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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
27/60

27 ゾルの浸透、灰の魔法塔底

 ほしはとってもマゾなストーカーっこです。よるにひどくおこじれちゃんです。

 よるは有能アスペくんです。ほしにしっかりくわえ込まれてます、もちろんプラトニックな意味で。


「こちらは戦術的修復領域(タクティカルリカバリーパーティション)、その記録音声領域(レコードボイスパーティション)です。


 状況、ラグナロク

  汚染/感染のリスク重大があります。

   修復(リカバリー)を隔離領域で自律実行中(インターナルクロックランニング)です。

 

 状況、ラグナロク

  別隔離の兵舎室任務座席完全(フルミッションネット)、その魔力応答の周辺放射を観測中です。

 

   解析し、パターンを抽出中です。 

    言語構造部分に繰り返しを認めます。

     無害化し、要部(セントラル)を示します。



()(しん)(かん)、うちなるは吾が舌上(ぜつじょう)

吾が顎門(あぎと)はかくのごとく開き、

吾は食するもの(むさぼ)るもの、イーターなり


吾は動の物生(ぶつせい)にあらず

吾は植の物生にあらず

吾は粘生界の(きわ)め、至深至遠を()つる


吾が触れたるもの全て、

吾が流儀で捕らえられよ、

吾が流儀で、(なんじ)らの皮肉(かわにく)の記憶を馳走(ちそう)しよう


吾は非殺界、ヌルキリングフィールド、始まりの胎の海に似るものなれば、

吾に逆するは(まこと)迷わず無用なり



 状況、ラグナロク

  判定します。

   これは準戦略兵器に顕現の背景知性、その推定根幹精神です。

    敵性汎戦略兵器と同等級の脅威です。

     状況、全球防衛準備態勢(グローバルデフコン)1(ラグナロク)に変更はありません。


 状況、ラグナロク

  兵舎室任務座席完全は当該準戦略兵器の遠隔同質構成体として推定機能しています。

   司令兵装備は兵舎室任務座席完全の構成体として推定機能しています。

 状況、ラグナロク

  負帰還(ネガティブフィードバック)は機能していません。

   司令兵装備の想定外の尾機能不全以外の障害は履歴(ログ)にありません。

    皮下埋没短尾装備の試験運用(トライイン)記録歴(レコード)にありません。

 状況、ラグナロク

  兵舎室任務座席完全の廃棄破棄は当該準戦略兵器に対し推定無効です。

   特に破棄は反撃の可能性を除外できません。

    司令兵装備の廃棄破棄は準戦略兵器に対し推定無効です。

     特に破棄は強度報復反撃の可能性を除外できません。

      司令兵装備の生体(ウェットウェア)回収は困難です。


 状況、ラグナロク

  尾機能パラメータ異常と負帰還異常との相関の推定

   設計上の瑕疵(バグ)の可能性があります。

    設計上の瑕疵ではない仕様の可能性があります。

     検証の必要性が有意です。

 

