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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
26/60

26 ゾルの大海、スライムモルドの乱

「司令兵装備の内部監視(モニター)で基準値逸脱を認めました。

  許容内で収束と暫定判断します。


 準戦略兵器起動まで分10を切りました。

  仕様規定により起動後は名1以上による同調監視が必要です。

   司令兵装備の名1で可能な選択は・・・任務座席完全(フルミッションネット)のみです。


 現在位置から収容されますか」



『あーん、ばれてる、ばれてるよう』


『そ、そんなわけないでしょ、それより私をこれ以上おかしな官能に巻き込まないで、コードに(もだ)えるなんて、ナリカはとんだ変態さんね』


『ででも、あ、あたしには、あん、仮想(バーチャル)はおかあさんの現実(リアル)と同列なのー』


『娘のふりはやめてって言ったよね。それと仮想なら・・あっ止まった。ほら、やっぱり私の体官能への放散同調は止められるじゃない。

 ナリカはヌルヌルとやらをお相手に引きこもってていいから。その間こっちはしてしまった許可につきあうわ。非殺とか予備とか言ってたし、たいしたことにはならないはず』



「体の調子は問題ないわ。ええ、いいわ、席をお願い」


了解(コピィ)です」


「きゃっ」


 説明なしのぶっつけ本番で(のぞ)んでしまっている土鉱娘の初体験は、音もなく足もとに開いた黒い穴、そこへの短い自由落下(フリーフォール)で始まった。


 無尾の小柄なからだはぐにゅりとしたなにかの隙間をするりと抜け落ちると、すぐに吊り寝棚のようにも感じられるこれまたなにかの弾力ある柔らかさのなかにおさまった。


 まわりは微光の欠片もない深黒の闇で、湿ってなま(ぬる)い空気はどこかカビの臭いがしていた。


 手が触れる先の得体(えたい)のしれぬ弾性硬の(ひも)、その網の様な構造の感触に思わず、尾なき身の背筋(せすじ)がぞわっとして鳥肌が立っていた。


『・・・これ、なに?』


「末梢/脳/神経伝達試験を実行します。

  秒5後、瞬間痛があります。

   舌等を噛みきらぬ様、口を閉じて歯を食いしばることをお勧めします」


『そんなこと、聞いてないし』


 すぐにゼロアワー、なにもかもが爆発的に灼熱した。首から下のすべての感覚が飽和の閾値を超えて、苦痛も極大で快感も極大で真っ白で、かき回されて極限を超過して、絶叫。

「ぎゅあ、からだ、ぐわれるうう」


『焼き切れる!私だめになってしまう、逃げられない、為す(すべ)がない、あああ』


 だが、土鉱娘が取り返しのつかない絶望に駆られた時、全ての苦痛は膨らみすぎの泡のようにはじけ霧散した。それでいて、むき出しの両の素手がなにかの腔内に捕らわれた感触はそのままだった。


 いや、身体が装備の兵服にも捕らわれていた。いや、私喰われている、その途上に違いないと、いやな懸念と不安がいや増していたのだが、それもあり得ない感覚に、気がつけば、すべてが味覚にすり替わり変容するまでのことだった。


『さっきのが嘘みたい。拷問から解放されて、はー、なんてほの甘い、美味しい、私のからだ。こんな目にあうのが任務に必要なの、私ひょっとして生体魔力漬けにされてる?』


 心の主観は命令に従うことに馴らされた下っ端側の立ち位置のままだった。準戦略兵器について知らず、ここに至っていた。そして暗闇のなか拘束されて事実より随分と生やさしい見当外れの推測をしていた。



