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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
33/60

33 非情の襲来

 名前がビハインドな扱いの有尾人文化ですが、ついに、ついに、一人称すら使おうとしない、究極の卵生有尾少女のご登場です。


 帝国の公と侯らの勅任官(ちょくにんかん)は辞表も受理されないまま、竜騎兵の分隊に先導されて宰相府から表通(おもてどお)りを下がって行った。


 戒厳令下の夜更(よふ)け、街角(まちかど)から人影は途絶えて、時折(ときおり)見かけるのは、大通り交差点の黄色い魔灯火で浮き上がる人喰いの立哨魔(りっしょうま)の影ばかりだった。


 その刻、東の空に月はなく、満天に散開する星々のなかに赤火星のひときわ明るく赤い(またた)きが、高く流れる薄い氷粒の雲に(なか)()けて見え隠れしていた。


 そのさまは意識もせずに見なれてきたいつもと変わりなかった。いくら(にら)んでも、(いにしえ)の西海人が心臓(コルジス)と呼んだゆるやかな光の脈動は、刻単位のそれは、常人(じょうじん)の目ではとらえられないものだった。


 そして雲間から暗い建物のかげから赤い光が(のぞ)くたびに眉をひそめて夜空を見上げる公と侯らそれぞれの思いを継ぎはぐと、おおかたのところ、次のようなものだった。



 災火、千里を駆ける

 根、断たれる所、絶えて無し

 雨水(うすい)の時、到来せば

 必ずやまた(せい)、芽吹き

 必ずやまた繁昌に(ふく)


 してやられ、やむなく(うわ)(つら)では従ってみせ、だが頭と尾は別。それが、赤火星が支配の夜空見上げ、尊歌のフレーズが何度も思い出されたるうちに考えが変わった。


 (みかど)は表向きには隠されて本心では案じておられたのか。


 さればこそ、かの皇女を皇国近衛に加え帝国空軍の将星位も許された。

 今宵の事変で得心(とくしん)がいった。

 さればこそこの(たび)正一位(しょういちい)に任じ、生き残りの未来を託されたのだろう。


 我らには翻意(ほんい)した策がいる、それこそ本気で(ひるがえ)した策がいる。


 ことがことだけに、慎重に慎重を期しても滅びの間口は大きく広い、生半可(なまはんか)なことでは大負けでも切り抜けることが可能な算段は見えてこないだろう。


 通達の種三は、ひとたび世に用いれば全てを()(つぶ)す武器、それも最強の凶器になる。


 我らが、我らが卵の(とう)の系譜の生き残りに利があるなら、(おく)することなく、よろしいばかりのものとして前面に立てて押し通ろう。


 劫火が降ろうが降るまいが下々の怨嗟(えんさ)が向かう先は、花押(かおう)真名(まな)(さら)した正一位皇女の派一だ。





 屋敷に戻ることを知らせる先ぶれ魔信の許可に便乗し、真偽判定士(ツルースセイヤー)に参上を命じたものがいた。


 だが夜間の外出が封じられていて、真偽判定にあたることができたのは翌朝になった。


 いっぱしを越えて市井(しせい)に権威あるものがにわかに悄然(しょうぜん)として身が縮む(さま)に問うまでもなかった。劫火はそれでうかがい知れるほどの規模と確実度で未来を襲うかと思われたのだが、そのせいばかりではなかった。


「赤火星の魔晶記録、絵空事でなく、あれの真の姿があのように凄まじいとは思いもよりませんでした。

 城砦の大深度地下化の普請(ふしん)許可状は真でございます。

 そして守秘が条件の無制限略奪赦免状、これも間違いなく真でごさいます。


 花押に真名も真でございます。


 閣下、通達の内容の主幹に偽はありません・・・これは市井(しせい)で噂の天の厄災にかかわるものでありましょう、そうであることの真偽比が高い、(まこと)に高すぎる、実に質1、ほぼ1。なんと恐ろしい。


