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魔王様、プレゼントをもらう

ちょっとというかだいぶ短め


△月□日

タマが我輩にプレゼントをするようになった。

週に一度や二度程度だが、頬を染めて嬉しそうに我輩に差し出して『へーかすき!』と言う姿には毎度毎度頬が緩んでしまう。

一日の公務が終わり、図書館にタマを迎えにいくと、彼女はその手に大きな箱を持っていた。




「へーか、おわった?」

「ああ、迎えにきたぞタマ」

いつもは走り寄ってくるものの、今日は大きな白い箱を持っているせいかゆっくりと歩いてくる。そおっと歩いてきたタマをゆっくりと抱き上げる。

毎日抱き上げているとあまり変化に気がつかないのだが、少しずつ、タマは大きくなっていた。髪もだいぶ伸びている。少し切ってやろうかと思案する。




「ろべかる、ばいばい!」

「はい。また明日お会いしましょうタマ様」

曲がった腰を更に曲げて頭を下げるロベカルに我輩も一言声をかけ、部屋に戻る。ソファに座ると、タマが持っていた箱を我輩に差し出した。




「へーか、あげる!へーかすき!」

「うむ。タマ、我輩もタマが好きだぞ」

耐えきれなくなって、そっとタマのおでこにキスを落とす。嬉しそうに目を閉じてキスを受け止めたタマは、『はやくあけて』と我輩を急かした。




「きょー、たまがんばった!」

「がんばった……?ふむ、今日は何を持ってきたのだ?」

タマのプレゼントは、綺麗な花や水晶などこの魔王城内で見つけられるものが多い。金銭を持っていないタマにとって、プレゼントはそれくらいのものだろう。それでも我輩は花を枯れないように凍らせ、水晶もしっかりと保管してある。抜かりはない。




「さて、今日のタマからのプレゼントは……」

ゆっくりと箱を開けてみる。そこにあったのは、グラサージュされた小さめのチョコレートケーキだった。

甘い匂いが鼻孔をくすぐり、まさかのプレゼントにさすがの我輩も数度まばたきをする。




「ね!すごい?」

「……すごいなタマ。ところで、これはどこで仕入れたのだ?」

先にも言ったが、タマは金銭を持っておらず、魔王城も出たことがない。こんな、我輩の甘味好きという点をドストレートに刺激する代物をどこで……、と困惑していると、タマが答えを教えてくれた。




「たま、つくった!こっくさん、てつだってくれた!」

「…………」

こっくさん、という言葉に思わず顔をしかめてしまう。恐らくだが、調理室で食事を作ってくれておる玉藻前たちが、タマのケーキ作りを手伝ったのだろう。図書館からは結構離れていたはずだが、一体いつの間にタマの行動範囲が広がっていたのだろうか。




「へーか、たべる!」

「……ま、まぁ、小言は後でも良いか」

侍女に紅茶を用意させ、ケーキを切る。淡い黄色と茶色のスポンジケーキが格子状の柄を見せた。サン・セバスチャンなど、滅多に作らないくせに……、と思わず唸る。

タマも一緒に食べることを楽しみにしていたのか、頬を上気させつつ、ケーキを口に含む。途端、頬に手を当ててふにゃりと笑った。




「ん~!おいし~!」

「流石はタマが作ったものだな。極上だ」

「へーか、おいしい?」

「めちゃくちゃおいしい」

「えへへ!」

夕食前に食べるとあまり良くないとは聞くが、たまになら問題なかろう。半分以上残っているケーキを大切に保管する。

さぁここからだと、我輩は居住まいを正した。タマも何かを感じ取ったのか、我輩の膝の上で姿勢を正す。向かい合って座るタマの頬を、むにょっと軽く引っ張ってみた。




「タマ、貴様我輩のペットだという自覚はあるか?」

「むー?」

頬をむにょっとされながら首を傾げるところをみる辺り、自覚はないようだ。タマの頬を両手で包み込んで、タマに分かるように我輩は言葉を選んだ。




「タマ、あまり他の者と仲良くするな。タマは我輩の側が一番であろう?」

「うん!でも、あそぶの、だめ?」

「……あまり他の者になつかられてもな……」

もしタマに『へーかよりも他の人がいい』などと言われでもしたら、我輩はまず間違いなく落ち込む。下手したら泣く。だが、無理にタマの行動を制限するのもどうかと思う。

うーむと一人でタマの頬をむにむにしながら悩んでいると、タマが我輩の腕を掴んだ。




「へーか?たまいないとやだ?さみし?」

「さみしい。タマがいないと我輩超さみしい。下手したら死ぬぞタマ」

「へーか、さみしーの?」

「……タマ、貴様が他の者になついている姿を見ると、嫉妬するのだ。我輩は」

「しっと……?へーか、さみしいなら、たま、やる!」

「やる?何をだ」

「お……、お、まじない!たま、さみしーと、ママやる。へーか、さみしくないよーに、たま、おまじないする」

まじない……?だがタマは魔法が使えぬのではなかったか?

不思議に思っていると、タマが我輩との距離を縮めた。そして、その小さな唇を我輩の頬に押し付ける。

ちゅ、というリップ音がした。それと同時に胸がカッと熱くなった気がする。今までの憂鬱な気持ちが、どこかに吹っ飛んだ。




唇を離したタマは、少し恥ずかしそうにはにかむ。




「へーか、さみしいの、なおった?」

「っ……!!」

プルプルと身体が震える。身体をくねらせて思いっきり悶えたい衝動に駆られつつ、可愛い可愛い我輩のペットを、ぎゅうと抱き締めた。




「タマ!タマ可愛いぞタマ!我輩元気でた!」

「ほんと!?やったっ!」

我輩の腕の中で喜ぶタマに、我輩はニマニマしつつ頬擦りした。



これ、毎日やらせよう。




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