31 ゾルの戦歌、トMワ潜行戦
私の古骨は覚えている。
その昔、口伝もとうに絶えるほどの昔、大乱の時代があった。
神々の争いが続いていた、その果て、数多の神は支配する民に信者に汝の神のみを見よと強いた。
己を見ることができない民は、自分の非も悪も全て相手にかぶせた。小が勝算なく大を侮り、そして攻め、大が応じて、大乱の時代があった。
焚殿抗神のやり合い。神という神がこの世の依り代を喪い放逐され、忘れ去られ、擾乱の海に消えていった。
戦火の末、灰跡に残ったのは、いとと遠とき共通言語の司、覇を言い立てることのなかった普遍だけだった。
そして今の時代、神殿はあるが、後代に帝都の皇宮内に建立を許された遠神殿ひとつだけとなっている。
目の前にその歴史に仕切りを入れるものがどんと鎮座していた。
異世界の神の依り代を、事もあろうに自分を遠き神の代理人、使徒と仕立てられた被害者と思わないでもない私があずかることになった。
このトMワの地に異世界の神の伏神殿が許されるというのか、私がその祭司を務めるのが遠き神意なのか。今度は神二に使えよというのか。
なんて破天荒な。
『面白いN0、尾も白いN0』
遠くのどこか彼方に幻聴とも呟きとも判別つかない声がひょっとしたら聞こえた。
人の性の営みに決して厭いたわけではないが、若返りごとの痛みは尾に白くない層輪となってより閉じ重なり、重く覚えていく久しいことか。
ならばこそ天の未開の荒れを破り、未踏に至れと、ひょっとしたらその唆しに聞こえた。
これは亜神への誘い?
その階梯の界への仕切りの道祖(どうそ)が、天をさして立する目の前のそれというのか。
私はこのトMワの礎石を使いこなして見せよと、またもやいじられてるのだろうが。
まどろこしかろうとも、躊躇するまでも無かった。
こき使い回されのブラックからの解脱に通ずるのなら、界の魔女足る誰ぞ迷う。それを面白尾白と囃したてるなら、こちらもそのお相伴にあずからせてもらおう。
「戴きます」
古骨はそう言うとふわっと礎石に抱きつき、唇を寄せちろりを舌をのぞかせて、その硬質を舐めあげ始めた。
「貴女ねえ、ご神体に何てことしてくれてるのよ」
「あたしを礎石の守りに任じたのなら、にわかは黙っていてくれるかな、見て覚えるのはかまわないよ」
にわか扱い、若いって言われるの、いやじゃないけどぽっと出と侮られるのはいや。
言い返すかどうか私が逡巡しているまにも、豊穣を願うに相応しい巨大な張り型を、両の手指に限らず尾でもしなやかに撫で回す。
過激だ、kミエにまして過激だ。
いつのまにやら、尾から牝焼けの色が抜けて、初々しい白に桃色の乙女色になっているし、見守るこちらの方が溜まれなくなってくる。ん~交ざりたい。
その気分を静めるは、魔女の私。
抱きつくことで礎石の時と心拍を合わせ、触れて舐めて匂いをかいで、魔方石の魔力構成を感じる、これはrウが気喪の大尉相手にしている手管と、基本は同じなのに、古骨の所作のなんと洗練されて無駄なく、大胆で艶めかしく、素晴らしいの。
「さっきはrウのことはわかっててからかったのね」
ゾルの群体の蹂躙を避けがたいこの状況でも余裕をかますとは、魔女の中でも最たる古強者らしいのはわかったけれど、まかせて大丈夫なのかしら、本当に思わぬ援軍でいてくれるのかしら、遊ばれているだけじゃないよね。。
やがて古骨は礎石から離れると、乱れた旅装の胸元、裾周りを直し、
「状況を把握し、マーキングもすませた、あたし預かりとなった礎石の守りが、役務の象徴ではないことをみせよう」と言った。
「古骨は魔犬なの」
