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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
35/60

35 襲撃の洞門

 首都圏を脱して最初の夜こそ投宿したが、翌日から翌々日にかけて再び徹夜行とせざるを得なかった。


 気象が悪化すれば崩落に高波の危険で通過が許されなくなる難所に近づいていた。帝国各地から魔力徴収で入手できる天気模様の嵐の(うつ)ろいでは最悪の悪天候、暴風雨に潮位の異常上昇の最中(さなか)でそこにさしかかる可能性が高く、もしそれで足止めとなれば、予定よりさらに日1以上遅れることになる。


 劫火の正確な期日について戒厳軍からの通知はなかったが、魔法の塔などからの諸情報をあわせると政変の時点で残りおよそ月1と見なされるとする副官の見立てに領主は同意していた。


 その僅かな期間に合算、日2以上もの遅れはとても許容できるものではなかった。それでなくとも領都までは強行しても泊7の日8。それが仮に日10行となれば、残るところ実質日20で自領全滅回避の指揮に奔走することなる。


”無か、全力を尽くしてもわずか生き残るか”


 それは掛け値無しに文字通りで、戒厳軍の情報部統括官の言に賢女の説明を合わせれば、ごくわずかのものが生き残るのも厳しい状況が必至だった。


 そのための正論を絶対優先とすれば、(なさ)けが先だつ道理の奥閨(おくねや)のすべては今や重荷、それを切り捨てることは、まっ先に受け入れざるをえないことのひとつだった。


 領都より女会が寄越してきたまだ雛の賢女(かしこめ)のこれからに、領主は(おのれ)の卵統を託すことにした。


 そして今日になりにわかにその正体が明らかなものとなった賢女の守護者を主張するものは、帝国の力の精髄の片鱗、わずかユニット1とて強大な戦略兵器に違いないと文官の領主の間でも手堅く評価されているものを従えていた。


”生き残れて賢女が卵母の雛が領主になれば、帝国軍独占の核心の恩恵も受け継がれるだろう”


 それを奥閨置き去りの言い訳を超越し、地方の夜行もはかどるもになると言うひどい正しさが補強していた。


 後悔してやり直しにふる時間枠(タイムリソース)はなかった。





 奇面の塔と、向かい合う巨大な車輪、佳麗な摩光装飾の美麗な回転展望構造物。街道はその間をまっすぐ東方向に貫抜いて、そのすぐ先で街道は方向3に分岐していた。


 塔に輪の対のそれらは当初予定の投宿地であった帝国第二の都KハSNの威信の象徴建造物(ランドマーク)で、その界隈(かいわい)まで歓楽街から宵の秋風に乗り、


"劫火なんぞ748

 劫火なんぞ748

 劫火なんぞ748

 せやから劫火なんぞ

 5〇971ねん”


 老若(ろうにゃく)々の酔っ払い達がだみ声をそろえ、うかれ騒ぐ世俗歌が聞こえていた。


 朝早くから朝日を受けて西の高峯が黄金色に輝き、夕遅くまで夕日を受ける東の高峯に赤金色に輝きが残るうちは、いかに夜の(とばり)の降りる刻数が昼より長かろう季節になろうと、北よりの風が衣からのぞく身に冷たく吹こうと、民はやがてくる冬を気にしない、少なくとも気にしないふりをして、収穫とその喜びに興じるだろう。


 この大都の領主代理官は市井(しせい)刹那(せつな)をわかっていた。


 そして首都圏で布告された戒厳令に追従せず、年度予算の残りを原資に、スラムの住民まで総出(そうで)の臨時工事の高額日当に潤沢な酒食供給を手配した。


 後先を考える必要を喪ってこそのつけ払いまで繰り込んでの大盤振る舞い、需要のいっきの大過熱、経済のにわかな熱狂(バブル)の誘導で、市中にすでに広まっていた劫火の噂に対する民の不安不穏を払拭(ふっしょく)していた。


 そのいっぽうで、(ひそ)かに領主意中のごく少数のための大深度地底壕の整備を後背山地に急いでいるに違いなかったし、利害関係ある近隣の領主でもないいっこうは衛士隊に引き留められることも、治安の不都合に巻き込まれること無く、市中を通過できて、行く方向を左に転じていた。


 帝国の武威、工作体(ミリタリィエンジニアリングユニット)、その特殊仕様の大型連結車殻の黒に沈む橙色。その特技研に所属塗装の最後尾に目を見張り、忙しくするものはいても、手を出すものはいなかった。