 それより、守秘の文言(もんごん)を見させられた私どもは罠におちてございます。


 閣下、閣下の陪臣(ばいしん)の列の末尾に加わるご慈悲をお(しめ)し下さいませ、命だけはお許しを、対価にお務めのお命じを」


 都でも名うての判定士は普段の尊大な態度からは想像もつかない小心さを(さら)け出していた。




 屋敷に戻り、少々を越えて(おさな)げな賢女(かしこめ)の申し出で体を()ませながら、劫火の予知について問うたものもいた。


 少し回りくどい話しになりますが、お聞き下さいませと前置きがあった。


『今ある御身(おんみ)が変われば過去が変わります。偽ではありません、そうと感じないだけです。


 因果律という言葉はお知りでしょう。皆それに隷属し、今を変えることができれば、未来ばかりか、今につながる過去も変わる。


 けれどそのもとにあり、記憶も証拠となる事象も改竄(かいざん)され、過去の変化を知ることすらないのです。


 それでも特殊な状況があって、時空の(ことわり)である因果律にもある対称性が瞬一でも不安定になれば、因果律も瞬一の間だけ常のようではなくなり、それを知ることができるのです。


 そこでは過去が変わったことを知り、そしてお求めの答えとなるのですが、変えられた過去からもつながる未来を見ることになるのです。


 天球の星々は夜空の綺麗(きれい)な飾りですが、その一つ一つがどの月よりも大きく、羽小虫(はねこむし)と最大龍の違いよりも遙かに大きく、昼間の太陽(ソラール)に敵匹するものが途方もなく遠い、遠く神の領域にあるために、光の点のように小さく見えているのです。


 その太陽のごときもの同士が合体するともなれば、極大魔法(メガマジカ)の何百万倍もの存在同士が合体するとなれば、地平を越える超極大魔法(ギガマジカ)の何百万倍もの光熱が持続しても不思議ではありません。


 さすがの因果律も不確かとなる瞬一があり対称性に(ほころ)びを生じ先触れの波を起こし、その瞬一の後、続くものがあるならば、それがいかなる巨龍の骨をも焼き尽くす劫火であり、人の領域まで届くものなのです』


 光速の概念まではないため、その時点で彼方ですでに起こって確定してしまっている物理事象、そこからの光速突破によるものと、時間遡航(じかんそこう)がからむ予知の区別がついていなくて、仮説の提示の一つとしても足りたものになってはいなかった。


 事実は、劫火の予知はすでに未定の予知にあらず、巨視的に確定事項で、年一越えて即死レベルの超過が続くことになる輻射拡散の最前面は、今も光速で接近中だった。


 ギロチンの刃はすでに落下中だった。


 それと意図(いと)されたわけではないが切迫の足りない仮説を聞かされ、危難の正体の端一をぬるく知ったことで卵統の系譜の持続への危機感がほどほどに(あお)られた。


 そこに、これは意図された按摩(あんま)の巧みで、にわかに〇〇が攻め立てられ奮い立たせられた。


 そして閨に呼ばれたからには(はら)む機会を逃さずとばかり、思わぬ快楽に唖然とする目の前で〇こすり半の閨の寵愛(ちょうあい)を素早く、まだ未通のままの股に仕込んでいた。


「ご領主さまー、なんで驚いておられるの、卵統の系譜の選女(えらびめ)ですから、当たり前のことをしたまでですから、こう見えても卵通(らんつう)くらいありますから(初卵だけですけれど)」




 情報を収集しようにも、夜間の外出強行はよほど運がよくて拘束、魔信の送信も即、高度な逆探知で焼かれる、厳しい状況とあっては、貴重な真偽判定士やさらに貴重な学識ある賢女が閨にいようがいまいが、できることに大差はなかった。