「あんた達の神にも仕えてあげるんだ、神(God)の犬(Dog)なら上等さ、同じ神の牝犬同士、うまくやろうじゃないか。案内しな」
主導権を奪われるのは癪なはずなのに、勝てる気がしなかった。
格が違うとわかった相手に、尻尾が捲いてくるのを、或いは振ろうとするのを、抑えるのがやっとだった。
「どこに行けばいいの」
「決まっている、あんた達とあたしの楽園の敵にご挨拶できるところさ」
領主館の塔屋の最上階からの景色は、昼間のはずなのに月無しの深夜未明のように暗かった。
猛煙の天蓋からは青空が駆逐され、舞う膨大な火の塵灰の塵がトMワに降り積もろうとしては、古骨の結界に弾き飛ばされていた。
炎竜の赤や橙色の大火旋が外壁のすぐ外側、それも全方向からトMワの内域を熱線で照らし出していた。
ゾルの群体は火を噴きながら防塞壁のすぐ外側まで押し寄せていた。
ゴウゴウと大風と大火の体の奥底まで震わす轟音がゾルの戦歌だった。
その際では会話は用をなさず、尾の阿吽頼りに領民総出で壁の冷却に追われていた。
「火の迎撃もそこまで寄せられると、今のガラス処理では溶かされてしまうわね、玻璃ガラス化を徹底すれば度900まではもつから、冷却も少しは楽になる。あんたの処理に上書きしていいかい」
「お願いするわ、お願いします、私も炎竜Sを退かせるから」
「なんで、退かないの、なんで、竜らを退かせたのに火勢が退かないのよ」
「そりゃあれさ、ゾルに取り込まれたぶんの炎竜Sまでは、あんたに従いはしないでしょうに」
ゾルが外壁全周に押し寄せていた。表に無数の火の穴を噴き、その身を焼き焦がしながらゾルのうねりがガラスの外壁に打ち寄せ、はい上がろうとしてはずり退いていた。
回旋する煙竜Sがその炎を吸い取ろうと顎口でするどく食らい付くが追い着くものではなかった。
逆に、炎を白く蒼く透き通らせ、ごうとばかり吹き出しを強めて煙竜を焼こうとまでする。
ゾルの捨て身の戦術の火禍が黒煙の黒ひといろのはずの天蓋をほの赤く染めて、その熱線のわずかばかりがトMワにふりそそぐ光の全てだった。
その闇寸前の地獄の中で、冷却にあたっている領民が喘いでいた。炎竜の咆哮が絶えたぶん、方四方八のあちらこちらから上がる悲鳴が細く聞こえていた。
「ん、ここらが限界か」
「限界ってそんな」
おぼろげな光の下でも領主の焦りの色はうかがえた。
「任せたのだろう、あたしに、なら任せな」
「どうするの」
「あたしは界の魔女、突破者じゃねの自覚くらいはあるさ。その本領のかけらくらいは披露しようじゃないか」
捲いていた尻尾がほどけて振れてくるのを抑えきれないでいる、このツンデレ女。私のお気に入りに登録ナウだ。
「覚悟はいいかい」
「何の覚悟?」
「あの坊やからあんたの姉魔女だかの檄を伝え聞いただろ、ここを帝国から切り離す」
「どうするの」
「こうするのさ、嬢ちゃん」
私は礎石を基点に開始した。
「トMワ礎石、発進!、蹂躙せよ、なぎ払え、なんちゃって、あははははっ」
年100ぶりだろうか、小なるとも遠慮無しの魔力の放出、すごい快感、開放感。
「きもっち、いい、あははははっ」
邪魔であろうがなかろうが情状なんて酌量はしない。
徹底して実行あるのみ。
「生きる古骨に憑きものはむしろ常識、むしろ名物。あははははっ」
幾多の任務尾生のたびに幾多の人格が涵養され、今の私は彼女達の残香の抑えが効かない。魔女領主が私を畏れ恐怖する尾感さえ心地良い。
救援要請の魔女領主につけいる隙は私が戴いた。
そうする策謀を托卵でいないはずはない地底の連中は、送りものの降臨にさぞや慌てふためくであろう。
トMワの礎石、その巨大な魔法石の内部でなにかが蠢いた。
