第6話敵対者と協力者(下)
朝日が出始める中
東の街中にある路地裏奥の奴隷専門店、東支部に二人のエルフがこっそりと中の様子を伺う
「エルお前先に行ってくれよどうにもただの薬で強くなれたなど俺は信じれない」
男エルフが女ダークエルフを頼り情けない姿を見せると「お前は本当にここぞという時に・・・」
女ダークエルフは軍に入ってからずっと腐れ縁の男エルフをよく知っている
判断力や上司に媚びるのは上手いのに
いざ危ないとなると自分の身可愛さにいつも自分は下がり私ばかりを頼る
そんな男エルフにいつもの事だと諦めつつ「分かった、せめて後ろから援護ぐらいはしなさい」
「あ・・あぁ、分かった」と被り物の犬が子犬に見えてしまうくらいに弱弱しい返事だった、女ダークエルフは辺りを警戒しつつまだ開店していない店の扉を開けようとする
ガチャガチャと扉には鍵がかかっており男エルフに
目を見合わせると二人で同時に扉を蹴破った、中には南支部と大差ない広さの店となっており
店の受付の裏には地下室へと降りる階段があり降りようとすると部屋の奥から
鎖の音と複数人の足音が聞こえて来た、二人はすぐさま降りるのをやめ
扉から距離を取りつつ得意の風魔法を詠唱し始めた、そこへ人の頭ほどの鉄球の付いた鎖が店の奥にある扉をブチ破り男エルフを外まで吹き飛ばし
壁へ全身を叩きつけた「お前ら奴隷を盗もうとは馬鹿にも程があるわ!」杖を持った奴隷の人間を左右に付き従え、左目に眼帯をしたゴリラの様な武闘派ダークエルフが声をかける
女ダークエルフは敵を見つつも男エルフの事が心配になり「大丈夫なら返事なさい!」少し間が空きぶつかった壁が砕けて粉塵が舞う中、徐々に粉塵が収まり壁と地面が赤く染め上げられ頭に被っていた犬の被り物からはまるで血の涙を流しているように見えた
「一丁上がりだ、お前らもう邪魔だ部屋にさっさと戻ってろ!」武闘派ダークエルフは二人の奴隷の魔法使いを薙ぎ払い女ダークエルフに近づく
女ダークエルフは詠唱し終わった魔法を撃とうと杖を相手に向ける
「無駄だ俺にはさっきの奴隷達に付与させた筋力増強に加え魔法のダメージを軽減させる魔防もしてある」
「それがどうした仲間が目の前で殺されて命乞いをしろとでも言うの」
きっと魔防の魔法を受けていない武闘派ダークエルフに対してであっても
それ程傷を負わせれないとは相手を見れば分かる、だが女ダークエルフが背負っているのは仲間や自分の命だけではなく家で人質にされている二人の命も掛かっている
その思いが女ダークエルフの体の震えを止め、効くか分からぬ魔法を撃たせた
「いっけぇー!!」放った魔法はいつも女ダークエルフが放つ中級風魔法トルネード
2メートルぐらいの竜巻を起こし相手を飲み込み切り刻む魔法なのだが
「ふざけんなっ!どんな魔力してやがるんだよ化けもんがぁぁ」
武闘派ダークエルフが余裕と思い真正面から受けたのは支部を全部飲み込む程の
巨大竜巻であったその中でミキサーにかけられているかの様に
一瞬で武闘派ダークエルフは消え肉片すら落ちては来なかった
「えっ・・・・私よね?今の」撃った本人すら驚く程の威力に今更ながら
「これがさっきの薬の効果」兄から飲まされた薬の効果を思い出しながらに後ろを振り向く、そこには左半身がほぼなくなり確実に死ぬであろう男エルフが居た
本来なら助からない命は任務遂行のために諦めすぐに目標に向かうのだが
先程の魔法の威力を思い出し今の自分にならと可能性を信じ、恐る恐る男エルフへ近づく
体からは内臓が落ちかけ虫の息になっていた「今の私ならやれる・・・」顔を左右に振り気合を入れ「いいえできるの絶対よ」女ダークエルフは助けたい一心に全力で治癒の魔法をかける
