3、結果
お母さん視点です。
凜々花がオーディションを受けてから、一週間がたった。
凜々花はいつも通り、平仮名の練習をしているけど、私は心配で心配で仕方ない。
洗濯物を干しながら、またオーディションの時の事を考えていたその時、
ブー、ブー
スマホが鳴った。
陽ちゃんがまたオーディションの結果を催促してるのかとスマホを見ると、見たことのない番号からのメールだった。
心臓がバクバクと音をたてる07。
恐る恐るトークルームを開く。
ぎゅっと目をつぶってしまった。
大丈夫、大丈夫。落ちても、来年またあるじゃない。
そう唱えながらも、スマホを持つ手が震える。
パっと目を開いたとたん、「合格」という文字が目に飛び込んできた。
慌てて前に「不」とかついてないか確認する。
…ついてない!
ちなみに、内容はこうだった。
「 先日は、○○アカデミーのオーディションにお越し頂き、ありがとうございました。お宅のお子様、32番は、合格です。
つきましては、オーディション当日に配られたパンフレットの裏側に説明等がございますので、ご覧ください。」
ずいぶん簡素だったが、今はどうでも良かった。
急いで陽ちゃんにメールする。
「受かったよ!」
すると、すぐに返信が来た。
「良かった。帰りにケーキを買っていくからお祝いしよう!」
「分かったわ。すぐに準備する。」
そう打つと凜々花のところに走っていった。
「凜々花、事務所のオーディション、受かったわよ!」
私がそう言うと、凜々花は一瞬ニヤリと笑い、満面の笑みを浮かべて、
「本当!?やったー!!」
と言った。
「うん!良かったね。凜々花、頑張ったね!」
そう言うと、凜々花はにっこりと笑って、
「うん!」
と言った。あぁ、良かった、もし落ちたら凜々花になんて言えばいいのか不安だったからなぁ。私は安堵に包まれていた。
「ねぇ、お母さん、事務所でもらったパンフレットみようよ。合格したら読んで下さい、って言ってたじゃん?」
「あ、そうだったわねぇ。ちょっと待ってね、今取ってくるから。」
そう言って、私はバッグの中のパンフレットを取りに行った。
その間、なぜだか凜々花がさっきニヤリと笑った顔を思い出していた。良くある事だ。時々声が変わったり、いつもとは違う性格みたいなのが出てきたりする。
うちの子はちょっとおかしいのかも知れない。どこか子供らしさを見せることはあるが、基本、私に負担がかからない程度だし、反抗もしない。お腹がすけば自分でご飯を食べるし、他のお母さんたちが経験した一次反抗期も来なかったし。
テレビで見る子役の姿が蘇った。
ふと思った。もしかしたら、この子は、子役になる運命なのではないか、と。子役としての才能があっって、私が思う以上に頭が良いのではないか、と。だって、テレビで見る子役はみんなこんな感じだ。大人びていて賢くて……。考えすぎかも知れないけど、そう考えれば何のレッスンも受けていないのに、1発であの大手事務所に受かったことも、辻褄が合う。
「お母さん、早く~!」
凜々花が呼んでいる。
その姿を見て、思った。いや、この子が子役なんてありえない。私の子がそんな運命を背負っているはずがない。こんなに子供らしく笑っているんだから。
お祝いの準備も忘れて、私は凜々花と一緒に隅から隅までパンフレットを読み漁った。
次回は、事務所の見学です。




