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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
45/60

45 ごらあ、見せもんじゃないぞ

改題したった・・・

 最前列に出て話しをきいていたのだが、副官の目にとまってしまい、いらない注意を引いてしまった。


「語失のままなのを尾忘れですか。それに領軍では私、副官さまの指揮下ですが、女子会事案なんです、あげられないですよこの人」


 ニワカのおかげで消えずにいるって、なんのことだろう。


 領軍、女子会事案・・・急に言葉がわかるのも、よいことばかりではない。

わからなくて判断がつかないことが増える、混乱してしまう。


「それはどういうことかな」


「副官さまも値踏みされたでしょ、この人の背中の大怪我治しの治癒力みて、これ女子会的に卵統に残したいということで」


「それほどのものなら、こちらで賢女かしこめつがわわせる」


「あら、賢女かしこめさまの尾相手はご領主さまが先でしょう、だいいち、そういうのは女子会の専決事項です」


「相手が特技研の特級管理官の殿下ならどうだ、皇統にも女子会は貸しをつくれるぞ」


「いやです。わたしが尾さきにいただきます。その次が女子会の意向でおそらく賢女さまで、特技研の熟女さまが尾のぞみならそのあと・・・それに、この人、どうせわかるから、尾知らせしておきますけど、魔法を何度使っても消えず、尻尾萎えでも魔法者に目覚めてますよ、私の見守りの、尾かげだけで、他に誰の手助けも借りずに」


 えー、何だって

 魔法だったの、僕の不思議は。決まり文句の詠唱えいしょうとかいらないみたいだけど。


「どういうことだ、魔法、魔力操作の余韻よいんを感じないが」


 えー、違うの。


「さあ、それは尻尾しりおえませんが、もし新種の魔法者なら、なおさらです、あげませんから」


 僕、新種・・・新種でもそのなかみ、ばれてないよね。


「帝統の殿下も我が領の女子会の名をだされてはな。よし、副官、この件は領主じぶんの預かりとしたい。大卵母との協議が必要と判断するぞ。この二人はいっしょにしておいてやれ、非常時に重なる戦時、くっついているのを引き裂くのは性分しょうぶんにあわん。みなもそう周知してくれ」


 えー、何だって

 えー、何だって

 えー、何だって


 今知った情報だけでも多すぎて濃すぎて何が何だか。


赤い星

天の火

避難

消える

領軍

女子会

卵統

賢女

番う

領主

特技研

特級管理官

皇統

熟女

新種魔法者

帝統

殿下

大卵母

戦時


 うわっ

 いろいろ

 いろいろ

 これはもういろいろ

 ありまくりじゃないか。


 あまく見ていた、言葉が通じたくらいでは、ちょっとどころでなく、尻尾人社会、手強てごわい、複雑、手に負えそうにない。


 けど、避難といってたよね。天の火から。確かに避難と。


 避難・・・僕、生き残れる希望を持ってよいのだろうか。


 ニワカもカイジョも助かる可能性があるのだろうか。


 何せ相手は超新星爆発。


 近すぎて、ふくれ上がる超巨大な熱核融合の火の玉にじかに呑み込まれるかもしれない。そこまで近くなくても、その凄まじい致☓の激光は、100億年以上旅して、彼方かなた、宇宙の果てからでも必ず見えるに違いない。


