きられなくなってしまうので、目覚まし時計をセットして明日学校に来て行く服をハンガーにかけて部屋の隅に吊るしておく。

 そして布団に入る。


 若いとはいえ今日も沢山動いたので疲れていた為か眠りにつくのはあっという間だったと思う。

 目を開けたのは朝、目覚まし時計が鳴ってからだった。

 最近はそんな風に日常を送っている。

 喜ばしい事に今のところ平和だ。








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