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遠神の帝国Ⅰ  作者: ペコ
23/60

23 魔女たちの調略

 追っ手になってみれば、密雲に大化けした(もや)はどうにも邪魔だった。


 視界が狭くてその中に先行するものを捕らえることがかなわない、それだけでなく、路の先の状況を見通せないことが、左右に振れる急な勾配を下る、濡れて滑りやすい山路の険呑をきわ出させていた。


『きつい曲がり、そのたびさらにひどく速度を落とさなきゃならない。急ぐのに、もどかしい。だけど竜脚で下り道を、速や駆けを続けるのも』


 腰が浮きそうになる下からの荒々しい突き上げでkミエは翻弄されていた。ともに視野が限られた細雨混じりの中での機動でも、滑らかな翔6の羽ばたきで宙を先行する飛竜の速度にかなうべくもなかった。


『あっ、あん、これ以上、急ぐのは危険が近すぎる。集中をきらせば崖にぶつかるのも崖下へ宙に踏み外すのもあっという間のこと、それが遠くない。あせらない、あせらないで、落ち着いて私』


 そして舌を噛まないように今ひとつしっかり歯をかみしめて『これじゃ、何かあっても詠唱どころじゃないわ』と思ったのが、フラグを起こしたかたちとなってしまった。



 にわかに異音。後ろ頭上方向から異音。聞き間違えようのない異様な風の轟音、その急迫。


 小型の陸竜、馬竜の上のkミエはそれを耳にするなり振り返るより先、すぐさま馬竜を止めて伏せさせた。


 騎乗したまま身を縮めて見上げる中、ぶおんぶおんと回旋する、今は濃い灰色、靄を煮詰めて濃くしたような色合いの図太い巻物の長いうねりが後ろより視界のうちに現れて、すぐ上を下り道の先の方へ通り過ぎて行った。


口吻(こうふん)のごうという開放が聞こえてこなくてじっとしていれば見過ごされるはずとわかってはいても、こうたくましいのに近いとどきどきだわね、我マンするしかない、今のあいつが狙う獲物は私じゃない・・・


 飛竜に追いついて食いついてくれれば助かるというものだわ、翔6の大物が相手ならさぞかし喰らいでがあることでしょう。


 悪いけど、細事の口封じとか大事の口封じとかね、いろいろとこちらは助かるからね、密雲で公務妨害の責に、共和と土鉱と塔のあれとかこれとかあるからね』


 心の表ではそう思っていた。


 それでも、どこか馴染みの風貌にそそられる脚の将校魔法者のお手並みに期待するところがあったのだろう、入り組んだ崖を回り込んだすぐ先の(わだち)に倒れ伏す姿が現れたとき、おもわず呟きがでてしまって危うく舌を噛むところだった。


「ちっ! やられてしまうとは情けない」


 そう言いつつもすぐさま急制動かけ、つんのめって前に投げ出されそうになるのをかろうじて耐えに耐えて、それでなんとか間に合って馬竜で無防備な骨肉を踏みつぶすにいやな感触の寸前に止まれた。


『・・・飛翔軍衣の、暗い青地に光る魔銀線の(きら)めきがゆっくりと波うっている、ということは意識が狩られていても生きているということだわ、はー、危なかった、帝国将校を殺めてしまうところだった。その方がよほどぞっとする、心の臓にもっと悪いわ』



 あたりに争う気配も争った形跡もなかった。止まってみれば静かなもので、飛竜は少なくともここでは逃げおおせて、それを追って遠ざかったのだろう、極東以遠の空に巣くう魔のひとつ、荒天の渦蛇(かだ)の回旋音も全く聞こえなかった。


 馬竜の背から見おろすに、うつ伏せの背の中ほどに軍衣が焼け焦げたところがあった。そこにちかちかと群青を(まと)う銀色の光が集束してちらついていた。


『後ろから雷火(らいか)の直撃でやられたようね。それでもさすがに帝国軍装だわ、これ、自己修復の魔光だよね。転落もしたんだよね、なんで生きていられるの、死即(しそく)からも遠く守られてるの。


 ひょっとして、いえ、たぶんこのまま放っていてもそのうち全回復するのじゃないかしら・・・でもね、せっかくいい若い男が落ちているのに拾わないなんてもったいない。こんな据え膳の機会はそうあることではないわ。


