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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
34/60

34 Eスト3の惨劇

10連休が始まる。日8費やして思いっきり疲れ、終わりの日2でそのつけをはらえると信じたい。


空き巣の脅威に、動体センサーもありのSコムに、簡易ネットカメラセットをたして出かけよう。

 首都圏では街道に、管轄(かんかつ)の民部省交通局建設部国道課が先進的と胸を張るご自慢の魔法軛制御(マジックヨークコントロール)による誘導機構(マジックナビ)が整備されている。


 平均的使役獣車は、日のあるうち、平地なら刻1あたりおよそキロ12ほどを(かせ)ぐ。そして首都圏内にかぎり魔力の徴収強制とひき換えに、日がおちたあとの足もとが今一つ不明な光投射下での強行でもベストエフォート刻1あたり安全にキロ6も稼ぐことができると、能書きに歌われていた。


 魔力泥棒だの整備のための整備だのと揶揄(やゆ)されても、開き直ることができた確かな利点であったのに、それが荒天でもないのに、首都圏離脱までの所要刻数のおよその検討もつかない状況に陥っていた。


 想定上限を大きく越える頭数の使役獣が街道上にあるために制御がビジーとなり巡航の維持が不安定になった・・・ということではなかった。


 首都に集結を急ぐ軍列の軍用魔法の強い警告放射、優先通行宣言(サイレン)の実行。それが深刻な影響をふるっていた。


 対向車線を進む使役獣の(くびき)の制御は、大型特種の重装備軍列との道幅に余裕のないすれ違いシークェンスに入る都度(つど)、強い威嚇(いかく)を受けて、街道法定速度の下限キロ3まで減速。それがあちらこちらでその状況となり、渋滞が多発。その渋滞が連なり停止にいたるほどの未曾有(みぞう)の大渋滞に拍車がかかっていた。


 (くびき)でない、くつわの馬竜の騎乗者も渋滞に巻き込まれては身動きがとれず、さりとて迂回可能な支線、脇道はすぐに容量の限界に達し本線以上の混雑で、路面の状態も長距離を急ぐには脚や車輪車軸を傷めかねない凹凸が厳しいものだった。


 いっぽう有料の本線の方は(わだち)もつかぬほど固められた路面に腐っても制御運行であるので、馭者(ぎょしゃ)が疲労に負けて不注意になろうが居眠りをしようが大事故にいたることがないとなれば、整備された街道にとどまり車を遅々とした歩みに任せることにも利点はあった。


 だが累積する疲労は、それを願うものにはすこぶる順調に、怒りの発火の域値を低下させていった。


 そして予約客の到着の遅延に対する宿館の対応規定に問題があり結果的にダブルブッキングと実質同等となってしまえば、登録高順位の遺伝優遇者(たねひと)がいないことが条件の、手頃な懲罰事例にできる発端として足りた。


 東の中継都市Eスト3の場合、もとより所領の境界線めぐる係争中の卵統同士であったので、事態の悪化に手を貸すまでもなかった。客同士と宿館の(ともえ)三つの口上の争議が小競(こぜ)り合いとなり、小競り合いがすぐに乱闘となり、乱闘がまたたくまに抗争になった。魔法者もいる領軍の護衛士同士の小競り合いは(ほど)を失い、怒号と悲鳴、爆炎が饗宴、そこは(まご)うことなき市街の戦場と化した。


 軍ではない市中警備の衛士には手をだせぬほど戦火は暴力的で高密度で待避するしかなく、巻き込まれた他の卵統も宿所確保の自衛のため応ぜざるをえなかった。宿館の位置するいったいが物理的にも炎上するまで四分の刻で充分だった。





 夜陰の戦場に相応(ふさわ)しく混乱していた。男は倒れ伏す相手にとどめを入れる寸前に気がついた。相手は(はら)んだ女、(さか)り場で(ひそ)かに逢瀬(おうせ)を重ねた自分の思い人であることを。


 愕然(がくぜん)として我に返れば、心の(はく)が早鐘のように()っていた。周りに人の気配のないこと尾感した。女への情が卵統への帰属心を上回るための理由を探させていた。


