レクチャー開始、早々に課題
「もっと感情を込めて! そんな平坦な歌じゃ誰の心にも響かないわよ! 歌い手なめてるの!?」
「すみません!」
あれから鈴華は3ヶ月限定で歌い手、美麗のレクチャーを受けることになった。
とても嬉しく思う鈴華だったが、美麗の指導は想像以上に厳しかった。
さらに、都に来ていることを家族に知られないように、昼間は畑の手伝いをして、夜に歌の稽古をすることになり、鈴華はほとんど寝ていなかった。
鈴華は、自分で思っている以上に心身的なストレスが溜まっていた。
それは、美麗にも分かっていた。
「鈴華、あなた声はよく通ってるわ。私を呼んだ時の声が良かったから、あなたに歌を教えてみようって思ったんだから。」
「ありがとうございます……」
「でも、その声もね、十分な睡眠時間もなく歌い続けていたら枯れてしまう。気持ちはわかるけれど、休まないと……」
美麗がそういうのも当然だった。
「でも、3ヶ月しかないんです。今しかない……。どうしても美麗さんみたいに歌いたいんです!」
決まって鈴華はそう言った。
しかし、このままでは声が枯れるどころか一生声が出なくなる危険がある。それは鈴華にも美麗にも分かっていた。
「ご家族に、理解してもらうしかないと思うわ……」
美麗の言葉に、鈴華は俯いた。
美麗の言う通りだ。
父も兄も、少し過保護ではあるが、優しくてしっかりしている。
鈴華がお願いすれば、きっと理解してくれるだろう。
だけど……