男エルフは「ぐぅぎあぁぁ」と痛みを上げるような声を上げる
「痛いのね?そうなのね」痛みや声を上げるという事は徐々に神経や意識が戻り
助かるかもしれないと思い女ダークエルフはより一層自らの魔力を全力で杖に込める、だが薬の効果には使用者の身体的底上げではなくスキルや魔法の上限を上げるのみで
先程の風魔法でほぼ空に近かった女ダークエルフは魔力切れで意識が消えかかっていたが「今の私の手なら救える・・・・届くんだからっ!」魔力が切れてもなお魔法を行使しつづける
そのせいで血が沸騰するように熱くなり吐血をしただが、なおもやめないその姿を
二人の人影がじっと見つめていた。
「ピーッピーピー!!警備の者以外玄関ホールに集まれピーッ」と奴隷店本部内に響き渡る大きな音、笛と共に上官の命令を聞きつけ幾人もの軍人エルフ達が玄関ホールへ集まりだした
その玄関ホールでは兄ではなく弟のナイト丸の方がいた、フルアーマーを着ているとは思えぬ速さで中級魔法を避けながら下級魔法だけを受けつつ相手をぶん殴るとそれを延々と繰り返していた
「ハァハァ・・・何人いるんだよ」弟がバフ魔法とレベルの差によるダメージはあまりないが精神的に疲れてくると「そろそろ頃合いだな、大分集まって来たしいいぞやれ」
兄の合図と共に素手の戦闘スタイルから背中の両手剣を抜き「近づくと死ぬからな」弟が一度だけ周りに警告し、エルフ兵達に危険を察知させると両手剣が赤く煮えたぎりそれを地面へと突き刺すと
両手剣の煮えたぎるそれは地面へと流れ込む、すると一瞬で周囲に地割れを起こし風圧で玄関ホールにあるシャンデリアや松明をすべて消し部屋を真っ暗にした
弟のナイト丸は魔法より剣技や素手の技スキルが豊富にありその一つが
ナパームソード、剣に一度だけ触れた場所を吹き飛ばし粉々にするスキル
「人を囮にした挙句にスキルを目眩ましに使わせて」弟が文句を言っていると
「さっさと交代しろ気づかれるだろ」兄が半ば無理やり弟と交代すると
先程までフルアーマーの男が居た玄関ホール中央には綺麗なダークエルフが
魔法を詠唱し立っていたその姿を新しい松明に火を付けエルフ兵達が捉えた頃には
ナイフを天へ向け大きな声で「ブレインジャーック」と兄が叫んでいた、すると玄関ホールに集まっていた、エルフ兵達が続々と家へ帰ろうとし始めた兄の魔法でエルフ兵達が本部から出ていくのを
「何をしている貴様ら軍規違反で捕まりたいのか」と怒声を響かせる中年の上官エルフが居た「あぁやっぱりLv1のブレインジャック程度じゃ良くて兵士がいいとこか」と
兄がブレインジャックに掛かっていない者を3人程見つけると一つ新しい事に気づいた「たぶんLv差とかじゃなく単純な装備の抵抗力だなあいつら上官だからって良い装備してるわりには一切攻撃してこないとこを見ると使えるかもな」
兄の考えが読めたのか弟が「あまり乱暴にするなよ」と一言だけ忠告をした
「やめろ離せー」とエルフ兵達がいなくなり上官エルフが3人だけ何も抵抗できず捕まった
「お前らあれだけ怒鳴って兵士に戦えとか言うわりには自分らは無抵抗なのね」と兄が飽きれながら三人を縛り上げ終わると
「黙れこの反逆者共めが王城前の本部を狙うとは貴様ら打ち首以外ありえぬと思え!」など他にも三者三様に様々な罵声を掛け続けた、それに対し兄が「プッツーン」と怒りを声で表現すると「ちょん、ちょんと」明るい声とは裏腹に上官エルフの内左右の二人の首がなくなると罵声がやんだ
中央にいた上官エルフは芋虫のように惨めに這い逃げると兄はそれを足で踏みつけ
「急に逃げちゃダメだなーちゃんと役目を果たしてくれなきゃねぇー」と顔に先程の返り血が付き兄が恐ろしく見えたのか「何でもしますから殺さないでくれぇー」と命乞いをした。