 粉もんの熱々、地場産触手の甘酢焼き、小さい口で頬張るには大きな団子、その包みひとつとて求める時間のないままなのと賢女があきらめかけていたら、(まかな)いからこれが夕食のかわりと携帯食として配給があった。


 魔法で熱すれば、露店で買い食いしたほかほかの焼きたてまでとはいかなくても、上京する際に立ち寄った年3前の記憶の、ほほが痛かった尾味(びみ)がよみがえった。。


 まだ雛子なのに、まだ雛子のうちなのに、奥閨(おくねや)を押しのけてひとり選ばれ、領主に従い卵統を残すために都落ちを急いでいた。卵統の系譜の選女(えらびめ)であることに罪悪の情は持たぬよう育てられてきても、それとは別のこと、目の前の宵の都の(はな)やかさ、はかなさは心魂に届いていた。


”美味しい、でもこれで本場ものは最後、食べられなくなるの”


 賢女はそう思うと、今に限らず首都でしたことしてきたこと、それとまだしてないことに、心がさまよいでて、悲しくなっていた。


”首都はもう見ることは能わない、そしてこの街もそうなるの”


 行く手に見えてきた奇面の塔と巨大な車輪の光飾景観も滲んできた。



 自走する工作体の車上、荷の隙間で寄り掛かる卵母との雛の関係、もともとは同じひとつの肉という今更(いまさら)な通知のような告白はすんなりともし真ならばと受けとれて、親しみと安心の尾感と温もりにどこか慰められるのに得心がいった。


”そうこの特技研の人の、FM体(ふたなり)外法(げほう)の雛なら、そして外法も度一だけとは限らないわ”そう思えば、外法かかわりのないだろう他の生残雛(せいざんひな)らとお互いなじめないできたのも得心がいった。


 そして領都の女会に卵母の心構えを仕込まれたのも、首都の図書学府(ライブラリィ)で史上最年少の八賢(はっけん)に成り上がれたのも、その外法による非凡ゆえのことと得心がいった。


 裏ライブラリィR15指定の外法は、賢女とてまだ雛のうちでは()ることをはばかられることだった。


”果てのないまだ識らないことが果てて行くの、この世界とともに果てて行くの、歳15まで生きて開くはずのこのままの世界の未来はもう来ないの、いえちがう、はじめからない運命”



 徹夜行の回一目は、明け方まで急な帰省の手配準備に追われての翌夜で、賢女は寝不足の揺れる使役獣車上で早々に夢と(うつつ)を行き()する舟を漕いでいた。


 そして朝になり目覚めても、平安な未来ありからあまりにも急に究極の危急に突き落とされたこの世界が、現実とはわかっていても、覚えていられない悪い夢の続きの嘘ごとのように思えていた。


 領主相手に劫火について識る蘊蓄(うんちく)のひけらかしを(とく)々とやらかしてしまったほんの日4前の夜の未熟は思い出しても尾と顔が火照(ほて)った。はるかな昔のことに感じて封じたかった。


”あれはまあ、あれは・・・あれこそ嘘ごとなら・・・なかった。でも世界が果てても卵統を残すの、領主に付いて(なん)としてでも生き残る、それが当然で役目で使命なの”

 その思いを重く徹尾にまで抱いてそれに寄りすがった。



 KハSNを過ぎ街灯の列が絶えると、隊列が組代えられて追いついてきた特技研の工作体が先頭に移動した。


 そこから隊列の魔法軛制御(マジックヨークコントロール)の局所管制して、首都圏にも劣らぬ夜間速度を実現していた。


 見晴らしのよいその無蓋荷台(フリーキャリア)の上から見渡せば、今宵(こよい)は東天から中天にかけては大小五つもの月明(つきあかりの並ぶ、大合群青(たいごうぐんじょう)明夜(みょうや)、周囲は近く遠く山々の稜線が黒々と連なっていた。


”上京の際は昼間で左手彼方(ゆんでかなた)山際(やまぎわ)まで青い淡水の湖面の拡がりが見えていたけど、今は見えない。それでも黒い何も見えないわからない見渡す限りべたの領域がその存在を主張しているのだわ。それは識らないことと同じなの、それは乗せられているこの工作体も同じ・・・驚くほど揺れない、、、えっ!?”


 ふいに思考が飛んだ。突拍子(とっぴょうし)もなく、自覚無く当たり前の前提として受け入れていたことへの疑問が浮かんだ。


”へん、こんなに揺れないの、普通じゃない、普通のゴーレム車じゃない、何なの・・・もしかして魔力ベースじゃない?、もしかしてこれも外法の種一?”