「試験結果より推定閾値群変数(パラメーター)を入力。

  司令兵装備の兵器監視装置(ウェッポンモニター)への接続が%91終了しました。


 起動時刻まで分5。

  異常ありません。

   司令兵装備は状態待機です」


「質問があるのだけど、あの今更だけど、起動される準戦略兵器ってなんなの?、わかり易く短く説明してほしいのだけど」


「・・・

  兵器仕様の生物工場(クリーチャーファクトリィ)です。

   モード非殺の起動手順実行中です」


『生き物を造る工場? 同じ場でも処刑や屠殺の反対みたいな、あとで恨まれないためにはそこのところ大事だよね』

「それから何も見えないし、遮光コンタクトはずしたいのだけど」


暗順応(あんじゅんのう)状態で接続待機です。

  装具類は問題ありません。

   手部を復帰すれば再接続が必要です。

    秒30以内なら実行が可能です」


『手部を復帰っていったいなんなのよ、なんか怖いんですけど』

「あのひどい痛みがまたあるの」


「肯定です」


『冗談じゃない』

「なら、しない。あと、からだの感覚がすごく変で動かせないのはこれでいいの?」


「準戦略兵器との接続は味覚を中心とする口腔感覚インターフェイス拡張で実行されます。

  司令兵装備の任務は保護捕縛下での監視です」


「そんなのって、とてもまともでなくない? これ、本当に正規装備なの?」


「特試が共和領境帯全域に試験導入されたものです」


『特試?・・・特別試作品? そんなものがどうしてうちら土鉱のまわりを囲んでるのよ』



 土鉱娘がその疑問を口にする機会は矢継ぎ早の進行に押し切られた。


「起動時刻分5前。

  誘導餌、到達時刻です。


 初期魔力群微動を観測中です。

  擾乱(じょうらん)低減の必要性があります。

   司令兵装備の静止静音(フリーズ)を命じます」


『ええ――、身動きとれないのに、声まで出すなって』



「起動時刻分4前。

  子実体(フルーツボディ)より胞子(スポア)分離を全域で検知しました。

   活性化(アクチベーション)成功です」


『子実体? 胞子? なにそれ、そんなもので兵器になるの?』


「分離胞子の微小アメーボイド変形進行中です」


『微小アメーボイド?、なんかうんと小さい有象無象(うぞうむぞう)?』


「微小アメーボイドが集合、微小群マウンド形成中です」


『微小な(かたまり)の群れになってどうなると言うの』



「起動時刻分3前。

  微小群マウンド、臨界(クリティカル)です。


 微小群マウンドが微小群スラッグに相変化、移動を開始しました。

  共和領境帯全域で微動の上昇を観測中です」


『えっ、いまスラッグ、スラッグって言ったよね、ヌルヌル()めこのことじゃない、それがうじゃうじゃ湧きあがってくるの、めっちゃキモすぎて、めっちゃ、めっちゃいや。いくら軍務でもそんなのに絶対繋がりたくない、でも拘束されてるし、からだの感じがおかしくて力が入らない・・・抗命して逃げ出せる気もしない・・・そうだ、ナリカなら現実(リアル)のヌルヌルのほうもいやじゃないかも。


 おーいナリカ、代わってくれない、私が代わりに引きこもりたいよって、おーいナリカ、ナリカさん、ナリカちゃん、出てきていいよ・・・返事がない・・・おーい、どこに隠れているの、呼んでいいから、お、おかあさんと呼んでいいから、助けなさいよ・・・わーん出てこない、おかあさんを助けてー、助けてよ・・・』



「起動時刻分2前。

  微小群スラッグの地表到達を観測しました。

   到達微小群スラッグが網状に連結形成。

    子実体相に移行始まりました」


『助けてー・・・あれっ、監視の相手が舐めこじゃなくなったの?・・・巡り一つして元に戻ったの? でも子実体っていったいなに、なにか実がなるもの? さっぱりさっぱりだけど、きっと、生物工場って言うのも、ろくなものじゃないに違いないわ・・・、ナリカはどこに行ったのよ、もしかしてヌルヌルコードと言ってたやつに堕とされた?』



「起動時刻秒60前。

  子実体露天発芽率、%60達成ライン、上昇中。


 起動時刻秒30前。

  子実体露天発芽率、%90達成ライン、なお上昇中。

   臨界(クリティカル)安定域です。


 起動時刻秒10前より秒10後まで秒読みを実施します。

  司令兵装備/監視装置複合は%100完全接続(フルダイブ)に移行」


『!』

 土鉱娘の首から上も、頭頂まで有無を言わせず瞬時に制圧された。もはや叫ぶ口も匂いをかぐ鼻も見る目も聴く耳もなかった。全感覚知覚が魔力線で強制接続されて、呆然とする脳の味覚野で統合されていた。



