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……どうして素直になれないんだろう?
素直になれない、そんな不甲斐ない自分に呆れて、思わずため息が出てしまう。
その時、後輩くんはびくんっと肩を揺らしていて、鈍感な私でもわかった。
……仕事が間違っているんじゃないかって、不安がらせてしまったことを。
今の私じゃ、彼を困らせるだけね……。
「仕事はそれで合ってるから大丈夫よ、そのまま続けて」
だから、ちゃんと仕事はあっているとそう言葉に伝えることにしたの。
後輩くんは、働くのが初めてだとは思えないくらい、慣れた手付きで仕事をこなしていて、すごいなと素直に感心した。
少し気を抜いてたのが悪かったの。
気がついたら、私は何気なく仕事をしている後輩くんの手に触れていたの……。
「せ、せ、センパイ⁈」
そう焦る後輩くんの声が聞こえるまで、私はそれに気づかなくて。
そのことに気づいた瞬間、私は思わず、後輩くんの手を触れてない方の手で平手打ちをしてしまった……。
パッチーン、と軽やかな音が仕事場中に響いていて……。悪いのは私なのに、すごい痛い思いをさせてしまって罪悪感が後からふつふつと湧いてきた。
慌てて、彼の頬に触れて、
「ご、ごめんなさい」
と謝れば、私は馬鹿なのか、懲りずに後輩くんに至近距離まで近づいていってしまっていた。
あと、数センチ。
あと数センチ、距離を見誤っていたらと考えると一気に顔に熱が集まった。
……それに気づいた途端に、一気に顔に集まっていく熱に耐えられなくなる。
とうとう耐えきれなくなった私は、
「ごめんなひゃいっ!」
緊張のあまり呂律さえも回らなくなり、終いには、同じ位置へのトドメの平手打ちを後輩くんにくらわせてしまった。
……ああ、もうダメだわ。告白したら速攻断られるに一票……。
思わず絶望した。