『支給の炎槍(フレイムスピア)一つとっても随分な骨董品。使い捨てられる俺達が天の劫火から守られるとはとても思えん』


 都落ちの現実は市中の世紀末の噂が真実であることを裏付けていると直感した時には、はや抱き起こしていた。


「あんた、あんたなのね、あたしを殺さないの」と男の耳元で女の(ささや)き。

「すまん、お前だとは思いもしなかった」

「あたしも、でもあんたになら殺されても本望(ほんもう)だわ」

「ぱかなことをいうな、腹にあるのは俺との有精卵だろう、それに俺はお前の卵一つでは満足できないほど欲張りなんだ」

「あたし、あたし、あたしも」

 女に首元を涙で濡らされながら、男は生き残る方策を探した。


『どうせ夜一の予定の滞在だった。それにこの混乱だ、闇雲に動くより明日まで身を隠せば逃げおおせるのではないか。最後が来るというならいっしょにいたい。ここは地下室だが貯蔵庫らしい、こういう所にはもの隠しの小部屋の類いがあってもおかしくはない』


 咄嗟(とっさ)でも必至の捜索が幸をそうしたのか、生じたスキルで壁の煉瓦(レンガ)部分にしゃがんで入る隠し小部屋を見つけることがかなった。灯りモードの炎槍もかかえてそこにいっしょにもぐり込んだ。


 内部から扉を引き閉じるとほぼ同時、古い(ほこり)舞う強い衝撃、すぐ続いてさらに強い発2目。


 天井が崩落するようなことはなかったが、身が浮くほどの振動のあと、聞こえていたいっさいの騒乱をにわかに耳にも尾にも感じなくなった。その静寂がひどく恐ろしかった。


遠神恵賜(とおかみえみため)、守り給ふ、助け給ふ 」

 思わず固く抱きしめあい、唱和を止められないふたり。そこにも、情知らずの審判は浸透して届こうとしていた。





 そこはまだ首都圏内の直轄市(ちょっかつし)だった。発生した暴動が帝国軍の常道、鎧袖(がいしゅう)触一の鎮圧案件になるのはまったく不自然ではない状況だった。


 夜陰に沈み(ひそ)かに遊弋(ゆうよく)する黒迷彩色の翔八大型特殊竜に気がついたものはいなかった。


 キロ数十以上遠隔の配置された魔動力射出機(マジックカタパルト)。そこからの曲射が無警告で実施された。


 新案魔法装置(オリジナルマジック)の、領域弾(フィールダ)ひとつ、わずかの時間差で(すみ)として知られるものへの誘導弾(チェンジャ)ひとつ。


 竜背の魔法者の誘導で、音を置き去りにして滑空してきた極秘の大型試作弾。その地を揺るがす着弾二つで争いを(にな)うもの達は、その責に相応(ふさわ)しい色に、黒く熱く変じた。


 両成敗の炭化(たんか)決着。


 燃えさかる(くれない)の大火と戦場の喧噪(けんそう)が瞬一のうちに消えた。


 猛煙にわかに断たれ、光魔法も雷魔法も反応を返さないもろい晶質の黒い華咲(はなさ)(その)


 そこに生者の気配はなかった。


 (やみ)、闇、闇、無音の闇と、高熱の輻射が残されていた。


 廃墟に、夜の(とばり)の沈黙と物言わぬ風の吹き込みと舞う禁則が許されていた。



 そのまだ熱い爆心(ホットスポット)に翔八大特が着地すると、黒い短冊のようなものが数多く舞残っていた。


 サンプル採集もそこそこ、焼けた弾殻片の回収が(あわ)ただしく行われ、逃げるがごとく離陸して去って行った。


 夜明けとともに戻ってきた付近の住民は、焼け跡にしても黒がすぎる惨状におののきながらも、予想だにしなかった収穫に(いそ)しんだ。


 彫像のように見事に写実的な造形もたたき割ってかけらにしてしまえば、もとの素材のなんであれ、燃料以外にも用途がある上質の(すみ)であることに違いはなかった。


 遅れて宿館であったところの廃墟にたどり着いたもの達は(にえ)へのとり込みを免れ、通名が特技研(帝国兵器廠/技術研究所/特殊研究部)の分類的には検体候補のままにとどまった。





 帝国的には公式的には上位がもの、オーバーロードと認めずにすませてきたが、距離を置くしかない脅威、手出し禁則の非人(ノーマン)の相手がある。


 その禁則脅威との緩衝帯として認められた領の一つに配備した準戦略兵器ゾルの件は、運用の司令員がせっかく”想定外の無尾”という事故装いの社会軍事実験の引き金がひかれたところに詳細不明の介入をされた。