 天気の件はしらばっくれて救助の恩を売れば共和の益にもなるし。よし、いいわ、お望みのトMワに連れて戻りましょう』


 kミエはそう決めると馬竜を伏せさせ、ぬかるむ路上に降りた。


 放りあげて楽に載せるための重量軽減の瞬一魔法を試してはじかれなかったことをよいことに、『目を覚ますのは、何かと段取りをすませてからがいいし、これサービスね』と、お付き合いのお相手に受けの良い安寧の夢の魔法も重ねた。


 上体を抱き起こすと、顔についた泥を少しでも落とそうと指でぬぐった。


「うーん、やっぱりどこかであった事があるのかしら、尾がきゅんきゅんする、体をあわせたことがあるのかしら」

 そう独り言が自然に口から漏れていた。



 馬竜の頸にもたれかかるように前に載せた。重く湿る靄の先陣はじきにぬけられて視界が晴れあがった。


 急ぐ必要がなくなったので安全で楽な速さで下り、kミエも、薄着が濡れて透ける自分の胸を隠せるからねと体を押し付け、男の背にもたれかかっていた。


『ふうぅ、不思議、こうしているとなんか懐かしい気がする。泥まみれだし、私も泥まみれになったし、館にもどったらお風呂が必要ね。あんたはついてきてもいいけど、邪魔したら許さないからね』


 天魔の急襲を振り切れて舞い戻ってきた飛竜が、頭上で円を描いて行き来するお供だった。


『タrアには、そうね、男のひとりくらい拾ってくるなんて普通でしょう、魔女ならそんなものでしょうと言えばいいわ。おませのかみかみrウには、年十もたたないうちに季節のたよりが来るようになるから、そうなればわかるからと・・・』


 言い訳じみたことをあれこれ考えるのも楽しかった。kミエは知らず幸福のうちにいた。




「kミエ、あなたってねえ」


「そうでしゅ」


「あなたの雲のせいで私の大切な領民に犠牲者がでたらどう落とし前つけてくれるの、朝ぱらっから要撃に出させられて渦蛇を遠く追いはらわなきゃならないなんて、あなたのせいで私の貴重で平和な朝の時間まで遠くなったわ」


「そうでしゅ、そうでしゅ、rウのあしゃごはんも、とおいでしゅ、まだたべれてないでしゅ」


「ちょっと聞いてるのかな」



「・・・私、若い魔女だし、若い魔女ならいい男の落ちものひとりくらい拾いぐい・・・」



「はあ、なにを言ってるの、庭に降りた飛竜は帝国の巡航翔6よ。このものの帝国軍装の記章は大尉魔法者で、それで塔に昨日出戻りしたと情報がきた武官の公務と知れるし、朝でも市中に目撃者はいるわよ」


「タrアしゃま、だめでしゅ、kミエしゃまにはんしょくスイッチはいってましゅよ、おとこのももをなでなで、しっぽのさきまで、ももいろきぶんになってましゅ」


「またあ、もう、しょうがない。雲の出所はしらばっくれて、負傷した武官を調査中に偶然見つけて救助した、というように持って行くしかないわね。それでこのものをこれからどうするつもりなのkミエ」



「・・・泥だらけだし、まずはいっしょのお風呂で・・・」



「はあ、夢に落とした大の男をどうやって入れるというのよ」


「そこは魔法で!頑張ります!」


「即答、即答なの、rウのいうとおりだわ。これは発一、やらせてすっきり満たされないとだめなのかしら」


「でも、タrアしゃま。わるいこのkミエしゃまにはばつがいるのでしゅ。rウにかんがえがありましゅ。おにいしゃんは」


「?オニイシャン??」


「いえええ、ど、どろだらけ、どろだらけしゃんはrウがメイドの・・・お、おねえしゃんたちにたすけてもらってキレイさんにしましゅ。どろだらけしゃんをあぶないめにあわせたkミエしゃまはおひとりできれいになればいいのでしゅ」


「・・・たしかに、今のkミエにはそれが番一の罰かしら」


「ええ、そんな殺生な、生殺し、非道、横暴」


「だまらっしゃい、ただでさえ、ややこしいとりこんだ状況をかき回してくれちゃって、あなたはじぶんの桃色しっぽでじぶんの〇〇〇をかき回していればいいの」


「そんなあ」


「いいことrウ。あなたも魔女、魔女っこだけどkミエみたいになっちゃいやだからね。牡の雛子が欲しくなって捕獲するなら人目につかないようにすることね、気失(きしつ)の男と馬竜にふたりのりなんて、最高のゴシップごち、なんだからね」


