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タマ、遊んでもらう



へーかは、私がまほーを使えなくても嫌いにはならなかった。




へーかと私は『そーしそーあい』なんだけど、やっぱり嫌われたくなかったから、まほーが使えないってことを伝えるのが怖かった。

でも、へーかにその事を伝えると、『ならもうルーベルトにベタベタしなくていいな』と嬉しそうに言って抱き締めてくれた。

やっぱり、へーかは優しくって、本当に大好き。



でも、それじゃダメだって思ってる、今日この頃の私なのだ。









ロベカルに道を教えてもらって、久しぶりに来た場所は、大勢の人がチャンバラごっこしてた場所だ。

今日は綿アメを千切ったみたいな綿雲がいくつかモコモコと空に浮いている。今日もいい天気だ。

今日もみんなチャンバラごっこにせいを出している。私に気がつくと、チャンバラごっこを止めてわらわらと近寄ってきた。




「あ、タマ様だ」

「久しぶりだなータマ様」

「ちょっと背ぇ伸びたな?」

「髪も伸びたなー」

「元気してたか?」

などと、みんながしゃべりかけてくれた。そしてその中でも、ツノの人が一番かまってくる。わしゃわしゃと頭を撫でられた。




「おいこらタマ、もっと遊びに来てもいいんだぞ」

「いっぱい、だめ。たま、べんきょーするの!」

「ノロ様振られた」

「どんまいノロ様」

「うっせぇ!」

キッとみんなを睨み付けながら、ツノの人は私の頭をわしゃわしゃする。

思わず、服の裾をクンクンと引っ張った。




「ねーねー!」

「あ?なんだ?」

「のろ?あってる?」

「…………もう一度、言ってみろ」

「のろ!」

「もう一度」

「のろ!」

「もう一度」

「のろ!」

「……やべぇ、陛下これ俺にくれねぇかな」

「あの魔王様がタマ様を他の人にあげるわけないじゃないですか」

「たま、へーか、こいびと!」

「本人も言ってるし」

「分かってるっつの。で?今日はどうしたんだタマ」

あ、そうだった。今日はみんなとお話しにきたんじゃない。今日、私はまたまた一大決心をしたんだ。




「たま、まほー、つかえない」

「え……、まじで?」

「たま、なにもできるない。えと、んー……、ごくつぶし?だから、たま、なんかやるたい!」

そう、今のままじゃ、へーかにお世話になってばかりだ。なにかへーかの力になりたい。へーかの為になにかしたい。

そう伝えると、みんなは各々首を傾げて難しそうな顔をした。




「タマ様にできること?」

「なくね?」

「ペットは愛玩動物だから可愛がられるのが仕事じゃん?」

「しかもタマ様か弱いし魔法も知らないんじゃなー」

「た、たま、まほー、は、しってる!」

これは本当。だって、へーかやルーベルトのまほーを見たし。思わず声を出すと、『えーほんとに?』と疑いの視線を向けられた。




「ほんと!たま、みたことある!」

「へーじゃあやってみろよ。どうせ使えないんだろ?」

「や、やってみる!ほんと!」

ノロがにやにやするから、余計にやる気が出てきた。

そこら辺にあった木の棒をつかんでキメポーズをする。木の棒をつきだして目元を強調するようにピースして、足を少しだけ広げる。

まほーって、私の中では『ハートクラッシャーズプリキュオ』とおんなじだと思ってる。だから、私はプリキュオの必殺技を唱えた。




『プリキュオ!まきしまむきゅあー!』

「おお、なんか唱えた」

「なんも起こらねぇけどな」

「それ使ったらどうなるんだ?タマ様」

「…………」

キメポーズのまま固まった私は、うんうんと言葉を探す。





「……これをとなえたら、」

「「「唱えたら?」」」

「……あいてはしぬ」

一瞬だけ沈黙が流れた。




「えぇ!?ちょーこえー!」

「唱えるだけで殺すとか……、魔王様超えてんな」

「タマ様の魔法やばい。タマ様に魔力がなくてよかった」

各々が感想を述べているなか、私は牛さんみたいな格好している人を指差した。




「はい!しんだ!」

「えぇ!?んな無茶な!」

「いいの!しんだふり、ふりする!」

「えぇー!?」

渋々地面に横たわる牛さん。『ぎゃああーやられたー』とか棒読みでも言ってくれるあたり、とってもいい人だと思う。木の棒を棄てて無言で万歳をすると、『おおー』っと周りの人が拍手してくれた。






「ね?たま、まほー、しってる!」

「まあ、そうだけど。趣旨ずれてっぞ」

「しゅ……?」

「陛下の役に立ちたいんじゃなかったのか?」

はっ、そうだった!まほーのことよりも、今はへーかの役に立つ方法を探しているんだった!




