帰還
礼貴が玄関に飛び出した。
そこには、桃髪を2つのお団子にした少女が微笑んで立っていた。
「す……鈴華ぁ!?」
その声に貴徳も驚いて出てきた。
「鈴華だよ! 久しぶり、お兄ちゃん、お父様!」
礼貴と貴徳は言葉を失った。
「あれっ、手紙、届いてなかった?」
「……あー、いや、ちょうど今届いて読んでいたところだ」
貴徳が少しぎこちなく言った。
「あら、ちょっと手紙出すの遅かったかな」
が、鈴華は全く気付いていなかった。
「……ほ、本当に、鈴華か?」
礼貴が言った。
鈴華は笑って、
「本当だよ〜、偽物に見えるの?」
と言った。
「……ずいぶん、変わったな」
「えっ、そうかな?」
鈴華自身は気付いていなかったが、この5年間で、鈴華は見違えるほどの美女になっていた。
「前まであんな、犬みたいなチビだったのに……」
「ひどいよお兄ちゃん」
「いや、でも本当に変わったぞ。見ない間に美人になったな。まるで……」
貴徳が何か言いかけて、やめた。
「……いや、なんでもない」
「そ、そっか! えーっと、ありがとう」
少し微妙な空気になったところに、凛蘭が来た。
「あら! もしかして、その方が例の妹さん?」
「はい、鈴華です! えーっと、貴女は……」
凛蘭は微笑んだ。
「礼貴様の妻ですわ。凛蘭と申します」
その言葉に鈴華は驚き、礼貴を見た。
「お兄ちゃんに、奥さんが……!」
「いちゃわりーのかよ」
礼貴は照れてか、少しぶっきらぼうに言った。
「ううん! おめでとう!」
「おせーよ。もうガキも居る」
「えぇーっ!」
礼貴は顔を真っ赤にしていた。
「2人目もここにいますわ」
凛蘭は自分のお腹をさすりながら言った。
「5年ってながいんだなぁ……」
鈴華がしみじみと言った。
「少なくとも、犬が女になるくらいの長さはあるな」
「もうっ、お兄ちゃんってば!…でも、お兄ちゃんも5年間で男前になったね」
鈴華が言うと、礼貴はまた顔を赤くした。
「……お前に言われても嬉しくねー」
「ふふっ、照れちゃって〜」
懐かしいなぁ、と鈴華は思った。
5年前に、2週間だけ、家族でゆっくり過ごした時。
あの時もこんな言い合いをして、笑っていた。
「……とにかく入ろうぜ」
「じゃあ、おじゃましまーす!」
「おいおい、ここはお前の家だぞ」
「……そっか、そうだね! じゃあ改めて……ただいまっ!」
礼貴と貴徳は声を合わせて言った。
『おかえり!』