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子役もかなり、大変です。  作者: ほっかいろ
第一章~子役、始めました!~
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39、戸波由子

 2100pt分です!

 「麻友、今日のレッスンはここで終わりよ。」


 朝方からレッスンに来た麻友にそう告げると、台本を回収した。


 「え、まだ九時半じゃないですか。」

 「ちょっと今日は大事な用事があってね。」

 

 そう言って、私は台本を鞄の中に入れ、いつも通りスタジオを片付け始めた。


 「加賀先生」

 「何?」

 「凜々花は、戸波由子じゃないですよ。今から、凜々花に会いに行くんでしょう?」

 「え…?」


 心臓が止まった。


 「え?どうして戸波由子の事を…」

 「戸波先生は、私の師匠だったから分かるんです。」

 「え?」

 「私、先生の日記読みました。戸波先生はまだ生きています。それに、凜々花は戸波先生ではありません。」

 

 その時、あの日、あの事件を聞いた日の事が蘇った。


 『なお、遺体は、全焼されたと思われます。』


 アナウンサーのその言葉を聞いた時に微かに感じた希望を、思い出した。もしかしたら、由子はまだ生きていたのかも知れない、そんな希望を。


 「い、今、戸波由子は何処にいるの?」

 「分かりません。そもそも、戸波先生が凜々花の師匠だって知ったのも最近なので。私が戸波先生に演技を習っていた時は、北海道に住んでいましたよ。」

 「そう、でも、じゃあ、凜々花は?あの子は本物の五歳児だって言うの?」

 「多分そうだと思います。私、『この手をいつまでも』のオーディションで、凜々花と友達になったんですけど、話し方はまだ5歳児、っていう感じでしたよ?」


 確かに、由子が師匠ならば、凜々花の演技が由子と瓜二つなのも納得いく。流石に、五歳児が、と、引っ掛かったが、生まれ変わったといわれるよりは、よっぽど納得がいく。


 「先生、でも、凜々花に会いに行っても戸波先生には会えませんよ?」

 「え?どうして?」

 「だって、戸波先生はもう凜々花の師匠じゃ無いですから。もう教えることは無い、みたいなことを言って、今は凜々花を教えてない、って言ってました。」

 

 一気に力が抜けた気がした。そうか、まだ、まだあの子には会えないのか…。でも、あの子は、まだ生きている…。


 「分かったわ。教えてくれてありがとう、麻友。そうよね、あり得ないわよね。」

 

 そう言って荷物を入れ終わったバッグを肩にかけた。


 「じゃあ、凜々花ちゃんにもうちょっと詳しく話を聞いてみるわ。もしかしたら、由子を見つけるのに、もうちょっと良い手がかりがつかめるかも知れないから。」


 そう言って、ドアノブに手を掛けて、スタジオから出ようとした。


 「加賀先生!待ってください!凜々花は、凜々花には会うべきじゃ無いです!」


 その声で振り向くと、麻友が顔を赤くして私をじっと見ていた。

 

 「どうしたの?凜々花に会うべきじゃ無いって、どういう事?」


 麻友がこんなに必死になっているところを見たのは初めてだ。


 「加賀先生だったら、凜々花を、私じゃなくて、凜々花を、選ぶかもしれないじゃ無いですかぁ」


 麻友がそう言って激しく泣き出した。

 

 「麻友…そんなことは無いわ。ただ、私は由子が気になるだけよ。あの子は死んだと思てたから、事故があった日何があったのか聞きたいだけ。」


 そう言って麻友の涙を拭くと、麻友の潤った瞳が見えた。

 その瞳は、悲しみというよりも、怒りで満ち溢れていた。


 「分かりました…。」


 そう言いながら、彼女は私の家をすたすたと去っていった。

 

 どうしたのかしら。なんか様子が変。




 雪美のその疑問は、由子の手掛かりを握っている凜々花に会えるという期待が覆ってしまった。













 「違うでしょ!なんであなたはいつも私に迷惑ばっかりかけるの!?」


 ヒステリックな怒鳴り声がレッスン室に響いた。

 ここで私は泣き叫ぶ。


 「うわーん、うわーん」


 流石にこの擬音はやる気が無いが、とりあえず、子供が泣いてる時の演技をした。


 「ああ、もう!ここで一人で泣いてなさい!」


 そう言って先生がすたすたと去っていく。

 そう。今は、先生と共演するドラマの練習をしている。


 「はい。ここまで。にしても上手くなったわね。笑わないようにするのが。」

 「はい。自分でもそう思います。」


 そう。こうなるまでに結構時間がっ経った。初めの方は、先生を役者として見れなくて何度も笑ってしまい、先生に怒られ、の繰り返しだった。


 「本番は誰もあなたの失敗を笑ってくれないからね。あと、恥ずかしかった時に笑うのやめなさいよ。」

 「なんで私の癖が見抜がけたんですか!?」

 「いつもそうじゃない。」


 ああ、先生。私たちも師弟っぽくなってきましたね!