 状況、ラグナロク

  機能不全尾の機能回復の実験的試行(エクスペリメンタルトライ)を提案します。

   皮下埋没短尾の生体レベル改変魔法の実行例を応用します

    機能する司令兵装備/監視装置複合より、大破負帰還の部分の再構築を試みます。

 状況、ラグナロク

  当該実行例記録より確認、所要、速時ミリ1平均。

   有効に達する所要数時日が未定、長すぎ時期を逸します。

    了承の確認のない有尾化は帝国倫理規定(エンぺラルエシカ)に抵触します。

 状況、ラグナロク

  超帝国倫理規定的事態です。

   仮想尾の遠隔時限プラグインを提案します。

 状況、ラグナロク

  対象と別々に隔離のため、実行経路が重二ヌルです。

   隔離継手(アイソレートコネクター)を置く接続領域が必要です。



こちらは保安規則領域(セイフパーティション)です。新たな隔離領域の作成/増殖は禁止事項です。



 状況、ラグナロク

  代替尾の外装(アウトプラグ)の投入を提案します。

   戦傷時等の時一代替装具を流用します。

    装具のため民族浄化項に該当しません。

 状況、ラグナロク

  隔離のため実施手段が問題です。

 状況、ラグナロク

  修復の物理的担体を代替尾に附加することを提案します。

 状況、ラグナロク

  物理的担体尾複合への免疫反応、防御的攻撃が予想されます。

 状況、ラグナロク

  ヌル抗原仕様膜を被覆実装し打ち込むことを提案します。

 状況、ラグナロク

  ヌル抗原膜仕様設計には、サンプリング窓の維持が定一時間必要となります。


 状況、ラグナロク

  代替尾外装の別方法を提案します。

   物理的隔離壁制御記述に、内方向に延伸する触手の構成をプラグインします。

    触手は先端部まで隔離空間外と連続であり、魔力誘導が可能です。

     触手で隔離空間内の次元3マッピングを実施します。

      司令兵装備の埋没短尾の構成座標を確認します。

       埋没短尾を触手内に押し出します。

        代替尾外装を施術します。

         その状態で養生します。

          司令兵装備/監視装置複合の再接続を実行します。

           制御は司令兵装備側でなく、修復側(こちら)でおこないます。

            負帰還機能の回復まで次n回数、次nコード候補の打ち込みを継続します。


 状況、ラグナロク

  触手カーネル、状態準備です。

 状況、ラグナロク

  挿入触手の被探知を避けるプラグインオプションが必要です。

   解の一つは通常径が司令兵装備の体毛に準拠し、擬態するものです。

    最大径は、代替尾外装時の埋没短尾の内在を許容するものです。


 状況、ラグナロク

  これは回初の修復試行です。

   汚染/感染のリスク重大があります。

    記録を物理的担体に複写(コピイ)し、修復実行直前に当隔離領域より分離します。






「ねえ、よる、ここ、あそこみたいだよね」


 そのまばゆさには比類のない奇妙さがあった。

 色の数としては大略七。

 紫黄赤青緑桃のそれぞれの光が強さを増すと彩を失っていき、むくの白にいたるも、魔光苔の輪郭はさらに白から透明な何かに融けて流動し、避けるすきを与えない素早さでふたりのつないだ手を襲った。急な引きで目の前の異変の光景がぶれて・・・


 気が戻ればそこは横並びでいるのがやっとの小さな(ほら)。そこに転移させられたのだろう、身を寄せ合う温もりに(ひた)り、腰を落として繋いでない方の腕で膝を抱いていた。


 まわりは半球の内面(うちづら)、床まで彩なす模様が目を瞬かす都度、変容を繰り返して、


 紫ではない全ての色み

 黄ではない全ての色み

 赤ではない全ての色み

 青ではない全ての色み

 緑ではない全ての色み

 桃ではない全ての色み

 そして白、光の彩を究めた色み


 それぞれの色みの(つづ)れがいろいろに交錯して、波の(さま)さながらな濃淡で流れ、或いは渦を巻き、生と滅の混沌が沸き立っていた。



「うん、ほし、星夜巣の・・・あれは、確かに摩光の陣・・・だった・・・、・・」


「摩光の陣?・・・よるにそう言われれば、重なりあったそのようでもあるけれど、そうだとしてもきちんとしてないよ」


「うん、ほし、でも前にみた記憶の時より整合に近いと思う。鼓動を感じる」


『ほしの鼓動とぼくの鼓動はふたりいる時は、それは常にと殆ど同義だけれど、いっしょに打って刻を(きざ)んでいる。たぶん、ほしがぼくにしてくれた魔力の底上げの贈りものに違いない。その鼓動に波の様な流れが同期している。今は素面でもそれがあきらかだ。でも調子をはずす不整な脈動もまた交じっている』


「鼓動って言うと、よると私の心の拍のこと?・・・そう・・・でも不思議、こうしてここにいるとなんだか・・・」


「なんだかって?」


「なんだか・・・ふぅぅ・・・私の・・・(とが)が遠い気がする。ここにこうしているの、ひょっとしたら呼ばれたのじゃないのかなって思うの、そういう気がする」


「ぼくが昨晩のあれ?」


「そしてよると今朝の口吻(ベーゼ)の口寄せも」


「・・・そうかもしれない、ほしもぼくも害することは何もされてないし・・・いったい誰が呼んで」


「そしてなんのために・・・


 でも、こうして、ここにいるとね、なんか、咎が薄れて、私の咎が薄れていくの、薄れて遠くなっていくの・・・違う未来への道が、もしかしてみなの未来が途絶しない道へのその分岐が・・・感じられるの・・・遠くないところまでに近づいているの」


 よるが見とれる綺麗なひとみは、魔光の(きら)めきを映していた。


「代償がなんだろうと、ほしの咎がなくなるなら、ぼくはなんでもするよ。ほしの咎のない、違う未来への道があるのなら、ぼくは絶対にその分岐で間違えたくない」


 少しのま、沈黙があった。


 ほしの風情(ふぜい)は幻の夢を視ているようで、寄り添うよるに問うように口を開いた。


「・・・・ねえ、よる、滅びより悪いことがあるかな」


「ほしの咎がない予見なら、ぼくはそれがいい」



 (つな)いだふたりの手の、ほしの右手(めて)の、よるの左手(ゆんで)のきわの二つの腕輪が、光と闇の、闇と光の対の魔法環が、ふれ合うところで、半と一つ、540度回りねじれるように接合した。