 その疑問がさざ波のように拡がって行った。


”誰もそれを言わない、気がつかないのかしら、(うわ)(つら)と違うなかみが異質すぎて気がつけないのかしら


 それを問うために目を閉じて仮眠中らしい告白卵母に声をかけるのはためらわれた。


”軍事機密なのは間違いないと思うの、確かめるには慎重を期さねばならないの”


 本当はそういうことだけではなかった。


 何を考えているのかよくわからない高位魔法者の半目副長が実は卵父(らんふ)と言う藪から棒の話しには驚いたけれども、そうだとしても副長はこれまでなにもアクションを起こしてきてないし、何より卵父母の当時の事情の納得の行く打ち明け話もなかった。


 そんな未解決の、答えを得るのに難の多い何やかが押し寄せすぎだったた。


 ただでさえあの赤火星のせいの全世界臨死の非常時、ひどく容易でないのに、ひどくいっぱいいっぱいなのに、さらに何やかやと情報を()る余裕がないというところが、本当のところだった。


 それでまだ歳14、

 であることに甘え、

 それで歳14ならありがち、

 というふうに、


”ん、当たり場的(ばてき)でも、わからなくても、うまくやってみせるの、自信の根拠?なにそれ、うるさいの”


 と、心に(よろい)(まと)っていた。


 怒りっぽく、つんつん尾で。

 当たり八つしたかった。





 夜半前に、BW湖畔半領の有名な不夜市場(ナイトバザール)、多カロメハの留場(とめば)に入った。宿場町ではない夜休知らずのここは終日、客足が絶えることがない。


「ねえ、これ」


 賢女はふわふわサクサクの鉤状焼き泡菓子の袋売りを見つけた。首都圏では店頭にならぶことのないひとしなだった。


「うむ、その、なんだ」


「これ買って」


”なんだ、なんだ、この上目遣(うわめづか)いは。話しがあるから、と連れ出されたのだが”


 触れるような近さに寄られて、半目でつむじと髪の光環を見おろすに支障のないほど身長差があった。そんな女雛から強請(ねだ)られるのは初めてで、副官は混乱して買い与えていた。


「ありがとう」


「うむ」


「あげる、半分、これ食べて」


「いただこう」


「遺伝半分同じもの同士、意味わかるよね、が同じもの半分ずつ食べるの、象徴的な夜餐(やさん)だと思わない」


「ああ、卵母から聞いたのだな、賢女は信じるのか」


「どうかな、卵父は信じてほしいの」


「・・・・・」


「そうかあ、うん。安心した。副官は副官、うんうん」


 そういうと賢女は副官の腕にすがり付き、


「じゃあ、あれ買って」


「おっ、おう」


”なんだこの(あま)々気分は。でもいやじゃない、自分としたことが、子雛にいいように手玉(てだま)にとられている、理不尽な”





 ここの飲物スタンドの定番、夜更(よふ)けのガフィを口にする人々に紛れ込み、ヒソヒソと秘話で()わされる会話があった。


「まさかと思えば、あの男、主のおん敵の副官がおのれの直卵(ちょくらん)(ひな)に遊ばれる姿でしたか。そのお笑いが真であることは我が才の前には自明。そのように全てがそうであったら、全てはこちらの掌中です。


 しかしあの特技研の艤装車(ぎそう)は偽装はないのに理解がおよばない代物(しろもの)。帝国軍の超常物(オーパーツ)がなぜそこにあるのでしょう。いろいろ情報が足りません」


「それをさぐる時間の余裕はない、敵車列の夜間移動が異様に速い、ここで追い抜いて、予定どおり、この先の領境(りょうざかい)臨境界(りんきょうかい)、天険の断崖で有事とする、きさまが主張するどおりの力あるものなら、仕掛ける最適の真贋を手配してみせるがよい」


「真偽で無くて真贋ですか、それは難事ですが、可能です」


”が、あの特技研の出現で首尾全体の成功の真偽の見通しが立たなくなった。今更、そうと申し立てても通らない、全くあの男がかかわると不都合が多い、(いま)々しい、無理を重ねて(かさ)ねばならないか”


「結果を出せば、主上にきさまを天劫避難(てんごうひなん)の末席に封ずるよう口上してやらんでもない」


(した)()の見届け支配人の風情(ふぜい)(えら)そうにもったいぶりやがって。(われ)の身ひとつにかかわりに近いことほど判定のほどは拡散する。それをわかってて言う口か”


