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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
24/60

24 幼魔女rウの願い

魔法符合(マジックコード)の現実化には、単語(ワード)の数が増え構文(シンタックス)の規模が大きくなるほど、起動から発動するまでの過程に、魔法者の処理力を決めるクロックと並列スレッド数に応じた時間リソースを消費する。


 例えばキロバイト500程度のものになると通常の自分の場合およそ秒20。


 その符合を灰の魔法塔の貯鉱晶(サーバークリスタル)に封じておいて、そこから最短三つのノードを経由したここトMワを終末として魔力の供給を受けながら実行するとしたら、順次参照(インタプリタ)無し、括一処理(コンパイラ)でも完了するまで秒30。


 短い秒数の方がよいにきまっているが、自分程度とは隔絶した高階梯の部一の上師やトMワの魔女のような術式不要の化け物魔法者でもなければ、時間当たり使用可能な魔力量も、所持しておける符合の容量も制限は大きい。常用でされない規模大であるものは、まず発動に時間がかかる。


 自分例のおよそ秒10をようする魔力波通信(マジックテレコム)の速度改善を求めるのなら、ベストギガ1の現状からベストギガ10にアップグレードする費用はノードの交換を含め最小構成でおよそ万300からと言う。それに維持経費増し等が加算される。


 その設備投資を行っても秒20にどれだけ近づけるだろうか。実際は自分程度の処理力ではおそらく秒5も短縮できれば上等ではないのか。


 だがその短縮は決定的局面であろうがなかろうが常時であり累積され、正しく有用だ。絡繰(からく)りは運用の工夫次第で化け物達を出し抜ける手立てに通じる。魔光苔のその種の乾燥漿果のブースト効果も連用ははばかれるが・・・


・・・ブーストなのは軍属くずれの業者が出してきた見積もりもふっかけ算定だが、帝国目録、高ノイズ耐性の横流し品とあれば主計を説得する価値がある。


 割り2ほど値引かせれば通るだろう。そこからもう割り2ほど利益を後日裏バックさせて主計と折半しても、濡れ手に粟の甘い汁が残るのが前提の大盛りもいいところ。


 そういう阿吽(あうん)の呼吸で業者ともども勝ち勝ち山の関係は、塔としても困難な入手経路を確保できるのだから、まずかろうが危うかろうが蓮一托生、マッチポンプを続けるのは全く、全くのところやぶさかではないな』



 事後のけだるさのなか、魔力を纏わせた指先と尾で臥せる相手のうなじから背筋、尾にかけの優美な曲面を強く弱く弱く強く丹念にもみほぐす。快感覚に熟してしっとりと吸い付くような柔肌の匂い立つ豊かな温みの魔力波紋のお返しが心地良かった。その呼応を堪能しながら、魔法者の男は自分都合のとりとめない自動思考を移ろわせ続けていた。



『全くのところ、相性よい相手と尾をしっとり(もつ)れあわせて虚飾余地ない情報交換・・・交歓の通い夜を続けるのもやぶさかでないな。


 塔と共和の為政の中枢おもての意向はともかくとして、裏方には裏方の都合、思惑と言うものがある。


 抜き差しならぬではない、快楽でつみ深める信頼の関係・・・互いが是非(ぜひ)を越えて重二間諜であり、共に情報を制すれば、共に利害を調整できる。


 それをなあなあなただの癒着、忖度というなかれ、大きな争い事無くして持続して行くために、そのために密めやかな角一であらねばなかろう。


 土鉱の方とは、尾の信頼を交わしようがないのだけれども、尾がないことにも隠蔽には利がある。


 互いの内の不干渉を盾に詳細不明のままにしておける蛮族部隊の存在は、緊張の演出に利することが大きい。


 そして尾の情交の無い、他者への残虐を(いと)わない暴力装置を養うはそれのみにあらず・・・いざとなればだ。


 問題は、常の問題は、そのような不手際に至った場合の、灰の魔法塔領の夜の支配、夜の分限の立ち位置、出方が読めないこと。


 その端一でも推し量る意もあって、行き倒れの土鉱娘を供物のごとく差し出したのだが、『 1//001:伝手主:あとで話しがある 』のラインはすでに接続不安定。その擾乱の漸増は取り込まれる過程なのだろうか。仕込んだ隠し(バックドア)にも応答(ピング)が返ってこない。


