1、体内
いよいよ始まります!緊張しますねえ。
「こんな家、飛び出して、大物になるんだ!」
あるところに、役者を夢見て家を飛び出した少女(十八歳)がおりました。
その少女の夢は、転生することによってかなえられることになるのです…………。
窓の外には、高層ビルや二十階近くありそうなマンションが建ち並んでいる。
私は、期待に胸を膨らませながら、窓をみていた。
ここで、必ず___
ブッブー
キイー
そのとたん、タクシーが急停車した。
かと思うと、体がフワッと宙に浮いた。
必ず、女優に…
頭部に暖かいものを感じた。
それからの事は、覚えていない。
「・・->’’~?」
何?
綺麗な女の人……いや、神々しいという言葉が似あうような、美しい女の人が、変な言葉をしゃべっていた。どうやら、私に話しかけているようだった。
まもなく、その女の人は何かをつぶやくと私の額に手を当てた。その瞬間、深い睡魔が私を襲った。
次に目覚めたところは、真っ暗な場所だった。私は息をしていなかった。でも、生きていた。不思議な感覚に陥って、一瞬思考が停止していたが、頭が動くようになると、パニックに陥った。
とりあえず体を動かそうとした………が、 う、ご、か、な、い?!
うん、はい、落ち着きました。取り合えず、思い出せるところまで思い出すことにした。
あ、そうだ、確か、女の人に眠らされて……その前は、車の事故で……。
あれ?もしかして、私、死んだの?冷静にそう考えた。じゃあ、あの女の人はだr…
体が動いた。いや、揺れた。何かと思った、次の瞬間、くぐもった声が聞こえた。「ねえ、陽ちゃん、朝だから起きて~」
なにこれ、女の人の声?すごいくぐもってて聞き取りにくい。
「いいじゃん、もうちょっと寝かせてよー。」
その声は男の人の声だった。夫婦なのかな、この二人。って、誰だよこのバカップル。
「あのね、大切な話があるの。…実は、妊娠、しちゃった。」
この瞬間、私の頭にある言葉が思い浮かんだ。
「転生?」
はい、ということで今は順調に六か月を越してきたところでございます。
あれから程なく、今、私がお腹の中にいる事がわかって、うちの両親がラブラブな事も分かったところなんだけど、あれだ、こういうカップルってさ、一、できちゃった婚でしょ?二、別れるでしょ?三、シングルマザー、四、ネグレクト。ポン、ポン、ポン(ポン)な訳だ。
心配な訳だ。
私は生まれ変わったら子役になるってきめてたのに…。
と思ってたら、父親がかなりいい会社勤めてるらしい。
母親は父親に会うまえまで族に入っているような人だったけど、今じゃ専業主婦としてよく働いている。安心じゃー。
安心すると次の問題が出て来た。
暇。そう、暇。
一日の大半は健やかに寝ているけど、起きたらいつも暇。
「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。おばあさんが川に洗濯に行っていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が……」
と思ったら、母親が胎教を始めた。
桃三郎だった。
まあ眠気を誘いはしたんだけどね。
ということで六か月目にはいると、胎教が始まりました。
はい、皆さん。大分時が飛び、ただいま入院中です。これまでに分かったことは、両親の名前。父親は場美緒 陽介、母親の名前は場美緒 朔美、だ。私の名前はまだ決まってない。
陣痛は少しづつ始まってたんだけど、今日のお昼、特に陣痛が酷かったらしく、頑張って自力でタクシーに乗り病院まで向かった。
お母さんはかなり辛かったらしく、病院に着くなりうなっていた。そこにお父さんも到着して、お母さんの隣で励ましている。
「んんー!」
お母さんは結構順調に分娩室に通してもらえて、頑張って踏ん張っている。
ってことで私も頑張って外に出ようと力む。
にしてもさっきから頭がすうすうする。
と、頭に冷たいものが当たったような感じがして、
「先生!赤ちゃんの頭が出ました!」
看護師さんが甲高い声をあげた。
寒っ!
冬の朝に布団から出た時みたいな感じなんですけど。
「先生!抜けました!」
「泣かないぞ!」
バシッ、バシッ
と、先生がいきなりスリッパで私の体を打った。
うぎゃー!先生の力すご!
泣きますよ、泣きますから!
「うぎゃー!うぎゃー!」
「凜々花、誕生日おめでとう。」
「凜々花?」
「うん。名前、考えたんだ。」
「うん、良い名前だね。」
場美緒 凜々花、ただいま生後一分です。
やっと産まれました!