 それはそれで、世の終わり間近と判明した今、実に興味深いあのような(ざま)になってしまっている。ゾルに自律兵器としての戦力証明以上の大きな可能性を提示されている。


 それに比べると今回の実験は、炭が透明化する強固な魔晶構造こそ得られなかったものの、光魔法と雷魔法が波の性質も有するなら、それがどのように肌理(きめ)がことなるものであるかのデータを収集できた。


 本来であれば、新たな知見が得られ大きく評価されるものであったのだ。


 しかしながら炭化の度合い、規模は予想を遙に超えていた。過猶及不如、過ぎたるは猶及ばざるが如し、どころではなかった。まさか人の体があのようになるとは・・・そして降りた爆心は禁則に汚染されていた。あの遠く辺境の灰の魔法塔領の夜のように。


 万物(ばんぶつ)(ことわり)の探求を極めてこそ、上位がものの知る世界に到達できよう。


 理より魔法実践の優先にこだわる塔の魔法者どもは喜ばしいことにそれを理解しようとしない。勿論(もちろん)そうなるように、塔の風通しを整えたことは否定はしない。塔担当経験者のひとりとして歴代は良い仕事をしてきたと思う。だが、その(かせ)は我らの側にこそ必要ではなかったのか。


 実験体の哀れに理性が震えることなく、萎え尾の遺憾を(まと)い、免罪符としてこなかったか。

 骰子(さい)は投げられてしまった。自問してもいまさら詮無(せんな)い。



 補給なしを予期してその準備の手間のために出発が遅れるほど、渋滞に巻き込まれることは避けられるはずもない。行程ははかどらず、疲労の蓄積に手当をはかるための持ち運びリソースもさらに貴重なものとなっていた。


 そのように自業自得(じごうじとく)を地で行くよう台本どおりに、間違っても実験に巻き込まれぬように遅れに遅れさせて、今回の任務その2、実際には主任務、その対象を連れた群がEスト3に姿を現した。


 出立(しゅったつ)の翌夕に手配の宿所にようやくたどり着いてみれば、そこは焼けおちたようにも見える黒い廃墟。車上や騎乗で揺られ続けて鉛のように重い体に困憊(こんぱい)が上塗りされて旅装の下の尾の垂れが見えらんばかりの有様だった。


 憔悴(しょうすい)のすきをついて護衛士のひとりに、もとからいたようになりすますことを取りかかりにした。昨夜の不用意な現場突入では冷汗ものの遭遇だった。今回はまずはじっくり内部から観察させてもらおう。



 (さか)ることのない無性のモブ、その他の大勢が、帝国を支える主たる民の階層(マス)が、少数の婚姻色尾に、親足(おやた)るものたちに奉仕をしている。それが意識にのぼることすらのない基本中の基本のもはや格差ですらない仕組み。領軍の護衛士でも盛る衝動なきのモブ、取るに足らない(した)()なら、暗示等による刷り込みと偽装でさほどの難もなかった。



 級1第の要警戒の相手と判明した高位魔法者が、廃墟の細部の異様な尋常なさを見てとったとしても、害成す敵を監視する目で見てくる市の衛士隊の口はかたく、低位の卵統同士の暴動の事実だけがから聞きだせた全てだっだ。


 衛士隊も無能のはずはないので感づているだろうが、我ながら秘匿(ひとく)履行(りこう)手際(てぎわ)が良すぎるのと帝国から公式の鎮圧声明が出されていない以上、こと大きく騒ぎ立てるのは治安を(ゆだ)ねられる衛士の立場ではなかった。 


 表敬のEスト3の市長も帝国に忖度(そんたく)したか、知ることはあっても口は閉じているようだった。


 途方にくれるにもいろいろと余裕がいる。貴重なそれを消費するより、八省卿勅任官の権威を申し立ててもとおらぬところに金品という触媒を譲渡することを選択して、取引のある商館の警備とひき換えの夜一の滞在が決められた。


 その便宜(べんぎ)はたぶんに忖度に踏み入っていたが、今は黙認(スルー)して、押し付けられた道義的借りとの相殺(そうさい)勘定(かんじょう)しておいた。



 責任の少ない立ち位置は他に与える影響が小さい。それは内情の観察に置いて重要な利点であり命じられたこと以外の自由度は以外に高い。意のままにできることはおおいはずだった。


