6、お泊り会ー1-
二回目の演技のレッスンは、一回目の続きだった。一回目にやった台本をまたやるっていう感じだった。演技のレッスンは、いっつも前半と後半に分けてやるらしい。
今日、感じたことがある。あの先生、教え方下手だと思う。アドバイスは的をえていると思うのだけど、具体的な事を言わないから演技初心者の園児共にはアドバイスを適用できていない。例えば、表情が作れてない、とアドバイスすることがあるが、表情の作り方を詳しく教えないから、アドバイスの意味をきちんと理解していない子がほとんどだ。いや、多分全員そうだと思う。私は演技についてもっと知識があるからアドバイスの意味は分かるけど、天才肌の子供じゃないと、なに言ってるのか理解するのは難しいと思う。
それに、まるであてつけのように、私の評価が悪いのだ。絶対におかしいと思う。
いや、性格悪いって思うかもしれないけど、あんなちびっこたちより全然演技上手いからね?だって十年だよ?たしかに全力は出てないけど、まだ始めたばっかりの子供に負けるわけないじゃん。十年加賀先生に教わってきたのに4歳児に負けたら…、いや、負けるわけ無い。
昨日いろいろ考えたけど、これはあてつけ的ななにかだと思う。昨日は帰った後、前世と現世は演技の上手さに対する価値観にギャップがあるのかとも思った。でも、違うと思うんだよね。だって、テレビを見る限り、演技の価値観は前世も現世も同じだから。それから、先生の価値観がズレてるんじゃないかとも思った。でも、アドバイスを見る限り、私が今の子上手だったな、と思う時には、先生も私とおなじように褒めるから。だったらもう、お母さんが族に入ってた時に、お母さんに喧嘩でも売られたのかな、というぐらい馬鹿な考えしか浮かばない。
はぁ、こんなこと考えてると気力がなくなってくる。もう考えるのやめよう。そう思いながら、歌の教室へと歩いた。
歌は、小学生と幼稚園児が一緒にやるんだけど、グループは別々で、一緒に同じ部屋を使うだけだ。小学生のグループに入りたいか、決めるようにいわれた。見学させてもらったけど、小雪ちゃん達とやりたいし、舞台は、子供のうちだけやろうと思っているから断るつもりだ。どうせ、小学生のグループも、加賀先生に教えてもらったところまで終わってなかったしね。
ダンスでも、歌と同じ感じだったんだけど、ダンスは、小学生のグループに入ろうと思う。だって、小学五年生のすっごい上手な子に負けていたから。年上としてのプライドに大きなダメージが……。
ってことで、さっさと帰ろう。
と、思ったんだけど、やりたいことがある。前世では居なかった友達、せっかく作ったじゃん。もっと遊びたいよ!
「佳苗ちゃん、小雪ちゃん、こんどさ、私の家で遊ばない?お泊りとか、したいな。」
「いいよ!」
「私もやりたい!」
よし、乗り気だ。あとは親同士をくっつけて…。
あれ?佳苗ちゃんって、シングルファザーの家庭なのかな?前もお父さんが迎えに来てたよね。触れたらまずいかもなー。気を付けよう。
その後、親同士の話がはずんじゃって、なんと、六日後に、あそんで、お泊りして、次の日に一緒にレッスンに行くことになってしまった。
話は逸れますが、気づけば中学校で、いや、小学校レベルの漢字とかもかなり忘れてそう。っていうか、N〇Kの中学数学っていう番組をボーっと見てたら、「ナニコレ?」ってなって、そういえばかなり忘れてるな~と思った。転生したから中学までは楽勝でしょwと思っていた自分を殴りたい。高校まで出たのに!!いや、勉強そこまでしてなかったけど、演技のときに記憶力を鍛えていたから、一夜漬けで何とかなった。ちょっとどうしようかな?とりあえずN○Kの教育番組みよう。
六日が過ぎ、お泊りの日になった。今日のために、四歳の子供が好きそうなおもちゃを買いあさっていたのだ。人形でしょ?(演技の練習にもなれば良いと思いまして)プリチィアごっこのための道具(演技だけでは無く、歌とダンスもあるので、練習のために)うん。こんな感じ。楽しくなるはず!
って思ってたんだけど、演技ばっかりじゃつまんないよね。とお母さんに指摘された。思わず本音が出ちゃって。で、何がいいかな?子供の憧れといえば…
スライム!
田舎の子供の憧れは、大量のスライム!そうそう、小学生の頃は、良く、加賀先生にご褒美にスライムもっらったんだよ。皆の憧れだからね。
よし、買いに行こうどうせなら手作りがいいな、と思って、量産できるフワフワスライムとやらを作ることにしましたよ。
「ピーンポーン」
来た!ドアを開けると、二人が一緒に立っていた。途中で会って、一緒に来たそうだ。私達は、さっさと家の中に入り、遊んでいたけど、大人は長話していた。
私は二人に部屋をみせて、それからなんの遊びをしたいのか聞いてみた。プリチィアごっこが良かったんだけど、スライムだとさ。それで…、スライムを作って、めっちゃ巨大で大人げないけど興奮して、遊びまくって、髪とか汚れて、銭湯行って、母の気合満タンの、ハンバーグとエビフライと、ポテトサラダと、オカラを食べた。皆が好きなのを全部作ってくださった。オカラは、小雪ちゃんも、佳苗ちゃんも、あんまり好きじゃなかったみたい。
それで、明日の準備して、パジャマに着替えて、枕投げして、寝た。
こうして見ると少し短いようだが、それでも楽しい思い出でいっぱいの時間だった。
「小雪ちゃーん、佳苗ちゃーん、起きて~!」
よく寝ているな、子供たちよ。でも、もう起きないとそろそろヤバイよ。
少しすると、香苗ちゃんが眠そうにして起きた。小雪ちゃんは、凄い寝起きが悪いのか、さっきからおこし続けてもまだ寝ている。もう八時じゃよ。あと二時間でレッスンだよ。
「今何時?」
佳苗ちゃんが眠そうに目を擦る
「もう八時だよ」
それから、仕方なく小雪ちゃんを叩き起こして、顔を洗って、歯を磨いて、ご飯を食べた。小雪ちゃんは、顔を洗うまで半分夢の中だったけど、顔を洗った後は、誰よりも早く準備をおわらせ、その場にいた全員が驚いた。スライムは、半分に分けて二人にあげた。昨日、子供のように遊んだのが、今となってはちょっと気恥ずかしい。九時半に家をでて、レッスンに向かった。疲れたけど、これからレッスンですね。こうして、前世も含めて、初めてのお泊り会が終わった。