 

 「でも今日は…。」

 

 本当の師匠と会えるんだった。

 今日は、加賀先生と会う事になってる。加賀先生が来たら連絡が入るはずだ。多分、加賀先生は私の正体に気づいたんだ。


 「はい。じゃあこのドラマの方はここまで。次、世にも不可解な物語の方やるわよ。」

 「はい!」


 これは私の好きな、感動系の役だ。


 「今日はちょっと動きを付け始めるわよ。」

 「はい。」


 ということで、世にも不可解な物語の台本をバックから引っ張り出して、ぐちゃぐちゃになったことを嘆いていると、誰かがドアをノックした。


 「失礼します。」


 その声と共に、ドアが開いた。


 「あら、如月さん、どうしたんですか?」


 先生が如月さん、という、確か、受付係をしている人が先生に近づくと、何やら耳打ちをした。


 「あ、そうですか。分かりました。凜々!加賀先生が来たらしいわよ!」


 と言った。心臓がドキドキして、よくわからない汗をかいた。台本をバックに入れて、ドアの前まで小走りで行った。


 「下のロビーで待っているわよ。」

 「はい!」

 「それにしても、予定よりも1時間前なんて、全く、予定が狂っちゃうじゃない。」


 という先生の声を聞きながら、私は部屋を出た。


 因みに私が一昨日ぐらいに、『加賀先生に会うのが楽しみです!』と言ったことから、先生は私の前で加賀先生の事を、加賀先生と呼ぶようになった。前までは加賀雪美、とか雪美、とか呼んでた気がする。『何?まだ会ったことも無いのに加賀先生って呼んでるの?』とからかわれたことを思い出して、にんまり笑いながらロビーに向かった。


 「こちらです。」


 「こんにちは。」


 そう言って、その子はにっこりと笑った。


 「え?」

 「あれ?言ってませんでしたっけ?加賀先生が来たのではなくて、加賀先生のお弟子さんが迎えに来て下さったんですよ?」


 私が『?』という顔をしているのを見て、如月さんが言った。


 「そうだったんですか!?っていうか…、加賀先生の弟子???」


 誰だ!?そうだ、お前だ!!お前が加賀先生の弟子なのか!!!!!!と思いながら、その子をじろじろ見た。うん、可愛い。可愛い。な、なんだ、この劣等感は?!


 「って、あれ?」


 あれ?この子って、


 「え?あの、西島麻友さんですか?」

 「そうですよ。覚えていてくれてありがとう。」


 そう言って、西島麻友さんがにっこりと笑った。あ~、だからどっかで見たことあるな~って思っていたのか…(西島麻友:この手をいつまでも、のオーディションに居た子)。そういえば西島麻友さんって、小3だったよね?小3といえば、!?前世の私が小3の演技力は、絶対劣ってた…。何!?何この劣等感!?いや、でも、いいから、別に!だって、私は小2の時から演技始めたけど、麻友ちゃんは幼稚園から始めてたかも知れないじゃん!と言い訳をつらつら並べていると、麻友さんが話を始めた。


 「あの、加賀先生に、凜々ちゃんを連れてくるようにと言われたんですけど…。」


 麻友さんが申し訳なさそうに言った。


 「あ、ごめんね。ちょっとびっくりしちゃって…、ところで、どうして加賀先生は来れなかったの?」


 如月さんが訊いた。


 「はい、あの、実は、ちょっと足を捻挫してしまって…。先生の家って、地図だけだと場所が分かりにくいので、来ました。」

 「なるほどね。でも、残念だけど、凜々のご両親の許可が無いと、事務所から出られないのよ。」

 「じゃあ、今から電話しましょうよ!」

 

 わくわくしながらそう言うと、麻友ちゃんがちょっと真剣そうな顔をした。


 「実は、ちょっと凜々ちゃんと二人で話したいんだけど…。加賀先生が、『六年前の事』って言えば伝わるって言ってた。」

 

 六年前。つまり、転生した時の話か…。


 「じゃあ、あそこで話さない?」


 私が指さした場所は、ロビーの奥の、人気のない場所だった。


 「そうね。じゃあ、二人で話したいので、ちょっと話して来ますね。」


 麻友さんが如月さんにそう言って、観賞用の木の近くまで歩いて行った。私も後を追って歩いて行くと、観賞用植物の奥の壁の前で、麻友さんが足を止めて、振り返った。


 「久しぶり、由子ちゃん。」


 馴れ馴れしくそういった麻友ちゃんの目には、怒りの色が灯っていた。

 どういう展開にしようかずっと悩んでいました。だから投稿が遅れたんです。

 なんかもう後書きが言い訳ばかりになってきてるので、言い訳しないように頑張ります。笑

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