「お願いいたします」


 真偽判定士(ツルースセイヤー)は態度だけは殊勝に頭尾を下げてそう答えておいた。


”我の生き残りが真のために、せいぜい油断して我を見くびっておれ”


 通達の守秘の文言に(おび)えての命を惜しむ卑屈。それは呼び出される前から噂の天の劫火の真がわかればこその演技だった。生き残りをなし得る権力者に取り入ったはよいが、命じられたおのれの価値を証明する仕事に、対象の副官になりおおせてあの男がこれぞ因縁(いんねん)とばかり絡んでいた。


”ようやく見つけた弱みよ、恨むならあの男が卵父であることを恨むのだな”


 口中のガフィがことさらに苦く感じられた。


”うーん、まずい”





 しばしの仮眠休憩ののち出立し、先頭の工作体の局所管制下、車列は東天が白む前に湖畔領からノルSラントに入った。


 東方に立ちはだかる登攀(とうはん)を拒む山脈の鋸歯は狭間(はざま)に臨む境界、かたや西方から北に回り込む塩水海も水平線を境界として狭間に臨み、狭間と(うつつ)()むことのない綱引きのうねりが、遠い嵐の接近を受け、岸まで繰り返し打ち寄せて、勢いよく(しお)が噴き上げっていた。


 そして北東方向に進むと山脈が塩水海に出会う天嶮の要害、越路の磯壁となり、そこを境としてノルSラントは南西側のエチFと北東側のエチGの大領に分2されていた。


 その昔、多くの旅の卵親と雛子が磯の泡と消えた断崖に沿い、今は路が穿(うが)かれて洞門が通じていたが、離合がやっとの狭路に加えて尾に荒波はとどかずとも頭上よりの土石崩落の危険は常にあった。


 そこにさしかかるすぐ手前、穀倉の実り豊かな収穫作業に朝から忙しい扇状の台地平野で、


「わあ、ゆるーい逆さ(にじ)、紅から青まで色七アークが出てるの、綺麗ねえ」


 狭間に臨む空が稀にみせることのある日輪(ソラール)と氷塊結晶が織りなす自然の驚異との、思わぬ出会いに歓声を上げる賢女。


 そのそば、時一停止した工作体の無蓋荷台に同乗する卵親達は前方に潜む脅威に深刻になっていた。


「地勢的危険の警告ではないのだな」


「そうね、工作体の魔法知性(マジックAI)の宏観(こうかん)観測によると魔素流に自然でない魔法が働いてさほど時間が()っていない痕跡があるわ。この子が喜んでいる空もその影響がないとは言えないわ」


「襲撃の徴候か」


「守るには楽しい場所ね」


「不戦協定破りとは断定できないが」


「しょせんそれは口約束でしょ、それに相手が協定外の線もあるわ」


「賢女を預けておいて大丈夫か」


「何を言ってるの、これなるは帝国軍の精髄中の精髄、この工作体はその中でも特に別、特技研で艤装の皇国準拠超、禁則の塊です」


「おい、それを()かしていいのか」


「かまいせん、この世界は終わりだし・・・、任務は、文明の存続が掛け金の選択肢のひとつなんだわ」


「あいわかった。我らが賢女と同じ手一ということだな。禁則精髄を(たずさ)え、我らが卵統と領の卵統がひとつとなり、後世に続く・・・もしかしてお前、皇国の統・・・」


「だったら、何よ、もしかして貴方、帝国の統・・・」


「まことに割れ鍋に綴じ蓋であったとはな。俺は領主殿のもとに戻らねばならん、強襲を受けるだろう、賢女を頼むぞ」


「ええ、頼まれなくても頼まれたわ」





 小さな賢女は無蓋荷台の上から、目のところまで顔をのぞかせて前方をじっと見ていた。


 先の見えない曲りにさしかかる都度、恐怖が(つの)った。


「プウーウーウーウープウーウーウーウープウーウーウーウー・・・


 卵母がそうと教えてくれた工作体の宏観警報音が鳴り止まなかった。


「プウーウーウーウープウーウーウーウープウーウーウーウー・・・


”逃げてはだめ、守るの、みんなを守るの”


 恐怖で高まる魔力を抑え込む、抑え込んで抑え込みながらさらに魔素を集め魔力を高める、その繰り返し。


 小さな賢女の華奢な体がそれこそローブの陰で白く光はじめるほどに。



 暗くはない洞門内でも、フードから袖先から裾先からのぞく、あからさまな光に卵母がぎょっとして目を見開いた。


「なにをしてるの貴方、その魔力って」


 その時、警報音急変。

「プププププーーー!