 堅固なシェルターですら、核弾頭の直撃か至近なら難しいらしいのに、本当にわかってて避難と言ってるのかな。


 それに僕、僕なんとリア充強制を執行されるらしい。これはもう☓んでもよいかもしれない、と思ったのは内緒にしておこう。





 頭の中がぐるぐるして気がついたら3人で車列二台めの獣車のところに戻っていた。


「ええと、いいかな」


「! あれっ、えっ、しゃべっている、言葉、もどった、もどったの」


「うん、さっき・・・急に言葉がもどった、たぶん、こちらから通じるのはきみにだけだかもと思うけどし、記憶は全然ダメ、思い出せない・・・」


「ふーん、ふーん、そうなんだ、ふーん」


「おかしいかな」


「尾かしくても私に考えがあります、記憶を代償に新種の魔法者さんでしょ、私は特別な魔法の対象なの、そう、そう言うことに内緒ないしょにして尾きましょ、ねっ、ね」。


「・・・う、うん、それでよいなら」


「あっ、もしかしてさっきの副官さまとの話し、わかってた・・・・・・私いやじゃないからね、キミのこと、ホントですよ」


「あっ、うん・・・うん僕も」


 僕らは悠久の時のなかの非常に短い瞬間の中を生きている。それでもこれほど体中からだじゅうがにわかに熱くなったのははじめてだ。


 うぶな僕、ニワカと告りあいで、熱気球のように舞い上がっている。


「心配したんだからね、また、見えなくなってそのまま消えてしまうんじゃないかって、私の秘密の復活者くん」


 えっ、なんのこと。


「でももう大丈夫だよね?副官さまに新種でも魔法者と認めさせたからね、大丈夫だよね」


「あ、ああ、きみをおいて見えなくなったりしないよ」


 どういうことかわからないが、ニワカを心配させたくない、調子をあわせてそうこたえる。


「私、やっぱりキミの卵、産みたいです、いいよね」


 えっ、えっ、えっ、えええええ


 ここにきてまさかの卵生判明!!いただきました。


「いいよね、いいよね、ぜったいいいよね!」


「あっ、卵、いいです、もちろん大好きです」


「よかったあ、復活者くんとの有精卵ゆうせいらんらんらん


 なんかとんちんかんな受け答え。てんぱってるのは、いっぱいいっぱいな僕だけじゃなさそう。


 ええと、なに話そうと思ってたのだっけ、すっかりニワカに乗せられてしまった。ええと、何だっけ・・・そうだ、カイジョ、カイジョのこと。


 今もそばにいるのに、ニワカが気づいているふうが全く無い。


 慎重に慎重を期さないと、問い自体が事態をこじらせかねない気がする。


「ねえ、きみに、なんというか、きみに近いかもしれないひとのことだけど」


「私に近いひと・・・女、女ね、いいけど、私が番一のつがいじゃなきゃいやだよ」


 番一の番? 何それ。なら番二以下があるのか、それもしや普通に浮気あるということ?!


 重婚、自由恋愛社会で、ニワカも浮気してよいのなら・・・そうならこれはかなりショックかも・・・


「・・・そういう子、ここにいないかな」


「私と同じ、孵化の巣の血統卵の子のこと?」


 はあ、孵化の巣も血統卵というのもさっぱりわからないが、姉妹っぽいもの?

「ああそれです、それ」


「帰郷組にはいないですよ、魔法にのまれて消えた子のことはわからないけど」


 帰郷組というのはあとで考えるとして、魔法を何度使っても消えずとか、魔法にのまれてとは、何だろう。それで消えた子というのは・・・ニワカに見えないカイジョが・・・そうかもしれない・・・

「魔法にのまれた子って、どうなるのかな」


「さあ、なんか尾かしいなと思ったら、消えた子がいる、そういう都市伝説。だれも覚えていないんだって、それ以上のことは私も知らないよ」


 認識も記憶もなくなると、いってるっぽいから、ニワカがそうである可能性が高い。


「でもね、奇跡はあったのです!! 賢女さまが御自分の生をにえに、エリクシルフォール・スペリオルレインと歌われて尾ろされた特別の治癒魔法。

 私はコルプス船の砲弾に両脚を吹き飛ばされて終わりを覚悟したけど、ほらこの通り、まだ時々しか動かないのも領都に戻れば治せる。

 そしてキミ。賢女さまの魔法で、初め脳が見えてました、血まみれの灰色の脳と髄。それでよく生きているわねえって思ってたの。

 それが、いつの間にか、頭が裂けた大キズが無くなって、槍士姿が初めから尻尾の先までここにいました的にみえてきて、こいつ誰でしょうと思ってつついていたら、記憶の中のキミに定着したわ」


 僕に鞍替くらがえした体のよみがえり!

「・・・僕を復活者というのは、そういうことだったんだ」


「だから賢女さまにキミの番一の利権があるのだけど、私以外、キミが復活に気がついてないし、賢女さまは女子会の大卵母さまの計画で領主さまの血統卵が最優先だから、わかったでしょ、それまでは今のキミの姿の復活に功ある私が番一なの、わかったでしょ」


「・・・それで女子会事案とは」


「わかったでしょ、それまで私が番一なの、わかったでしょ」


 うわっ、胸が胸があたってますニワカ。これがかの有名なハニートラップか。

「・・・はい」


「よろしい。それはキミの大怪我の自力完治力だけでも、血すじに組み込む価値があるからよ。それどころか尻尾萎えでも消えていなくならない新種の魔法者。それも世にも希な復活者の卵統をいの番一に残せることに比べたら、些細ささいなことです。大卵母さまはたいそう尾喜およろこびになるでしょう、私の栄達は約束されたようなものです」