「タrアしゃま、rウはおとこのこなんてぜんぜんでしゅ、きょうみないでしゅ」


 首をかしげてそう応えたrウだったが、目線は平たい寝台車(ストレッチャー)に仮置かれて横たわる男の太腿(ふともも)を撫でまわすkミエの指の行く先に向いていた、しっかりと。




 なんとなく「おにいしゃん」と口に出てしまったことが引き金だった。


 rウはにわかに自分のからだが、言葉の滑舌すらままならない幼すぎるからだが、すごく恨めしくなった。


『・・・あれ、なんだろう、なにを感じているの、私』


 タrアに応えるかみかみの言葉とは解離して、(せき)が切れたように進むうちなる思考。


『・・・・・・私、kミエがうらやましい・・・ えっどういうこと?


・・・前も幼くてお相手できなかったのに、今はさらにとてつもなく遠いよ・・・えっどういうこと?

・・・私、泥だらけのこの人を知っているの??見ず知らずで名前も知らないのに・・・えっ!・・・名前を知らない、名前も知らない名無しも同然の・・・・・・NNs・・・あれっ、まさか、まさかなの・・・もしそうなら、もしそうなら・・・それがこのからだの尾の感応も告げる現実なら、まさか、嘘でなくまさか会えてる。この世界に生まれても、まさか会えて、出会えているんだ。


 例えもしそっくりさんでもいい、今度こそ大人になるまで離れない、大人になってからも、離れない、もう離れないよ、絶対、離れるのはいや、遠くあるのはいや、もう会えない、もう、にどと会えはしないとあんなにも辛い寂しい、とても寂しかったあきらめはもう、もういや、いやなんだから』


 rウの自分だけの秘密、卵から(かえ)りながらにして魔女である根源、誰にも言うのが禁忌、持ち越した前世の記憶が、rウの気持ちをまるごとわしづかみ放さなかった。


 今はお相手ができなくても、早くお相手ができるようになってひとつになりたい、こんどこそお情けを頂戴したい、それまでずっとずっとおそばで上目遣いではにかんで(たお)やかでいて、ずっとずっと番一の可愛い雛子でいようと心底から決めた。


『でもどうやって雛子のあいだ待ってもらおう。そのための私のかわり、私がいやでない私の代わりは』


 そのあてについては考えるまでもなかった。




 ”オニイシャン”と言った。すぐに言いなおしたけど、”オネエシャン”とも、こちらはたぶん意図して言った。


 それらの親しみ名は家族というものの中で育てられる無尾の異民の間でもない限り、普通使われない、尾による個の連帯の社会では馴染みの薄い呼び仮名。


 rウの出自の秘密の半分は土鉱。そのことを思いおこさせる言葉だわ。rウがもうひとりの親のことを知っていて、それを隠そうと気をつかわせたのかしら。


 言葉はかみかみでも幼さを超越した知性。それを、孵りながらにして優れた魔法の素養で人の心を掌握し、まわりに不審に思わせない賢さまであった。私の大切な卵、魔女で良しと我がままに育ててきたけれど。


 大尉を見つめるrウ、そのなんて潤んだ熱のあるまなざし。ああrウ、初めて見るそれはなんなの。これほどあからさまで隠そうともしないから大尉を拾ってきた張本人、桃色認知症のkミエも気がついているようだわ。不感尾の私でも想像はつくけどrウ、貴方の尾も先まで桃色の慕情に染まっているのではないの。


 かまをかけたら、牡の雛子には興味ないとストレートな返事がきた。


 時一の大人の男への憧れかしら、それならよいのだけれど、いくら早熟な心でいちずな思いをつのらせても、幼いあなたではkミエとはちがってお相手はしようがないのよ。


 多情な大人の魔女でも道に落ちてた男を拾ったり、それをお持ち帰りなんてそうあることではないはずだけど、kミエの性癖なら不思議でも何でもない、私より歳上のkミエなら、私が納得がいくまいが、誰を相手にはしたない行為をしようが、それを仕打ちで返されようが自業の責任だわ。


