ニャア三倍
その猫は三歳の若い雄猫だった。
子猫の時から物怖じしないで訪れる人間に
愛想を振りまきもふもふ撫でさせる猫だった。
子供の時はほぼニート猫であった猫は大人になると
縄張りを持ち家を開けることはあったがいたって普通の猫だった。
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異変が起きたのは彼の春から夏への抜け毛である。
短毛種なのに抜け毛の量が今までの三倍以上なのであった。
無論他の猫はそんなことはなかった。
しかも撫でれば撫でるほど毛が抜けて
撫でる人間の顔にまとわりついて呼吸の邪魔をするのだった。
飼い主はブラッシングをしてさっさと抜け毛を終わらせようとするのだが
ブラシングする度ピンポン球ほどの毛が抜けるのに全く抜け毛が終わらないのだ。
しかも夏になれば流石に終わるかと飼い主は思ったが夏になっても抜け続けるのだった。
抜けても抜けてもハゲになるわけではないし猫の方も特に問題にしていないので
くどくど気にすることはなかろうと飼い主は思うことにしたし
飼い主の方も髪の毛の量が通常の倍という尋常でないことでもあるので
似てしまったのかもしれないと思わんでもない感じだった。
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さて。
この件で猫の毛が普通の猫の三倍抜けるという現象を
うまいこと表現するとしたら
三倍
であろうという結論に至った。
そして三倍で有名なフレーズとしたら
機動戦士ガンダ?の
『シ?ア三倍』
だと飼い主は思いながら
『ニャア三倍』
というダジャレ表現に至りさらにはツボにはまってしまったのである。
その為『ニャア三倍』の猫のブラッシングをする度ツボに悶絶するようになったのだった。
劇終