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子役もかなり、大変です。  作者: ほっかいろ
第一章~子役、始めました!~
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23、最終審査

 

 最終審査会場。空気がピリピリしている。というか、子供よりも、母親達の勢いがすごい。なんかめちゃくちゃ子供に色々と言い聞かせてるひととか、ひたすら祈り続けてる人とか、なんか、怖いよ……。


 「えっと、凄いわね……?」


 お母さんが引いてる。まあ、これを勝ち取れば子役街道まっしぐらになる可能性が高いわけだし、そうなるのも、無理もないと思う。勝ち抜きたいと思うのは、やっっぱり加賀先生のやってたドラマなのだからと思う。加賀先生がよく言っていた言葉がある。


 「あなたは、私の一番で、最高の弟子よ。」


 その時は、この言葉、絶対私が最初じゃないんだろうなー、とか思ってたけど、今思うと、本当にそうだったのかもしれない。いつもしみじみ言ってたし、嘘をついてる時の声じゃなかった。演技をしてる時は見抜けないけど、加賀先生、としているときは、嘘をついていれば、声が少し高くなるのだ。その点を指摘した時に、加賀先生は笑いながら、「演技と嘘はちがうのよ。」と言っていた。


 ちょっとズレたけど、加賀先生の事があるから、たぶん、私はこの中にいるすべての人より合格への願望がつよい。多分。でも、人生をかけて子供に、子役やらせてる人とかいたら、もしかしたら負けるかもしれない……。大切なのは、オーディション受ける本人の願望の強さだよね。


 じゃあこのオーディションを受ける前に、色々とおさらいをしておくと、


 タイトル…この手をいつまでも


 メインキャラクター、、、

主人公=松浦 朋美(花坂 莉緒)→和馬の妻。専業主婦。子供は好きだが、望めない体質。

夫  =松浦 和馬(裕山 裕介)→朋美の夫。バツイチ。前妻との間に子供を持つ。

前妻娘=安田 美穂(オーディション中)→和馬の娘。現在小一。虐待を受けていたと思われる。

前妻 =安田 瑠璃子(結崎 実)→和馬の前妻。


 あらすじ…、朋美はごく普通の主婦だったが、ある日、夫が前妻との娘、美穂を連れてきたことにより、彼女の人生は大きく変わる。朋美が徐々に母性を、美穂が徐々に愛情を育んでいく物語。


 「…二十四番さんそして、二十五番さん、入ってください。」


 係りのおじさんの声にハッとして、お母さんに別れを告げ、審査室に向かった。

 審査室に入ろうとすると、少し前の方に麻友ちゃんがいるのが見えた。

 一緒なんだ。なんか私一人で名前覚えて勝手に敵対視してるけど、この子一体何者なんだろう。


 色々考えながら席に着くと、審査員さんが、


 「では、オーディションを始めます。ここでは台本を使ったオーディションをします。今から台本を配るので、34ページを開いて、そこから36、37ページまで練習してください。練習時間は五分です。」


 と言って、「『この手をいつまでも』第一話台本」と書かれた、教科書ほどの台本を配った。台本には、きちんとふりがながふってある。ちなみに、34ページは、美穂がはじめて朋美の家に来た時のものだ。とりあえず、どういう風に読むのか頭の中で再生する。


 「はい、では、21番さんから読んでいってください。」


 二十一番は、麻友ちゃんだった。他の子もそうだけど、麻友ちゃんも緊張した表情をしている。ちなみに、美穂以外の役は、全部審査員がやるそうだ。


 「今日からここがあなたのお家よ。」

 「私の、おうち?」

 「うん。そして、私はあなたのお母さん。」

 「私の、お母さん?…いや!やだ!お母さんなんて要らない!」

 「美穂ちゃん……。じゃあ、こうしよう。私は美穂ちゃんと一緒に暮らすおばさん。ね?」

 「おばさん?…わかった。」

 「じゃあ、ご飯、食べる?」

 「うん。」

 

 「はい、そこまででいいよ。」

 「ありがとうございました。」

 

 やっぱり麻友ちゃん上手い。他の子も圧倒されている。


 他の子は、正直いって、あまり上手くなかった。特待生クラスの子と同等かそれ以下、という具合だった。やっぱり麻友ちゃんが特別なようだ。ちなみにだけど、格差をつけないため、審査員さんの読み方は、どの子でも、全く同じだった。すごいなぁ、出来るかな?と思っていると、あっという間に私の前の子の番が終わった。


 「はい、そこまででいいよ。」


 次、私の番だ。


 「ありがとうございました。」


 心臓が音を立ててドキドキしている。書類から手をおいて、目を上げた、審査員の人が言った。


 「じゃあ、最後に25番さんお願いします。」

 「はい。」 


 一回深呼吸してから始める。やっぱり、アピールポイントは、「私の、お母さん?…、いや!やだ!お母さんなんて要らない!」のところだから、そこを重視しながらやっていこうと思う。


 「今日からここがあなたのお家よ。」

 「私の、おうち?」

 「うん。そして、私はあなたのお母さん。」

 「私の、お母さん?…いや!やだ!お母さんなんて要らない!」

 「美穂ちゃん……。じゃあ、こうしよう。私は美穂ちゃんと一緒に暮らすおばさん。ね?」

 「おばさん?…わかった。」

 「じゃあ、ご飯、食べる?」

 「うん。」

 

 「フゥー」

 上手くいった。自分の中の八割は出せたと思う。

 チラッと上をみると、


 「はい、ありがとうございました。」

 審査員さんの冷静な塩対応はいつも心に刺さる。


 

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