 いつ全断されてもおかしくないし、逆にそこが脆弱性、侵入経路となってこちらが憑かれかねない。自分の攻勢火壁(ファイヤーウォール)は有効だろうか? それとも専守氷壁(イージスアイス)のモードに変えるべきか・・・


 いや、夜の分限は求めぬ限り傍観を貫いている。遠い、たぶん遠くから見ている。かたや帝国は常に覇権を求めている。遠くあらず、おのれの手の届くことを欲している。その帝国が夜の分限相手に不満を現すことなくして重二支配に甘んじている。


 夜の分限は帝国を凌駕する以上の力を有している、その可能性が高い。そして不明な理由で支配は灰の魔法塔領の夜にとどまっている。


 その認識で我らは同じ、帝国と夜の分限の支配の虚構が受容しうる微妙な限界を探りながら、すくみ三の敵対的関係を演じてここまでこれた。


 だが、あの予期せぬ牝牡(めすおす)が現れた。


 白黒の対の雛子が吹聴(ふいちょう)して廻った荒唐無稽(こうとうむけい)な世迷いの言、益体(やくたい)も無い天の厄災の戯言(たわごと)、遠く天宮の赤火星(あかひぼし)が超大龍のブレスをゆうにまさる大劫火を吐き世界が焼き滅ぼされる云々の伝聞が下々の間に広まっている。


 不安がかき立てられて、我らがほどよい緊張の状況がいささか不穏に、放置できない危険な方向に押しやられるかたちとなっている。


 共和領主館の暗部、上級の裏メイドの相方(あいかた)と今宵そのあたりの認識の共有を得た。


 土鉱巣(どこうそう)には、朝早いうちに調整に(おもむ)こう。


 尾のない相手だが自重を承知するよう、歩一ひいて遠くあるべき時の道理を説いて納得させよう。


 例の幼雛子への血縁とかいう執着、あれはどうにも理解しがたい。難儀なことにしか思えないが、我らとのかすがいにして、尾なきものの裏切りへの保険としても使える。


 土鉱の異民であろうが、遠神(とほかみ)恵賜(ゑみたま)(とも)の言の(バベル)(しもべ)であることに相違はない。大事な幼雛子に降りかかる脅威を訴えれば・・・』




 つるんだ男に逢瀬の夜のお付き合いで満たされてまどろむ。けだるいそれに身をゆだねていた裏メイドは”りりりりりりり”と鳴る通知板の呼び鈴の音で目覚めさせられた。


『非番なのに朝っぱらから何よ』と悪態をつきたくなる不機嫌は心の内にとどめた。


 そばには深夜の対話のお相手が寝ているし、非常時の呼び出しを受けるのも職務のうちだった。


「なにかあった?」


「起こしてしまったかしら、帝国のものらしい飛竜を追って渦蛇(かだ)が東の領空に侵入。その警報(アラートの連絡。kミエ様がご不在でタrア様自ら要撃(スクランブル)に出られるそうよ。私も裏方で事後処理の指揮を執らなければならないわ」


「塔領側の領空か・・・・実はこちらも先ほど塔との常時接続が断たれた」


「そんなこと・・・偶然かしらね・・・」


「なにか知っているところがあるのか」


「いいえ、kミエ様のよくある朝帰り、いつもの尾外泊だと思うけど」


「なにか予感がするのか」


「わからない、けど感よ」


「女の勘?」


「kミエ様直属の裏次席を務める経験感よ。この刻のトラブルはおおかたがkミエ様の絡みだし、kミエ様の絡みのトラブルならまずは絡みのお相手がいるわね、それは貴方もよおーく知ってるでしょ」


「ああ、でもお前の方が素で可愛いと思うぞ」


「ふん、手玉に取られて抜かれるくせに、どの口がそう言うのかしら」


「いやいや、ほんとうにお前の方が可愛い、ほんとうだぞ」


「どうかしら、あのかたにせまられたらまるっきり拒めず尾の先っぽまで固くするくせに」


「そういうくせはお互い様だろ」


「・・・そうね、領民もみなそう・・・いいわ、いっしょに朝食にする時間はないし、あとでわかったことを話しあいましょう」


「ああ今宵その機会をもとう。今日は予定を変えて急ぎ塔まで往復してくるよ」


「土鉱のほうはどうするの」


「今朝で情勢がまた動いた気がする。そちらから土鉱の相方に現状の報一の連絡を入れておいてくれると助かる。覗き見させているお気に入りがいれば申しつければよいと思うぞ」