「へーか、やく、たつ!どうするいい?」

「どうするってもなぁ~」

「たま、なにもする!」

「それを言うならなんでもだろ。そうだな、じゃあ陛下が喜びそうなことすりゃいいんじゃね?」

へーかが、喜びそうなこと?

思わず首をかしげる。へーかが喜びそうなことって、どんなことだろう。いつも私と一緒にいる時のへーかは優しくって嬉しそうに笑ってるけど。




「例えば、お前がなにかプレゼントしたりとか、そうすりゃ陛下は喜ぶんじゃねぇの」

「ふれれんと……」

「プレゼントな」

なるほど、プレゼント。そういえば、同じ一年生だったふうかちゃんは、バレンタインの日に『としき君が好きなのーっ』てみんなの前でプレゼントしてた。私も『へーか、だいすき』ってなにかプレゼントしよっと!




「ほか!ほかは?へーか、なにすき?」

「他か?んー、一緒に遊ぶ、とか」

「それ!やる!」

私はへーかと遊ぶのは大好きだ。だって、昼前は一緒にいると邪魔になっちゃうから、中々遊べない。




「たま、『おにごっこ』がいいー」

「お……?」

「おにが、みんなおっかける。つかまったらだめ」

「あーおにごっこか。でもありゃ大勢でやった方が良くね?」

「鬼ごっこやりたいんだったら、付き合ってやりましょうよノロ様」

うんうん、とみんなが賛成してくれる。私は思わず期待で胸を膨らませた。こんなにたくさんの人たちと鬼ごっこ出来るなんて、何時ぶりだろう。




「のろ、いいの?」

「……チッ、しゃあねぇな。だけど、お前らが駆け回ってタマが潰されるかも知れねぇから、俺がタマを背負う」

「えーずるーい」

「一人だけいい思いしてー」

「うっせー!いいんだよ俺はっ!」

ノロが私の後ろでしゃがみこみ、私の股下に頭を入れる。そのままノロが立ち上がって、あっと言う間に私の視線は高くなった。肩車である。




「のろ!たかい!すごい!」

「だろ。俺は足も速いんだぞ!」

「のろすごい!」

なんかスカートがちょっとグシャグシャだけど、そんな事よりも久しぶりに大勢の人と遊べることの方が嬉しい。本物の鬼がいるんだからと、ノロが鬼になった。ということは、ノロに肩車してもらっている私も鬼。がんばるぞー!






「ほらちれー!」

「ノロ様相手に俺ら敵うかよ」

「でもタマ様いるし」

「ぎゃああきたぁー!」

「思ってたより速いー!」

「捕まったやつ城を20周なー!」

「横暴!!ぎゃあっ!?」

「タマ触れたか!?」

「さわった!」

「ちょ、ノロ様足は使わないで!」

「回し蹴りは痛いっ!」

「あ、あ!さわったー!」

ノロのおかげで、たくさんタッチ出来る。ノロスゴい!




「おい貴様ら!!」

聞き慣れたへーかの声が響く。思わずみんなが固まる中、不機嫌そうなへーかがずんずんと歩いて近寄ってきた。

今日はもうお仕事ないのかな?




「へーか!」

「おいノロ、貴様がなぜタマを肩車しておる」

「い、いやぁ……」

「タマを肩車するのは我輩だ。さっさとタマを返せ!そして我輩が貴様ら全員捕まえてみせてくれる!」

「ま、魔王様相手に俺らが逃げ切れるわけないじゃないすかー!」



そうしてへーかも鬼ごっこに加わって、ルーベルトがへーかを迎えにくるまで遊んだ。

やっぱり私は、へーかと一緒が一番嬉しいし楽しいや!

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