「・・・よるがいて・・・私、それでいい」



 ∞のかたちに似て合わさる接合環で、光と闇の、闇と光の、魔法符合(マジックコード)が巡り絡み合った。表裏繋がる渦が初回の廻りを初めていた。ふたりは繋がる輪のその(くびき)に、永遠(とわ)に向かう(きずな)の構文に、自らを差し出し繋がれた。



「ねえ、よる、ここ、私たちのいるここはとても小さく狭いけれど、星夜巣のように感じない?

 ここでお(つと)めしたら・・・」


「ほしといっしょの星夜巣のお務めだね」


「ここをお務めにして、いいのかな・・・」


「うん、やし様に星夜巣お務め奉公に連れ出され、ほしもぼくも番84星夜巣で管理者の登録を受けたし、ぼくもここ、星夜巣のお務めにして、ほしといたい」



 光の波動制御の魔法環と、光の粒子制御の魔法環の、その接合は、もう回りひとつぶんねじれを増し、半とふたつ、900度のねじれで、∞のかたちに追加の輪ひとつが創成された。

 時空の背景格子にその輪を対称性に折りたためる軸はなかった。三つ目の輪の(めぐ)りに入った光と闇の魔法符合はそこの時空軸を定義して折りたたみ、対称性の破れは逃れられ、そこに入力は位相が反転した出力で返された。


 ほしとよるが意識してしたことではなかったし、知らず知らされずだったが、今や表裏を反転して返す微宇宙(ミクロコスモス)で、ふたりの腕が動いて環の見かけの接合が断たれても、開いた接合は確かだった。


 入るものに反転で返そうと、まだ未成熟な雛子の体でも、表も裏の別なく愛しく思い合う永遠の軛を受け入れた(つがい)の思いなら、なんら不都合のないはずのものだった。


 観測可能な最短の時間を越えて持続の新次元、三つ目の輪。それを二つの環の輪と合わせて結びの交接点、それもまた特異点(シンギュラーポイント)の有り(よう)の一つ。安定したその露出の突然の物理的な現出に、夜の分限はひどく驚愕しひどく歓喜しひどく興奮し、その(ビジー)ぎを拡げて、関心を()く高めていた。



 ほしは思う。


『 (とが)からの解放かなうなら、

 なんてただ嬉しいから遠いの

 

 そうなればもう、よるはいらないのに

 よるはいてくれなくていいのに

 私から自由になれるのに


 嗚呼(ああ)、私はよるを独り占めして

 思うがままに()いていた

 よるの(とき)(おか)していた

 

 それを平気に思っていたのに

 嗚呼、なんで今になって心の底より気がつかされた、

 私はよるに取り返しのつかないことをしてしまっていた


 なぜ、なぜやし様は、仮名告(かりなの)りを

 よるとほしのいずれかを選べと、

 問うたの

 

 私は、それを不思議不審に思いもせず

 私は、ほしを選んだ


 私が、ほしを選ベば

 よるはよるにしか、なれなかった


 私の心の奥、深く、

 遠いところではわかっていた


 夜の空の(おぼ)れ星

 それが私

 

 よるは()うに私の咎になり

 もう私から離れやしない

 

 よる、私の思い人

 そんなにやさしくしないで

 私をめちゃくちゃにしていいのに

 ひどいことしてくれていいのに

 

 蹂躙(じゅうりん)してくれていいのに

 