 首謀者の皇女が不在のもと、暗部が主導の苛烈(かれつ)な戒厳令だった。


 その求めるところが捕縛(ほばく)ですらなかったことから変わらぬうちにと、八省卿の屋敷では首都から急ぎ退去する準備に追われた。


 露見しては不都合な書類ならびに記録等の処分と持ち出し資産リソースの選別が、夜を徹して(あわ)ただしく行われた。


 だが屋敷に常備の走輪と使役獣の頭数は限られ、護衛以外で領主に随行を許されたものは少なかった。


 置いていかれた多くのものは、形ばかりの屋敷守りの任にあたるもの以外、暇を出されたものと、領主を追う手配を市中に求めるものとに別れた。


 それは八省の係長以上の上級職にある領有卵統のどの諸侯の首都屋敷でも同様だった。


 翌日の首都に発する方面八の八路の街道は日彰(にっしょう)が立哨魔の影を追いやるやいなや早々に混み始めていた。都落ちの領主らの過積載の荷列と、逆に近隣より帝都に集結をはじめた陸軍部隊の行き()いで、首都近隣の街道は、普段なら十分な道幅であったのだが、昼前にはひどく渋滞していた。


 脇の細い抜け道の状況はさらに閉塞して混沌としていた。


 物流が(とどこお)り、食料品ほかが高騰したまま市場に戻ってくるまでの間、軍の主計のなかには糧食横流しで暴利を(むさぼ)り、軍警に捕縛されて営倉に押し込まれ、闇隠しにあうものまででたほどだった。



 この時代はまだ神荒(かみあ)れの時代の空の自由を許した弊害(へいがい)が語り継がれ、その大乱の亡霊が時を経ても空が近衛と空軍の占有である状態を許していた。


 いつの頃からか高所を飛ぶものに無惨(むざん)に狩られた古い民族伝承と称されるものがあり、それは為政に都合の良いものだった。


 頭尾直結の(くちなわ)(たぐ)いへの嫌悪感、それにも似て根強い忌避感があたり前のものとなっていた。


 空からお構いなしに降ってくる臭い糞尿を(ののし)り、空を行く軍竜を忌々しく思うものは多かったが、渋滞の列においてさえ、それらの騎乗者をうらやむ変わり者でわずかで、空路の利便など想像もつかないことだった。




 主計が自ら手綱(たづな)をとる車上の片隅、荷のはざまで揺られ難儀しながら、賢女はいささかとりとめなく、思うところを渡された予備録に書き記していた。


『今となってはそう感じてしまう(ぬる)い状況がいつまでも続くと信じ込んでいた、平穏が前提の日々は通り過ぎてしまった。それはもう手が届かない彼方、なんて悪夢的で、そしてなんて劇的な現実なのだろう。歴史の重大な局面に史書(ししょ)の書記の役も(おお)せつかるなんて。


 実経験は出発点でも知識に裏打ちされたものはある方だろう。渋滞という事態を予測して申しあげて同意を得た進言はさっそく役にたった。人と馬竜の糧食に水をはじめとする輜重(しちょう)に連結輪車を両2。それがなければ首都近郊の近年にない大混乱に全く難渋したに違いないわ。


 地位と武をかさに沿道の民らからの徴発にはしるものは、あとで懲罰をとわれても致し方なかろうに。そのような見苦しい手間のかかることなしに、出立(しゅったつ)して強行軍を続けた翌日の夕方までには、何事にも許可が生死の分かれ目になりかねない戒厳結界下の首都圏を脱することができた。


 片付けられない使役獣の排泄物にまみれた渋滞路に囚われ続けることにならず、少数のひとりに選ばれたことの正当性はさっそく証明された。


 閨のお会い手の中からひとりだけ選ばれたのは(ロリ)いのが好まれた理由ではないと思う。


 図書館通いの未通の雛虫と陰口(かげぐち)をたたいていたものは皆おいていかれた。


 それをご愁傷様(しゅうしょうさま)とは口が裂けても言えない。いかに見目や按摩の技が優れようが、それらだけではだめだったようだ。


 護衛士以外のものは、みな役を二つも三つもこなせるものばかりだった。(うわさ)される劫火が万が一にも本当にきてその中を生き延びることになるのならその苦難はどれほど恐ろしいものか、想像もつかない。


 求められたものは、主計の補佐と、史書の書記と、閨のお相手に、そして何?