玄関ホールは先程まで戦闘があった場所とは思えぬ程静かになり兄は本部の中枢にある奴隷保管区に来ていたそこには何人もの警備兵がいるが兄を皆素通りさせる
「いやぁー本当に助かるわ、全部終わったら離してやるからなテキパキ頼むぜ!」と言いながら兄は上官エルフの肩を叩く「ヒッ、ありがとうございます」怯えながらに兄を案内する
上官エルフはこの施設内では2番目に偉い軍人であったそのおかげかどの警備兵も手が出せずただ見守る事しかできなかった
やがて奴隷達がいくつもの分類分けされた牢屋に収監されている場所に出た
「もう勘弁して下さい」と半泣きの上官エルフに「いいけど、じゃあ首だけね?」
その言葉を聞くと「鍵ですどうぞ!」とありえぬ速さで鍵を差し出す「よしよし」兄は鍵を受け取ると牢屋に近づき鍵穴に差し込んだ、すると天井から毒矢が数本振って来た
「ざまぁみろ私をコケにしよって本物の鍵はこっちだわ!」と偽物の鍵で開けようとし、トラップが作動した事に気づいた頃には毒矢は兄の背中に三本命中し
背中から地面へ毒の混ざった血が流れる「クソがクソがふざけやがって、コケにしてんのはお前だろうが」兄は背中に刺さった毒矢をそのままに上官エルフにふらつきながら近づく
「毒がもう回ってきおったな、貴様には私から引導を渡してくれる」上官エルフは
勝算があると思い火の中級魔法を放つ兄は痛みと苛立ちで「ざけんじゃねーぞこんの豚が!」
兄がふらついていた足を止めると体が少し宙に浮き体をのけ反らすと黒い液体が溢れ出て来た、その液体は火の中級魔法を溶かす様に飲み込むと上官エルフに飛びつく
「ぎゃっ」声を出す瞬間上官エルフは体が溶け一瞬で黒い液体と化した
その黒い液体は兄の体へと全て戻ってくると兄は地面へ着地する
「あの豚野郎が痛ってぇーな傷も全然治らねーし弱体化してんのかこの魔法」
兄が使った魔法はゲーム内でダークエルフ系のキャラが覚える闇魔法での上位魔法
吸収の黒、周囲を溶かし倒した敵を魔法終了後に自分のHPに変換する魔法だった
「兄貴大丈夫か?解毒薬とか出した方がいいぞ」と今更弟の心配に
「大丈夫なわけないだろめちゃくちゃ痛いぞ、死ぬ気しねーのに痛てーとかありえんわ!」Lv的に毒もダメージもそれ程深刻ではないにしろ実際の攻撃を初めて受け兄が叫び続けていると
「こちらに来ていただけませんか治せるかも知れんません」どこから女性の声がして辺りの奴隷達を見渡すと黒い髪の人間達だけが集められた牢屋が目に留まる「本当か?さっさとしてくれ」
痛みに気を取られ疑いもせず近づくとブチッ「いぎぃ!!」兄が不思議な声を出すと矢が全て取れていた「すみません抜かないと治癒魔法を使っても傷がそのままと思って」兄がさっさとしろと言わんばかりに
女性に背中をグッと寄せると「えっ、もう傷が」女性の驚きに自分の背中の痛みがない事で理解したのか「抜かなきゃ回復しねーのかよ、そりゃ矢が刺さったまま回復とかゲームになかったもんな」
ゲーム内との違いを身をもって知った兄は矢を抜いてくれた女性の牢屋から順に全て開けると「あんたら何人いるんださすがにこんな人数じゃ移動はできないよなー」兄が頭を抱えると
「助けてもらっておいてすみませんが他にも牢屋があるのです、どうにかできないでしょうか?」先程の女性が頼むと他の奴隷が「そこには珍しい奴隷や魔力が高く道具として使える奴隷が多いので逃げられるかもしれませんよ」
他の奴隷の言葉が理解できないので兄が「どうやって逃げるんだよ瞬間移動とかできるわけ?」と馬鹿にしながら聞くと「いえ普通に魔力車をと思いましてたぶん軍の人間が多いので何台かあるかと」
「あぁうん、そうだね」兄が適当に返事をし奴隷達に待ってもらい壁際に行くと