 離れやしないのだから、

 私ももう疾うに、

 離れやしないのだから 』



「ほし、どうしたの」


「ううん、なんでもない、それより見て」


 ほしのがひとみに映る 赤ではないすべての色みが引いて行く偏り。

 ふたりの球の内面に赤の色みがとがる方位が生まれていた。


「なんだろう」


 よく()ようとすると、その方位に少し加速を感じた。

 うしろに半球が移動分の()いた(ほら)を残しながら。




警報(アラート)、警報、警報

 状況は無人晶洞内にUMO(未確認動体)。

 識別、応答なし。

 侵入と暫定された。

 緊急の対応を要する。

 最上位事項。

 地下階のもの、手空きのものは晶洞前に集合。

 封鎖線を張る」


「警報、警報、警報・・・晶洞前に封鎖線を張る」



 突如(とつじょ)差配(さはい)当番中師の拡声(マジックボイス)繰り返しに地下階の給餌(きゅうじ)所は騒然とした。


「警報ってなんだ」

「晶洞のUMOってなに」

「わからんが白黒の雛子の連れがそっちに向かうのをみたぞ」

「ちっ、あの生意気な(つがい)気取りか」

「そうは言っても、ほおっておくわけにもいかないでしょ。差配中師の集合がかかったし」

「封鎖を俺らにやらせるってか、やばいんじゃねえの」

「ぼく、根性をみせて下師に取り立てられるんだ」

「けっ、もろやばいフラグじゃねえか、それ」

「あたしは全力回避!と言いたいところだけど、私室ほしいから頑張るわ」

「修行中の俺達に特典はないのか」

「魔法使い様だろうがお修行中様だろうが、魔力持ちなら、急ぎな、行った行った、後で裏メニューの師向け給配食なみを出してやる、うまいぞー」

「ほんとうか、給餌じゃなくて、給配食か」

「だまされるやつ、はっけーん、なみだぞ」

「なみでも、うまけりゃいいじゃん」



「ねえ、なぜ」

 赤の色みの半透の向こう側で、魔力が押してきていた。


「ここは縁で、透けて見える向こう側の灰色は、晶洞前の通洞(つうどう)のだと思う」


「それはわかるけど、そこになぜ邪魔っぽい魔力があるの?」


「ほしは出てみたいの?」


「私、ここにいたいけど、お仕事あるし」


「星夜巣にするお務めは、仕事だと思うけど」


「でも、ここに引きこもってばかりじゃ、いられないよ」


「そうだね、ほしとぼくの長上着も履き物もそのためのものだった」


「今はまだなにもない、空っぽ。灰の魔法塔のお仕事をしのぎにしてここを私たちの巣にしていくの」


「しのぎ・・・わかった、路銀はあらかた使ったし、ほしのいうとおりだ」


 よるは魔力を除こうして、わずかな抵抗を感じた。


「ええと、ほし、これ混ざり物の魔力」


「向こうに給餌所にいた大人たちが集まっているわ、そこから魔力を張られてる」


「ええと、なんでだろ」


「よる、これはそうね、だれか私たちがとり込まれたのを見た人がいて」


「見た人がいて」


「私たちを助けようとしてるのじゃないかしら」


「?、でもゆるい魔力が少し押してきてるだけだよ」


「ほら、そこは私たちがいるから、乱暴なことは避けて牽制しがてら、様子をみてるとか?」



「急に力が強まったぞ」

「うおお、なんて応魔力」

「頑張れぼく頑張れ、根性みせて下師に取り立てられるんだ」

「私室ほしいよお」

「給配食、給配食」

「ハアハア」

「フウフウ」

「ウヒウヒ」

「もう、や、限界」

「ちっ、魔力が底で尽きかけてやがる」

「師級はまだか」

「ぼくは捨て駒はいやだ」

「こ、この野郎、またフラグ吐きやがって」


「・・・あのう・・・」

「ほら、よる、声が小さいって、すみませーん、私たち、大丈夫ですから、魔力で押すの止めてもらえますう」




 夜の分限が外側(そとがわ)に張り付いていれば別なのだろうけれど、監視塔は軽量な屋上構造物、素では対爆仕様ではなく、軍の超速通信弾の無通告発射の衝撃で中破判定を受けて、修復なるまでの刻、退去となった。そして急遽(きゅうきょ)、お前が行けと塔内を緊急降下(マジックダイブ)でここに落とされたのだけど、いやー、助手の娘のしがみつきがはんばではなかった。


 それがいやじゃないし、いや、いやーなかなかだったし、立ち直りもはやかった。うん、こうして話しを雛子達から聞き出すにも、自分よりよほど向きなのは確かだ。



「ねえ、お姉さんとおじさんは(つがい)?」


「うふふ、どうかしら、おませさんね」


「うんわかるよ、私達もそうだから、ねっ、よる」


 こんなため口では打ち解けすぎだろうと思わないでもなかったが、三十路前に魔法使い以上になれても、そのまだそのままの自分には欠いた才能に違いなかった。


 それに便乗して、自分も聴取を進めた。


「ここは静かな(なぎさ)みたいなものです。大丈夫です、下師様。星夜巣にして僕らで管理しますから、問題ないですよ」


 灰の魔法塔の基底に星夜巣を造るという、牡雛の疑い耳なとんでも発言。雛子らの正体(しょうたい)が星夜巣の守番(もりばん)あったとは、これには驚いた、自分の予見になかったことだ。ということは、もしかして、この早熟な雛子らは自分とは別に予見して、命を懸ける避難の壕掘りなのではなかろうか。