 そんな程度にいるスキルではいくらあっても足りないに違いない。


 はー、誰も経験がない非日常の混乱、混沌(こんとん)。能を頼りの勢いで若輩(じゃくはい)ものが先達(せんだち)と並んで立つ。越えて立たされる。乱世とはこういうことなのかな』






 治安の状況は目に見えて悪化していた。移動中の輜重の追加分はその場にある実物を買い上げるしかないのだが、必需品の相場は日一にして平時の倍々を越えて行った。値の交渉は殺伐(さつばつ)として売り惜しみもあからさまとなっていた。


 早駆(はやが)けして先を行った差配(さはい)のもの達が手配できていた泊まりの町の宿屋街は焼け落ちていた。どこやらの愚かもの達が目先の欲に走った宿所と争った果ての大火事との話しだった。


 それでも名の知れた勅任官領主の権威で、取引先の商館の廓一と倉庫の空きに井戸をひとつ借り上げることができた。商館の側も不穏な情勢下、実力者とのつながりの誇示できることにはやぶさかではないようだった。交替で休む屈強な護衛士達のかたわらに、今宵(こよい)守られて、旅装のままローブにくるまりかすかな寝息をたてる賢女の小さな姿があった。


 徹夜行の翌夜の泥のような眠りから目覚めた次の日の朝、賢女は主計の供をして市場に出向いたのだがよそよそしい雰囲気を感じていた。露店の数も客もまばらで衛士の姿ばかりが目について、呼び込みの声が掛かることなく、よそ者を見る冷たい目で見られていた。威圧で応じる護衛士のエスコートが頼もしく意識された。




「朝食用に雑穀を臓物と煮たものを大鍋をひとつと、売り物としてはどうかと思いますが(いた)みかけた漿果を箱二つ確保できましたのが、大枚をはたいての成果でございます」


 領主に自嘲的にそう申し上げる主計の不機嫌のとばっちりを受けないよう、賢女は覗くなと持たされた黒い帳簿を予備録と重ねてお大事(だいじ)()(かか)え、背の高い主計の後ろで身をより縮めていた。


 いざ野営というときのための予備なのにこの先もこの状況が続くならこの輜重量でも不足する件について、護衛士の隊長と副官の魔法者も合議に呼ばれた。渋い顔がつらなり議論が膠着したところで、領主にいるのを気づかれてしまったというか、いま気づいたというふりをされた。


「おっ、()っこいそちはどう思う」


「・・・古来(こらい)兵站(へいたん)(かろ)んじた軍が持久できた試しはありません」


「だそうだ」


「では最小の糧食ですむ最短の難路で」と副官。


「いや、番二目で行こう。番二目に遠いほうで」


『お出しにされた、からかわれた』賢女は閨で驚かせた仕返しを楽しまれたとわかった。でもそれでなんとかなるのなら、その余裕は好ましいことなのだろうとの可愛げのない計算は隠した。


『いじられるくらいは平気。閨のお相手を独り占めできたから、許すの、 どう、したたかしら』

と、そんな尾感をただよわして、小さな賢女は話し合いの終わりの雰囲気を勝手に誘導し、願いごとを一つした。


 領主のそれをとがめぬ(さま)に、いつも半眼(はんまなこ)な副官がいくぶんなりか(まなじり)をさいていた。



 番二目に遠い経路というのは幾つかの案のうちリスクとの釣り合いで実際にとれる選択二つのうちの短い方であると言うことが出発してからわかった。追加の本一も結局はとられていた。


『でも今度(こんど)も助言を受け入れてくれたわけだし、何なのよと思わないでもないけれど、それがいやでないの、(うい)と思ってくれてはいるのかな。薄い本で読んだみたいに”でれる”というのをすればよいのかな、いえ、だめ、まだだめ、小さいといわれたことを忘れてはだめ』




 首都の図書学府(ライブラリィ)に通わせよと領都の女会(おんなかい)が推薦してよこした雛子が、わずか年3で八賢(はっけん)の末席にまで成り上がってみせ、我が卵統の(ほま)れにおお化けしていた。


 歳15には実年齢的には年一あまり、見た目にはそれより大きく遠く足りないが、特別に賢女(かしこめ)名告(なの)りと待遇を直裁してそれに(むく)いた。


 それで今回も宰相府から解放されて劫火について聞いてみたのだが、その時間(タイミング)が未明だったことに問題があったとしか言い様がなかった。閨の相手を求められたとの勘違いを(よそ)おわれて()められた。按摩を申し出られたときにそうと気がつくべきだったのだろうが、そこまで気が回る余裕をなくしていた。