始め低い振動があった、それはすぐに可聴域の極低音をとなり、強さを増し、周期の数を増し、耳をつんざく高い強音をへて、可聴域を越えた。
敏感なものはなおも強く耳をふさいで不快を訴えただろうが、万10の周波数を越す頃にはそれもなくなった。あるのは、灰の反射ひと色から、煌めく白光と深黒の闇のモザイクのオブジェに変じた魔法石だった。
部屋の空気が帯電して、刺激的なイオンがピリピリとにおった。接する構成原子分子混合の結合力は弱体化され、置かれた床は液状化し、魔法石の物理的構成は己の質量子を引かれて無音の沈降を始めた。
あとの過程は殆どのところ純粋に惑星重力の物理仕事だった。
地下の構造物の天井が抜けて落下し、ズシンと床に激突し、その床に沈んで、さらに下の階の天井を抜ける、その繰り返しの過程で、さまざまな配管などを巻き込んで破断していく。水に汚水、蒸気、そして魔力線が噴き出して、混乱と追加被害の坩堝が垂直に下方に伸びていく。
そうして落ち行く礎石の軌道修正は微小。それも当然、それはもとより密かに直下にあったのだから、礎石は、行く宛ての空間座標の垂直軸上に、重心の軸上に配置されていたのだから。
始めに侵入警報がするどく鳴った。すぐに警報に警報が重なる状態となり、壁面の大管制盤、そこの異常灯の点滅の拡大が止まらなくなった。
上方の各所から次々悲鳴のような報告が殺到した。情報は錯綜し、それが対処が間に合ってないことを告げていた。
侵入物の正体が、暴走する魔法石の落下と判明した時には上方に残された階層は少なかった。
「あれが合すれば増殖制御の限界を越えてしまう、密度と量で臨界域を超過してしまうぞ」
「緊急停止、急げ、すべての制御外筒のロックを解除し落とせ、急げ、担当規則の非常項事態だ、排出系全解放、安全弁もすべてだ、急げ。補完緊急放出系起動、手動弁も全てだ、巣全域に魔爆警報」
管制員が矢継ぎ早に出した指示は間に合わなかった。
蒼い臨界の魔光が消えぬうちに、監視窓の目の前で、天井から吊り下がる制御系を押し落とし、それは落下してきた。
次1吸収材の粗エリクシルのプールに飛沫も起てず、吸い込まれるように突入した。
細い魔石棒の密な林は礎石を中心に押し倒されていく、制御外筒にまだおさまらない、おさまりきれない魔石棒の露出部分が礎石の光と闇のモザイクに侵されて融合していく。
瞬間、悪夢のような禍々しい形態の魔力泡の爆発が生まれ、瞬間、排出系は過負荷を越え、瞬間、すべての制御は意味を成さなくなった。次の瞬間は、爆散のはずだった。逃れようのない、大爆散で、何もかも手の施しようのないない最後になるはずだった。
「・・・なぜ、爆散しない、そこで止まる」
「見ろ、渦流が、増殖炉に顕現の魔力泡に渦流が、集束して点1に吸い込まれているようだ」
「何が起こっている、何が」
「・・・変わった。蒼い光放射の空?、低い奇妙な閉塞の空?、空に何が起こったの、何が」
「この塔屋の頂きがその縁すれすれの、真球結界」
「真球結界?」
「そう、完全なる球の結界。界の魔女たるあたしの仕業だよ」
「範囲は」
「たいしたものじゃない、ほんの直径キロ2ばかし」
「大きい・・・径というなら中心点があるのでしょう、それはどこ」
「キロ1直下の魔力増殖炉、魔石から魔力を増殖してとり出すための炉、あれは土鉱の固有の魔法技術だと思う、それを流用させてもらった」
「初めて聞くわ、そんなもの」
「整地ずみの町用地の真ん中に使えとばかり巨大な魔法礎石が置かれてたのだろう。不審に思わなかったのかい」
「そんな余裕は当時はなかったし、土鉱の町、町っぽいのは初めから丘鉱山の向こう側にあった」