「そう、そうね、気づかれるような熟に遠い娘がいたら、無尾相手との荒事に熟れさせておくのも良い罰かしら」




 塔の魔法者のひとり、絡繰りの使い手は領主館附属棟の裏メイドの私室を出ると心おもてを塔の密偵に戻した。


 早々に渦蛇の脅威ははらわれたようで街角の立ち食いはふつうに開いていて、そこに仕事場にむかう通行人を装い立ち寄った。


 早い安いが売りのこの街の定番、切り刻んだ正体不明な詰めものの塩湯で。それを薄めた酒精で喉の奥の空き腹に押し込みながら、無詠唱で通信障害の診断を繰り返した。


 果たしての結果は、灰の魔法塔の貯鉱晶(サーバークリスタル)に至るどの迂回経路も、領境界をまたぐ先の結節(ノード)から応答がなかった。


『それが塔領だけでなく、ここ共和の領もだと。二つの領界で通信遮断? 塔サーバーの障害ではないのか』


 夜の分限に差し出した土鉱娘との通信障害につづき、今朝のこれであった。


「まずい!」


『これは自分が夜の分限に憑かれてしまっているのか、そうなら、面倒なことになった。


 所持符合の汚染検査が必要だが、それをはじめると刻半は所持の魔法も使えないことはないが大きく制限を受ける。


 それで汚染を特定できて洗浄できたとしても、保安に万全を期すには、基本管理符合の削除と再インストールを実行し、その後元通りの運用環境を構築するにはさらにまる刻4かかる。


 特に基本管理の再起動までの間の刻一半は、生来の魔法だよりで階梯3すら遠く、昼夜の属性の日内差分も無視できない』


 それでも汚染検査をすぐさま始める以外の選択肢は考えられなかったた。


『・・・土鉱娘は確かに重傷だった。夜の分限にまかせるが不適切とは言えない状況だった。だが、夜の分限、夜のの支配の隔絶防壁に穴を穿つ功名心がなかったとは言えない。それに負けて無尾娘とのラインをそのままにしておいた結果がこれなら・・・


 自分程度を過信しすぎていた結果がこのざまか』



「お客さん、うちの味が気に入らないならよそに行ってくれ」


 男が渋い顔で自嘲していると太い女店主(おばちゃん)にじろりと睨まれた。


「すまん、そうではなくて、仕事のこと、そっちのことだ」


「そうかい、まぎらわしい、商売の邪魔はやめて・・・あらっ、kミエ様、いつもの朝帰りのkミエ様、今朝はお持ち帰り・・・帝国のお偉い将校様でもkミエ様にかかっちゃ、形無しだねえ」


 店主の言葉に視線の先へ振り返ると、領主館に向かう通りを行く馬竜の背で、身を持ってよく知る魔女が昇進して昨日塔に帰任したばかりの若い大尉を後ろから抱きしめその首元を・・・。


「あははは、いい若い男が気を失うほど精を抜かれてるよこれは」


『そんなはずはない、あんな若造(わかぞう)でも今や帝国軍飛竜騎手大尉、トMワの魔女三だろうが安易な手出しはしないはずだが・・・でも歩く奔放、kミエ殿が領手だとありうることなのか・・・


 あっ、今朝の警報、渦蛇と飛竜・・・では飛竜はどこだ』


 見上げれば青い空に朝日を浴びて空を悠然と旋回する翔6の鮮やかな姿があった。


『騎手の姿が見えないということは、馬竜の上で抱きつかれている男がそうか・・・帝国の軍用翔飛がた

かが渦蛇に襲われて、落とされた騎手が魔女の手に落ちたのだとしたならとんだ大失態だな・・・』



 愛乗りにもみえるふたりを店主と他の客と見送り、腹を満たしてトMワから出た頃には実行した汚染検査の結果が判明していた。


『暫定だがとりあえずは白。この通信障害は自分のみのものではないのかもしれない。夜の分限の絡みでないとしたら・・・帝国軍、その警戒態勢(デフコン)があがっているのか。