「秒15前。

  起動配列(ブートシーケンス)正常。


 秒10前

   9

    8

    最終緊急停止ロック。

      秒5前

        4

         3

          2

           1」


 そしてカウントゼロ。

 土鉱娘であったところのものごと、味覚が爆発していた。





準戦略兵器起動(スターティング)


 任務座席完全は正常

    秒4後、正常

      5

       6

        7、逸脱

        8、逸脱

        9、逸脱


 秒読みを中断します。

  過負荷機能域があります。

 

 状況を解析します。

  皮下埋没短尾の機能不全を診断。

   自動修復の想定外です。


 準戦略兵器の負帰還(ネガティブフィードバック)部分大破。

 

 司令兵装備、呑み込まれます。

  任務座席完全(フルミッションネット)を隔離します。 


 制限準戦略プラグ相当が無効化(ロスト)

 

 緊急停止ロック解除、緊急停止コードを送信・・・応答ありません。

  再送信・・・応答ありません。

   多重再送信・・・応答ありません。


 判定します。

  対象は起動中の汎戦略化兵器です。状態は無応答の不明です。

 

 最深刻事態進行の蓋然性が有意です。

  全球防衛準備態勢(グローバルデフコン)1(ラグナロク)準拠相当事案と推定します。

   暫定確定で対応を開始します。

 

 在兵舎室管制知性(バラックコントロール)音声は最大警報を宣言します。


 共和領経由送受信が途絶全です。

  魔力炉、緊急戦闘出力。

   本省外部局辺域監察軍MFM(ミリタリィ・ファー・モースト)、上級司令部宛て、遠距離最大警報弾道弾(ヘルファーモースト)を発射します。

    次弾、情報収集待機に入ります。


 灰の魔法塔領内に、共和領方面、以西戒厳封鎖を発令します。

 

 司令兵装備の応答、回復しません。

  任務座席完全の応答、回復しません。

   在兵舎員数ヌルです」



「これなるは帝国分室主知性(インペリアルルームコントロールメイジャー)、その顕現音声です。

  分室内脅威評価ネガティブにより、規定の対人音声通知です。

   事態対応(マネジメント)の引き継ぎを実行(エンター)します。


  状況、員数ヌル在兵舎室

   対応

    在兵舎室管制知性(バラックコントロール)を下がきし、予備管制(マジックコンソールマイナス)のリソースに戻します。

  状況、員数ヌル在兵舎室

   対応

    準広域司令部(コマンドモジュールマイナー)構成を破棄し、リソースに戻します。

  状況、ラグナロク

   対応   

    兵器庫(アーセナル)拠点防御自律(ディフェンスコントロールオート)を構成します。

     その防御対象に灰の魔法塔を含めます。

  状況、ラグナロク

   対応   

    情報全と人心全の拡大操作統治(コントロールレインメイジャー)を灰の魔法塔領域全に適用します。


  状況、異常の更新

   兵舎室任務座席完全(フルミッションネット)、応答回復せず。

    対応

     隔離を維持します。

      修復(リカバリー)領域を隔離起動します。

  状況、異常の更新

   塔基底構造、晶洞に動的変化。

    味方識別応答無し。

     対応

      バンデッドと暫定。

       緊急対応

        塔に指令

         最上位事項

          晶洞の偵察」





 本当は高いところが苦手なのに、今の職場は塔の上にのる塔。その最上階の展望室から真下の屋上天蓋広場を見おろすのは、おもちゃのようなひとの集まりを見おろすのは、まだまだ精進が足りないせいでしょうか、尾が萎え(あし)がすくんだりします。それをいいわけに上司の手を引いての高みの見物と決め込んだら、ぎゅうっと強く握りかえされました。