「それほど、あんた達は今もちょい昔もちょろ若い」
「その大きさだとゾルも取り込まれているはずだわ」
「結界で分断したので、今やただのアメーボイド、組織化されていない群れだわね」
「ねえ、古骨の魔女さま、私はトMワの主座を貴女さまに禅譲した方がいい?」
「冗談じゃない、あたしはそんな面倒ごとを引き受けはしないよ。
約束したのはここの守り、行きがかり上、大きな土台ごとになっちまったがね。領民とそれに土鉱とも気ままによろしくやらせてもらうよ、領主殿」
「結界の外は」
「ゾルがあたしの無窮の結界を丸呑み、取り込もうとうねる大海か山塊になっているだろうよ」
「いつになったら結界を解けると思う?」
「さあてね、帝国がゾルをそのままにしておくとも思えないが、とりあえず、年1後が目安」
「それまで持久が可能なのかしら、自身はないわ」
「なに心配はいらないさ、あそこにあたしらが生きていくための、水に肉もある、放っておいたら限りなく単性生殖するし」
「まさかそれってゾルのこと」
「ご名答、あたしらを喰らえるのなら、あたしらも喰えないはずはないだろう。
とりあえず年1の間、トMワは結界球ごと、ゾルが地を穿ってできる肉海の奥底に大深度地下に自沈させておこう。そこなら帝国の探査の手も届きにくく、何処よりも安寧だ、いっそそこ、底で、建国したらどう」
「なにを考えているの」
「共和と土鉱の民が交じり合えば、普通に血が濃くなり過ぎる弊害もないなと思って、それに」
「それにって」
「異世界からの転生の民はあたしが見事にゾルの脅威より隔離した。あたしも伝説になれると思わない」
「否定はしないわ、古骨さま」
「あんたの戦略にしていいわよ、あんたが支配の眷属ならあんたの選択に文句を言い立てることはない、地底に逼塞、それにつきあわされる土鉱の不満の方は、あたしが抜いてあげる、みな骨抜きにしてあげる」
「正直いうと、今は貴女さまが怖ろしい。人でなしの古骨さまは亜神さまになるの? いつまでお味方してくれるのかしら」
「せいぜい心配するがいいわ、どうせあんたの番がきたら、どんなにあたしの快楽が情深く優しいか、尾の先まで堪能することになる、あたしは味方の期待を裏切ることはしないし、嘘は言えないたち、あたしの長らくあり続けるということのうちにはそう言う縛りがある」
「本当かしら」
「容易に信じず用心深いのは長たるに正しい資質の一つ。それに突破者のあたしがあんたの導きをしてやろうというんだ、信じられる間はあたしに憑かれていればいい、泣いて喜ぶほど可愛がってあげるさ」
「そのもの言いも内容も、なんかすごく逃げ出したいのですけれど」
「ふふふ、手遅れでないとでも」
「い、いいですわ、それも私の悪業の贖罪になるというのなら、この身を古骨さまの食材に捧げます」
それは極遠距離でも双方向の秘匿画像通話を短時間成立させる、高コストで脆弱な魔法飛翔体による仮想通信線の構築によるものでなかった。
そして高度緊急事態発生の非編集生記録を搭載した超高速弾道通信弾の早朝弾着の噂は、領1消滅を告げる続報の次弾弾着の目撃証言も多数あって、抑え消しきれるものではなくなっていた。
諸領、属国の間に、不安が野火のように広がり、煽り立てられていた。帝都のしかるべき部門にしかるべき強い風が当たっていた。
軍兵器厰広報
「かの事故兵器の起源は、当厰にあらず、その不安定の瑕疵の責は当厰にあらず」
軍輜重局反論声明
「かの瑕疵兵器と称されしものは、もとは糧食で開発の、兵器にあらず、不祥事にいたる転用の責は当方にあらず」
