カルザスか暗黒竜か、究極の選択…!
カルメン1世に会いに行った俺たち。
「暗黒竜ファブニールの脅威が去ったと思ったら、今度はカルザス帝国だとか…。
我が国のような小さな国は、いつも大国の脅威にさらされておる。」
カルメン1世は弱小国ゆえの悩みを口にする。
「正直な話、我がヘレナアイランドには、カルザス帝国に対抗できるだけの力はない。
お前たちのことも、いつまでかばってやれるか…。
しかしながら、わずかだが軍資金と、装備品を用意させてもらった。」
俺たちはその軍資金と装備品を受け取った。
本当にわずかながらといった感じだったが、まあそれでも、ないよりはマシといった感じ。
俺たちはカルメン1世へのあいさつを終えた後、城の人々から情報を聞き出す。
あまり大した話も聞けなかったな…。
正直言って、シケた国だなあ、と思っていたら、
「このあたりの海を荒らし回る、ヘレナの海賊たちがこの城を狙っているらしい。」
ある男からの話。その男はさらに、
「カルザス帝国は、ヘレナの海賊のような海賊たちや、
山賊たち、盗賊団なども、傘下におさめているらしい。
それと、カルザス帝国の皇帝の、カルザスはというと、
暗黒竜ファブニールと魔界の覇権を争った、
あの大魔王アスモダイと手を組んで、究極の力を手に入れようとしているらしい。」
「大魔王アスモダイ!?」
俺は驚いた。まさか、暗黒竜ファブニールのライバルともいえる、大魔王アスモダイと、カルザスが手を組んだとは…。
ジークフリートと、カルザス。
暗黒竜ファブニールと、大魔王アスモダイ。
ともにライバル同士。そしてお互いのライバルを倒すために、あえて手を組んだということになる。
「これは相手にとって不足はないな…。」
しかしながら、ヘレナアイランドをはじめとする各国にとっては、暗黒竜ファブニールも敵。
一方で、カルザス帝国や、大魔王アスモダイも敵。
まさか自分が、暗黒竜ファブニールの力を借りて復活したなどとは、とても言えなかった。
もしこの事がバレたら、それこそ世界中の国々を敵に回して戦わなければならなくなる。
ではどうすれば…。
いっそのこと、本当に世界中の国々を滅ぼしてやろうか。
いや、それについて考えるのは、今はやめておこう…。
城を出て、町に出る。
そして今夜の宿泊先を探し回る。
ようやく見つけた。ここがいい。ここの宿屋にしよう。
と思ったその時、近くの屋台で、ならず者たちが暴れまわっている様子を目にした。
ドガシャーン!
屋台の店員らしき男が、ならず者の1人に殴り飛ばされている。
「ガタガタぬかすんじゃねえ!
俺たちヘレナの海賊に逆らうとは、いい度胸じゃねえか。」
どうやらこのならず者たちが、ヘレナの海賊の一員のようだ。
「ぐっ…!」
その海賊は先ほど殴り飛ばした屋台の男の胸ぐらをつかむ。
「今日は特にムシの居どころが悪くてよお。」
「お、お助けを…。」
と、そこに、1人の剣士らしき男が現れる。
見た感じ、かなり腕のたつ剣士のようだ。
「な、なんだてめえは!」
「あ…、あいつは…。このヘレナアイランドでは一の傭兵、カムシン…。」
「カムシン!?カムシン…、カム…!お、おいおい、よせ…、たのむ…。」
さっきまで胸ぐらをつかんでいた、その海賊は、とたんにおびえ始める。
次の瞬間…!カムシンというその剣士は、剣を抜き、
バシュッ!
ブシャッ!
目にも止まらぬ早技で、その海賊を斬り捨てた。
その海賊の体は、見事に真っ二つにされてしまっていた。
「ひいいいっ…!逃げろ!」
残った海賊たちはカムシンの迫力におびえて逃げ出してしまった。
「全く、このへんも物騒になったもんだな。
おい、奴らを逃がすな。」
カムシンは連れてきていた手勢に、残りの者たちを追うように命じた。
「誰かそのけが人を手当てしてやれ。」
俺はただただ、呆然と見ているだけだった。
すげえな。世の中にこんな強いやつがいるなんてな…。
カムシンは俺たちの存在には気づかず、その場を立ち去った。
「あれが、ヘレナアイランド諸島王国一の傭兵、カムシンか…。
あいつすげえな…。あんな強いやつがいるとはな…。
味方にできれば心強い。
ということは、逆に敵に回すと厄介なやつだ…。」