 でもkミエに夢魔法をかけられていながら、それでも私の掌中の大切な宝石、幼いrウにまで粉をかけるなんて、なんて男なの。


 許せない気がする・・・もし私みたいに・・・rウがお手つきにされて(あざむ)かれたら私は絶対に許せない、きっとぶすり、ぶすりと背から刺してやろう・・・護身の魔刀を握りしめ何度もえいっえいっと刺したら、きっと素晴らしく、素晴らしく気持ちも晴れて、きっと・・・・・・


・・・だめっ、なんて気狂いな白昼夢。とんでもない、この男は帝国軍大尉魔法者。そんな男を相手に反逆の真似事がとおるはずがない。帝国軍は私のかけがえのない領民までひどく滅するだろう。


 ならばrウに何をされようが私は(あらが)いようがないのか。やはり、kミエに望むがままにまかせ、それを保険とするしかないのか。でも保険がそれで足りなければどうする。


・・・私もお相手を・・・・ああ、なんで私にまでスイッチがはいりそうになっているというの。


 なんなのこの男は。ほんとうに危険だわ。いっそ、私が男の精を尽きるまで(たぎ)らせて手折ろうか・・・?うっ、うう、これ、これは罪悪感!


 赤黒く・・・赤黒く、淫欲が、暗い罪悪感にまみれている。なぜこの男に罪悪感まで、rウでもkミエでもないのにましてや私の領民ですらないのに。




 kミエは驚愕していた。rウがおかしなことを言い出したと思ったら、タrアの様子もおかしくなった。ありえざることだわ。rウにタrアの尾が、幼雛子の尾に不感の冷女の尾が、事もあろうにその気の桃色の波動をビンビンと発していた。


 なんでふたりして私の拾いものに発情しているの。ありえざる、ありえないことだわ。私ならともかく。


 だからその疑問が自然に湧いて出た。


「ねえ、タrア。ええと、これ劣情の魔法、もしかして劣情系のとても強い魔法が働いているのでは」


「ど、どうしてそう思うの」


「・・・しょうがいから告るけど、わたしそう言うの使うのなれてないわけじゃないし、なんかそれに近いものがある気がするのよ」


「意識なくてなせる魔法じゃないでしょう、それこそその魔法特質でもない限り、それともこの男がそうだというの」


「わたし、帝都のほうから流れてきた女ぐせまで最低の業者を干上がるまで絞り上げた際、そういう男がいるがあんたの相手をさせられてもううらやましくないと泣かせたことがある。違う男の話かもしれないけど、全くいないわけではないわ」


「そ、そうなの、なら、rウにまかせるわけにはいかない。いいわ、kミエ、あなたに接待のお相手をまかせましょう。それで足りなければ私に声をかけて。そこまでの男なら私の氷を溶かしてくれるかも知れない・・・」


「rウもkミエしゃまでいいでしゅよ、タrアしゃまもおとなのおつきあいのなかま、いやでないでしゅ。おふたりにあいにずっとかよっていてほしいでしゅ」


「だからと言って、季節のものの初まりを早くする魔法を自分にかけるのは禁止よrウ。ませくれ桃色雛子と後ろから指されたくないでしょ。温和(おとな)しくいい雛子にしてその日を待つのよ」


「タrアしゃま、そのひはとおいの、とてもとおくて、どろだらけしゃんがもしrウのおにいしゃんじゃなくても、きよらかでいるのはそれこそなんだいというものなのでしゅ」


「rウ、そのおにいしゃんてなんのこと。rウの夢見の中のひと、貴種様とかなの」


「kミエしゃまにもそれはひみつでしゅ、まじょのひみつでしゅよ。タrアしゃま、きらわれるはやだから、きせつのもののはやがけのまほうはrウはがんばってがんばってあきらめるでしゅ」


「それがいいわrウ。さてと、ふたりともよくきいて。少し状況をまとめてみましょう。


 この男は帝国の大尉魔法者で昨日ここトMワの空を越えて東隣の灰の塔にもどって行ったばかり。主役務は駐屯武官で副が兼職の護民官ね。それが悪天候をついてまでの早朝の来訪でしょう、なぜかしら」


