21、二次審査
更新を、前の更新日に合わせて十日辺りにしたのですが、一日だと思ってた方々すいませんでした。次から一日に合わせます。
凜々花の一次審査通過は、余り驚かなかった。でも、これまでいくつものオーディションを受け、それに合格し続けてきたあの子の裏に、大きな落とし穴があるように思うのは何故だろうか。あの子が成長すればするほど、そういう不安が大きくなってくる。
「三十から四十番の方は、審査室にお入りください。」
「あ、行ってくるね。」
「うん。頑張ってね。」
「うん。」
でも、この子の大人びているけどそれでもって前向きな姿を見ていると、どこにも落とし穴なんてないような気がしてきた。
凜々花自体には、落とし穴など無かった。しいて言うのならば、凜々花の才能だろうか。
一次審査では、1000人中300人が選ばれた。そしてこの二次審査では、300人中50人がが選ばれるらしい。六人に一人って…。。ここにいる子たちの内の二人位の確率かな?でも…、この役小一の役なのに、小三位の子がほとんどなんだけど。大丈夫かな。
「…では、始めます。」
内容は、自己紹介とちょっとした演技。一番目の子から、演技のレベルは一次審査の「上手い」位の標準で、ちょっと驚いた。私は三番目だった。
「四十三番、どうぞ。」
「はい。馬場 凜々です。四歳です。よろしくお願いします。」
「はい。じゃあ、もし夕ご飯が君の大好きなメニューだったら、っていう演技してみて。」
「はい。」
大好きって、子供だしハンバーグとか?
「…え?今日の夕ご飯、ハンバーグなの!?やったー!ハンバーグだ!ハンバーグ♪ハンバーグ♪」
「……。」
「…あ、終わりです。」
「はい、じゃあ次の人。」
ちょっと終わり方気まずっ。こういう事って結構あるけど、すごい気まずいんだよ。
っていうか歌はやりすぎたかな?ま、子供だしね。
演技の反省をしながら次々に人は変わっていき、最後になった。
もう終わりだ~。と思った矢先、
「え?なんで?前から約束してたじゃん!今日の事楽しみにしてたのに。…、ひどいよ、そんなの。」
後ろから聞こえて来た演技に、思わず振り返る。
そして、彼女の目から一粒の涙が流れる。二粒目が流れ、それ目印に、どんどん涙が溢れていく。でも、その目は鋭く、睨んでいた。悔し泣き。それをこれほど表現できる人が、この世に何人いるだろうか?しかもこの子はまだ小学生。お題の、(もしも行きたかった所に行けなかったら。)も忠実に再現されている。
「西島 麻友」
審査員が呼んでいた名前を頭の中で繰り返す。
彼女は一体何者なんだろう?
もやもやしながら審査室を出た。
あの子は絶対最終審査まで来るだろう。そこで勝てなかったら…。
はっとした。確かにあの子の演技はずば抜けている。だが、小学生を相手に私は何を不安におもっているのだろうか。
そう気づくと同時に、私の不安の根本が見えたような気がした。
私が不安なのは、三次審査での勝敗でなく、後にあの子にどんどん追い抜かされていく事なのではないのだろうか。
考えても無駄だ。加賀先生にもよく言われたんだよな。
『先の事に今から怯えるくらいならその怯えに打ち勝てる程努力しなさい。』
決まり事に聞こえるかもしれないけど、私にとっては、いつもやる気をくれる言葉だった。
「受かったの!?」
正直言って、ほっとしたのが一番だった。
「そうよ。凄いわね。事務所からも褒められたのよ。」
「あ、あと、明日は演劇を見に行くから、レッスンは休みにしておいたわよ。今日はゆっくり寝てね。」
あ、忘れてた。事務所のちょっとしたイベントとして、一週間前に配られた家族用チケットを忘れていた。
「うん!!」
前世を含めて舞台に行ったことは少ない、いや一回しかないら結構楽しみな用事だ。じゃあ、今日は演技の練習でもしながら夜更かししようかな。
はい、夜更かし反対!!アラーム、止まれ!!もう二度と夜更かしなんかしませんからー!
あー、夜にテンション上がってはしゃぎ過ぎた……。今日は演劇見に行く予定だったのに。
心の中で後悔しながら、慌てて部屋を駆けだした。
次に軽い人物紹介挟みます。