関係の者以外、気にもとまらないにように配慮されていた辺境の小領であっても、帝国の庇護の対象であるはずのものが、帝国軍の準戦略兵器の事故で壊滅したという情報は広く諸領の不安不穏を煽り立て、政治問題化した。
不運な小領の謎に充ちた成り立ちの背景が帝国秘で明かされなかったことと、関係各位の責任の押し付け合いが、帝国による陰謀論まで呼び、姦しい論争に輪をかけていた。
帝都の状況は、観測地から皇宮に帰還を急ぐ、天文博士が閣下と呼んだ高位皇族の将星にも届いていた。
『それどころではない天の厄災が訪れるというのに、地にも厄介ごと。遠神恵賜、我恵賜。生き残りがかかる手筈の妨げにしかならないというのに。
魔法の諸塔の手応えは悪くはなかった。だが我が帝国の中枢と諸侯と諸国の長宛ての情報の通知は芳しい反応に繋がったとはとても思えなかった。このままでは、魔法の塔に従うほんの万数の幸運の民以外は天の劫火に焼かれることになるだろう。
やむをえない、共同歩調はあきらめよう、有力諸侯への働きかけに集中しよう。もともと生き残るためのリソースをかき集められるものは限られている。そこに正義も悪もなく、むしろ悪で蓄財をなしたものが多いだろう、それら徒党らの我欲、身勝手な自分可愛さにすりよるしかないか。
m100越えの大深度要塞化命令を付与した略奪赦免状が効くだろうか。早い者勝ちの欲に募る恐怖。不正義を働こうが月二で終わりの、何という世の末。戦乱の引き金を引くのが妾となるとはな、妾の真名を忌む焼け残りがいてくれれば、本望だ』。
将星はトリアージ、生き残り優先の選別、その戦火の覚悟を決めた気でいた。
『その昔、遠神殿をひとつのみ皇宮内に置くとしたのは誤りであった。当時としては神と神官の暴虐、神荒れの古き時代の再来を恐れたのはやむをえない配慮であったのだろうが、遠神も皇族も暴走などせぬ、それゆえの今の帝国に繋がったというにな。
顕現神の親政であれば為政の神殿を津々浦々まで行き渡らせ、全ての臣民に劫火に備えさせることができようものの、遠き大神ではそれはかなうべくもない。
悪しき者こそむしろ生き延びさせよというのが神意なのか、妾も悪堕ちせねばならないのか』
正面の雲を祓い有視界の晴れ間を翼12を広げ悠然と魔力加速で飛ぶリムジン種飛竜。その背にあつらえられた豪華なお召し座に跨がる高位皇族の将星、皇女は、周囲を飛ぶ近衛軍魔法者の翔飛隊に溜息を見られまいと口と尾を魔1文字にして堪えていた、
それを止めた。
『もし邪ならざるが、清らかのままなるがむしろ罪ならば、ならば滅ぶやも知れぬこの身が容赦を求めて果てない劣情もまた神意か、おお、
おお、皇なる統の立ち女のうちにも牝の肉ぞある、誰憚らず自由に番たいぞ、思うがまま自由に温々とした卵を産んで産んで産みつくしたいぞ』
危機を察すれば命を繋ぐ種が増えるは自然の摂理。傾命のハナミズキは枝を花芽で賑わす。
如月の秋桜よ、なんじは冬花にあらざるに、いつまでも咲いて、いつまでも種を撒き続けるというのか。そうして天変地異の先触れを気取るというのか。
第20話より抜粋、稚日女かく語りき
「生き物は鏡也が思うよりしぶといの、深海まで蒸発して干上がろうが地殻の奥底ではなにかしらが
生き延びていつか神格に達する可能性が全くのゼロではないの」
主星ではなくて近接恒星起源の致死輻射ですから、多少の距離、64光日が空間の拡散で緩和してくれるのです。海面からさぞや煮え立ち沸騰はするでしょうが、それで湧く雲の反射に遮断で、激光は深海までは及びがたいでしょう。地下も少々潜るだけでけっこう安泰です。それでもたぶん、衝撃波と輻射圧で宇宙に流される惑星大気は10の乗数倍の規模で彗星を凌駕するみごとな尾をひくことでしょう。