 だが、面目を保つために律一に情報封鎖するまでするか? 峠の休石を函体にした中継器を調べればわかることだろうが』


 この時期にしては異例に濃い朝靄の残りがゆるゆると流れ朝日を浴びてむら消えする中、峠の登り道を急いだ。だがすぐにトMワの領主館に舞い戻ることになる。行く手を阻むものに遭遇するやいなや、例え息が切れようと手持ちの魔力のリソースをつぎ込んで全力走で逃げだすしかなかったのだから。




 物理的にも本気の封鎖がすでにはじまっていた。


 灰の魔法塔領に向かう峠道の最高地点、領境界におかれた休石にはたどり着きようがなくなっていた。


 そのかなり手前で、青をのぞくさまざまの色あいの地衣の類が土、岩の硬さの違いをとわず地下よ

り滲み出て斑を咲かし、見る間に融合しあって魔力喰らいの菌糸の巨大な群落の丘へと成長を続け

ていた。


 すべてを飲み込む菌糸の前線(フロントライン)はじわりじわりと下っていたが、その背後の盛り上がりの速さの方がまさり、あちこちでくずれ滑りに追い越されていた。


 埋められた渓谷ではひどくかび臭く胞子の塵が漂い、粘菌の多核軟性ゴーレムが、男が知識では帝国の準戦略級兵器スライムと知る群体が、兵器ゾルが、生まれ出ようとその芽を無数に吹いていた。


 ま黄色いねじくれて血筋まじりの脂肪の肉面の露出が、半ば透明で半ば濁る(ねば)い塊の中で(うごめ)いていた。それがなにかと目を凝らせばすでに囚われの人の体だった。


 無知が無謀な接触か愚かにも強行突破をはからせたのだろう、その報いが万人が目ををそむけるに違いない悲惨を極めたあがきだった。


 泣き、叫ぶ、恐慌の悲鳴をあげるすべも許されず、衣服ばかりか毛も皮膚も頭の先から溶かされ尾まで剥かれ、どんな悪夢よりよりひどい、よだつ肌身も毛すらない辱め受けていた。非人道の檻に閉じ込められて死から遠くあることのみを許されていた。


『なんたること、これが帝国式最終処分、捕縛地獄なのか。まさか不体裁な不祥事ひとつを封じるために、共和領ごと封じるつもりか、もしまさかそうなら、逃れられないことに自分と領民の別もない』


 巨大な貪食暴威(メガ・イーター)になすすべがなかった。(きびす)をかえすしかなかった。


 そうして菌糸の悪夢の前を離れたのだが、地獄に背をむけて初めて矜恃(きょうじ)ではなくただ圧倒され不感になっていただけと思い知らされた。


 にわかに上腹に疝痛が刺しこみ吐き気と震えに襲われた。振り返ることなく、歩みはすぐに小走りに、そして全力で駆けて逃げ出していた。限られた魔力のリソースにも手をつけて加速することに全く躊躇(ためらい)いはなかった。


 ひたすら向かう先はトMワ領主館以外には考えられなかった。

『連れ込まれた大尉なら手立てがあるはずだ・・・』





 大尉が案内を受け招かれた屋敷の中には魔が伏していた。


「あのね、わたしね、rウというの、おにいしゃんはNNsのとのしゃまなのでしゅか?」


「えっ?何をいっているんだ」


 大尉がふと気がつけば白い小さなまるい両膝を抱いたミニスカメイド服姿のひときわ幼い雛子がそばにじゃがんで見上げていた。



『いったいいつのまにそこにいる。自分はなんの相手をしているのだ。ここの気配がおかしい、尋常ではない魔力の圧を感じる、この雛子もただの牝雛(めひな)であるはずがない、妖魔の仮姿か』



「rウはとのしゃまのまじょしゃまなの、いつでもおしょばでおあいてしていたいの」


「・・・そのとのしゃまというのは本官のことを言っているのか」


「そうでしゅ、おにいしゃんがおぼえてないだけでしゅ。rウはおにいしゃんとむかしであえて、いままたであえて、rウしゅごいしゃあわせなのでしゅ。おにいしゃんがとのしゃまならrウになにをしてくれてもいいの」