「なぜかしらって、あざとらしい、それは・・・」


「rウのしぇいでしゅ」


「rウのせいじゃないわ。rウのせいがちょこっとはあるにしても、倍百も千もrウのことを利用しようと(あお)り立てている卑劣な奴らのせいだわ。緊張を演じて暴利を(むさぼ)らんとする極悪業者(わる)とか、ふん、やつの種はつきて枯れ果てるまでぬききってやった」


「・・・こちら側にも土鉱の側にも、おそらく塔の側にも、害虫のお仲間が巣くっていそうね、そこらへんを落としどころに紛争の噂は虚偽と切り抜けられるよう、大尉には説明をうけかたがた日々通っていただきましょう。夜の分限と交渉してこちらから宵通いしてもいいわ。


 大尉にあえて知らせないからと搾り尽くすのも、共和の益にはなるなら、遠慮も容赦もいらないし、そうして、そんな感じにもって行けるように、齟齬があからさまにならないように処理してちょうだい。


 だけど、問題はkミエ、あなたとあなたが撫で回している実体のこと。魔法の試行としてよくあっては困ることだけど、なんて間が悪いの」


「渦蛇を呼ぶほどのものになるとは思いもしなかったし、脚もすてきな大尉がその現場にいてこうなるとも思いもしなかったのだけど」


「そこはrウもぷんぷんまるでしゅ、おにいしゃんをこんなめにあわせるなんてひどいでしゅ」


「強大な帝国大尉魔法者といえど、後ろから余裕のない隙をつけば、捕獲(ゲット)できることもあるということね、ほんと良い勉強になったわ」


「その勉強代は全くただじゃないのよ、kミエ。


 あなたが召喚したつもりがなくても渦蛇が大尉を襲って倒してしまった。そのいっさいの部一でももし明るみに出れば帝国は報復の政治的処置をとらざるをえない。あまたの所領が恐怖してにどとそのようなことが起こりようがないほどにね、私たちも領民も苛烈な仕置きをうけることになるでしょう。


 さあ、どうしたものかしら、kミエ」


「このまま、なかったことにしてしまうのはだめ?」


「まあそれが最善で、できなくてもそうするつもりだけど、どうすれば確実にそうできるのかしら」


「あのとき、濃い靄でまぢかしか見えていなかった、ぶつからないよう前に注意を集中してたはず。だからうしろから雷火を直に受けて、渦蛇に襲われたのに気づかないうちにやられたのじゃないかと思うの」


「そうなの、でもあなた、いらないことをしたわ、なぜ夢見の魔法で自然覚醒の機会をうばったの。いつのまにか夢にいて、覚めたらいつのまにか目的のここにいたって、何が何でもおかしくはない?」


「あう、それは・・・お持ち帰りついでのサービスよサービス。何事もなく靄の難所をぬけ無事にここまでこれた夢から目覚めてみれば抱かれて私の腕の中のにく。結果良ければすべて良しっていうわ」


「そんな夢落ちじゃ余計悪いわよ、このとんちき」


「そうだわ、いいこと思いついた。私が無理矢理組み敷かれてのまっ最中。そんなスキャンダラスな目覚めと言うのはどう、ぞくぞくしない」


「あなたね、日頃の行いに評判とは真逆のお(プレイ)びをしても弱みは握れないわ、すぐにまずばれ、効果逆だわ」


「・・・あの、あのう、そこのところはrウにおまかしぇくだしゃい」



 『魔女に最強の武器があるのなら、それは魔法や魔力なんかじゃない、万象(よろず)ねじ伏せる魅力なの』


 rウの容姿としぐさふるまいに天然の”さすせ”のかみかみは、魔力を載せずとも歳上には絶大の効果があった。


 そして今のからだが有尾の幼い雛子で、心がそれに引っ張られていようとも、荒ぶる前世から続く年月の密かな(フルスペック)てはだてではない。


 ”初見たらしのrウしゃま”に、”領手のkミエさまより領主のタrアさま、そしてタrアさまより賢いrウしゃま”と、 トMワの町にrウとrウのお願いを無下(むげ)にできる大人などいなかった。



「ふしんにおもわれないの、rウはおふたりしゃまよりずっととくいでしゅ」 

 

 rウはここぞとばかり、ない胸をはった。 


 平たい寝台車はまな板か、そこに置かれた夢落ちの、男を肴に魔女と小魔女らの姦しさ。

純情rウのコイの行方やいかに。

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