 細っこい(のど)にしては柔らかな低めの少しハスキーな声でする説明も、小さな細指(ほそゆび)に魔力を走らせてしてみせる按摩も、実に巧みだった。夢うつつな良い気分に誘われ、気づいた時にはいつの間にやら牡の部分の衝動が止まれなくなっていた。


 この自分が、なんとわずか〇こすり半で、誰に、歳足らずの雛に、〇〇をその細い手管(てくだ)に包まれて、ありえない。


 牝雛は華奢な手に受けたものをくんくんと()いでみせ、それを目以外小さな造りの顔をどや顔の笑みにして確か未通のはずの股に押し込み、甘い声音(こわね)で「領主さまー」と尾先を絡め開き直られた。


 よろしい、見た目を裏切るものに、見識に加えて按摩の〇技の巧みに女度胸も加えよう。もうひと化けもふた化けもしてくれて後顧(こうこ)を楽にして欲しいものだ。 


 この先、この跳ねっ返りひとりでじゅうぶんだ。閨の相手達は可哀相だがあの暗部の統括官に当て(こす)りを言われるまでもない、劫火が本当なら、連れ帰っても生き残るのがやっとの苦難に(あえ)ぐだけになるだけだろう。


 女会も、推薦して寄越した誉れを優先したと言えば、非難をそう申し立てることはあるまい。


 それにしても、未通(おぼこ)のまま、大きく育つ(ぬく)い有精の卵を(はら)めば、難産卵となるだろうに、わかってしたのか。牝は賢女であろうとも雛のうちから牝ということか、牡にはわからん交配本能か、はめて通じを楽にしてやられなければ困ることになるのはそちらの側だろうに。いくら賢かろうと、しょうもない小雛だ。




 卵統のための奥の(ねや)は領主のための特別あつらえの伝統だが、本気で奥の閨を閉じる気だとわかった。雛狂いはこれまでみせてこなかったが、小さな小賢女の雛々しいからだのどこがいいというのだろう。余人には理解しがたい牡牝の相性なのか。世代違いが互いに引かれあっている。ことに一昨日(おととい)の政変の日の夜以来、はたで見る誰の目にもあからさまだ。にわかに領都の女会の目論見(もくろみ)どおりの成り行きになっている。


 自分のほうは、領民の血を(よど)ませないために他領のそれと互いに行き()いが推奨の(さか)()、その尾楽しみもこうなっては尾しまい。自領の福与(ふくよ)かな女達との交わりもよいものだが、他領と公然だが非公式な情報のやりとりの場がなくなるのは残念。


 そして魔法の塔の秘密回線からの急な魔信は思いもよらない特赦の通知だった。しかしその背景がそれどころでなくひどく残念。


 件名:魔法制限を解除、己の分別に応じて処せよ


 分別だと、そこは才に応じてじゃないのか。今更、魔法の塔に思うところはないぞ。よその領の出の死にかけを拾って副官にまで取り立ててくれた恩にこそ思うところはある。



 とは言っても、魔法の塔が形だけでも追放魔法者の生き残りにまで配慮を示してきたこと自体、塔とて万全の策はない、劫火は本当に深刻な絶滅規模になると認めたと同然だった。


 ほんとうに、それこそいろいろと今更だな。


 半眼な副官は職務のかたわら固有の秘密スキルで、(まぶた)(ビハインド)に禁忌を解かれた魔法の構文をいつものように密かに常時映出し、模擬の非常の襲来への対応の最適化をくり返すのだった。


 (ぬく)き光 浴びてほころぶ 木蓮の 白き蕾ぞ (うい)々し春

  それとも濁音なしで

 温き光 浴しふくらむ 木蓮の 白き花芽に 春初々し

  それとも、それとも、どちらもだめ?


 ここにいたっても秋桜(コスモス)の快走は止まらず、茎老いてなお、ピンクの花の勢いは盛ん。

春の桜にあこがれたのかしらん。はっ、もしかして四季咲き達成の野望持ち。


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