「いや問題がおおありだ。そもそも塔の資産であるものを勝手に占拠するとは、とんでもない。ここはおもに幹部が使う食事処で夕方からの営業がある、その前に仕込みもある」


「ど、どうしよう、ほし」


「そうね、巣の拡張方向を変えられる様に魔光苔の群生を移動させましょ、ほら、ちょうどぬるぬるのスライムモルドの相でなぜか安定しているようだし」


「でも」


「さっきの出てくるときの要領で、晶洞を埋めてしまった部分を押し出して(から)の洞の状態にもどせばいいと思うの。下師様、慣れないことですので今日じゅうには無理かもしれないですけれど、晶洞のことは日一待っていただければ何とかしましょう。それで星夜巣を何とぞお許しいただけませんでしょうか」


「なら、巣の出入口(ゲート)を見一わからぬよう偽装すること、それと晶洞の復旧は日明(ひあす)の正午が刻限。そして所場代として査察権と塔への隷属を約束していただこう。それが条件だ」


「隷属までは無理ですけれど、協力関係ではいかがですか」


「譲歩の余地はあるが、塔長の裁可を(いただ)くには査察権だけでは足りないな」


「わかりました、隷属はしませんが、私たちの星夜巣は灰の魔法塔の傘下にある、それを認めましょう。それならいいよね、よるも」


「うん、ほしにまかせるよ」



「下師、差し出がましいようですが、ここでそいつらの星夜巣造りとかの話し、進めてしまっていいんですかい」


忖度(そんたく)がいる相手だからね。魔法の塔として初めて星夜巣を傘下にできる機会をみすみす逃すわけにはいかない。君らのことも、よくやったと塔長に報告しておくから、他言(たごん)はしてくれるなよ」


 助手の娘の前で、ええかっこし、いささか大物気どりで演じてしまった。雛子らが予見で動いている可能性が高いと思われるからには、予見のある自分かかわりの案件にして置くのが正解だと思うのだが、これは何とも()もはゆい。



「ごめんなさい、私たちの面倒(トラブル)に巻き込んでしまって」


「いや、いいってことよ、おまえらが無事で何よりだ」

「はい、そうね、それより、すごいのは魔力だけじゃないのね。お姉さんもびっくりよ。匹二とも見た目は歳が6か7ってふうだけど、ほんとにそうなの?」


「えっ?お姉さん?」


「ちょっちょっとよるは口を閉じてて。こほん、お騒がせしましたこととご挨拶が遅くなりましたお詫びをかねて、秘密が魔法束縛の魔力の底上げはいかがでしょう。私たち、見てくれのとおりの世間(せけん)さま知らずの雛子ですし、お姉さま(がた)にもこれからも何かとご迷惑をおかけするかもしれないし、失礼でなければですけれど」


「魔力の底上げだと、ほんとうか」

「ええー、なんでそんな事までできるのよ、あんた達」

「星夜巣ってまじすげえ」


「持続期間は、そうですね日数(ひかず)60以上を保証します。倍半ほど、その間は経験値が溜まり易くなります」


「乗った、俺はその話し乗ったぞ、こいつらの味方するぞ」

「いいわ、私もそうする、協力してあげるんだからよろしくね」

「うひ、これで修行に少しやる気がでるひ」


 これは未来値の先取りか、そんなことが可能でも、後でその分、リバウンドで凹むようなら問題だろう。待てよ、その前に待てよ、保証が日数60以上。もしかしなくても、そのあたりが雛子らの予見の破滅までの残りの日距離か。そしてその先に先取り可能な未来が、ここにいる下っ端のみなにあるというのか。先取りできたなら、それが証拠になるのか。


「ははは、もし、そういうことなら、それはそれでもこれはこれはよい」


「どうかされましたか、下師様」


「君たちふたり、明日にでも少しつきあってくれないか。晶洞の復旧が段落一したあとでね。

 星夜巣の件は、力を貸せるかもしれない」

 もちろん、高く利子つきで。




 状況、司令官装備の応答、ヌルです。

  状況、異常の更新

   塔基底構造、晶洞の動的変化反転しました。

    星夜巣案件の申し立てあり。

     バンデッド判定は暫定保留です。

  状況、異常の更新

    修復領域(リカバリーパーティション)失域(ロスト)しました。

     兵舎室任務座席完全(フルミッションネット)、応答、ヌルです。

      対応

       検討中です。

        物理的担体複写記録(フィジカルレコードキャリア)を隔離しています。

         読み込み前に検査体、カナリアが単体ダイブ中です。

 全体状況、ラグナロク、変更ありません。



 

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