 なのに、揺られぬ休息は確かに必要だろうが、モブの護衛士に擬態しての潜入の初夜にして、無防備に眠る任務の核心に寄り掛かかられて、身動きをするのもはばかられていた。


 『なぜだ、なぜここまですんなりいく』


 次世代人類モデルの礎の候補として世代選別を重ねたものと、任務前に仕入れた情報の要約にあった。


 突如現れた新星(きらぼし)、首都デビューの雛なる賢女(かしこめ)


 身体成熟の遅延、幼体期間延長とひき換えの進化。それで雌性に固定された形質がいかに清楚に見えようが、(たお)やかさに溺れて手折れば取り込まれかねない油断ならない多情(ビッチ)、大母たる真祖なるために多くの受精卵が必然の、今はまだ禁断の女雛(ロリ)、いや小さな初卵はすでにあったか。


 そして、小さく独り()ちてしまっていたのを思い出した。

「淫乱エルFの雛守(ひなもり)と、その連一が、最後の任務対象となるとはな」


 それが状況の(わな)の起動を、魔導のベクトルを有する強制力のフラグを()たせる宣言文となっていた。


 ここぞとばかりの厄介ごとは、過去でもうっかりを見逃(みのが)してくれなかった。そう思える経験が心を苦くさせた。





 小さき賢女(かしこめ)は、そこなら安全であろうと宿がわりの商館倉庫の片隅に護衛士らに交ざっての雑魚寝(ざこね)を命じられた。


 がたいが大きい男護衛士はちょっと怖いし、女護衛士は冷たい目でじろりと見てくるし、どうしたらいいのと立ちすくんでいたら、どこか毛色が変わって見える、威嚇してくる所を感じない、らしくない少し年配風がいるのに気がついた。


 そのそばに寄ってみれば、確かな安心の尾感が強まった。


『見てくれはともかく当たりの護衛士だわ、(いか)つくないとこが逆にいいかも』


 そう思うのがやっとで、余力のない雛の体はそばに腰を下ろすやいなや寝落ちしていた。


 それなりに爆睡できた翌朝、さっそく専任の警護(SP)として引き連れることにした。


 いてもいなくてもたいしてかわらなさそうなモブ。護衛の指揮官はそんな護衛士になにかがおかしい気もしたが、領主の副官は賢女が願うならと賢女の希望をかなえさせた。




 朝市(あさいち)で手に入れたばかりの日持ちのしないものをおもに空き腹を満たし、出発の隊列を確認しているところに、そのふたりは現れた。ありえない敵同士のはずの有精卵持ちの(つがい)で、日2前の大火の生き残りを主張していた。食い詰めたのだろう、下働きの口での同行を希望していた。


 他領のものの取り込みの機会は、平時なら推奨されることであったが、国元に急ぐ途中の非常時につき領主のところまで話しがきた。



「領主さま、二つの卵統の血が同時に手に入ります。それで挙一得両ですが、ましてや(はら)んでいるとなれば、挙一得三というものです。うちの卵統との関係はまだ聞き及びませんが、窮魔懐(きゅうまふところ)に入れば冒険者も殺さずといいます。もし敵対的なところなら、それはそれでなお入手し難いですよ。ここは認めるべきかと。ぜひとも認めましょう」


 賢女に助言を許せば、きらきらした目で鼻息も荒く即答が返ってきた。


(さか)り場で密かな逢い引きを重ねる敵同士のはずのふたり。賢女の歳あたりが好みそうな薄い本にもそう言う話しがありそうだな』


 奥閨(おくねや)の下働きも置いてきましたのにとぼやくの主計の渋い顔は、女の方が調理2のスキルを持つときくや(いな)(ゆる)んだ。男の方は探索の方面の初級スキルを持っているようだった。


『スキル2なら味に加えて、量も魔力で増量できる。主計を補佐させている賢女の下につかせればよいだろう。男もスキル持ちとなれば捨て置けば他の卵統に拾われるか』


「小さき賢女、そなたにその護衛士ひとりに加えてふたりの指揮もまかせよう。あの大火で何があったかも聞き出すのだ。副官の見立てではこの市は隠し事をしている。我が卵統に不利益の背景を見逃すわけにはいかない」