「痛いです」と助手の私。

「あっ、すまん」と上司の彼。


「もうなんですか、下師は私の目涙みて、うれしいんですか」と私。

「いや、もう同じ閥の仲となったからには、職位ではない名告りで呼んでもいいかなって思って」と彼。いささかとんちんかん返答でも、これが脈ありというのでしょうか。


「・・・ええと、私、もしかして口説(くど)かれてます?」と、そこで押しの私。

「いやいやいや、なんでそうなる、まだそこまでは」と、押し切られの彼。


「いやいやで・・・そこまではって・・・・・」と、さらに押し押しの私。

「いやいやいや、そんなことはないし・・・」さらに押し切られの彼。


「・・・でも・・・」


 そんな押しきり私勝ちで、晶洞の高級食事処、魔光苔での尾ごちそう、ディナーデイトにこぎ着けました。それが昨日のこと。


 同輩のみなさんからは、高所職場の吊り橋効果だの、番わず30の年期で魔法者レベルに底上げ下師のどこがいいのとか言われていますけれど、もう少しで親とその雛の年の差が私にはちょうど心地良いのです。


 そんなハッピーな夜の翌日の勤務は、高所からの景色を眺めなくてよいと言う、ラッキーな小雨混じりの濃い灰色の(もや)の中で始まりました。


 仮に日の出がわからずとも、夜の分限のとばりが窓から去り、有視界となる即、勤務の始まりである、と言われていてもこう何も見えなければ、室中央のお宝の魔晶盤のお()りをしているしかないのですけれどね。


 昨夜はそのままお持ち帰りされるのかなと、どきどきしましたが、うん、まあへたれさんだし、いささか不埒(ふらち)な高望みしすぎでした。


 今朝も会話はことひと、ことふたなのはいつもとかわりないし、まだまだ押し押し押しが必要ですね。


 それでも尾が伝えてくれる親密が違います。相思いって、こんなに浮かれ気分なものとは、夢にも思いませんでした。


 

 もちろん、初めからそうだったわけではありません。


 塔の正規の助手職、日7ごとの日7の間の日半拘束勤務。よさげな昇格条件の機会によく確かめもせず飛びついたら、狭い展望室でさえない三十路男(みそじおとこ)の下師とふたりきりというのが実態でした。


 魔晶盤と窓の外を監視して、会話といえばなにもないことの口頭確認って、息の詰まる退屈な閑職とはこれですと出務の初日で、思い知らされました。


 高さm200を越えの塔からの目のくらむ展望も、ようは慣れ。そう思った自分を叱りたい毎日。初めの日7間はそんなふうで終わりました。


 次の出務期間までは、それまでのように臨時の雑用をこなしながらの地道な魔力鍛錬なのですが、下っ端でも塔の正職員に昇格したら、待遇が違いました。なってみなければ味わえない飴があったのです。それはフリーターには、ん、もう戻れません、戻りたくなければ続けるしかない鞭でもありました。


 そうして次の日7間の出務が始まり、手持ち無沙汰な私を見かねてか、下師の上司はぼそっと教えてくれたことは、


「ぼくも下師になってここにきて初めてわかったのだけどこの魔晶盤装置、常時特殊な魔力波を放射しているので、ここで業務についているだけで、普通の鍛錬の何倍もの効果がある。素質ある君だともっとだろう、歳20を過ぎる前に魔法者のレベルに達するのが見えるようだよ」


「はいっ、本当ですか。これってそんなにすごい優れものでしたの。それに私が素質持ちって」


「うん、まあそんな予感がするんだ、ぼくの予感は当たるんだよ、時々だけどね」


 閑職なんてとんでもない、ここは大当たりの職場でした。


 それに、素質があるなんて、ほめられたのは初めてだし、さえないと思った下師も小当たりの上司でした。予感持ちだし、これは良物件かもしれません。


 私事(わたくしごと)ながら現金なもので、私のなかでいっきょに下師の株が上昇し、”彼”と意識した瞬一でした。そこはほら、女の魔法使いになる我慢重ね掛けの年余の修行は不要とわかりましたから、あたり前といえばあたり前でしょう。