 絶対絶命からの起死回生で超逆転、遠神さま有り難うございますと続けるニワカのつぶやきを聞きながしながら僕は思う。

 間違ってました、自由恋愛、どこに行った。でも児童婚はないだろ児童婚は、まさかそれも尻尾人社会ではありなのか。


「あのう賢女・・・さまって、もしかして10歳もいってないようですけど」


「さっきも言ったと思うけど、あのかた、もとからひなっぽさがぬけてなかったのに、御自分の歳数としかずからせいを分け与える奇跡の魔法でさらに幼若な尾体おからだになられたの。本当はあと少しで歳15の成人。でも、ふふふ、初めての交わりのリトライまで、うふふふ、そのための初経卵の産みなおしまで年何かかるかしら」


 カイジョ関連のことを訊ねようと思ったのに、納得なっとくも理解も努力がいる方向に会話の流れがそれていく、意のままにならない。これはそうか、そういう力が働いているのか。


 強制する力、それがある、まずい、それが自分にも働いているのか。 

 カイジョどころか、僕とニワカの本当の名前さえ、聞き出せていない。


 なのに気になる名前が出てきた。


・・・遠神さま・・・僕をここに送り込んだのは、貴方あなたさまでしょうか。種人として監禁されてしまいかねない・・・僕の不思議な力はそれをはねかえせるでしょうか。


 逃げ出したくなる。なのにニワカ、カイジョを連れて、逃げるても逃げる時間もない焦燥しょうそう


 その焦燥をなんとか脇に押しやったら、未決の疑問が待ち構えていた。


 そもそも介助者たちは、なんで介助をしているのだろう。介助者たちとレッテルを貼ったことに、今になってその疑問が浮かんできたのは、強制する力、強制力に遅ればせながら気がついたからか・・・





 避難することに同意の村人達の準備ための小一時間の間に、放棄のの逃げ回る魚影は昼餉ひるげがわりの小腹を満たす即席野戦食に化けていた。


 この世界で初めて味わう魚料理、あつあつの串焼きを頬張る。ますのようなあゆのような、湖の恵みは、淡白でどこか懐かしい味。


 昔は淡水湖だったそうだが、放流した魚の属性のために、塩っぱくなったそうだ。その湖水から煮詰めたという黒いたれをはけで何度も塗りながら焼く、ひたすら焼く。時間をかけて焼く。本来ならそんなふうに香ばしく焼きあがるように焼くのだそうだが、本日はたれとあわせいっきに煮込んだもの、主計バーコードの大鍋はここ湖畔の村でも大活躍だ、それを木串に刺して強火であぶったなんちゃって焼き魚。


 僕らの胃袋をおさえる手早い調理品からの取り分け皿に群がる介助者たち・・・といっても今はカイジョを含めてわずか4人。皿からの減り具合のなさを口をへの字に見つめる主計。湖水を渡ってくる秋風になぶられ泳ぐまばらな髪・・・笑えて笑えない、うらぶれた光景。


 カイジョは主計の供物くもつには手を出すのに、僕の準備した皿のものは食べようとはしない。くちびるに押し付けてようやくだ。


 カイジョは僕が不思議な力をふるう時にだけ、僕に関心をみせる、眉をひそめる。それでも合う視線はない、眼をのぞき込んでもベタ黒で光はない。


 カイジョは、暖簾のれんに腕押し、僕に抵抗しない。


 カイジョはしゃべらない。


 カイジョは意思を示さない。


 カイジョはもっぱらニワカにくっついて僕ではまずいときのニワカのアッシー、ほかの介助者たちも、同じようなものだ。


 弱い共生関係・・・ 魔法にのまれた子が縁者と・・・いや、それはおかしい。見えているはずなのに誰も気がついてない、共生ではない。


 魔法を何度使っても消えずとか、魔法にのまれた・・・それはどう言うことだろう。


 魔法、


 魔法、


 僕の不思議な力とは違うらしい、魔法。


 わからない、さっぱりわからない、魔法。


・・・美味おいしいものを食べて、さあ元気だして、思考も明晰めいせきであれば、容易にオールクリア・・・とは行かない、か。





 村というか限界的集落というか、ここには介助者はいなかった。有り難みがあろうと見えない存在に対して供物をささげるほどの余裕はなかった。


 村にある使役獣と荷車は粗末な一台分だけで、そこに積めるだけの糧食が乗せられた。歩けないものはいない、、、年寄りも足腰達者なかくしゃくしたものばかり。でも本当はそれは必ずしも良くないことの予想つく・・・動けないものも即生きていけなくなるのだろう・・・、別れの愁嘆場しゅうたんばがないのは何よりだが。