『賢女はなにを急にむくれている、女心は雛でも女か、わからん』



『また小さいって言った』

 日3前に仕込んだ領主の精が下腹の卵にいついた感じもないままだった。


『こうなったら四季経で卵が流れる前に、孕み女に牡の誘い方も聞き出してみせるわ』




 賢女の後ろに立つ護衛士は、モブらしく顔面を能面にして、見かけはいかにも無関心な態度で聞きに役に徹していた。


 炭爆の実験となってしまったあの戦慄(せんりつ)の暗闇にまさか番の生存者が(ひそ)んでいたとは。

 しかもその片割れが孕み女だとは。


 このような状況でなければ、特技研に収容して生存の子細を調査できるのだが、今それを言っても始まらないのだが、それが目の届くところどころか、まさかの賢女仕えの同僚。これは予想だにしない、偶然も偶然、出鱈目(でたらめ)にも過ぎる好機が向こうから転がり込んできた。


 自分の(ラック)にうぬぼれる余地はない、賢女の運がかかわりになるものを守ったとでもいうのか。


 番は被曝時、宿所地下の隠し小房に立てこもっていたという。


 弾の洗礼を受けたときにはすでに戦意なくて守りに徹していたらしいが、それだけで助かったと思うよりは納得がいくが。



 あの番も誰もあれが帝国の懲罰の過誤がためとはまだ気づいていない。Eスト3にも疑念以上のものを持たせてはならない。


 特技研が開発のあの兵器の作動にはまだ手に負えない脅威の注意を喚起するなにかががあるはず。しかし緩衝帯をこえ挙一にキロ5000遠く離れたここ首都圏に招き入れるとは、とんだセキュリティホールだ。


 醜聞(しゅうぶん)にもしてはならない。それで(おおやけ)になり、真似て追随をはかるものを出しては、責任問題が浮上するだけではすまない。


 特技研は、過度の野心が独善の衣を(まと)人外(ノーマン)の侵入を首都圏に許す無謀をしたと断罪されるだろう。


 闇、あの闇、闇に封じねばならない。帝国も特技研も天の劫火に焼かれ、この件すべての記録が炭となる、灰燼(かいじん)と化す、その刻まで。



「賢女どの」


「なんでしょう、副官様」


今宵(こよい)、賢女どのの護衛士(SP)を少しお借りしてもよろしいかな。いやなに、古い昔からの(よしみ)です。賢女どののお取り立ててをいただきましたし、これを機に旧交を温めてみようかと、なあ号18F、それとも(まぼろし)の号6Mだったか」


 考え込んでしまったところに副官に特技研での通名重二の不意打ちをくらった。

 おもわず固まる失敗は、認めたも同然だった。


 今はモブ装いのしかも牡の尾感サインを放射しているのになぜばれた。


「えっ、貴方、もしかして、受けだったの」


 賢女に決めつけ重三目のダメージをくらった。半目の策士のにやにやに、自分の正体に当たりをつけられていたことに気がついた。



「違うし、月工門(げっこうもん)の方に挿入を許した覚えないし、、、なんてこと言わせるのよ」


「えっ、貴方、牡じゃないの、牝言葉になってる」


「責めに弱いところは変わらんな。それに調査でなくて任務なんだろうに、その隠れ癖も変わらんな」


「隠れてこそこそと、受けとか攻めとか、ふぅーん、そうなんだ」


「だから、違うし」


「いいよ、わかっちゃったから、隠さなくてもいいのいいの、隠さなくても大丈夫なの、ばっちOKよ」


 なにが大丈夫なものか。


 前言を撤回しよう。賢女は淫乱エルFの雛じゃない。雛のうちからど淫乱、勘違いエルFだ。その真祖たる捕食者の目をしている。真祖の本能はかげで、この体のFM体(ふたなり)の血も、本気で卵に取り込もうとしているに違いない。





 敵をあざむくには、味方からあざむけ、

 味方をあざむくには、自分をあざむけ、

 自分をあざむくには、状況にあざむけ、

 考えるな、状況にあざむくための、こと全てを


 確かにお前は優秀だよ。真面目に考えすぎて、結果、基本がなってない。


 納得いかない奇妙な大火事現場と、牡のふりしても、隠しきれていない牝の匂いもする護衛士の不審。前からいたふりをされても、嗅覚は尾覚より根源的なんだ。


 偶然の二つとは、お前でも思わないだろう。


 うん、俺も思えない。


 昔、領主に拾われる前に、特技研の検体に尾とされたことがあってね。そこでFM両号もちのやり手にいじられたことがある。


 そうお前のことだよ。いや、うらんじゃいない。先にも後にもきょーれつな体験だったし、お前が仕組んだことだが、解放されたのもお前のおかげだと思っている。


 だからすぐに(化けたお前がいると)ぴーんときた。


 俺はお前に協力する、そしてお前も俺に協力する。お前の任務は真祖の保護だろ。恩ある領主殿ののぞみと合致だ。そのための便宜はすでに払い込み開始した、理解OK?