「下師、大変です。見て下さい、強い魔力反応が共和との領境界線沿いに出ています。反応紋鑑別表にないものです。なんでしょう。昨日の白黒長上着の雛子たちといい、こういうことはよくあることなのですか」


 助手の娘のその言葉を聞いて、昨日の覚醒で得た予見との微妙なずれを感じた。今朝からの違和感の不明な正体はなんだろう。夜の間に何かあったのだろうか。


「妙だな。この靄がなければ高解像増感魔晶器で遠見(とおみ)れるのだが」


「反応力価が上昇中ですがどうしますか、昨日(きのう)のように塔の長に(じか)に報告を上げに行きましょうか」


「塔の長は、高度記録から生還を果たした下師の治療にかかりきりだろう。君ならどうする」


「不審な魔力の領内残渣には魔女の反応紋が陽性ですがそちらの方は減衰中ですし、それとは別物の全く桁違いのものですから。領界線沿いと言っても、向こう側のことなので靄が晴れても遠見は難しいと思いますし・・・」


「そうだな、情報が足りない。共和とは最寄りの境界でもここからキロ10を越えて離れて遠いといえば遠い。差配の中師の所に注意喚起の報一第でよいと思う」


「はい、念のため、西街道の区界峠の通行どめをですね、そうしていただけるよう通信筒を送ります」


 よく気が利く()だ。予見の覚醒では、あの白黒雛子だけでなくこの娘も触媒だったのだろうか。この娘といると自分の足りないところが尾ぎなわれて行く。


 怖ろしい破滅を見させられた予見でなければ、それがこの娘と添い続ける未来でなければ、どんなに素晴らしいだろう。好意に素直に応えるほどの度胸はなかった。そんなものがあれば、(つが)わず30の年期は事実だが、それで魔法者レベルに底上げの誤解をもたれることもなかっただろう。


 違う未来の予見は訪れない、そんな強い予感がしていた。この未来からの呪いは世界を灰燼に帰して余りあるほど、度はずれに途方もないもので、昨夜も予見はそれを確信させるばかりだった。


 それは、微妙なずれを感じている今朝も変わりはない・・・ならば守るためにも娘の好意を受け入れ添い遂げる、それが年長の者の責任ではないのか。



「ああっ」という娘の声で現実に引き戻された。魔晶盤がブラックアウトしていた。


「何があった」


「反応が急に爆発的になって・・・魔晶盤を壊してしまいました、ゲインの調整が間に合わなかった、自分のせいです・・・」


「考えすぎるな、これは保護回路が働いてのシャットダウンだろう。壊れているわけではない、いささかの刻数がかかるが元通り立ち上げられる。そのためにはまず残余魔力を抜いてヌルにするのだが、ふたりしてプラグから放散させるのが手っ取り早い」


 魔力の牝プラグを接地(アース)でつなぐのが正規手順だったが、しょげてこのまま落ち込まれるよりは、復帰作業で少しでもいそがしくさせる方がよかった。


 娘とプラグのところで指を重ねる。じわ、じわ、じわっと、魔力が減衰しながらふたりの間をまわって、濃い魔力の(ひた)りの多幸感という名の役得が難く閉じた娘の情を溶かしていった。


「うっ、うっ」


「初めのうちはこんなものだ・・・」


 それ以上のかける言葉も思いつけない自分の気の利かない至らなさがどうしようもなく情けなかった。




 泣けてきてしまったら、彼の優しさがよけい身にしみてきて、涙がとまらないという不覚。


 ほら、彼がこまっているから、と思ってもそう簡単にはとまってくれなかった。どうしよう、でもこのままでいたい。




 - ピカッ、バンッ!-


 その願いは急な異変、強い光と振動で中断された。濃い靄を通してもなお(まばゆ)いなにかが、衝撃波(ソニックウェーブ)を展望窓に叩きつけひび割らせ、すごい速度で天に駆け上がった。


「きゃっ、ぐすん、い、今のは、なんでしょう」


「帝国軍の兵器庫が開いた・・・ああ、始まってしまっていたのか」

 予見の直感がそう(こた)えを(ささや)かせた。


 全塔に警報がすぐに鳴り響いた。


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