 それでも幼児乳児それに腹のふくれた女たちだは、領主の乗る3台目の前後の獣車に乗せられた。


 当然、僕は歩きだ。車列の移動速度は昼までの半分にも達しないが、幼児や妊産婦を歩かせるわけにはいかない。


6台の車列と人の列で、倍の長さになり、湖畔沿いの比較的疎な木立の間をぬう平坦な道をのそのそとすすむ。


 襲撃への警戒は怠れない。時折、前方、後方、岸辺側でない側方に、あの黒ベタ獣類の見え隠れがあり、その都度、警戒の大声を出して、追い払う。村民の手の猟具や農具でも数は力、手を出しかねにならせるには有効だ。


 僕は尻尾人語の聞きしゃべりは、ニワカのからみが必要で、獣車にのるニワカのそばについて歩く。


 ニワカの絡み、ニワカが関心が及ぶ範囲というしばりで、僕の尻尾語言語は成立している。聞こえてもニワカの心がそこになければ、僕にも背景の意味不明音声の羅列にしかきこえない。まだ試す機会は少ないが、僕のしゃべりも、ニワカの耳にはいらなければ、相手にとどかない、理解されないことを確認している。ニワカの声がとどかないところもおそらくそうだろう。


 ニワカからの借り物だからそうなる。

 ニワカの言葉の能力の一部を借り物とする、仮想の閉域能力だからそうなる。

 

 すぐうしろ3台目、領主の車に同乗の副官が聞き耳を立てても、ニワカが僕との内輪の話のつもりなら、僕のしゃべりはニワカ以外には意味不明、それどころか僕が発声していることすら、気がつかれなかったのではないか、副官がニワカのそばで歩く僕をさほど気にもしていない様子から、それがうかがえる。


 これがニワカに依存しない魔法の言語スキルとかなら使い勝手も良かっただろうか。でも尻尾人社会の複雑さの一端を垣間見かいまみさせられ圧倒されて、ニワカが窓口ウインドウである不自由にも利点があるのがわかる。


 頼らせてもらっていいよね、ニワカ。




 秋の夕暮れは釣瓶つるべ落とし、すぐ暗くなる湖畔の野営地。

 そのはずれでニワカと眺める東の空、大小の月よりひときわ目立つ、真っ赤な一番星。


「夏のおわりころからかな、天から火が降ってくるって、帝都でうわさ話が広まって、根も葉もないよた話かと思ってたのにね、皇女さまからの通達が御領主さまにもきて、本当だって。それから急ぎ領にもどることになったの。キミは覚えていないだろうけど、うちの領にあるのは土鉱の深い鉱山だけじゃないからね」


 土鉱の鉱山??、なにそれ、

「ええと、何があるのかな」


「知りたい?」


「うん」


「私よりも・・・知りたい?」


 波打ち際近くに僕とならんで腰をおとすニワカのからだがずずずずとって来る。

 脚が不自由なニワカにできることでなく、それはカイジョの力技ちからわざだ。もちろんニワカはそれをわかってない、意識もしていない。


 僕の左腕に右腕をからめ、僕の左肩に頭を傾けるニワカ。

 僕の左腕を胸に押し当て、僕の手を蠱惑こわく的なやわ下腹へそしたのほうにいざなうニワカ。


 でもそのニワカの体を背中からささえているカイジョ。


 ごめんニワカ、初めてLHらぶえっちが3Pだなんて、僕そこまで勇者になれない・・・


「ご、ごめん、きみの脚がなおってから・・・」


「・・・あっ、あっ、そう、そうだよね、こんな私の脚じゃ、うまくできないよね。領都についたら、ぜったいすぐ治してもらうんだから、私が番一、約束だからね」


 かわりといってはなんだが、ニワカの不自由な美脚のマッサージをカイジョに習って堪能たんのうした。

 

 カイジョがニワカをストーカーせずにいられるよう、頑張ろう。




 ごらあ、(村の)がきんちょども、見せもんじゃないぞ。

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