工作体(ミリタリィエンジニアリング)をユニット1、指揮下に引き連れてきているわ」


 ひゅー、いい返事だ。特技研の本気度もわかるというものだ。メイクのしわを尾とさなくてもあいからわずいい顔してるねえ。傲岸不遜なその目、そそる、そそるよ。


「貴方、貴方の仕込みだったの、私が初めての有精産卵を試し産む羽目になったのは。もしかして盗卵されたのも貴方のしわざ?」


 心当たりのないこと、記憶にないことをいろいろ攻め、攻められる気分を知って欲しくてね。


 だけどほら、いい子に育ったろう。領の女会も領主殿とのカップリングにおせおせだ、俺ののぞみが番一になった、素晴らしい雛だ。


 俺達の雛と知らぬまま、俺とお前の血がさらに卵に足されれば、素晴らしい濃い血統が二つはじまると思わないか。


「まさかそんな、冗談でしょ」


 そうは言っていても、特技研所属、あれほどの惨劇をなしてみせたのなら、いつか誘惑がお前に追いつく。


「そんなことを考えるようだから、塔から排除せざるを得なかったと思わないの」


 口ではそう言っても、体は正直、俺を受け入れているじゃないか。あの雛の弟卵か妹卵を産みたくてたまらなくなっている。


「そんな、フラグ宣言をして」


 いやか。


「・・・、あの子には手を出さないで、あの子にも言いきかせるから、お願い、あの子に手を出すのだけはやめて」



 ふっ、冗談だよ、冗談。少し冷静になれよ、我らが賢女はお前のようなFM体じゃないだろ。


 どこまで冗談か、自分が納得が行くまで確かめろ。これでお前も俺の立場に、身も心も繋がったというものだ。


 お前がどう思おうが、俺とお前は割れ鍋と()(ぶた)の再開の関係とあきらめろ。あの雛の運、その引き寄せは強い。


 俺は運の渦流から逃れやれん。今更その気にもなれん。だが、あの雛の自分を暴君と自覚できない障害で善意の思い込み、その勘違いで、今のこんな今宵の逢瀬じゃあないか。


「貴方、貴方こそ勘違いしてる、私の卵親が私と同じFM体とは聞いてないわ、卵母と雛の種が違う外例の外法(げほう)はあるのよ」

 4月27日(土)午後より、遠地点はナビでおよそキロ1500の彼方、のべ日8宿6のリアル本州島縦断旅行。腰痛小康で体力があるうちにと拙宅から車です。計画だけは完璧です、それはもう計画だけは。


 往路のはじめのみ渋滞を避ける夜駆けで、北に照明おぼろの太陽の塔、南に電飾きらめく大観覧車の吹田JC通過を選択。富山あたりで立山の朝焼けを眺め、新潟は村上から笹川流れの海岸線に寄り道し、その夜、山形は酒田の某老舗仏蘭西料理に舌鼓をうつ。

 あとは楽々、日中移動を繋いでの、昭和から平成の初めの思い出をたどる旅路。

 秋田は二ツ井の知る人ぞ知る馬肉チャーシューメン、そして弘前泊まり、桜の城趾から望む秀麗な岩木山に、そして夜桜も。翌日は八甲田の雪回廊(酸ヶ湯近く、セントバーナードもふもふ)で迎える令和元年、早春残る奥入瀬からはいり、湖半を巡って発荷峠からの見返り十和田湖。

 帰路は秋田泊まりを中継に新潟までもどったところで天候が許せば眼下雲海(無理?)が売りの赤倉。最後は福井泊まりが中継点で、最終日の渋滞関西は舞鶴若狭自動車道で迂回する。


 足は基本設計40年前のP・キマイラマークのフル4駆SUVにMS仕様タイヤ。雪舞う笠松峠となっても去年の志賀高原の標高m2000国道の時のように大丈夫。貴重になってしまった油圧ステアリングの味わいは交代運転の連れには不評ですが、ともども事故の無いよう頑張る所存です!ってか、行く前から疲れてきたわこれ・・・無理ア充計画。やる気は大敵。


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