「ちょいちょいヒーちゃん魔力車ってなんなわけ?」久しぶりにヒーを呼ぶと
腰にあるアイテムを出していた袋から当たり前のように出てくる
「簡単に説明しますと貴方達の世界で言う車に近いものです」その言葉に驚き
「あるのかよ車めちゃくちゃだなこの世界」兄が驚くと「ですが」とヒーが続ける
「魔力車を使うには魔力車を操作する者と魔力車を動かすために魔力を送り続ける者がいります」
「んー、大体は分かったさっきの奴は他の場所に居る魔力になる奴隷達助けて魔力車で逃げようと言いたいわけね」兄がヒーに確認を取ると「そうであると思います」ヒーの確認を取り終わり
兄が奴隷達の元へ戻る「皆さんよーく聞くように魔力車を動かす為に今から他の奴隷の方達を助けに行くんで扉を閉めるからここで待機しててくださいね」兄が言い終わると
「私もついて行ってもいいでしょうか?」先程の女性が頭を深く下げ頼むと
「あんた大丈夫?たぶん価値の高い奴隷さん達らしいし、警備も危ないかもよ?」心配をした兄に対し
胸を張りながら「そこは安心して頂きたい武具さえあれば多少ですが力になれると思います」兄はまた少し試したい事を思いつき「それは助かる何が必要だ言ってくれ」女性へ聞くと
「そうですね刀と軽い鎧と籠手と何か履物を頂ければいいのですが」女性が言っている間に兄は「これとこれと刀って事は洋じゃなく和かな日本人ぽいし」兄がポイポイっとマジックのように
腰の袋から出るとは思えぬ武具を出した「多分Lv差で装備できないとか専門職装備の有無とかなければ装備できると思うよ」兄の言葉が分からないが装備しろと言われていると思い
「ありがとうございますでは・・・・」女性が目をキョロキョロさせている事に気づき兄が「そうだ、着方教えてあげるからさ、ジョ・セ・イ同士だし向こうに」兄が言葉の途中で
「兄貴いい加減にしておけよ今交代してもいいんだぞ?」弟からの注意がきた
「今の体なら別に犯罪じゃないだろ体は女だ」
「男女関係あるか!兄貴だからダメなんだよ!」と兄弟が心の中で話していると
「お待たせして申し訳ないです。」
先程までボロボロな茶色い奴隷服は、暗めの赤色を主とした胸板に加え黒い籠手に手甲を装備し髪は他の奴隷仲間に綺麗にしてもらいポニーテールになっており足は綺麗な模様のある草摺で守りスカートの様に履いている
「あの・・・贅沢は言いませんが肩を出すのは恥ずかしいと言いますか、嫁入り前にこの様な服装は良くないと言いますか」女性は自分の肩を撫でながら意見した
恥ずかしがる姿に「おぉー」
そう言うと小走りで近づき恥ずかしがる女性を本能的に抱きしめた
「スゥーハァハァ、凄く似合ってるねいやー良かったね」兄が凛としたダークエルフには似合わないいやらしい手つきで触ると「もう許してくださ・・・んっ」脚をくねらせながらに抵抗され
「糞兄貴!いい加減にしろー!」弟の叫びが脳内を除夜の鐘の如く響かせる
「あぁ、えっと戦闘前に肩のね力を抜くと言うかえぇ〜っとその」兄が響く頭を押さえながら
なんとか言い訳をしようとすると「助けて頂いた身ですし我慢しますが」女性に嫌われたと思いドキドキしながらに話を聞いていると
「まずはここに居る人達の安全の確保をお願い致します、無事に事なきを得ましたら」「助けて頂いたのですから恩返しは致します」と意外な言葉に
「本当にいいの?」兄があまりの驚きに聞き直すと「戦いや雑用ならできますので」女性の言葉に
「兄貴絶対に変な事頼むなよあんな良い子に・・・体が戻ったら何発かは覚悟しとけ」弟に怒られ「よし、チャチャっと助けチャチャっと逃げよう」兄が話を戻し出発する前に
「そうだ、名前は?」女性の方を向き問いかける「私は黒川綾と申します貴方様は?」「日本名なんだ、俺はサマーでいいよ」兄が適当にキャラ名から名乗ると
