ステータス∞チートの主人公ではカタルシスを得られない
異世界にステータスという概念があっても構わない。
むしろ、下手に辻褄を合わせるくらいなら最初からゲームのような仕組みで話を進めた方が良い。
残念なのはステータス∞チートの主人公、こいつだ。
最強主人公による圧倒的に戦力差のある無双展開は爽快さもあって心地よいかもしれない。
しかし、それは主人公と相手が【勝負】をしているからである。
何もしなければ負けという当たり前の状況下で、相手に敗北をつきつけ掴みとった勝利だからこそ意味がある。
たとえ敗北の可能性が天文学的な確率だとしても、負けがあるからこその勝負といえる。
だというのに最近の主人公は前提が違う。
ステータス∞チートなるもので負けがそもそも存在しない。まず、勝負として成り立っていない。
これでは物語として盛り上がるはずがないのだ。
主人公の一挙手一投足が勝利へのアクションではなくただの作業へと成り変わる。
敗北のない争いで相手を倒す。それを人は勝利と呼ぶのか。否、呼ばない。
無双による爽快感を確実に得るための設定が、読者にストレスを与えないための配慮が物語を腐らせる。
私には∞チートの成れの果てが、書き手と読み手の両者にとって価値の無い駄文に成り下がる未来しか見えない。
読み手のニーズに応えるための最強主人公なるものは誰にでも考えがつく。簡単だ。不老不死にすればいい。
しかし、『ぼくがかんがえたさいきょうしゅじんこう』が無双するのと、『不老不死』の主人公が無双するのとでは訳が違う。
命のやりとりをするからこそのカタルシスが∞チートで全否定される。