「来る!」


 賢女は来ると告げられわかっていて思わずものけぞった。


 後から考えれば渦蛇(かだ)、それも顎門全開だったに違いないとわかる高速回旋で、ふいに急な曲がりの向こうの死角からとんでもない速度の何かが特攻してきた。


 乗せられた工作体の正面に、あっというまに衝突。


 不思議と衝撃を感じなかった。


 ただ、ただ、裂けていく渦蛇の中身がぶちまけられて、その勢いのまま無蓋荷台の(まわ)りを後ろに飛んで行った。


 目をつぶるまもなかった。


 瞬時のうちに見てとっていた。


”あれはなに、まるいの、ほそながいの、(もつ)れた糸のようなのついてるの・・・


 舞うように飛んでいく(くだ)、管、くねくね踊る(ひも)、ひも、ひらひらと裂かれた袋とその中身。

 あれはなんだろう。白いもの、骨?


 あれはわかる尾、誰かのひき千切れた、まだ消化されきっていない尾。


 悲鳴が聞こえる、ひめいがきこえる、ひめいをあげているのはだれ?、うるさいなあ、いらないからこんなの、ひとびとであったものの、くわれたざんがいなんて”



 轟音と怒号、怒号と悲鳴、そして光が大いなる光が洞門内に満ち溢れ外に吹き出した。





「よくやった」


「・・・」

 (こた)える余裕がないほど真偽判定士は驚愕していた。


”見くびっていた、見くびっていたのは我だった。

 あの小さな賢女の魔力バーストはこちらが用意した真を完全に超越していた。

 我の観測判断が上書きされた?

 いや違う、書き換えられた。何かが、何かが、(うつつ)の何かがだ。

 

 何と言う雛子、あの男の比でない脅威”


「よい牽制、意趣返しになった、主上もさぞ満足なさるだろう」


”牽制?意趣返し? 何を言っている、始末するのではなかったのか、それを成さずともよいとは、

いったいどう言うことだ”


 そして思い至った。


”そうか、やはりそう言うことか。敵とはいえ領主が他の領主の謀殺をなせば、ことが重大きすぎる。それもよしの計算の内だったのだろうが、主犯にされて口封じで葬られるところだった。だが、たかが牽制、意趣返しのために、それだけのために、我はいったいどれほどの数の民人に死を真と()いて渦蛇の顎門に追いやったというのか、人10、人20・・・いやそれ以上だ”


「ようこそ我らが卵統に、きさまは(とが)(きずな)で我らに捕縛されるものとなった。そしておめでとう、咎人の真偽判定士は劫火に(さら)すには惜しい道具だ、暗部に(かくま)うよう、主上に進言をさし上げよう」


 真偽判定士は自分の手を、随分と瘡の増えてしまった手を、まじまじと見つめていた。


”これが大罪の禁じ手を犯したものの手か、『畜生(ちくしょう)、いいように()められた、してやられた』 我ともあろう(もの)がそれを言う嵌めに()ちようとは、いったいどうしてくれよう”


 夜の早い時間に通り過ぎる吹田JC。奇面の、もとえ太陽の塔は、昨年通過の深夜と違って大観覧車光飾とためをはり、明るく立派でした。


 多カロメハ留場じゃなくて多賀SA、深夜前に到達して仮眠。満車の賑わいでした。


 翌朝、環天頂アークぽいのを残雪豊かな立山連峰の上の空に見ました。


 天嶮の要害、うねり押し寄せる、親知らず子知らず海岸のところ、あえてノルSラント道じゃない北陸自動車道から降りて、数十年来変わらぬ狭さの洞門を堪能しました。


 越後の豊かな農村風景を越え、海岸の景勝地、笹川流れを北上し、ようやく夕日に映える白の絶景、鳥海雪山のもとまで達しました。


 そしてその日の晩餐、仏蘭西料理老舗のシェフにおまかせまではハッピーだったのです。


 駅に近くホテルまでもどるタクシーを呼ばなかったのが失敗。まてどまてど、乗り場の列が短かいのに短くならない。無理ア充計画は開始30時間目にして、まだ肌寒い酒田の夜風の冷たい洗礼を受けたのでした、ぷるぷる。

 (以下、次号後書きに続く?)


”親不知 子はこの浦の波枕 越路の磯の 泡と消え行く”より引用があります。

それと、エチFとエチGのところ、話しを作りました、本当は違いますから。



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