「分かりました、では先人はこの私にお任せを!」二人が奴隷保管庫から通路に出ると先程のエルフ兵達程の数ではないが十数人に待ち伏せされていた
「人々を苦しめる悪党達よ」綾が語りながらに刀を抜き敵の魔法を刃先にて受け流し兄を守り「この黒川の名をその身に刻みて眠りなさい!」腰を低く構えすり足からの跳躍
十数人もの相手を居合いの如く斬り捨てる「鈍ってはいないようで良かった」綾が刀を鞘に収めこちらに戻り「ご無事でしたか」と心配する「うんまぁね」兄が意外な戦闘力に驚くと
エルフ兵だった死体から手を合わせてから申し訳なさそうに地図を拝借して
目的地の場所を確認したのち兄へ伝える「この階層ですともう2階上にあるようです」
「そうかありがとう」兄が自ら志願したのだから戦闘に慣れてはいると思っていたが自分以外の者を守り死体から手際よく地図を取り出す様からして何者かと問う
「歩きながら聞いてくれていいんだけど綾は軍人だったりする?」兄の言葉に対し
「いえ、私はただの世間知らずな武家の娘だった者です」含みのある言い方に今は聞かない方が良いと判断した兄は「どうしてさそんな強いのに捕まったんだ?」と話題変えた
「恥ずかしながらサマー様のように奴隷の方達を助けたいとこの国に忍び込み
牢までは来れたのですが卑怯にも私と同じ国の奴隷を人質に取られてしまいまして」
同じ国と聞き「さっきの一緒に牢屋入ってた同じ黒髪の?」兄が聞くと
「そうです、ですがよく考えてみれば考えもなしに単身乗り込むなど愚かでした」
肩をがくりと下げ落ち込んでいる様子に加え先程の事での罪悪感からか
「頑張ったと思うぞ普通は国のやってる事に誰も一人で立ち向かうなんてしないからさ」
自分でも柄にもない事を言ったと思い「俺も一人で乗り込んでるけどね」と誤魔化そうとしたら綾は歩いていた足を止めこちらに振り返り「そうなんですね、私は頑張れたのですね・・・」
その時の綾は少し目に涙がにじんでいた。
目的の階層につき辺り辺りを見渡し敵を警戒したが
「どなたも居ませんね本部には先程のエルフ兵達より何十倍も人員を配置していたはずですが」
兄がホールでの兵士達を言っているのだと思い敵ではないがあまり手の内を人に見せたくないので「どうしたんろうな」と知らないふりをして難なく部屋に入れた部屋の中は赤い絨毯が敷かれて先程の奴隷達とは違い牢屋ではなく青白い液体が入った大きな水槽の様な物の中に
一人ずつが別の水槽に入れられてまるで水族館のようだった「これ死んでるのかな剥製的な奴か」と兄が考えていると綾が水槽の裏にある物を見つけ
「いえ、きっと科学と言う物ではないでしょうかこれがたぶんキカイと言う装置かとその装置で生かしていると私は思います死んでいたら価値が落ちると聞いた事がありますので」
綾の指さす方向にはよく分からないホースと機械が水槽に取り付けられていた
「んーじゃあ壊して取り出すか」と兄が水槽を壊そうとしたら
「ねーちゃんそりゃ可哀想だぜやめときな」部屋には誰もいないか確認したはずなのにどこからか声が聞こえた「何者です姿を見せなさい!」綾は慌てて刀を抜き構えようした瞬間
ドォンと聞きなれない音がしたと思うと綾の持っていた刀が折れ綾自身も体から血が流れ前へ倒れこむ「悪いが本職はよ芋スナなんでせめてタイマンと行こうじゃないか」
すると元いた世界でもテレビでしか見たことがなかった
紺色のSWATなどが着ているような防具に身を包んだ男が右手に銀色のマグナムを持っていた
「ヒー・・・・・こいつは何だ教えろ」兄が焦りながらも状況の把握をしようとヒーに聞くと「敵対者ですそれ以外は現段階では回答できません」とヒーが赤く光るとまるで警報に見えた。