「・・・たしかにNNsは本官の真名に通じるが・・・」


「とうぜんでしゅ、りんねのつながりのあかしでしゅ。わたしのなまえrウもしょうなの。ねえ、おにいしゃん、おひざにのしぇてもらってもいいでしゅか」


 大尉は、この上もない純真な無垢な笑みをうかべた幼雛に、脚にすりよられ見上げられたが、突拍子もない言い分はともかくとしても、見ず知らずの牝雛あるし、いくら幼気(いたいけ)にみえようが魔女を自称するものにそれを許す危険を冒す気にはならなかった。


「ひざは困るが、となりにすわるくらいならかまわんぞ」


「はい、しょうするの」


「・・・rウといったか」


「はいrウのとのしゃま」


「おまえ、魔女と言ったが、妖魔か、いやまさかと思うが淫魔ではないのか」


「とのしゃまのいんまならなりたいものでしゅ」


「ならんでいいから、人外になるのはお勧めできないぞ」


「いってみただけでしゅ、ほんしんでしゅ」


「それは年十は早いとおもうぞ。ところで責任者に取り次いでもらいたいのだが」


「えへへ、それならここにいるまじょさまがそうでしゅよ」

 小さな手が小さな胸をとととと指さした。


「えっ、rウが責任者、どういうことだ」


「りょうしゅのタrアしゃま、りょうしゅのてのkミエしゃま、そしてみんなのあいっ、あいっ、あいどるのrウしゃまで、rウはきょうわのじょれつしゃんばんなの、だてにまじょさましてますじゃないもん」


「・・・・・・・」


「こひなのたわごとじゃないもん」



『いや、この魔力圧の中心はこの牝雛・・・そうかありうるけどな、ふつう雛子に大人の交渉ごとをまかせるか』



「rウのいうことをしんじてましぇんていうかおしてるでしゅ」


「そういうわけではないが・・・」


「なら、しょーこをみせるです、すこしrウのまほうをとかすので、まわりをよくみるがいいのでしゅ」


「これは!」


「しんぼるまーくでうめた、かそうげんじつのしんじつにようこそ」


「いつのまにし掛けた」


「えへへ、じょうずにできてるってかんしんしてましゅね」


「ああ、小さな魔女殿を見くびっていたようだ、共和領のナンバー3に失礼なことをしたか」


「もっとほめてくれていいでしゅよ。とのしゃまは、もやのとうげで、わるい、かだに、うしろからふいにうたれてげきついされたのでしゅ」


「そんな覚えはないが・・・」


「rウがそのとおくから、かそうのきおくでいまについだのでしゅ」


「では飛んできたのではないと、それは嘘の記憶だと。まいったなあ」


「でも、うたれるまでとのしゃまをのせていたりゅうは、ぶじにひとりでここのにわにおりてましゅよ、げんじつで」


「なら本官も現実でもトMワの領主館にいるということか。そうだとしてここまで運んでくれたのは」


「kミエしゃまでしゅ。けさのkミエしゃまのおもちかえりがとのしゃまだったなんて、rウ、ほんとにほんとにおどろきでした」



『たしかに、この小さな幼い牝雛はたいした魔法者だ、その歳でここまで構築してみせる早熟の超天才がこんな辺境領に潜んでいようとは。だがなぜわざわざ仮想現実つくった。それにこれだけの技量があればこのまま現実に溶け込むように繋いでなにもなかったことにすることも可能だろうに、なぜ曝露する』



「ああ、そう言うことなら領主殿には感謝しよう、軍から感状を出すよう、上にかけあおう」


「あう、しょこまでいたしていただかなくても・・・」


「・・・どうやらなにかまだ話していない、事情がありそうだな、魔女殿、いや小さき賢女殿」



 少しのあいだ、沈黙があった、だが、ふいに大尉のひざの上にまたがってきた。小さなからだを大尉の胸にあずけ、小さな尻尾も大尉のに巻き付いていた。


「あのね、あのね、おねがいなの」


「おい、そこは許した覚えはないぞ」


「ねえ、とのしゃま。 rウたちはきゅうちにおちいった、なのでしゅ、たしゅけてーたしゅけてー、なのでしゅ」



 rウのお願いに、秘める願いが増していた。

 奇跡の果てに、さらなる満願があった。

 そこにいたる道はより険しく、そしてひどくかぼそかった。


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